Amazon Web Services ブログ

株式会社 Nint 様の AWS 開発事例「TikTok Shop 対応データ分析 SaaS を 2 か月で開発、運用工数 70% 削減を実現」のご紹介

本ブログは 株式会社 Nint 様Amazon Web Services Japan 合同会社 が共同で執筆いたしました。

みなさん、こんにちは。AWS ソリューションアーキテクトの森です。
デジタル市場の急速な変化に伴い、多くの企業が新しいプラットフォームやサービスへの対応を迫られています。特に SaaS 事業者にとって、市場の変化に迅速に対応しながら、既存システムの運用負荷を抑制することは重要な経営課題となっています。
従来の仮想マシンベースのインフラでは、サーバー管理やスケーリング対応に多くの工数を要し、開発チームが本来注力すべきビジネスロジックの実装に集中することが困難となります。また、新しいサービスの立ち上げの度に、インフラ構築から始める必要があり、市場投入までの時間が長期化してしまうという問題もあります。さらに、既存システムの技術的負債が蓄積し、属人化が進むことで、将来的な拡張性や保守性に不安を抱える企業も少なくありません。
今回ご紹介するのは、EC データ分析サービスを提供する株式会社 Nint 様が、AWS のマネージドサービスを活用したモダンなアーキテクチャを採用し、新しい EC プラットフォーム対応 SaaS を わずか 2 か月で開発、さらに運用工数を 70% 削減した事例です。

Nint 様の状況と課題

株式会社 Nint 様 は、データ分析サービスを提供している企業です。10 年以上前から AWS を活用してサービスを展開してきましたが、当時は現在ほど多様なマネージドサービスは提供されておらず、Amazon EC2 を中心としたインフラ構成で運用していました。そのような中で、近年急成長した EC プラットフォームである TikTok Shop への対応が急務となり、以下のような課題に直面していました:

既存環境の運用負荷

  • Amazon EC2 で構築された既存環境は、追加開発や日々のメンテナンスにおける負荷が高く属人化していた
  • サーバー管理、スケーリング、リソース最適化などの運用作業に多くの工数を要していた

将来性への懸念

  • 将来的に既存環境を刷新する計画もあり、保守性の高いアーキテクチャを採用した新環境での開発を検討していた
  • グローバル展開を見据え、各国への展開が容易なアーキテクチャが求められていた
  • スケーラビリティと保守性を両立できるアーキテクチャが求められていた

これらの課題を解決するため、Nint 様は AWS のマネージドサービスを活用した新しいアーキテクチャでの開発に着手しました。

※ 画面は実際のお客様データではなく、デモ用のサンプルデータを使用しております。

ソリューション

Nint 様は、AWSのマネージドサービスを最大限活用し、以下のようなモダンなアーキテクチャを採用しました:

独立したネットワーク環境の構築

  • 既存環境とは異なる Amazon VPC 上で新サービスを開発
  • 既存環境とは VPC Peering で接続し、連携が可能なアーキテクチャを採用

コンテナ化とマネージドサービスの活用

  • フロントエンドおよびバックエンドの両方を AWS Fargate 上でコンテナ化し運用

Infrastructure as Code(IaC)の実装

  • AWS Cloud Development Kit (CDK)により、インフラのコード化(Infrastructure as Code : IaC)を実現
  • GitHub Actions を活用した CI/CD パイプラインにより、デプロイメントプロセスを自動化

10 通り以上のアーキテクチャパターンを比較検討し、最終的に拡張性と運用効率を両立できる最適な構成を選定しました。また、AWS CDK を活用した IaC 化により開発効率を向上させ、環境の再現性を容易にしました。さらに IDE の支援機能やバージョン管理システムとの連携により、複数の開発者が安心してインフラの変更を行える体制を構築しています。

導入効果

AWSのマネージドサービスを活用した新アーキテクチャの導入により、以下の効果が得られました:

  • AWS のマネージドサービスを活用することで、わずか 2 か月という短期間で新サービスをリリースし、開発チームがインフラ構築ではなくビジネスロジックの実装に集中できる環境を実現
  • サーバー管理やスケーリング、リソース最適化といったメンテナンス作業が不要となり、AWS Fargate の自動スケーリング機能によるトラフィック変動への自動対応により、従来比で運用負荷を70%軽減
  • AWS CDK による IaC 化と GitHub Actions への移行により、環境構築・更新にかかる時間を最大 90%削減し、手離れの良い運用と新機能開発のスピードアップを達成
  • モダンなアーキテクチャの採用と属人化の解消により、将来の機能拡張や他のプラットフォーム対応への基盤を構築し、Amazon Bedrock を活用した生成 AI 機能によりデータ分析サービスに新たな価値を提供

お客様の声

AWS Fargate と AWS CDK の組み合わせにより、従来の EC2 ベースの環境では考えられなかった開発・運用の効率化を実現できました。特に、サーバー管理から解放されたことで、開発チームがプロダクトの価値向上に集中できるようになったことが最大の成果です。また、AWS CDK による IaC 化により、環境の再現性が格段に向上し、複数の開発者が安心してインフラの変更を行えるようになりました。TikTok Shop という新しい市場への迅速な対応が求められる中で、AWS のマネージドサービスの力を借りて短期間でのサービス立ち上げを実現できたことは、ビジネスの競争力向上に大きく貢献しています。

まとめ

本事例は、従来の EC2 ベースの環境から AWS のマネージドサービスを活用したモダンなアーキテクチャへの移行により、開発速度と運用効率を大幅に向上させた優れた事例です。AWS Fargate、AWS CDK などのサービスを組み合わせることで、短期間でのサービス開発と大幅な運用工数削減を同時に実現しました。特に注目すべきは、単なる技術的な改善だけでなく、急速に変化する市場への迅速な対応を可能にし、ビジネスの競争力向上に直接貢献している点です。また、将来的な環境刷新への布石としても機能しており、持続可能な成長基盤の構築に成功しています。コンテナ化や IaC を活用したモダンなアーキテクチャの導入、AWS が提供する様々なマネージドサービスの活用にご興味をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。

株式会社 Nint(左から):
姚 舒威様
河野 康裕様
真鍋 颯一朗様
矢後 志明様
横沢 裕大様
 

Amazon Web Services Japan :
アカウントマネージャー 新井 豪(左端)
ソリューションアーキテクト 森 瞭輔(右端)

ソリューションアーキテクト 森