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AWS Summit 2024 で見た IoT の進化!多数のセッションと展示が語る IoT の真価と深化! ( Industrial IoT 編 )

このブログは、6月20日と21日に開催された AWS Summit Japan における IoT 関連出展を紹介するものです。「プロダクト IoT 編」と「インダストリアル IoT 編」の二部構成で、今回は「インダストリアル IoT 編」についてお伝えします。(プロダクト IoT 編の記事はこちらです)

今年の AWS Summit Japan では、インダストリアル関連の IoT サービスを活用した多数のブース出展やセッションが行われました。どのコンテンツも、設備からのデータ取得だけでなく、取得したデータを様々なシーンで活用する方法を示しており、現場の課題解決に役立つ実用的な内容となっていました。ブース内で来場者との活発な質疑を交わす場面も多く見られ、実用フェーズに進んでいることが感じられました。このブログはインダストリアル IoT 編として、展示やセッションの一部をご紹介します。

カスタマーセッション

東海旅客鉄道株式会社

基調講演:ビルダーとテクノロジーが加速する次のイノベーション

Breakout Session :リニア中央新幹線における設備 IoT 化に向けて~データドリブンによる徹底的な省人化の実現~

東海旅客鉄道株式会社のリニア開発本部では、リニア中央新幹線の運営に向けてデータ分析プラットフォームを構築しています。山梨リニア実験線での「保守用車リアルタイム状態監視」と「開閉器動作音による異常検知」の2テーマについて、 AWS プロトタイピングプログラムを活用した取り組みを、基調講演とブレイクアウトセッションの2回にわたりご紹介いただきました。 IoT サービスを活用したデータドリブン運営に向けたステップがよくわかり、リニア中央新幹線開通への期待感がますます高まる内容となっていました。

  • 基調講演:東海旅客鉄道株式会社 中央新幹線推進本部 リニア開発本部 副本部長 水津 亨 氏(オンデマンド配信
  • Breakout Session:東海旅客鉄道株式会社 中央新幹線推進本部 リニア開発本部 宮本 真樹 氏 と藤原 海渡 氏(オンデマンド配信) 

株式会社 竹中工務店、日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ株式会社

「建設デジタルプラットフォーム」によるデジタルデータと最新技術活用の取組み 

日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ株式会社 長谷川 隆一 氏と、株式会社 竹中工務店 デジタル室 先進デジタル技術グループ グループ長 丘本 道彦 氏により「「建設デジタルプラットフォーム」によるデジタルデータと最新技術活用の取組み 」というタイトルで発表頂きました。 Building4.0 の取り組みとして、 AWS IoT TwinMaker を活用したデジタルツインの検証内容について、「作業進捗管理」や「 IoT デバイスと連携した熱中症対策」などの具体例を元にご紹介いただきました。建設事業のデジタル変革が目指すビジョンがよくわかる内容となっていました。詳細はこちらの資料をご覧ください。

AWSセッション

AWS IoT SiteWise を活用したスマート工場の実現 

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 技術統括本部 IoT スペシャリスト ソリューションアーキテクトの新澤 雅治がプレゼンテーションを行いました。主に製造業のお客様に向けて、スマート工場の実現に向けた手段を整理しAWS IoT SiteWise の re:Invent 2023 で発表された新機能を含む具体的な活用方法を、お客様事例を交えて紹介しました。また、食品工場における生成AIアシスタントのデモにより、生成AIがどのように生産効率を向上させるかをご紹介しました。詳細はオンデマンド配信をご覧ください。

物流業におけるデジタルツイン構築の勘所 

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 技術統括本部 エンタープライズ技術本部 ソリューションアーキテクトの戸塚 智哉がプレゼンテーションを行いました。デジタルツインは現実世界をデジタル空間に再現し、リアルタイムな監視やシミュレーションを可能にする技術ですが、現実世界のデータをどのようにクラウドで扱うのか、物流倉庫などの利用シーンをベースに、 AWS IoT サービスを使ったデザインパターンをご紹介しました。また、生成 AI と合わせることでより効果的なデジタルツインの実現についても勘所もご紹介しました。詳細はオンデマンド配信をご覧ください。

再エネ時代のエネルギーシフトに向けたエネルギー基盤を支える AWS サービスの活用

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 技術統括本部 エネルギー&ユーティリティ部 ソリューションアーキテクト岩下 高志朗がプレゼンテーションを行いました。グローバルウォーミング、カーボンニュートラルは世界中の国々、企業が取り組んでいる社会テーマとなっております。この来るべき再エネ時代は小規模の分散電源が大量に配置されるため、再エネ発電設備の最適化、電力需要供給のバランス調整、送配電設備の拡充計画などが重要となってきます。このようなニーズに対して、必要な業務機能群を整理し、そのような領域で活用できる AWS サービスの紹介と活用例を紹介しました。詳細はオンデマンド配信をご覧ください。

展示ブース

東海旅客鉄道株式会社/東海交通機械株式会社

AWS Village での東海旅客鉄道株式会社/東海交通機械株式会社様の共同ブースでは、 IoT を活用した鉄道機械設備のリモートモニタリングの展示が行われていました。設備が古く遠隔監視ができない機械や設備に対して、改修工事が不要な可搬式の電流センサー、温度センサーなどを設置し、 AWS IoT Greengrass を使って Amazon S3 へのデータ収集、 Amazon QuickSight による可視化を行うことで、遠隔地にある機械や設備のデータを事務所内で確認できることが実機とともに展示・紹介されていました。その他、 IoT で収集したデータを予兆保全につなげる事例など、鉄道機械設備における AWS の実活用事例が紹介されていました。

 AWS 展示:クラウドで進化する鉄道機械保守

AWS Village の鉄道業向け AWS ブースでは、 IoT を使った鉄道機械設備管理システムのデモが行われていました。このデモでは、架空の駅の改札機やエレベーターなどを模擬した設備データを AWS IoT SiteWise で収集し、そのデータを基にしたアラーム監視や保全方法のリコメンドを Amazon Bedrock から受ける場面が再現されていました。また、遠隔地にある複数の駅のデータを構造化して保存し、横断的に可視化するダッシュボードなどがデモされており、クラウド利用の価値を実感できる内容となっていました。

 AWS 展示:スマート X サステナビリティ ビル管理  AWS  IoT サービスを活用したスマート サステナビリティビル管理 「サステナビリティを意識したミニチュア倉庫のデモを作ってみた !」

AWS IoT を活用し、持続可能性のソリューションライブラリの一つである 「Guidance for Smart and Sustainable Buildings on AWS」を参考に、可視化したデータから省エネルギー化の洞察を得て、電力、費用及び温室効果ガス ( GHG ) 排出量の削減を実現するソリューションの実装例のデモを展示致しました。「サステナビリティを意識したミニチュア倉庫のデモを作ってみた !」でもご紹介している、 Amazon の倉庫を模したミニチュアモデルおいて、室温や空気の質をデータに基づいて適切に管理することで省エネルギーにつながる過程をご紹介しました。

AWS 展示:小さく早く始める効率化 – 製造現場の IoT データをパートナーとともに 小さく早く製造 DX を実現

スマート工場の様々なユースケースをミニチュア工場を使って表現したデモが展示されました。 PLC のデータを AWS IoT SiteWise に集約し、構造的にデータを保持することで、他の様々なソリューションが活用しやすくなっています。工場内のオペレータ向けの稼働可視化ダッシュボードだけでなく、Salesforce Field Service やパトライトのネットワーク制御信号灯などの AWS パートナーソリューションを活用したアーキテクチャも紹介されました。また、 4M 変化点情報を生成 AI の元データとして使用することで、生成AI の効果を発揮できる可能性についても提示しました。

AWS 展示:小さく早く始める効率化 – 製造業の課題に挑む AI ソリューション

工場における「外観検査モデル立ち上げ」と「生産設備のリアルタイム監視と障害対応」の2つのユースケースを、生成 AI を用いて効率化するデモを展示しました。このデモでは、外観検査の機械学習モデル作成に必要な学習画像を準備できないという課題を、生成 AI を用いて画像生成することで解決しています。また、チャットに対して設備状態を問い合わせると、リアルタイムな設備の使用状況や設備の仕様やプログラム、障害対応手順に基づいて生成AIを用いたレスポンスを受けることができています。生成 AI を用いることで、生産現場のさらなる効率化の可能性を見ることができました。

東京ガス株式会社

東京ガス株式会社のブースでは、 OT データをクラウドに集約し、最適制御や予知保全などのデータ活用を可能にするソリューションが展示されていました。当社が提供する国内トップシェアの SCADA ソフトである JoywatcherSuite と JoyCloudConnect に、 AWS IoT Core との MQTT 通信機能をプラグインすることで実現しています。 AWS 専用の接続設定があらかじめ準備されているため、短時間で AWS との接続が完了します。プラントデータのクラウド接続方法がわからずに悩んでいるユーザーにとって、有効な選択肢となりそうです。

アイレット株式会社

アイレット株式会社のブースでは、本物の6軸ロボットを使用した生産状況可視化とトラブル分析の効率化を実現するデモが展示されていました。 AWS IoT SiteWise の稼働データと Kinesis Video Streams のカメラ映像を 1 枚のダッシュボードで統合的に表示し、異常が検知された前後の映像を自動で記録することで、後で遡って原因分析を行うことができます。トラブル発生前後の動画とデータを使って原因分析を行うことで、復旧までの時間短縮につながります。トラブルの原因究明に多くの時間をかけているユーザーにとって有効なソリューションとなりそうです。

富士ソフト株式会社

富士ソフト株式会社のブースでは、カメラ映像と IoT データを組み合わせた、クラウド型設備管理ソリューションのデモが展示されていました。現場の3次元画像と IoT データを統合したダッシュボードでAmazon Bedrockにより、自然言語で会話的に設備についての質問ができます。「エラーが一番多い場所に移動したい」、「ナースコールが鳴っている場所に移動したい」、「○○センサーの単位は?」など、日本語による会話で設備の現在の状態について問い合わせたり、見たい場所に移動することができます。まさにデジタルツインを体現したデモとなっていました。また、森田 和明氏による著書、AWSの生成AIサービスを体系的に解説した入門書として Amazon Bedrock 生成AIアプリ開発入門 [AWS深掘りガイド] も出版されています。

スマート工場のための収集・可視化・分析

SCSK株式会社

SCSK 株式会社では、製造現場の可視化・分析のためのソリューション“Duetics(デュエティクス)“を工場を模した模型に接続して展示されていました。AWSでも同じ模型を使ってデモをしていますが、こちらの展示では PLC を国内でシェアの高い三菱電機製に交換したり、クラウド側での大規模な分析ソリューションと接続し、日本のお客様にスマート工場のデータ収集・可視化・分析をすぐにでも導入できるような内容となっていました。

オムロン株式会社: 汎用性の高い技術で構築された IoT 端末可視化

オムロン株式会社のブースでは、 IoT の可視化環境をテンプレート化することにより、様々なお客様にむけた環境構築を効率的に進められるというご紹介をされていました。これによりビル管理や、加工機械等の工場の装置を遠隔監視する仕組みを多数のお客様に提供されています。工場等において、OT ネットワークとの接続が難しい場合にはセルラー回線と組み合わせたり、ビル等の工場以外では、オムロン株式会社独自のセンサーと通信モジュールを組み合わせた最適なソリューションを提供するというセンサーメーカーならではの展示をされていました。

AWS: AIによるプラント保守 – 生成AI・映像・音声と外付けセンサーによるプラント保守支援 

この展示では、プラント管理における技術継承を題材に、プラントを模した流体回路にセンサーを設置して AWS IoT Core で情報収集し、異常を発生させ、機器のエラー番号からのトラブルシュートを生成AIで行うデモを展示しました。 PLC から受け取ったエラーコードをもとに、過去の報告書から Bedrockが「想定される原因」「過去の対応策」「推奨作業事項」を提示しており、シアター形式で行われて大人気を博しました。詳細はこちらのブログからご覧いただけます。

AWS: 小さく早く始める効率化 – Software Defined Factory

システムインテグレータや、企業内の DX 部門は、工場の DX 化のための OT へのアクセスが簡単ではなく、一方で早く完成イメージを提示し活動を推進したいというジレンマを抱えています。この展示では、OT に見立てたクラウド上の仮想ネットワーク ( Amazon VPC ) 上で、機器をシミュレートするプログラムを動かし、AWS CDK を使って OT とクラウドのソリューション構築を自動化することで、OT にアクセスする前に可視化ソリューションを構築するアプローチを提示しました。

まとめ

AWS Summit Japan 2024のインダストリアルIoTのコンテンツは、データの可視化だけでなく、デジタルツインや生産性向上など、IoTが実際の業務に直結する段階に進んでいることが感じられました。また、新しい流れとして、IoT と生成 AI を組み合わせたソリューションのアイデアも多く出展されており、今後のさらなる発展が楽しみです。AWS では、今後も IoT の可能性とビジネスを追求するカスタマの支援を加速していきます!

著者

山本 直志

Industry Specialist Solutions Architect
製造業のワークロードを担当する Specialist SA として、お客様が AWS クラウドを活用し、今までにないソリューションを提供するお手伝いをしています。

新澤 雅治

IoT Specialist Solutions Architect
製造業、 IT ベンダーを経て AWS に 入社。現在は IoT スペシャリストソリューションアーキテクトとして、主に製造業のお客様のIndustrial IoT 関連案件の支援に携わる。