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ディップ株式会社 Exadataから Amazon RDS for Oracleへの移行でコスト56%削減を実現
ディップ株式会社は、求人情報サイト「バイトル」や「はたらこねっと」などの運営や、中小企業の労働力を改善する DX ツール「コボットシリーズ」を提供する DX 事業を展開しています。2013 年から AWS を本格的に導入し、クラウドを活用したビジネス展開を積極的に推進してきた同社は、2024 年に基幹システムのデータベース基盤を、オンプレミス環境の Exadata から RDS for Oracle へと大規模な移行を実施しました。本ブログでは、 Amazon RDS for Oracle への移行プロジェクトの詳細について、お客様の声を紹介いたします。
移行検討の背景と課題
移行したデータベース基盤は、21 テラバイトという大規模なデータ、7,000 を超えるデータベースオブジェクト、約 5 万のユニークな SQL が稼働する複雑なシステムでした。万が一障害が発生した場合、億単位以上の機会損失リスクを抱えるミッションクリティカルなシステムとして、安定性と拡張性の確保が最重要課題となっていました。オンプレミス環境では、ハードウェアの物理的な制約により、急激なリソース需要の増加に対して迅速な対応が困難でした。リソース拡張などインフラの調達に向けたリードタイムや、ハードウェア障害のリスクも常に悩ませていました。さらに、システム停止や、ハードウェア障害などによる、長期間にわたるパフォーマンス劣化やシステム停止などによる対応に多くの工数を費やしており、本来注力すべき業務改善や新機能の開発に十分なリソースを割くことができない状況が続いていました。
移行先の検討では、 AWS 以外にも Oracle Cloud など複数のプラットフォームを比較検討しました。コスト最適化の可能性、システムの拡張性など、総合的な観点から AWS が最適との結論に至りました。データベースエンジンについては、将来的な Aurora PostgreSQL への移行を視野に入れながらも、段階的な移行アプローチを採用しました。まずは、アプリケーション改修コストを抑制し、現行システムの性能特性を維持できる同一エンジン(Amazon RDS for Oracle)への移行を第一ステップとして選択しました。移行性の判断では、 Insight Database Testing による SQL テストを活用し、 Exadata 上で実際に実行されている SQL をキャプチャし、移行先候補であった Aurora PostgreSQL に SQL を実行し、実行可否や実行結果に比較をツールが出力するテストレポートを元に判断されました。
アーキテクチャと移行プロセス
事前検討後、本格的な移行プロジェクトは 2024 年 4 月から 2024 年 9 月にかけて実施されました。
移行プロジェクトは、以下の段階で進められました。
- 2024 年 4 月 – 6 月 : 設計・製造・単体・結合試験を実施
- 2024 年 7 月 – 8月 : 総合・性能・負荷試験を実施
- 2024 年 8 月下旬 – 9 月上旬 : 移行リハーサルを実施
- 2024 年 9 月中旬 : 本番移行を完了
データベース移行における品質確保のため、様々な施策を段階的に実施しました。
移行をする上で発生した一つ目の課題として、文字コード変更の影響がありました。 RDS に移行する上で EUC から UTF-8 への文字コード変更が必要になり、マルチバイト文字に必要な文字数が 2 バイトから 3 バイトまたは 4 バイトに増加したため、すべてのマルチバイトを含む列のサイズを拡張データ型を活用し 2 倍に変更しました。
また、単体試験では 本番ワークロードをテストツールにより再現し、事前の性能検証とチューニングを実施することで、移行後に性能問題が発生するリスクを事前に軽減しました。
移行方式では、 AWS Database Migration Service (DMS) を用いて、フルロードと Change Data Capture (CDC) によるレプリケーションにより、本番システム切り替え時のダウンタイムの削減を目指しました。 DMS の事前検証の中で、拡張データ型利用時の固有の制限や、主キーのないテーブルをレプリケーションする方法など、いくつかの技術的課題に直面しましたが、 Oracle トリガーの活用や一時的な主キー付与などの対策により解決しました。また、データ件数が数億レコードと多くフルロードの時間がかかるテーブルでは、条件句 (WHERE) により取得対象を絞り、並列実行することでチューニングを行いました。
また、 DMS によるレプリケーションをより確実なものとするため、移行リハーサル前の 6 月から 8 月までの 3 ヶ月間で、特定タイミングでのみ発生する処理や複数の条件の組み合わせなど様々なパターンを網羅するために、複数回の長期間レプリケーションテストを実施しました。
プロジェクト体制として、 PM 、インフラ担当、 DBA 、アプリケーション開発者含め約 60 人の体制で、パートナー企業 (株式会社SP) との協力体制のもと、データ移行の検証から本番移行まで、プロジェクト全体の円滑な遂行を実現しました。 AWS からの支援体制として、アカウントチームによるアーキテクチャ全体の設計方針策定支援だけでなく、Customer Solutions Manager(CSM) による、PMO としての PM 支援や、移行やモダナイゼーション、データベースのように各専門領域に特化した各スペシャリスト SA による支援体制もありました。
移行リハーサルで検出された課題については、必要箇所の再テストを通じて本番移行時のリスクを最小化を行いました。その結果、本番移行は大きな問題なく完了することができました。さらに、移行後は一週間および一ヶ月の集中監視期間を設け、システムの安定稼働の確保に努めました。
Amazon RDS for Oracle への移行の効果
移行後、最も顕著な効果として現れたのは、データセンター費用と Exadata 関連コストの約 56 %削減という効果を見込めている点です。この効果達成の一因として、開発環境においては、 Oracle のマルチテナント構成を活用することでライセンスコストを最適化し、より効率的な開発環境を実現しました。それ以外の効果としては、システム運用の質的な改善です。ハードウェア障害に対応することがなくなったため、運用担当者は従来のインフラ保守から解放され、より付加価値の高い業務に注力できるようになりました。また、リソースの柔軟な拡張が可能になったことで、ビジネスの急速な成長にも迅速に対応できる体制が整ったこともメリットの一つと感じています。 AWS メインでのアーキテクチャーとなった為、 AWS に興味を持っているエンジニアが多く、モチベーションが向上している点も更なる効果となっています。
今後に向けて
ディップ株式会社では、今回の移行を変革の第一歩と位置づけ、さらなる進化に向けたロードマップを策定中です。
中長期的な取り組みとして、現在のモノリシックなデータベース構造を、より俊敏で柔軟な分散システムアーキテクチャへと進化させることを計画しています。また、 EC2 で運用している環境についても、 AWS ECS などのマネージドサービスへの段階的な移行を通じて、運用効率の最適化とビジネスアジリティの向上を目指します。
さらに、最新テクノロジーにも積極的に着目しており、 Amazon Aurora Limitless Database や Amazon Bedrock など、最新の AWS サービスの活用検討を進めています。これらの戦略的な取り組みを通じて、ビジネスのさらなる加速とビジネス競争力の強化を推進していきます。
まとめ
ディップ株式会社は、 Exadata から Amazon RDS for Oracle への移行により、コストを 56% 削減するとともに、システムの拡張性と運用効率を大幅に向上させました。中長期的な視点に基づく綿密な計画と段階的なアプローチにより、安全かつ確実な移行を実現。運用負荷の軽減により、技術者は本来注力すべき業務改善や新技術検討に取り組める環境が整い、 Aurora PostgreSQL への移行など、さらなる進化を実現する基盤が確立されました。