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【Edtech Meetup】教育×AI ~生成系 AI によって教育はどう変わるのか~【開催報告】

アマゾン ウェブ サービス ジャパン(以下、AWS)は 2023 年 6 月 28 日に、「【Edtech Meetup】教育×AI ~生成系 AI によって教育はどう変わるのか~」を AWS Startup Loft Tokyo にて開催しました。

近年、生成系 AI(Generative AI)が世界を席巻しています。このイベントでは、Edtech 業界における人工知能(AI)や機械学習(ML)のプロフェッショナルをお招きし、生成系 AI が教育に与える影響について、技術的な話題も織り交ぜながらパネルディスカッションを行いました。ここではそのレポートをお届けします。

オープニング

イベント冒頭では、AWS 執行役員 パブリックセクター統括本部長の宇佐見 潮が、オープニングのあいさつをしました。近年、生成系 AI に関するニュースが毎日のようにメディアに流れています。「この技術は、教育の世界にもかなりの影響を与えると、私たちは確信しています」と宇佐見は提言しました。

AWS 執行役員 パブリックセクター統括本部長 宇佐見 潮

今回のイベントは、教育業界で活躍されているスタートアップ企業の方々や、教育業界に造詣の深い方々にお集まりいただき、「生成系 AI が教育に及ぼす影響や課題、ビジネスチャンス」などについて議論することを目的としています。さらに、イベント終盤では AWS の生成系 AI に関するサービスや今後開催する催しについてもご説明します。

「この機会に、みなさまのビジネスでどのように生成系 AI を活用していくのか、そして生成系 AI とはそもそも何なのかの理解を深めていただければ幸いです。ぜひ、この時間を楽しんでください」と宇佐見は語りました。

パネルディスカッション「生成系 AI によって教育はどう変わるのか」

続いては、生成系 AI や教育業界の有識者が登壇してのパネルディスカッションです。まずはパネリスト各社が自社の事業紹介を行った後に、「生成系 AI によって教育はどう変わるのか」というテーマに基づき、議論をしました。

<モデレーター>

日本CTO協会理事 広木 大地 氏

<スピーカー>

atama plus株式会社 アルゴリズム開発責任者 安本 雅啓 氏

ライフイズテック株式会社 執行役員 CTO 奥苑 佑治 氏

株式会社レアジョブテクノロジーズ 執行役員 CTO 羽田 健太郎 氏

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 パブリックセクター技術統括本部 統括本部長/プリンシパルソリューションアーキテクト 瀧澤 与一

1. 直近の生成系 AI の発展について

パネルディスカッションの最初のテーマは「直近の生成系 AI の発展について」です。近年、テキストや画像、音声など多種多様なコンテンツを生成する AI が活用されるようになっており、ビジネスシーンでもその導入が試されています。

安本 氏はこの傾向について触れ「生成系 AI は決して突然出てきたものではありません。過去にも類似の技術は存在しましたが、多くの方々が利用するまでには至っていませんでした。しかし、最近になって AI の精度が向上してできることが増えてきたため、AI・機械学習エンジニアではない方々も利用するようになり、利用者が爆発的に増加しています」と述べました。

atama plus株式会社 アルゴリズム開発責任者 安本 雅啓 氏

多くの企業や人々が、生成系 AI を用いて何らかの新しいビジネスやサービスを生み出せないかと模索しています。それは、教育業界も例外ではありません。

羽田 氏は「教育業界において、これほど多くの企業が特定技術を活用して新しいサービスを生み出そうとしている状況は、過去に類を見なかったと思います」と言及。「新しいものが生まれるワクワク感と、自分たちも乗り遅れてはならないという焦燥感の、両方を感じています」と現在の心境を述べました。

新しい技術が登場すると、これまで実現できなかった斬新なビジネスが生まれ、過去に常識とされていたことがそうではなくなります。それに伴い「これまで習得してきた固定概念をアンラーンし、次の時代の価値観をイチから身につけていくことが重要である」という旨の議論が行われました。

株式会社レアジョブテクノロジーズ 執行役員 CTO 羽田 健太郎 氏

2. 教育事業で生成系 AI をどう使うか。そのときの課題は?

次は「教育事業で生成系 AI をどう使うか。そのときの課題は?」というテーマについて討論。羽田 氏は「(レアジョブテクノロジーズが事業で提供する)英会話の授業に、生成系  AI を組み込み始めてから数カ月が経ちました。質問に対して、生徒の求めるような回答を導き出すには、プロンプトの設計をかなり入念にしなければなりません」と、生成系 AI を実務で活用するうえでの課題について言及します。

生成系 AI は必ずしも正確な情報を出力するわけではありません。ときには、存在しない企業や人物、誤った情報などを回答として生成するケースもあります。また、暴力的な表現や差別的な表現など、望ましくないコンテンツが出力されるケースも存在します。「正確な情報であることや、不適切な情報ではないことを、いかにして保証するか」が、生成系 AI を利用する際のキーになってくるのです。

広木 氏は「ユーザーのフィードバックを得つつプロダクトを開発していく。そして、生成系 AI の出力内容を把握してより良い結果になるように改善していく。その両方のサイクルを回すことが、今の時代のサービス提供者には求められている」と述べます。

日本CTO協会理事 広木 大地 氏

課題がある一方で、生成系 AI にはもちろんポジティブな側面も数多く存在します。奥苑 氏は「もし仮に、絵が下手だけれどもビジュアルに関する想像力が優れている人がいたとして、旧来の技術ではその人の才能を発揮させることができませんでした。しかし、生成系 AI の力によって、アウトプットの作業を機械に任せることができるようになり、そうした人たちが才能を開花できる可能性が生まれています。AI 時代に合わせた制度や考え方、倫理観を整備していくことで、次の時代の新しい教育のあり方を生み出せるように思います」と解説しました。

また、安本 氏は「生徒一人ひとりに個別最適化された学びを提供するうえで、生成系 AI を役立てられる可能性がある。たとえば、生徒の学習レベルや志向に合わせて別々の問題を生成することで、学習を効率化できます」とも語りました。

ライフイズテック株式会社 執行役員 CTO 奥苑 佑治 氏

3. 教育の未来

最後のテーマは「教育の未来」です。生成系 AI をはじめとした各種の技術が発展することで、もともと人間が担っていた各種の業務を、システムが代替するケースが生まれます。それに伴い、教育に携わる人たちは「人間が担うべきこと」と「AI が担うべきこと」の線引きを考えていく必要があります。

さらに、教育の現場において「どう学ぶか」や「何を学ぶか」も、テクノロジーの発展に伴い、変化させていく必要があります。「どう学ぶか」は、前述のような学習内容の個別最適化が関係します。個々人の適性や志向に合わせて、より効果的な学習方法を提案するといったことを実現できる可能性があるのです。また、「何を学ぶか」については、たとえテクノロジーがどれだけ進歩しても、英数国理社などの“基礎学力”の重要性は変わらないことなどがセッション内で言及されました。

AWS パブリックセクター技術統括本部 統括本部長/プリンシパルソリューションアーキテクト 瀧澤 与一

瀧澤はこうした議論のなかで「テクノロジーを活用して、教育系サービスのエンドユーザーである子どもたちや社会人で自己研鑽に励む方々が、何を望んでいるのか。あるいは特定の人が何かのスキルを習得した後に、どのような経験を得てどういった人になったのかというライフサイクルを追えるようになれば、より効果的な“学び”を提供できるようになる」とも触れました。

セッション終了後は、会場の視聴者から質問を募り、パネリストたちが回答。教育の現場で、さまざまな課題に直面する方々からの、忌憚ない質問が寄せられます。パネリストたちはみな一様に興味深そうな表情で、自身の考えを述べていきました。

AWS の生成系 AI 〜イノベーションの加速によるお客さま体験とアプリケーションの再発明〜

続いて AWS パブリックセクター技術統括本部 シニアソリューションアーキテクトの松井 佑馬が、生成系 AI を活用するうえでのインフラ環境として AWS が優れている理由と、AWS の提供する生成系 AI 関連のサービスについてお話ししました。

AWS パブリックセクター技術統括本部 シニアソリューションアーキテクト 松井 佑馬

AWS が優れている点としては大きく分けて「AWS と Amazon の 20 年以上にわたる AI・機械学習活用の経験値がある」「基盤モデルとお客さまの実務をつなぐ、安全で使いやすい環境である」「機械学習のために用意された、コストパフォーマンスが最良のインフラがある」「生成系 AI に関するサービスが継続的に増えている」点などが挙げられます。

たとえば、機械学習のために用意されたインフラとして生成系 AI のための特化型アクセラレーターが挙げられます。ディープラーニングモデルの推論処理を最も安価に実現する AWS Inferentia や大規模モデル・拡散モデルのトレーニングを高いコスト効率・高性能で実行する AWS Trainium、大規模言語モデルや拡散モデルの推論を高性能・低コストで実行する AWS Inferentia2 などがそのラインナップです。

また、AWS には主要な AI スタートアップや Amazon の基盤モデル(FM)を API 経由で利用可能にするフルマネージド型サービス Amazon Bedrock* が存在しています。

*…Amazon Bedrock は本セミナーが実施された 2023 年 6 月 28 日時点では Limited Preview です。

Amazon Bedrock はAmazon製の基盤モデルであるAmazon Titan 系列の Titan Text と Titan Embeddings。そして、AI21 Labs 社の Jurassic-2 や Anthropic 社の Claude、Stability AI 社の Stable Diffusion など、幅広い基盤モデルをサポートしています。

他にも松井は、生成系 AI のサービスを利用するための方法として Amazon SageMaker JumpStart を紹介しました。これは Amazon SageMaker Studio の機能のひとつであり、サンプルノートブックやトレーニング済みの基盤モデルを検索して利用できます。それに加えて、特定のユースケースに合わせて事前に構築された Solution と呼ばれるアーキテクチャをデプロイすることも可能です。

セッションの終盤では、サービスに生成系 AI を組み込んでいる企業の事例紹介や、AWS 環境上で生成系 AI の基盤モデルを動かすデモンストレーションを行いました。

●企業の事例紹介ブログ:

https://aws.amazon.com/jp/blogs/news/canva-scale-stable-diffusion-image-generation-with-safety-by-amazon-sagemaker-and-amazon-rekognition/

クロージング

イベント最終盤には、AWS パブリックセクター 教育事業本部 本部長の岡谷 重雄が、クロージングのあいさつをしました。岡谷はかつて、科学技術・学術政策研究所で総務研究官を務めていました。そのキャリアを踏まえ「新しい科学技術が登場するときには必ず、賛成する人と反対する人がいる」と解説します。

AWS パブリックセクター 教育事業本部 本部長 岡谷 重雄

「2:6:2の法則」と呼ばれるものがあります。これは、自分自身が何の行動をしても、世の中の 2 割の人は必ず自分を嫌い、6 割の人はどちらでもなく、2 割の人は自分を好きになってくれるという法則です。

岡谷は「会場のみなさんはまさに、教育の現場でこの 2 割、6 割、2 割の人たちと対峙されているはずです。どうやってこの 6 割の人たちを納得させるのかが、生成系 AI を教育の世界に浸透させていくキーになります。私たち AWS も、みなさまと一緒にその 6 割の方々を味方につけて、社会を変えたいと思っています。共に頑張りましょう」と力強く結びました。

AWS パブリックセクターは今後も、研究開発スタートアップがイノベーションを加速させるための、さまざまなテクニカル・ビジネスセッションやコミュニティ活動を実施予定です。ご関心を持たれた方は、ぜひお気軽にこちらまでお問い合わせください。社会課題解決イノベーションに取り組まれる、スタートアップや研究者のみなさまのご参加をお待ちしております!

ウェビナーとイベントのご案内

教育と研究の DX フォーラム

主催:株式会社教育新聞社 教育新聞ブランドスタジオ

特別協賛:アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社

後援:株式会社科学新聞社

■東京会場 8月24日 (木) 10時30分~17時 @TKP新橋カンファレンスセンター

・小・中・高校 (K12) トラック 基調講演 放送大学客員教授 佐藤幸江氏、パネルディスカッション、他

・大学・研究トラック 基調講演 理化学研究所計算科学研究センター センター長 松岡 聡氏、他

■大阪会場 8月28日 (月) 10時30分~17時 @大阪公立大学 中百舌鳥キャンパス

・小・中・高校 (K12) トラック 基調講演 園田学園女子大学 人間健康学部 教授 堀田 博史氏、国立鳴門教育大学 大学院 遠隔教育プログラム推進室長・教授 藤村 裕一氏、パネルディスカッション、他

・大学・研究トラック 基調講演 大阪大学 基礎工学研究科 教授 藤井 啓祐氏、他

●詳細・申込:https://www.kyobun.co.jp/event2023_edudx_summer/

このブログは、アマゾンウェブサービスジャパン合同会社 パブリックセクター 事業開発マネージャー( Startup )である田村 圭が執筆しました。