Amazon Web Services ブログ
株式会社情報戦略テクノロジー様の AWS 生成 AI 活用事例 : Amazon Bedrock を活用し社員一人ひとりに寄り添いともに成長するAIエージェント秘書「パイオにゃん」 を開発。情報探索業務を83%改善、社員の成長の可視化を実現。
本ブログは株式会社情報戦略テクノロジー様とAmazon Web Services Japan 合同会社が共同で執筆いたしました。
みなさん、こんにちは。AWS アカウントマネージャーの中道です。
社内の重要な情報が複数のツールに分散し、必要な情報を見つけ出すのに思わぬ時間を費やしていませんか?また、組織の成長に伴い、社員一人ひとりの成長やスキルアップを適切に把握・支援することが難しいと感じることは、多くのお客様の共通課題だと感じています。
伴走型戦略DXファームの株式会社情報戦略テクノロジー様は、社員一人ひとりに寄り添い、共に成長することをコンセプトとしたパーソナルAIエージェント秘書サービス「パイオにゃん」を開発されました。本記事では、AI Agent を活用した、情報探索の効率化や社員の成長の可視化に向けた取り組みについてご紹介します。
お客様の状況と経緯
株式会社情報戦略テクノロジー様は、事業拡大に伴い以下の課題に直面されていました。
・情報探索の非効率性:社内の情報が複数のツールに分散し、必要な情報の検索に多大な時間を要している。
・社員数増加と個別対応の限界:コミュニケーションが希薄化し、一人ひとりの状況や課題の把握が難しい。
・成長の可視化:個人のスキルや経験の成長を客観的に評価することが難しく、効果的な育成計画の立案が難しい。
これらの課題に対して、AI Agent を活用し効率的な情報探索、社員一人ひとりへのきめ細やかな支援、個人の成長の可視化を目指しました。
ソリューション / 構成内容
「パイオにゃん」は、Slack、Googleドライブ、GitHubといった社内の多様な情報源と連携し、過去のやり取りや文脈を深く理解することで、各個人に最適化されたアドバイスや情報を提供します。利用者のスキル向上と連動してAI自身もレベルアップし、アバターが視覚的に成長していく「AI成長システム」です。これにより、社員はゲーム感覚で自身の成長を実感でき、学習意欲の向上を促します。
「パイオにゃん」の成長度合いや、社員のAIリテラシーレベルが一目でわかる専用のダッシュボードを提供します。猫のアバターが子猫から成猫へと成長していく様子を視覚的に確認でき、AIリテラシーレベルに応じた機能のアンロックや高度なアドバイスが提供されゲーム感覚でAI活用を促進し利用者のモチベーションを維持しながら、継続的なスキルアップを促します。画面は全てレスポンシブデザインで、PC・タブレット・スマートフォンなどデバイスを選ばず操作可能としました。
情報の探索部分はAmazon Bedrock のKnowledge Bases 機能を採用し、RAG (Retrieval Augmented Generation) によって膨大な情報をあいまい検索できる機能を実現しています。さらにKnowledge Bases のメタデータフィルタリングの機能により、ユーザーごとの権限によって検索対象となる情報を制限する機能を構築しました。
パーソナルアドバイスについては、業務内容、行動パターン、参照履歴などのユーザーひとりひとりの固有情報を用いて、検索処理や応答を最適化することで、個人個人へと最適化したRAG へ進化する仕組みを導入しています。
また、成長システムについては、Strands Agents SDK を利用して構築した AI エージェントが「組織独自のコンピテンシー定義」「ユーザーごとの会話履歴などの短期記憶、長期記憶」といったデータを元に、ユーザーの成長レーダーチャートを生成します。
導入効果
「パイオにゃん」の導入により、年間24,000 時間かかっていた情報探索の時間を 4,000時間まで 約83%削減できることが期待されており、社員は本来集中すべき業務に時間を費やすことができるようになります。※
また、社員一人ひとりの業務状況や課題、学習進捗を理解し、個別最適化されたサポートを提供することで社員のエンゲージメントが向上し、自身のスキルや経験の成長が客観的な指標やアバターの進化として可視化されることで、組織全体の生産性を最大化、継続的なモチベーション維持と自立的な学習を促進します。
(※フェルミ推定条件 : 対象人数400人、年間稼働日数240日、情報探索の頻度を1日5回とした場合。導入前の情報探索時間3分/回、導入後の情報探索時間30秒/回にて試算。)
今後の展望
株式会社情報戦略テクノロジー様は、2025年のパイオにゃんβ版リリースを皮切りに、段階的な機能拡張を計画されています。社内のフィードバックを元に機能改善を行い、各ツールの連携を拡大していく予定です。中長期的には、音声入力や出力機能、API 公開による外部サービス連携を視野にいれており、社員間のAI エージェントの貸し借りを可能にすることで、異なる思考や情報収集を疑似体験できる新たな価値提供を実現することを目指されています。
「『パイオにゃん』開発の核は、いかにして『一人ひとりに寄り添うAI』を実現するかでした。Amazon Bedrock の Knowledge Bases は、RAGによる高精度な検索とメタデータフィルタリングによる厳密な権限管理を驚くほど迅速に実現してくれました。技術的な挑戦であったアバターの成長システムも、今では社員のモチベーションを支える重要な要素です。アイデアを迅速に形にできたのは、AWSの豊富なサービス群と手厚いサポートがあったからこそ。生成AIの可能性を最大限引き出せるプラットフォームとして、Amazon Bedrock は最高の選択でした。」
株式会社情報戦略テクノロジー AI Officer 藤本 雅俊 氏
本取り組みは、アマゾンウェブサービスジャパン合同会社 広域事業統括本部主催の生成AI コンテストにてアイデアの革新性、ビジネスへの貢献度が高く評価され、23社の取り組みの中で「Scalable Innovation Award」を獲得されました。
Amazon Web Services Japan
アカウントマネージャー 中道 野々香
ソリューションアーキテクト 小林 大樹