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リザーブドインスタンスと Savings Plans のグループ共有で AWS コミットメントを管理
リザーブドインスタンスと Savings Plans は、組織内のアカウントに対して優先的に割引を適用することで、最適な割引率を提供するように設計されています。しかし、複数の事業部門にわたって AWS コストを管理する際に、課題に直面することがあります。それは、リザーブドインスタンスと Savings Plans の割引が、必ずしもそれらを購入したチームに適用されないということです。その結果、ROI の追跡、社内の説明責任の維持、およびビジネス構造に合わせた支出の調整のために、手動でのチャージバック作業が必要になります。
本日、リザーブドインスタンスと Savings Plans (RISP) グループ共有の一般提供開始を発表できることを嬉しく思います。この新機能により、組織全体で AWS コミットメントをどのように共有するかをきめ細かく制御することができるようになります。
課題:コスト削減がビジネス構造と一致しない場合
エンタープライズのお客様は、長年この機能を求めてきました。その理由は次のとおりです:マーケティングチームがキャンペーンインフラストラクチャをサポートするために 3 年間のリザーブドインスタンスを購入したとします。しかし、AWS は組織内で最も割引効果が高くなるアカウントへ優先的に割引を適用するため、そのコミットメントは開発チームのワークロードに適用されてしまいます。マーケティングチームは依然としてコミットメントの料金を支払いますが、ステークホルダーに ROI を示すために、割引効果を再配分するチャージバックを実行する必要があります。
組織レベルで最大の割引を受けているにもかかわらず、このアプローチはいくつかの課題を生み出します:
- 社内の説明責任の課題:チームがコミットメント購入の直接的な効果を追跡できない
- 予算配分の複雑さ:助成金による特定の資金を持つ公共部門の組織や教育機関は、承認されたプロジェクト内で割引効果が適用されることを保証する必要がある
- 規制コンプライアンスの問題:多国籍企業は、コストの配分方法に関して地理的または法的な制約に直面する
- 手動の回避策:組織は、事後的にコストを人為的に配分するために、複雑なサードパーティツールや手動プロセスに頼らざるを得ない
RISP グループ共有の紹介:ビジネスに合わせたコミットメント管理
RISP グループ共有は、AWS Organizations 内の特定のアカウントグループ間でリザーブドインスタンスと Savings Plans をどのように共有するかを定義できるようにすることで、これらの課題を解決します。組織全体で割引が最大となるよう最適化する代わりに、実際のビジネス構造を反映したグループを作成できるようになりました。それが事業部門、プロジェクト、地域、または組織にとって意味のあるその他の論理的なグループ分けであっても対応できます。
この機能は、2 つの柔軟な共有オプションを提供します:
優先共有グループ (Prioritized Group Sharing):コミットメントは、定義したグループ内のアカウントに最初に適用され、未使用の容量がある場合は組織の残りのアカウントと共有されます。これにより、意図した受益者へ優先的に割引を適用しながら、全体的な使用率を最大化できます。
制限共有グループ (Restricted Group Sharing):コミットメントは、定義したグループ内でのみ有効となり、厳格な境界が必要なシナリオに対して完全な分離を提供します。
主な利点:より良い管理、より良い説明責任
RISP グループ共有により、いくつかの重要な機能が得られます:
ビジネス構造との整合性:AWS Cost Categories を使用して、組織階層を反映するグループを作成します。各 AWS アカウントは 1 つのグループにのみ所属するため、重複や混乱が排除されます。
強化された社内コスト管理:コミットメントを購入するチームは、それらの投資がまず自分たちのワークロードに直接的に適用されることを保証できるようになり、ROI を示し、予算の説明責任を維持することが容易になります。
規制とコンプライアンスのサポート:コミットメントの割引効果を適切な境界内に保つことで、地理的、法的、または資金調達上の要件を満たします。これは、多国籍企業、政府機関、教育機関にとって重要です。
統合された AWS エクスペリエンス:この機能は、AWS Cost Explorer、AWS Budgets、AWS Cost and Usage Reports など、既存の AWS コスト管理ツールとシームレスに統合されます。グループ共有を有効にする前に、AWS Pricing Calculator を使用して請求への影響を事前に確認することもできます。
実際のユースケース:最も恩恵を受けるのは誰か
この機能は、特に下記のようなタイプの組織にとって非常に有用です:
複数の事業部門を持つ大企業:各部門は、コミットメント購入におけるスケールメリットの恩恵を受けながら、個別の損益計算書を維持できます。
公共部門の組織:政府機関は、特定の予算で購入されたコミットメントが、意図されたプログラムやプロジェクトのみに適用されることを保証できます。
教育機関:大学は、コミットメントの割引効果を特定の研究助成金や学術部門に向けることができ、適切な資金会計を維持できます。
多国籍企業:組織は、地域間でコミットメントを管理しながら、地理的境界と現地の規制を尊重できます。
仕組み:シンプルなセットアップ、強力な管理
RISP グループ共有の開始は簡単です:
- Cost Categories の作成:AWS Billing and Cost Management コンソールを使用して、ビジネスグループを表す Cost Categories を定義します。直感的なインターフェースにより、アカウントを自動的に分類するルールを簡単に設定できます。
- 共有設定の構成:組織のニーズに基づいて、優先共有グループまたは制限共有グループを選択します。
- 影響のプレビュー:統合された AWS Pricing Calculator を使用して、変更を加える前に新しい共有設定が請求にどのように影響するかを見積もります。
- モニタリング:AWS Cost Explorer を通じてグループレベルのコミットメント使用率を追跡します。
この機能は、グループ化メカニズムとして Cost Categories を使用し、現在のアカウントベースのグループ化と将来の非アカウントベースのユースケースの両方に柔軟性を提供します。
開始方法
RISP グループ共有は、すべての AWS Organizations にて AWS Billing and Cost Management コンソール より現在利用可能です。この機能の使用を開始するには:
- AWS Billing and Cost Management コンソールの「請求設定」ページに移動します
- 「リザーブドインスタンスおよび Savings Plans の割引共有設定」セクションを探します
- [編集] をクリックして、ガイド付きセットアップに従って最初のコストカテゴリを作成し、共有設定を構成します
詳細な実装ガイダンスについては、ドキュメントをご覧いただくか、AWS コンソールで直接機能を探索してください。
AWS コミットメントの管理を始める準備はできましたか?今すぐ RISP グループ共有を開始して、コスト削減への投資がビジネス構造と一致するようにしましょう。
翻訳はテクニカルアカウントマネージャーの西村が担当しました。原文はこちらです。