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アセットトラッキングソリューションをサポートする AWS IoT Core Device Location のご紹介
このブログは Sunitha Eswaraiah 、 Syed Rehan 、 Andrew Chen によって書かれた Introducing the new AWS IoT Core Device Location feature to support Asset Tracking solutions を翻訳したものです。
はじめに
AWS IoT Core Device Location は AWS IoT Core の新しいマネージド機能で、お客様は全地球測位システム (GPS) ハードウェアに依存することなく、ビジネスやエンジニアリングの制約内で機能する適切な位置情報テクノロジーを選択することが可能です。位置情報を利用することで、お客様はビジネスプロセスの最適化、メンテナンス作業の簡素化と自動化、そして小売、農業、輸送など複数の業界における資産追跡ソリューションなどの新しいビジネスユースケースを作成することができます。
モノのインターネット (IoT) アプリケーションでは、位置情報が重要です。歴史的に IoT デバイスの位置確認には GPS が広く使用されてきましたが GPS は消費電力が大きく、デバイスの設置面積が比較的大きく、コストが高いため、すべての IoT デバイスに搭載できるわけではありません。クラウドアシスト GNSS 、Wi-Fi 、セルラー三角測量などの新技術は IoT デバイスの位置データを取得するための一般的な代替手段になっています。しかし、これらの技術の課題は、使用可能な形式で位置データを直接提供しないことです。つまり、これらの技術で動作するデバイスから受信したデータに基づいてまず 地理座標を計算し、マッピングサービスを使用して地図上に点を配置する必要があります。AWS IoT Core Device Location は Semtech 、 HERE 、MaxMind など AWS パートナーが提供するソリューションと統合されています。これらの技術はクラウドアシスト GNSS 、Wi-Fi スキャン、セルラー三角測量、 IP 逆引きの技術を使用して、デバイスの 地理座標を標準フォーマットを利用することが出来ます。2022 年 10 月に発表された AWS IoT Core Rules Engine の新しい Location Action 機能を使用すると、地理座標を Amazon Location Service にルーティングし、地図や関心ポイントの追加、リソースの追跡、ジオフェンシングモデルの定義、デバイス位置情報の可視化を行うことが可能です。
AWS IoT Core Device Location は AWS IoT Core で利用可能です。本ブログでは、デバイスに GPS モジュールが内蔵されていない場合に AWS IoT Core for LoRaWAN と AWS IoT Core Device Location を使って位置情報 (地理座標など) を計算する方法について見ていきます。続いて AWS IoT Rule Location action と Amazon Location Service を使用して、位置情報アプリケーションを構築する方法について説明します。
LoRaWAN は LoRa Alliance によって標準化された、バッテリー駆動の遠隔監視・制御アプリケーションのための LPWA (Low Power Wide Area) プロトコルです。LoRaWAN 技術は IoT アプリケーションに堅牢な屋内外のカバレッジを提供します。現在 LoRaWAN は、スマート水道メーター、スマートビル、安全およびコンプライアンス監視、スマート農業、健康監視、スマート電気メーター、建設および採掘作業、スマートホームなど、さまざまなアプリケーションに適用されています。
AWS IoT Core for LoRaWANとの連携
AWS IoT Core for LoRaWAN は LoRaWAN 接続を使用する無線デバイスを AWS クラウドに接続して管理することができるフルマネージドサービスです。 AWS IoT Core for LoRaWAN を使用すると LoRaWAN デバイスとゲートウェイを AWS クラウドに接続し、プライベート LoRaWAN ネットワークを設定することができます。これにより Network Server(NS) を管理するための作業や運用負担がなくなり LoRaWAN デバイス群を迅速に接続し、セキュリティを確保しながら大規模な運用が可能になります。
以下のセクションでは、デバイスが AWS IoT Core for LoRaWAN および AWS IoT Core Device Location に接続してデータを公開し、さまざまなログストリームソースからデコードされた位置データを収集し、カスタムコードやアプリケーションを開発せずにサードパーティのロケーションソルバーを使って地図上に点を表示する方法を説明します。
リファレンスアーキテクチャ
図 1 – AWS IoT Core Device Location のアーキテクチャ
デバイスは AWS IoT Core for LoRaWAN と通信します。ペイロードは AWS IoT Core Device Location によって処理され、位置を解決し、トラッカーの位置情報が指定されます。 IoT Rule は、トラッカーからの受信データに応じてトリガーされ Amazon Location Service に送信され、地図上で位置を確認することができます。
OEM パートナー
当社は、カスタムコードやアプリケーションを書くことなく AWS IoT Core Device Location を動作することが認定された LoRaWAN トラッカーを開発した OEM (Original Equipment Manufacturer) 3 社と提携しています。
菱電商事 と SMK は LoRaWAN 技術の活用により、エネルギーハーベスティング機能を利用し、通信コストを低減したエッジデバイスを開発しました。このデバイスは同社の LoRaWAN ゲートウェイから AWS IoT Core for LoRaWAN に接続することが出来るため、サーバーのメンテナンスコストを削減することができます。 GNSS solver 機能を利用することで、本ソリューションはアセットトラッキング機能にも対応可能です。更に詳しく知りたい場合は、こちらのサイトをご覧ください。
Miromico は AWS IoT Core Device Location と連携し、お客様の位置情報資産の追跡を支援する TrackIt Kit を開発しました。
MIKROTIC は AWS IoT Core Device Location をベースとしたアセットトラッカーを開発しました。同社のデバイスは 2023 年に出荷予定です。
AWS IoT Coreのデバイスロケーションを利用する
前提条件
- IoT Thing をプロビジョニングするための AWS IoT Core の権限
- AWS IoT Core for LoRaWAN 対応ゲートウェイ機器
- AWS IoT Core location 対応デバイス
ステップ1 : AWS IoT Core for LoRAWAN の LoRaWAN ゲートウェイの説明を参考に LoRaWAN ゲートウェイをセットアップします。
ステップ2 : LoRaWAN デバイスのプロビジョニング
無線デバイスを追加する
- LoRaWAN specification では OTAA v1.0x を選択します。
- DevEUI を指定 – ワイヤレスデバイスに書かれている 16 桁の 16 進数の DevEUI 値です。
- AppKey を指定 – ワイヤレスデバイスのベンダーが提供する 32 桁の 16 進数の AppKey 値です。
- AppEUI を指定 – ワイヤレスデバイスのベンダーが提供した 16 桁の 16 進数の AppEUI。
図 2 – デバイスの詳細を指定
- Wireless device name には ‘tracker’ と入力します。
- Wireless device profile には Add device profiles をを参考にして設定します。
図 3 – デバイスプロファイル
- Service profile については add service profiles を参照してください。
- destination については add a destination を参照してください。
図 4 – destination の追加
- Next を選択
- Geo-location セクションでは activate positioning を有効にします
- Add device を選択
図 5 – ポジショニングを有効にします
ステップ3 : デバイスの接続を確認
デバイスが追加された後、LoRaWAN devices list に戻り、デバイスがアップリンクを送信しているかどうか確認します。
ステップ4 : トラッカーを可視化する
AWS IoT Core for LoRaWAN にデバイスを追加すると、トラッカーの GNSS/WiFi スキャンの結果を利用して位置情報を取得します。以下に示すデバイスの詳細ページに埋め込まれている地図で、トラッカーの位置が確認できます。ここでは、緯度と経度、およびトラッカーの位置を表す地図上の青いピンを見ることができます。
まとめ
本ブログでは GPS ハードウェアに依存せず、お客様のビジネスやエンジニアリングの制約の中で適切なロケーション技術を選択できる新しいマネージド機能 AWS IoT Core Device Location を紹介しました。AWS IoT Core の Device Location を使い始めるのは、迅速かつ簡単です。お客様は AWS IoT コンソールまたは API を使用して、希望の Location Solver のタイプを指定し、対応する無線データ (GNSS スキャンデータ、 WiFi スキャンからの MAC アドレスなど) を Location Solver API に渡すことで 地理座標を計算することができます。詳しくは開発者ガイドをご覧ください。位置情報が計算されると、お客様は AWS IoT Core Device Shadow や好きな topic に送ることができます。
関連リンク
LoRaWAN ユースケースで IoT Core for Device Location を使用したアセットトラッキングソリューションの構築を開始するには re:Invent 2022 向けに構築されたワークショップを参照してください。
このワークショップでは、特定のトラッカーペイロードをデコードして位置を解決する CloudFormation テンプレートを使用してセットアップを行ってください。
著者
Sunitha Eswaraiah は Amazon Web Services (AWS) のソリューションアーキテクトで、ストックホルムを拠点に活動しています。北欧のお客様のデジタルトランスフォーメーションとクラウドジャーニーをサポートしています。データエンジニア、バックエンド開発者として10年以上の経験があります。現在は、IoTソリューションの構築を専門にするようになりました。 AWS 以前は、インドの Gartner と Verizon に勤務していました。
Syed Rehan は Amazon Web Services (AWS) のシニア グローバル IoT エバンジェリストであり、ロンドンを拠点に活動しています。彼は AWS IoT サービスの採用を促進するために、大企業の開発者や意思決定者とともに、世界中のお客様をカバーしています。IoTとクラウドに関する深い知識を持ち、スタートアップから企業まで幅広い顧客に対して AWS エコシステムによる IoT ソリューションの構築を支援する役割を担っています。
Andrew Chen は AWS IoT Core のシニアプロダクトマネージャー(技術担当)です。 AWS IoT Core に数十億のデバイスを接続することを目標に、コネクティビティ関連の機能を担当しています。ハードウェアエンジニアとして、またプロダクトマネージャーとして 10 年以上の経験を持ちます。 Device Gateway と AWS IoT Core for LoRaWAN サービスの製品戦略、ロードマップ計画、ビジネス分析と洞察、顧客エンゲージメント、その他の製品管理領域に関するマネジメントを担当。
このブログは IoT プロトタイピング ソリューションアーキテクトの市川 純が翻訳しました。