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金融リファレンスアーキテクチャ日本版 v2 リリース
「金融リファレンスアーキテクチャ日本版」は、2022 年 10 月に v1.0 を公開して以来、多くの金融機関のお客様 や パートナー様 にご利用いただいてきました。勘定系や顧客チャネル、データ分析基盤といった金融サービスのワークロードについて、AWS 上で FISC 安全対策基準を踏まえたシステム設計を検討する際のガイドやサンプルを提供しています。
今回、その内容を刷新した v2 を GitHub 上で リリースしました。v2 では、コンテンツをエンジニアが読むためだけのものから、エンジニアと AI エージェントが同じように読んで使えるものへと作り直しています。
金融リファレンスアーキテクチャ日本版 の 概要
「金融リファレンスアーキテクチャ日本版」は、金融システムの「高い信頼性が必要なミッションクリティカル領域」の維持と強化につなげていただくためのアセットです。セキュリティとガバナンスの確保、レジリエンスの強化、モダナイゼーションの加速、コンプライアンスへの対応といった、日本の金融機関のエンジニアが向き合う作業を支援するコンテンツで構成されています。
金融リファレンスアーキテクチャ日本版 v2 での進化
金融リファレンスアーキテクチャ日本版 v2 は AIエージェントフレンドリーなコンテンツ提供形態へと刷新し、そのナレッジを Agent Skills (エージェントスキル) の形式で提供します。エンジニアの皆様 に加えて、皆様が利用する AI エージェント や 生成AIツールからも扱えるナレッジへと進化しました。
v2 での主な変更点は次のとおりです。
- Agent Skills を中核に据えた提供形態への刷新
- 31 のスキルをカテゴリ別に収録
- サイバーレジリエンスと FSI Lens for FISC のスキルを追加
- Webアプリケーションツール「GameDay Plan Generator 」の公開
Agent Skills を中核とした提供形態への刷新
v2 で最も大きく変わったのは、ナレッジの提供形態です。金融システムに求められるセキュリティ、可用性、コンプライアンスの知見を、Agent Skills というオープン標準のフォーマットを利用して提供しています。Agent Skills は、生成 AI を用いた開発ツールが解釈できる形式で手順や設計方針を記述する仕様です。同じコンテンツを、設計を検討するエンジニアが読むだけでなく、そのエンジニアが日々使う AI エージェントにも渡して利用できます。
この形式を選んだ背景には、金融 IT の開発現場で AI エージェントや生成 AI ツールの利用が広がってきたことがあります。v2 では、想定する利用者に、金融 IT のエンジニアやアーキテクトに加えて、それらの担当者が利用する AI エージェントや生成AIツールを据えました。設計原則やベストプラクティスを人が読んで理解するだけでなく、設計や開発を支えるAIエージェントにも同じ知識を渡すことで、人と AI の双方の能力を広げることを目的としています。
これにより、構成の検討や設計レビューの場で、AI エージェントが FISC 安全対策基準やリファレンスアーキテクチャを踏まえた回答を返せるようになり、検討の出発点を素早く用意できます。
31のスキルをカテゴリ別に収録
v2 では、v1 で扱ってきたワークロードに加えて、AWS を利用する金融 IT エンジニアの日々の作業を支援するナレッジを含め、現時点で 31 のスキルを収録しています。金融のビジネスワークロードから、それらを支える共通基盤、生成 AI、セキュリティ、情報収集の支援までを一つのカタログにまとめています。主なカテゴリと代表的なスキルは次のとおりです。
| コンテンツカテゴリ | 主な Agent Skills |
|---|---|
| 金融ワークロード | 勘定系(Banking Core)、モバイルバンキング、コンタクトセンター、Capital Marketのオーダー管理、マーケットデータ配信、保険データ分析、クレジットカードイシュア |
| 共通基盤 | ガバナンスベース、ハイブリッドクラウド(AWS Outposts)、メインフレーム連携、金融オープン API(FAPI)、データレイク |
| 生成 AI | 生成 AI プラットフォーム、生成 AI ユースケース |
| セキュリティとレジリエンス | サイバーレジリエンス、ランサムウェア対策、FISC 安全対策基準からのAWS Security Agent セキュリティ要件定義生成、AWS Payment Cryptography 導入ガイド、AWS 操作のセキュリティガード |
| Well-Architectedフレームワーク | FSI Lens for FISC |
| 情報収集の支援 | AWS 新機能やブログ、セキュリティ情報の取得、日本銀行の統計、金融庁の公表情報、国内のセキュリティ注意喚起の取得 |
| 業務支援と汎用ツール | お客様固有のコンテキスト管理、Working Backwards によるプロダクト企画、MCP ツールの呼び出し、スキル定義ファイル (SKILL.md) のドキュメントファイル化 |
全 31 スキルの一覧は、リポジトリの スキル一覧 で確認できます。
v2 で新たに加えたコンテンツ
サイバーレジリエンスとランサムウェア対策の スキル
近年のサイバーレジリエンスとランサムウェア対策への関心とニーズの高まりを受けて、レジリエンスのスキルを充実させました。サイバーレジリエンスのスキルでは、論理的に隔離したバックアップやアカウントをまたいだ復旧、ネットワークの自動隔離といったアプローチを扱います。ランサムウェア対策のスキルは、保護、検知、対応、復旧、そして組織としての対応という 5 つのフェーズで整理し、それぞれをサブスキルに分けて提供します。インシデントのどの段階を検討しているかに応じて、必要なスキルだけを AI エージェントに読み込ませられます。
FSI Lens for FISC のスキル
FSI Lens for FISC は、AWS Well-Architected Framework を金融向けに拡張し、FISC 安全対策基準に沿って設計を点検するための評価軸 (レンズ) です。運用上の優秀性、セキュリティ、信頼性の 3 本の柱で構成し、各ベストプラクティスには FISC の実務基準の番号を対応づけています。v2 では 2025 年 3 月に公開された第 13 版を元にスキルとして提供し、AIエージェントに渡してレビューに活用することができます。今後、2026 年 3 月に公開された第 14 版をもとにした更新も予定しています。
Webアプリケーションツール GameDay Plan Generator
金融リファレンスアーキテクチャ日本版 v2 は、「Agent Skillsを中心としたAIエージェントフレンドリーなナレッジを提供する」とお伝えしましたが、コンテンツはそれだけにとどまりません。v2 を構成するコンテンツの1つとして、障害対応訓練の計画立案を支援する「GameDay Plan Generator」を公開しました。レジリエンスは設計しただけでは十分とは言えず、それを試す訓練があってこそ確かなものになります。このツールは、その訓練の準備にかかる手間を軽減することを狙ったものです。
使い方はシンプルで、AWS CloudFormation テンプレート または 構成図 を渡すだけで、次のものをまとめて生成します。
- 障害シナリオの一覧と、シナリオごとに「なぜそれを試すのか」という理由
- AWS Fault Injection Service の実験テンプレート
- 訓練中に監視すべき観測ポイントの定義
- 検知、復旧、影響把握、コミュニケーションの 4 つの軸からなる評価基準
- シナリオ一覧やタイムラインを載せた HTML のダッシュボード
生成した結果はダッシュボード上で確認でき、対話しながらシナリオを調整できます。本ツールの特徴は、Amazon Bedrock を使って、ルール定義だけではカバーが困難な連鎖的な障害や単一障害点を分析し、シナリオを補強する点です。Bedrock を利用できない環境では、ルールベースの生成に切り替えて動作します。訓練計画の初版を短時間で用意できるため、設計から訓練までを一続きの流れとして支える道具として活用いただけます。
まとめ
v2 のコンテンツ種類 と GitHub リポジトリ
v2 は現時点で、以下の種類のコンテンツを提供しています:
- 金融ワークロードにおける設計上のポイントやリファレンスアーキテクチャを記述した、ガイダンスとしてのAgent Skills
- AWSを利用する金融ITエンジニアの日々の作業を支援する、ツールとしてのAgent Skills
- 特定の用途における金融ITエンジニアを支援する、Webアプリケーション
また、v2からは、v1と異なり、複数のリポジトリで そのコンテンツを提供する形になりました。
- GitHub リポジトリ:aws-samples/sample-fsi-reference-architecture-jp
- Agent Skills を提供します。リポジトリをクローンすれば、収録したスキルをそのまま参照でき、対応する開発ツールから AI エージェントに読み込ませることもできます。あわせて、v2のコンテンツ全体を紹介するポータルとしての役割も持ちます。
- GitHub リポジトリ:aws-samples/sample-fsi-reference-architecture-jp-gameday-plan-generator
- Webアプリケーションツール「GameDay Plan Generator」を提供します。このように、コンテンツによっては個別のリポジトリで公開します。
いずれのコンテンツも v1 と同様に MIT-0 (MIT No Attribution) ライセンスのもとで公開しており、エージェントスキルの多くは日本語と英語の両方で用意しています。なお、収録しているサンプルコードは設計や動作を検証するためのもので、本番環境でそのまま利用することは想定していません。
おわりに
金融リファレンスアーキテクチャ日本版 v2 は、今後も継続的な拡充を予定しています。まずはリポジトリをクローンし、お手元の AI エージェントに関心のあるスキルを読み込ませてみてください。ぜひ、ご質問やフィードバックをGitHub の Issue などでお寄せください。
本ブログ記事は、AWS のソリューションアーキテクト 松原武司 が執筆しました。

