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AIと機械学習を使いこなすために、NOMURAはAWS DeepRacer をどのように活用したか

イノベーションは野村グループのDNAです。同社のコーポレート・スローガン「目指すのは、”今”以上の”未来”。」は、新しいテクノロジーを開拓してきた歴史を反映しています。同社は、社員のデジタルスキルを向上させることにより企業の競争力を高めることを目的として、グローバル人材開発チームのイニシアティブとしてDigital IQプログラムを立ち上げました。このプログラムの一環として2023年はAIと機械学習に関する社員の知識を深めるため、AWSと協力してDigital IQ グランプリを開催しました。このグランプリは2023年6月にロンドンで試験的に開催されました。これは、野村グループの社員が各国で現地の仲間と競い合い、ワクワクしながらスキルアップできるように設計されたものでした。

このイベントの小さなスタートは、すぐに参加者に興奮とともに価値を提供することになりました。ロンドンのイベントの成功体験をもとに、野村グループはDigital IQ グランプリを、シンガポール、ポーワイ(インド)、東京、ニューヨークとグローバルに展開しました。

学習とコラボレーションの実現

野村グループがロンドンで 2023年6月の試験的に実施したグランプリの内容を社内で通知をした所、他の地域でもAWS Deep Racer イベントへの関心が高まりました。こうした反応に対して野村グループのDigital IQプログラムチームは、Digital IQ グランプリのグローバル展開を決めて、グランプリ参加希望者向けのオフィスアワーや社内にチャットグループを作り、 AWS のエキスパートを招いたAWS DeepRacer のワークショップを各地域で開催しました。東京でのイベントの前にはAWS Management Console を使ったことのない社員たちがコンソールにログオンして、 AWS DeepRacer がどのように機能するかを学び、 AWS DeepRacer サービスを探索し、コードを書き始め、強化学習について学び、 AWS DeepRacer シミュレータを使って自分のモデルをトレーニングしました。

参加希望者はグランプリに向けて複数人からなるチームを結成し、チーム内でのコラボレーションも始めました。オフィスアワーには大きな反響があり、参加者からは 強化学習に関してやAWS DeepRacer のモデル学習を深く理解するための多くの質問がされました。

ITの壁を破る – 非IT系社員の参加

野村グループのアプローチで特筆すべき点は、IT職ではない参加者を意図的に取り込んだことです。実に東京のイベント参加者の50%以上がIT部門所属ではない方となっており、多様なビジネス・バックグラウンドを持っていました。AIをビジネスで活用するためには、実業務を熟知するビジネス部門の視点が欠かせません。野村のこの意図的な戦略は、テクニカル主体のAIの世界にビジネス部門を招き入れ、AIが自らの業務生産性を上げるためのツールになる可能性があることを理解してもらうために部門を超えたコラボレーションを促進することを目的としていました。実際に東京の AWS DeepRacer イベントで優勝したチームのメンバーは、非IT職の参加者でした。

非IT職の方は業務の中でAIに触れる機会が少ない事もあり、座学のAI/MLトレーニングを提供してもAIは難しいというイメージを持ってしまいがちです。しかし、AWS DeepRacer はゲーム感覚で楽しみながらAI/MLのテクノロジーを体験できるサービスとなっているため、AI/MLを学ぶ最初のステップとして最適なサービスとなっています。

AWS DeepRacer では機械学習のいくつかの方式のうち強化学習という方式を採用しています。強化学習では、与えられた環境に対して最適なアクションの選択を学習します。完全自律型のレースカーが走行するコースが環境、レースカーがどのように走るか(速度や方向)を決めるのがアクションです。決めたアクションが正しい判断だった場合、例えばコースアウトせずに方向転換したというアクションに対して報酬を与えます。これにより、多くの報酬を獲得するための走りかたをトレーニングによって獲得し、より上手に走行できる強化学習のモデルを構築することができます。AWS DeepRacerにおけるモデルトレーニングの成果が、コース上を正しく走るという結果に即時反映されるため、参加者も報酬メカニズムについて理解しやすいというのがAWS DeepRacerの特徴です。

「東京での成功は、 AI がIT専門家だけのものではないことを証明しました。 AI は学び、革新しようとするすべての人のためのものです」と、本イベントのExecutive Sponsor 野村ホールディングスグループIT担当 の堀晃雄氏は述べています。

東京では合計80人以上の社員が38チームに分かれ、予選と決勝を含む54レースで合計311周を走行しました。優勝チームは最速で8.841秒というラップタイムを記録しました。

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勢いを維持

野村グループは現在、チャットボット、パーソナライゼーション、ドキュメントスキャナーを使ったビジネス課題の解決など、生成 AI 技術を含む AI をベースとした複数のユースケースの検討やPoCを進めています。Amazon Bedrockの活用も進んでいます。

野村グループについて

野村グループは、グローバルに拠点をもつ金融サービス・グループです。営業、インベストメント・マネジメント、ホールセールという3つの部門が約30の国と地域を越えて連携し、アジアと日本、そして世界をつないでいます。野村グループは、「社会課題の解決を通じた持続可能な成長を実現する」という経営ビジョンのもと、お客様をはじめとしたすべてのステークホルダーの声に応え、創造性豊かで付加価値の高いソリューションを提供しています。

AWS DeepRacer について

AWS DeepRacer は、強化学習に対応した 1/18 スケールの完全自律型レースカー、3D レーシングシミュレーター、およびグローバルレーシングリーグを備えた、強化学習 (RL) を自由自在に操る最速の手段です。デベロッパーは、オンラインシミュレーターで RL モデルのトレーニング、評価、調整を行います。学習したモデルを AWS DeepRacer にデプロイし、実際に自律型車両に搭載して、AWS DeepRacer チャンピオンカップを求めて AWS DeepRacer リーグで競争できます。

謝辞

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社の下記メンバーからブログの内容についてサポートいただきました。

Yuya Kimura, Arioka Kosuke, Aoki Minoru