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マルチソースカスタム請求ビューの紹介:AWS 上の複数組織にわたる統合コスト管理
本日、AWS Billing and Cost Management において、複数の組織からのコストと使用状況データを含むカスタム請求ビューを作成する新機能を発表しました。これにより、組織外の AWS アカウントとカスタム請求ビューを共有できるほか、複数のカスタム請求ビューを組み合わせて統合されたマルチソースビューを作成することも可能になりました。この機能を使用して、単一の AWS アカウントから AWS Cost Explorer および AWS Budgets を通じて、複数の組織にわたるコスト管理データにアクセスできるようになります。
マルチソースカスタム請求ビューを使用する理由
お客様のビジネスは、AWS 上の複数の組織 (管理アカウント) にまたがる場合があります。従来は、これらの各組織のコスト管理データに個別にアクセスすることしかできませんでした。マルチソースカスタム請求ビューを使用することで、複数の組織のコスト管理データを含む統合ビューを作成できるようになりました。これらのビューには、AWS Cost Explorer および AWS Budgets からアクセス可能で、組織をまたいで AWS のコストと使用状況を可視化、把握、管理できるとともに、予算設定による計画やコスト管理の改善が可能になります。
子会社、買収した企業、または独立した組織として運営されている事業部門を管理している場合でも、マルチソースカスタム請求ビューにより、AWS の請求やアカウント構造を統合することなく、必要な財務の可視性が一元的に提供されます。
前提条件
マルチソースカスタム請求ビューを使用する前に、以下の準備が必要です:
- 各組織で AWS Cost Explorer を有効にする
- AWS コスト管理のきめ細かなアクセス制御へ移行する
- 各組織の管理アカウントからカスタム請求ビューを作成する権限を持っていること
- AWS Resource Access Manager (RAM) を使用してアカウント間で請求ビューを共有する権限を持っていること
必要な権限の詳細については、「AWS コスト管理にアイデンティティベースのポリシー (IAM ポリシー) を使用する」を参照してください。
単一アカウントから複数の組織にまたがるコスト管理データへアクセスする
あなたの会社が、AWS を利用している別の会社を買収したとします。あなたの会社は AnyCompany A という組織を管理しており、買収した会社は AnyCompany B という組織を管理しています。FinOps 管理者として、単一のアカウントから両方の組織全体のコスト管理データへアクセスできるようにしたいと考えています。これを実現するために、以下の手順でマルチソースカスタム請求ビューを作成することができます。
ステップ 1:AnyCompany B の組織からカスタム請求ビューを作成する
まず、AnyCompany B の組織に対応するすべてのコストと使用状況データを含む新しいカスタム請求ビューを作成します。AnyCompany B の組織の管理アカウントから、Billing and Cost Management コンソールに移動し、「コスト管理の設定」ページ内にある「Billing View (請求ビュー)」を選択します。新しいカスタム請求ビューを作成し、「コスト管理データを次の条件でフィルタリング」の項目で「フィルターなし (すべてのデータ)」を選択します。このカスタム請求ビューには、割引、クレジット、返金を含む組織全体のコストと使用状況データが含まれます。
ステップ 2:カスタム請求ビューを AnyCompany A の組織の管理アカウントと共有する
ビューを作成したら、AnyCompany A の組織の管理アカウントに共有します。ビューを共有するには、ビューの作成後に「共有」タブにアクセスし [共有] を選択します。共有ページから、「任意のアカウントと共有」を選択します。管理権限として、AWSRAMPermissionBillingViewFullAccess を選択します。これにより、受信者は当該ビューを他のビューのソースとして使用するための権限を得ます。これを利用して、複数の組織のコストと使用状況データを統合することができます。アカウントID 111122223333 (AnyCompany A の組織の管理アカウント) を入力し、 [共有] を選択します。これで、作成したカスタム請求ビューが選択したアカウントと共有されます。
ステップ 3:AnyCompany A の組織の管理アカウントからリソース共有を承認する
AnyCompany A の組織の管理アカウント 111122223333 にて、リソース共有の招待を承認します。承認は、Billing and Cost Management コンソールの「Billing View (請求ビュー) 」ページ内にある「請求ビューの招待」から実行できます。AnyCompany B の組織の管理アカウントからの招待を選択し、承認 (Accept) してください。招待を承認できる期間は 12 時間であることに注意してください。12 時間が経過すると、招待は期限切れとなり、承認できなくなります。この操作は AWS RAM からも実行できます。詳細については、「リソース共有への招待の受け入れと拒否」を参照してください。
ステップ 4:AnyCompany A の組織のカスタム請求ビューを作成する
111122223333から、AnyCompany A の組織に対応するコストと使用状況データを含むカスタム請求ビューを作成します。ステップ 1 と同じ手順に従ってください。
ステップ 5:AnyCompany A と AnyCompany B のデータを統合した新しいマルチソースカスタム請求ビューを作成する
111122223333から、ステップ 1 とステップ 4 で作成したビューをデータソースとして使用する、新しいマルチソースビューを作成します。まず、 [Create multi-source view (マルチソースビューを作成)] を選択して、新しいカスタム請求ビューを作成します。 ステップ 1 とステップ 4 で作成したビューを選択してください。両方の組織のすべてのコスト管理データを含めるには、「コスト管理データを次の条件でフィルタリング」の項目で「フィルターなし (すべてのデータ)」を選択します。または、アカウント ID やコスト配分タグによってコストと使用状況データをフィルタリングすることもできます。情報を確認し、 [作成] を選択します。このカスタム請求ビューには、AnyCompany A の組織と AnyCompany B の組織の両方のコストと使用状況データが含まれます。
これで、アカウント 111122223333 は、単一の管理画面 (シングルペイン・オブ・グラス) から AnyCompany A と AnyCompany B のコスト管理データを統合的に参照できるようになり、セットアップが完了しました。Cost Explorer、Billing and Cost Management ダッシュボード、および AWS Budgets でカスタム請求ビューを使用して、両方の組織全体の支出パターンを監視、分析、予測することができます。このビューは、FinOps 活動専用のメンバーアカウントなど、他のアカウントとも共有でき、メンバーアカウントからすべての組織のコスト管理データにアクセスできるようになります。
各カスタム請求ビューには、最大 20 個のソース請求ビューを含めることができます。コンソールで、カスタム請求ビューのビュー詳細ページに移動し、「設定の詳細」タブを選択すると、「ソースビュー」の項目にすべてのソースが一覧表示されます。また、billing:ListSourceViewsForBillingView API を使用することもできます。
マルチソースカスタム請求ビューへのアクセスに関連するコストについて理解する
Cost Explorer コンソールまたは AWS Budgets を通じたマルチソースカスタム請求ビューへのアクセスは無料です。Cost Explorer API を使用してプログラムでデータをクエリする場合は、各 API リクエストにつきソースごとに $0.01 が課金されます。例えば、カスタム請求ビューに 2 つのソースが含まれている場合、各 API 呼び出しのコストは $0.02 になります。
結論
カスタム請求ビューを用いて、複数の組織にまたがるコスト管理データの統合ビューを作成できるようになり、ビジネス全体の AWS 支出を効果的に管理するために必要な財務の可視性が提供されます。Cost Explorer や AWS Budgets などの既存の AWS コスト管理ツールを活用することで、カスタムデータパイプラインを構築したり、複雑なレポートインフラストラクチャを維持することなく、複数の組織におけるコストを監視および最適化できます。マルチソースカスタム請求ビューを開始するには、請求ビューユーザーガイドにアクセスし、AWS Billing and Cost Management コンソールの「コスト管理の設定」ページから最初のカスタム請求ビューを作成してください。
翻訳はテクニカルアカウントマネージャーの西村が担当しました。原文はこちらです。




