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デジタルトランスフォーメーションのゴールを明確にするためのメンタルモデル パート1
このブログは、”Mental Models to Clarify the Goals of Digital Transformation, Part 1” を翻訳したものです。
誰もが気づいているように、デジタルトランスフォーメーションという言葉は掴みどころがなく、多用されています。大企業におけるテクノロジーの使われ方、デジタルテクノロジーと関係があると思われる変化、デジタルな働き方、生活におけるデジタルインタラクション(デジタルを活用した相互作用や交流)の重要性の高まりにおいて、今、大きな変化が起きています。デジタルトランスフォーメーションとは、現代においてすべての企業が直面しなくてはならないと認識している、曖昧で複雑なものにつけた名前なのです。しかし、この言葉は非常に多くの異なることを意味するためトランスフォーメーション戦略を組み立てることは困難です。
この言葉は私たちがコントロールできないものであり、何の助けになりません。実行可能な定義を与えることはできないのです。その代わりに、デジタルトランスフォーメーションを様々な側面で捉え克服するために役立つ、いくつかのメンタルモデル(向き合い方や価値観)を築いていきましょう。ここではデジタルトランスフォーメーションが意味する様々な側面を含めた8つのメンタルモデルを提示していきます。このブログでは最初の4つを取り上げ、残りは後続のブログで取り上げます。
1. スピードの向上
2. デジタルテクノロジーの活用
3. デジタルインタラクション
4. 顧客中心
5. データ駆動型
6. レジリエンス(回復力)の向上
7. 将来への備え
8. 未来の企業創生
モデル 1: スピードの向上
デジタルの世界は疑う余地のないほどスピードの世界です。確立された企業へのチャレンジはすぐに現れます。これは事実です。そして、素早く競い合うための優位性として新しい製品や製品機能の市場投入までのスピードはますます重要になっています。これもまた事実です。顧客の好みの急速な変化、地政学的状況の急速な変化、パンデミックや貿易戦争が発生しており、これらに対応する必要があります。すべて事実です。
私たちはスピードを用いて品質、セキュリティ、安定性、信頼性、財務管理、イノベーションを向上できることを既に学んでおり、スピードもまた重要なのです。それらの一部は直感に反していますが、迅速なフィードバックから生まれるアイディアと調整に由来しています。クラウドとDevOpsを用いて有望な新しいアイデアを低リスクかつ低コストで素早く試すことができるためイノベーションは増加します。そして、その学びに応じて、アイデアを2倍にしたり、取り下げたり、修正することができます。同様に、ビジネスケースのあらゆる不確実性が生む大きなリスクを取る代わりに、小規模な増分投資を行い、次の投資を行う前に各投資の結果を確認することができるため財務会計は強化されます。
脅威の状況変化に対してより迅速に対応できるためスピードによってセキュリティは向上します。そして、システムの構築中およびデプロイ後に、繰り返し、迅速かつ低オーバーヘッドでシステムをテストできます。同じことが安定性とレジリエンス(回復力)にも当てはまります。(ITではうまく機能しなかった)詳細な事前計画を通じてリスクを軽減する世界から、俊敏性、スピード、小規模な投資、迅速なフィードバックによってリスクを軽減する世界へ変わったのです。
企業にとって、これは大幅な方向性の転換が必要です。私たちのほとんどは、低頻度で大規模な計画された変化のためにビジネスを最適化しています。現代のモデルとしては、リスクを軽減する一方で(実際にはそれ以上に)迅速に行動できるように準備する必要があります。これは、統制や監督、投資の選択、技術アーキテクチャの設計、イニシアチブ(構想や戦略)の計画といったものの在り方を変えることを意味します。
モデル 2: デジタルテクノロジーの活用
デジタルトランスフォーメーションについてのもう一つの考え方は、システムに対して期待するスコープ(範囲)を大きく広げることができる新しいテクノロジーの導入です。これらの新しいテクノロジーは、収益の成長とコスト管理において新しい機会をもたらすだけでなく、顧客が期待するものや競合他社が利用できるものを変えます。
おそらく、現在、最も根本的な変革は、機械学習によるものです。機械学習(ML)は、50〜60年前から存在していましたが、プロセッサの高速化とアルゴリズムの改善により、幅広いビジネスアプリケーションで実用化されたのはごく最近のことです。重要なのはテクノロジーに頼れることが大幅に広がるということです。これまでプログラミングするには複雑すぎた多くの分野、つまりプログラマーがコンピュータが何をすべきかを正確に記述しなければならない多くの領域が、機械そのものに学習させることで実現できるようになりました。
MLは実用的になっただけでなく、民主化され、今ではどの企業にも簡単に利用できるものになりました。最近まで企業はMLの分野において見つけるのが困難な専門家を雇わなければいけませんでしたが、現在、アマゾン ウェブ サービス (AWS)は 誰でも、それらの分野の経験がまったくない人でもクラウド上でML モデルを簡単に利用できるようにしています。事前にトレーニングされたAWS のモデルとツールは、ML の複雑さの多くを抽象化しており、組織は迅速にプロトタイプを構築できます。また、クラウドのコストは使用量に依存するため、これらのプロトタイプは比較的手頃な価格となります。低いリスクで、安価に、そして迅速にMLを始めることができるのです。
その他のテクノロジーとして、仮想現実や拡張現実、IoTセンサーやロボットを管理するソフトウェアサービスなど、少数の人しか利用できなかったテクノロジーがビジネスで一般的になってきています。テクノロジーを用いて、大量のデータや、画像、ビデオ、自然言語のテキストなどの非構造化データ、タイムストリームデータを容易に処理できるようになったため、幅広い新しい分析が可能になります。Alexaのような新しいデバイスは、顧客との会話のやりとりを可能にします。
つまり、このメンタルモデルにおいては、変革とはビジネスの成果を上げるために新しいツールを新しい方法で使うことを意味します。新しいからこそ、これらの新しいツールを利用するためには創造性とリーダーシップが必要になります。問題を解決する方法やシステムを設計する方法についての新しい考え方も必要になります。しかも、これは選択する余地があるものではありません。 新しいツールを利用できない、あるいは利用しない企業は、それらを利用できる、あるいは利用する誰かによって破壊される恐れがあります。
そして、これは1回限りの問題ではありません。イノベーションのペースが衰える可能性は低いため、すべての企業は継続的に新しいテクノロジーを探し出し、それらを戦略的に適用することを身につける必要があります。
モデル 3: デジタルインタラクション
デジタルトランスフォーメーションのもう1つのメンタルモデルは、顧客だけでなく、サプライヤー、規制当局、ソーシャルメディア上の流行の仕掛け人とのデジタルインタラクションを学ぶことについてです。顧客は変化しており、今はデジタルサービスを期待しており、高い基準を持っています。顧客は何かをする際に、楽に使え、サービス志向で、柔軟な方法を探しており、ほとんどの場合、携帯電話やその他のデバイスから利用できることを期待しています。彼らの時間の多くは、使いやすい新しい形のインタラクションを絶えず革新しているサービス指向の企業とのオンライン上のやりとりに費やされており、劣っているものは不満を誘発し、会社は時代遅れのブランドと見なされていきます。
企業は、デジタルインタラクションが大きなメリットをもたらす可能性があることを認識しており、顧客とその行動に関するデータを収集し、購買行動を促進し、コストを削減し、対面でのやりとりよりも安価に新しいアイデアを試すことができます。
しかし、デジタルインタラクションは対面でのやりとりとはまったく異なり、メンタルモデルの変革が必要です。顧客は、デジタルインタラクションが生活様式の中で楽なものであることを期待しています。つまり、顧客とのインタラクションは、顧客が選択した時間と場所で行われるということです。顧客にテクノロジーを提供することは、これまで情報システムが行ってきたツールを社員に提供することとは大きく異なります。社員をトレーニングすることはできますが、顧客をトレーニングすることはできません。社員は一定の不便さを我慢しますが、顧客は楽しむことに対してあまりにも多くの障壁があるならば、簡単に競合他社に切り替えます。
モデル 4: 顧客中心
従来の製品は、市場からのインプットを取り入れ、判断力、経験、会社の製品戦略、そしてひと摘みの魔法の粉とを組み合わせて市場で成功するか失敗するかのどちらかになる新商品を考案するプロジェクトマネージャーのもとで設計されていました。
デジタルの世界では、基本的に製品とその機能を顧客と一緒に設計していきます。実用最小限の製品 (Minimum Viable Product: MVP)を使用して顧客の関心を測定し、製品の微調整を素早く繰り返し、製品の進化を続けるために顧客の反応からフィードバックを収集します。目標は、持っているアイデアを顧客と一緒に検証する必要がある仮説として扱うことです。市場でどれほど経験を積んでいるか、アイデアを考えた人が組織内でどれほど高い立場か、アイデアがどれほど明らかに正しいかは関係ありません。
実際、企業はこれまで自分たちを顧客中心だと考えていましたが、デジタルの世界は異なります。デジタルに精通した企業は、顧客のニーズからさかのぼって、そのニーズを満たしているかどうかを継続的に検証しています。顧客のニーズをより満たした競合他社が勝利するのです(価格は顧客のニーズの一部です)。良い知らせとしては、デジタル時代においては、素早く繰り返しながら顧客から迅速に学ぶことができるということです。
このメンタルモデルの考え方の大きな変化は、顧客にただ尋ねるだけでなく、物事を試してその影響を測定することによって顧客から学ぶことに重点を置くことです。
予告
このシリーズの次のブログでは、他の4つのメンタルモデルについて説明します。 最後の「未来の企業創生」では、前の7つの側面を組み合わせて、漠然としか見えない企業の性質をどのように変えていくかを示します。
このトピックの詳細
デジタルトランスフォーメーションのゴールを明確にするためのメンタルモデル パート2, Mark Schwartz
Digitally Transforming What Exactly?, Phil Le-Brun
Mental Models for Your Digital Transformation, Joe Chung
Tuning Up the High-Frequency Enterprise, Phil Potloff
The Future of Faster Enterprises, Miriam McLemore
翻訳はカスタマーソリューションマネージャーの田代 靖貴が担当しました。原文はこちらです。