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【開催報告】AWS GenAI Catapult! 〜AI 駆動型ハッカソンイベント:ユースケース創出から Kiro によるプロトタイプ開発まで〜

2026年6月11日(木)、12日(金)の2日間、AWS 麻布台オフィスにて AI 駆動型ハッカソンイベント「AWS GenAI Catapult! 」を開催いたしました。本イベントは、生成 AI 活用を前提にAmazon のイノベーション創出メカニズム「Working Backwards」手法を用いて顧客起点で生成 AI ユースケースを創出し、プロトタイプ開発まで行うコンテスト形式のイベントです。前回に続く2回目の開催となる今年は、創出したユースケースを AI コーディングエージェント「Kiro」でプロトタイピングし、アイデアを「動くもの」に変えるところまでを2日間で一気通貫に体験するという新たな挑戦を加えました。金融領域の13社12チーム(47名)の皆様にご参加いただき、活発な議論と創造的なアイデア創出、プロトタイプ開発、そして各社それぞれの工夫を凝らした内容で熱のこもった発表が行われました。本記事では、企画の背景から当日の様子、参加者の声までをお届けします。

前回開催からの進化 — アイデア創出から「動くプロトタイプ」へ

昨年7月の「AWS GenAI Catapult! 」は、Working Backwards によるアイデア創出を中心とし、プロトタイプの提示は任意(加点要素)、発表は初日から約3週間後に別日を設けて実施する形式でした。今年は昨今の生成 AI の進化に伴い次の3点を大きくアップデートして、「考える」から「作る」まで地続きで体験できるようにしたことが、今年最大の特徴です。

  • 連続2日間で完結:学び・アイデア創出・開発・発表までを途切れさせずに2日間でやり切る構成に変更
  • Kiro によるプロトタイプ開発を本格導入:アイデアを構想で終わらせず、その場で動くアプリケーションとして形に
  • 発表は「動くデモ」付き:プレスリリースに加えてプロトタイプのデモを披露

企画の背景

日本企業の生成 AI 活用の現状 — AI活用の方針は前進、しかし「使いこなし」はこれから

総務省の 令和7年版 情報通信白書 によると、日本企業で生成 AI の活用方針を「定めている」とした比率は 49.7%(前回の調査の 42.7% から増加)と着実に前進しました。一方で、調査した他国と比較すると依然として低い水準にとどまっています。実際の利用面でも、何らかの業務で生成 AI を利用している企業は日本で 55.2%、「メールや議事録、資料作成等の補助」での利用は 47.3% と、いずれも他国より低い割合でした。導入に際しての懸念事項として日本企業が最も多く挙げたのは「効果的な活用方法がわからない」で、次いで社内情報の漏えい等のセキュリティリスク、ランニングコスト、初期コストが続きます。生成 AI を「どう自分たちの価値創出につなげるか」という具体的な適用イメージを描けていないことが、依然として大きな壁になっていると考えられます。

「業務効率化」の先へ — 顧客起点のイノベーションという課題

同白書では、生成 AI 活用による自社への影響について、日本企業は「業務効率化や人員不足の解消につながる」を最も多く挙げました。これに対し、米国・ドイツ・中国の3か国では「ビジネスの拡大」「新たな顧客獲得」「新たなイノベーション」を多く挙げる傾向が見られます。つまり日本では、生成 AI が業務効率化の手段にとどまりがちで、新たな顧客価値の創造へと踏み込めていない構図がうかがえます。金融業界でも、技術起点のアプローチに偏り、顧客価値創出に課題を抱えるケースは少なくありません。

「AWS GenAI Catapult! 」は、まさにこの「業務効率化の先」へ一歩踏み出すための場です。顧客起点でユースケースを発想し、その価値をその場で検証する体験を通じて、生成 AI 活用を効率化からイノベーション創出へと引き上げることを狙いました。

Amazon 流・顧客起点のイノベーション創出メカニズム「Working Backwards」

Amazon が実践してきたイノベーション創出のメカニズム「Working Backwards」手法は、Amazon Echo、Amazon Prime、AWS などのサービス開発に活用されてきたアプローチです。顧客の理想的な体験から逆算してサービスを設計することで、顧客が本当に求める価値に焦点を当てた開発を可能にします。具体的には、企画段階から顧客体験をプレスリリースという形に詰め込むことで実現します。「Working Backwards」は知識として学ぶだけでは習得できません。実際にプレスリリースを書き、発表しフィードバックを受ける体験を通して、はじめて身につきます。

コーディングエージェントの進化が、「作る」のハードルを下げた

今年プロトタイプ開発まで踏み込んだ最大の理由が、AI コーディングエージェントの急速な進化です。Kiro に代表されるコーディングエージェントは、自然言語の対話から要件定義・設計・実装・テストまでを支援できるまでに進化し、エンジニアでなくとも、アイデアを短時間で「動くもの」に落とし込めるようになりました。

これにより、「顧客起点で何を作るべきかを考える力(Working Backwards)」と「それを素早く形にする力(AIコーディングエージェント Kiro)」が地続きになり、アイデアの価値を構想で終わらせず、その場で動かして検証できるようになりました。昨年はアイデア創出が中心でプロトタイプ開発は任意でしたが、こうした技術の進化を背景に、今年は「考える」から「作る」までをやり切る2日間へと踏み切りました。

イベント概要

項目 内容
開催日時 2026年6月11日(木)、12日(金)
会場 AWS 麻布台オフィス(麻布台ヒルズ 森JPタワー)
参加者数 47名
参加企業 金融関連企業 13社(12チーム)

AWS GenAI Catapult! とは

「AWS GenAI Catapult!」は、顧客起点での生成 AI ユースケースを創出し、世に送り出すための発射台(カタパルト)としての位置づけで、その意図をイベント名の「Catapult」に込めています。生成 AI の学習・スキル習得に留まらず、ユーザーの課題や体験に焦点を当て、Amazon 流のイノベーション文化を理解し、「Working Backwards」手法による実践的なユースケース創出につなげることを目指しています。今年はさらに、創出したユースケースを Kiro でプロトタイピングし、動くアプリケーションとして発表するところまでを2日間で体験いただきました。企業横断の交流セッション「World Café」も実施し、参加者同士の学びの共有とネットワーキングの機会も提供しました。

イベント開催報告

参加企業・チーム

金融領域の事業会社・サービサーなど 13社にご参加いただき、12チームを編成して臨みました。各社が個性豊かなチーム名で参加しています。

チーム名 会社名
Masult 株式会社アイフィスジャパン
麴町 Squad 株式会社オリエントコーポレーション
TQQQ 株式会社QUICK
東池袋 4+1 株式会社クレディセゾン
やる KIRO 満々 株式会社ジェーシービー
しんぷれこ シンプレクス株式会社
NEXT BAMBOO 株式会社セゾンテクノロジー
えぇアイをつくる会 CHEER証券株式会社
TMN Sei-katsu-sha AI Lab 株式会社トランザクション・メディア・ネットワークス
AIに任せ隊 株式会社Finatext / 株式会社ナウキャスト
P:AI プレミアグループ株式会社
ほか、1社

AWS GenAI Catapult! 1日目

Amazon Culture of Innovation Session / Working Backwards Experience Workshop

1日目は、Amazon のイノベーションを支えるカルチャーとテクノロジーの紹介から始まりました。Amazon は「地球上で最もお客様を大切にする企業であること」を使命とし、徹底したお客様志向、あくなき挑戦、辛抱強さを基本理念としています。お客様から逆算して考える「Working Backwards」というメカニズム、「Every day is still Day One」という心構え、小さく権限委譲された「Two-pizza チーム」という組織構造、そして変化に対応できるアーキテクチャが、イノベーションを生み出す源泉であることが説明されました。失敗を恐れず Builder 精神を持った社員が、顧客中心主義に基づいて新しい顧客体験を創造している——その文化が共有されました。

Working Backwards 体験ワークショップでは、参加者は各社チームに分かれ、生成 AI を活用したユースケースの創出に取り組みました。「Customer Obsession(お客様へのこだわり)」「Think Big(広い視野で考える)」「Bias for Action(行動へのこだわり)」というリーダーシッププリンシプルに基づき、まず「お客様は誰か」を特定し、課題を明確化。続いて課題を解決するソリューションとその目玉機能を考案し、最終的にプレスリリース形式でアイデアをまとめます。完成したプレスリリースは他チームに発表し、建設的なフィードバックを受けることで、アイデアをさらに洗練させていきました。

参加者からは「要件定義ではなく“体験定義”をするという観点が非常に勉強になった」「プレスリリースから物事を考えること自体が新鮮だった」という声が多く聞かれました。

AWS GenAI Service Introduction / AWS Dojo Hands-on [ Kiro ]

続いて、AWS Session で AWS の生成 AI サービスの全体像を学び、続くAWS Dojo Session ではいよいよ AI コーディングエージェント Kiro のハンズオンに取り組みました。AWS のワークショップ「Kiroで学ぶ:AI駆動開発」を教材に、まず講師が Vibe モード(AI と会話しながら探索的に実装を進める使い方)をデモで実演。続いて参加者自身が Spec モード(仕様駆動開発)を実践し、要件を Kiro の Spec に落とし込み、そこから自動生成される設計ドキュメントを確認しました。Vibe(素早く作る)と Spec(要件→設計→タスクに構造化する)の両方をここで体験することで、翌日のプロトタイプ開発で両者を使い分けるための確かな助走となりました。

AWS GenAI Catapult! 2日目

Prototyping Workshop with Kiro

今年最大の挑戦が、AI コーディングエージェント Kiro を用いたプロトタイプ開発です。Working Backwards で描いた顧客体験を、構想で終わらせずに「動くもの」へと変えていきます。Kiro は、次の3つの機能をうまく活用頂くことで効率良く開発を進めていくことができます。

  • Spec(仕様):自然言語の対話から、要件定義・設計ドキュメント・実装タスクを構造化
  • Steering(制約):Steering ファイルで規約やアーキテクチャ制約を AI に教え、チームの意図に沿った実装へ誘導
  • Coding(実装):タスクリストに沿って AI が実装。必要に応じて Vibe コーディングで素早く形にする

開発をスムーズに始められるよう、運営からは Working Backwards やアプリ雛形の生成などのスキルと、規約・アーキテクチャ制約を定義したステアリングを同梱した「スターターキット」を配布しました。各チームはまず Day1 で作った PR/FAQ を Spec に落とし込み、アプリの雛形を生成。生成 AI 部分はモックと実モデルを切り替えられる構成(Mock/Real 切替)にしておくことで、ネットワークやモデルに左右されずデモのシナリオを安定させる工夫も共有されました。実装は「頼む → 動かす → 確認する → 次へ」という小さなループ(黄金ループ)を回し、迷子にならずに少しずつ完成へ近づけていきます。

「雑な自然言語からでも仕様書やモックを作成してくれる」「開発未経験でもここまで作れるのかと驚いた」「要件定義からテストまで1〜2時間で実行できた」——短時間で完成度の高い成果物が生まれていく様子と、会場のあちこちで驚きの声を聞くことができました。

参加チーム プレスリリース発表 & デモ & QA

2日目午後、いよいよ発表の時。今年は プレスリリースに加えて、Kiro で作り上げた動くプロトタイプのデモ を披露するスタイルです。12チームを4チーム×3ブロックに分けて予選を行い、各ブロックの1位が決勝に進出するトーナメント形式で実施しました。各チームが顧客課題に深く向き合い、生成 AI ならではの新しい顧客体験を提案。単なる業務効率化に留まらず、顧客体験を根本から再定義するような大胆な提案が並び、Q&A では他チームの提案を積極的に理解しようとする姿が印象的で、会場は熱気に包まれました。

AWS World Café [AI 活用推進]

生成 AI 活用をテーマにした参加者交流セッション「World Café」を開催しました。少人数グループで「ホスト」と「旅人」の役割を交代しながらメンバーの組み合わせを変え、対話を深めていく独自の形式です。結論や合意形成を目的とせず、多様な意見の共有と相互理解の深化を重視。「同じ課題に直面していることがわかって安心した」「他業種の取り組みが参考になった」など、業界や立場を超えた対話から多くの共感と気づきが生まれました。

Networking Party & Awards Ceremony *表彰式

セッション終了後、会場は和やかなネットワーキングパーティーへ。参加者は2日間の学びを共有し合い、企業の垣根を越えた新たな繋がりが次々と生まれました。表彰式では、AI審査員を加えた5名による厳正な審査の結果、以下の3チームがAWS Awardsを受賞しました。

  • 優勝:TMN Sei-katsu-sha AI Lab ( 株式会社トランザクション・メディア・ネットワークス )
  • 準優勝:P:AI ( プレミアグループ株式会社)
  • 3位:TQQQ ( 株式会社QUICK )

さらに、プレスリリースの完成度を称える特別賞「Kiro賞」を、しんぷれこ(シンプレクス株式会社)/AIに任せ隊(株式会社Finatext・株式会社ナウキャスト)/やる KIRO 満々(株式会社ジェーシービー) の3チームが受賞しました。受賞チームには記念トロフィー・メダルと AWS クレジットが贈られ、参加者全員にも AWS オリジナルグッズが配布されました。会場は受賞チームへの祝福と拍手に包まれ、和やかな雰囲気の中で締めくくられました。

参加者の声

本イベントの参加者アンケート(回答47件)では、総合満足度(CSAT) 4.8 / 5.0 と昨年(CSAT 4.6)を上回る非常に高い評価をいただきました。また、Working Backwards × 生成 AI によるサービス創出プロセスの有用性も 4.76 / 5.0、今後も Kiro を業務で使いたい と回答した方は約94%にのぼりました。参加者からは、次のような声が寄せられました。

  • 「要件定義ではなく“体験定義”をするという観点が非常に勉強になった」
  • 「雑な自然言語からでも仕様書やモックを作ってくれるのがすごくよい」
  • 「開発をしたことがない人間でも、ここまで作れるのかと興奮した」
  • 「他社の AI 活用のリアルな実情やアイデアを聞ける、貴重な交流の場だった」
  • 「‘それは私たちの仕事ではありません、と言わない’を自分の信条にしたい」

運営の工夫 — イベント運営そのものも生成 AI と

今年は、イベントの「中身」だけでなく「運営」にも AI コーディングエージェントを活用しました。参加者に Kiro での開発を勧める私たち運営自身が、その Kiro を使って運営の仕組みを作り上げる——これもまた、今年のイベント開催における裏テーマでした。

イベントポータルサイトの開発

当日の参加者体験を一元化するため、専用の イベントポータルサイト を内製しました。参加者はこのポータルから、当日のアジェンダ・各セッションのガイド、開発チートシート、FAQ/トラブルシューティングを確認でき、完成した成果物(PR/FAQ・発表スライド・プロトタイプ・デモ動画)をカテゴリ別にアップロードできます。

技術構成はフロントエンドに React + Vite + TypeScript、バックエンドに AWS Amplify Gen2(認証は Amazon Cognito、ストレージは Amazon S3、ホスティングは Amplify Hosting)を採用。チーム単位のアカウントを運営が事前発行し、各チームの成果物は S3 上で IAM により相互に隔離(他チームからは参照不可、運営のみ横断アクセス可)しました。参加者が金融機関であることを踏まえ、全ページ認証必須・S3 のパブリックアクセス全ブロックと暗号化・成果物の一定期間後の自動失効といった、セキュリティとデータ保護の作り込みも行っています。

アプリ開発用スターターキットの準備と配布

コーディングエージェントを初めて使う参加者でも、半日で動くアプリを作り切れるように、運営が事前に「スターターキット」を配布しました。0 から作るのではなく、これを起点に開発できるようにする狙いです。

キットには、Working Backwards の PR/FAQ・ストーリーボードの生成、発表資料づくり、コーディングエージェントの「運転ガイド」、Spec / Vibe の使い分け、生成 AI アプリの雛形生成、HTML スライド作成といった用途別の スキル群 と、毎回守ってほしい制約を定義した ステアリング(共通ガードレール)、そして開発中に手元で見る 1 ページの早見表やトラブルシュートを同梱しました。これにより、初心者がつまずきやすい「曖昧に大きく頼んで迷子になる」「動作確認せずに進む」「生成 AI 連携部分を自力で組めない」「Spec を巨大にして破綻する」といった落とし穴を、あらかじめ吸収できるよう設計しています。

Kiro と AI 駆動型開発

特筆すべきは、ポータルサイトもスターターキットも、コーディングエージェント Kiro を使って開発したことです。とりわけポータルサイトは、Kiro の Spec モード(仕様駆動開発) を用い、要件定義(requirements)→ 設計(design)→ タスク分解(tasks)という流れで開発しました。これはまさに、当日参加者に体験いただいた開発プロセスそのものです。

「考える」から「作る」までを生成 AI で地続きにする——その手応えを、運営は準備段階から自ら検証していました。参加者に届けた体験は、私たち自身が有効性を確かめたうえでお渡ししたもの、と言えます。

まとめ

「AWS GenAI Catapult! 」は、単なる技術セミナーではなく、顧客起点でのイノベーション創出プロセスを学び、実践する場です。今年は Working Backwards による「考える」体験に、Kiro による「作る」体験を加え、アイデアを2日間で動くプロトタイプにまで昇華させる挑戦を行いました。生成 AI という革新的技術を真に価値あるものにするためには、技術の可能性を理解しつつ、常に顧客価値を中心に据えたアプローチが不可欠です。そして今、その顧客価値を「素早く形にして検証する」ことが、誰の手にも届く時代になりました。参加者の皆様がこの本質を体感し、自社での実践に活かしていただけることを心から願っています。

最後に、2日間にわたり熱心にご参加いただいた皆様、そして革新的なアイデアとプロトタイプを生み出してくださった各チームの皆様に、心より感謝申し上げます。皆様の挑戦が、日本の生成 AI 活用を加速し、新たな顧客価値の創造へとつながることを確信しています。AWS では今後もお客様のイノベーション創出を支援するプログラムを継続的に提供してまいります。