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【開催報告 & 資料公開】テレコム業界向け AWS re:Invent 2024 Recap – インダストリー 編
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 ソリューションアーキテクトの津和﨑です。
通信事業者のお客様とそれに関わるパートナー様、また、5G やその構成要素であるRAN ・ OSS / BSS などの通信分野や通信事業者の CX 改善などにおける最新技術の動向に関心のあるお客様を主な対象として、2025 年 1 月 29 日に「AWS re:Invent Recap インダストリー編 – テレコム業界向け」をウェビナーで開催しました。
本記事では、当日の内容・動画を皆様にご紹介します。
ウェビナー開催の背景
世界中の AWS ユーザーが集まり、ベストプラクティスや最新情報を学ぶための年次カンファレンス「AWS re:Invent」が 2024年12月ラスベガスで開催されました。本ウェビナーでは、AWS re:Invent の 発表内容より、テレコム業界領域における最新動向、ネットワークのクラウド化、ネットワーク運用における生成 AI の活用、生成AIを活用したCX改善、の内容をお届けしました。
下記は発表内容のセッションごとのサマリとなります。
サマリは Amazon Bedrock による生成された内容をベースに加工しました。
1. 変革を可能にする AI を活用した通信事業者向けの AWS 活用 | Video
技術統括本部 ストラテジックインダストリー技術本部 通信グループ 通信第一ソリューション部
ソリューションアーキテクト 津和﨑美希
このセッションでは、AWS のテレコム事業部門リーダーが考える通信業界の変革モデルと、生成AIの活用方法について解説しました。様々な通信企業のAWS活用事例を紹介し、技術分野としては、OSS / BSS 、 5G / RAN のクラウド活用、新規収益源(スマートホーム、中小企業向けソリューション、Network API)について具体的なユースケースを交えてご紹介しております。
主な焦点は以下の4つの分野でした:
- 生成 AI 活用の拡大
生成 AI 全般の課題として、AIインフラ整備やデータ管理、セキュリティ対策が挙げられますが、AWS はパフォーマンスとコスト効率の高い機械学習のためのインフラストラクチャを提供し、投資を継続しております。ここでは、通信業界の AI 活用事例として、2社紹介がありました。
・BT Group 社では、 Amazon Q for Developer を活用し、40万行のコードを生成。1,200人のエンジニアの生産性が15%向上
・SK Telecom 社では、 Amazon Bedrock を用いた Telco LLM により、コールセンター業務を効率化 - マイグレーションとモダナイゼーション
AWSはデータ主権に関する懸念に対し、AWS Digital Sovereignty Pledge を発表しており、高度なデータのコントロールを提供しております。また、マイグレーションの際の課題に対して、AWS は解決の選択肢を増やしており、新たに Amazon Elastic VMware Service がプレビューを開始し、Oracle Database@AWS も発表。大規模マイグレーションに活用いただけるオプションが追加されています。 - ネットワークのクラウド化
OSS / BSS / IMS / Core / RAN など、様々なネットワークワークロードのクラウド適応が進んでおり、5G core の領域では、boost mobile 社、O2 社、COMCAST 社と各社で活用の広がりをみせております。クラウドの適応領域も広がりを見せ、vRAN の領域では、NTTドコモにて、2025年からのvRAN 導入において Amazon EKS Anywhere を採用いただいております。 - ビジネス成長戦略
スマートホームソリューションなど新規事業展開、中小企業向けクラウドサービスの提供、ネットワークAPIを活用した新たな収益化モデルの創出等が進んでおります。
結論として、2024年のテレコム業界では、生成AI、マイグレーションとモダナイゼーション、ネットワーク変革、ビジネス成長戦略の各領域で通信業界における変革は起こっており、これらの全ての領域で通信事業者様のビジネスにAWSは貢献することが可能です。
2. テレコム業界におけるネットワークのクラウド化のご紹介 | Video
技術統括本部 ストラテジックインダストリー技術本部 通信グループ 通信第一ソリューション部
ソリューションアーキテクト 黒田由民
このセッションでは、5G の基幹である 5G コアネットワーク機能の AWS クラウド上での稼働など、アジリティ、自動化、クラウドサービスの連続性等を活用したネットワークのクラウド化に関するトピックをお届けしております。
5G ネットワークのモダナイゼーションが注目を集める中、AWS は通信業界に対して包括的なソリューションを提供しています。
主な 5G デプロイメントと運用上の課題として、ミッションクリティカルな性質への対応、低遅延性の確保、データ消費量の増加への対応などが挙げられます。
これらの課題に対し、AWS はクラウドインフラストラクチャの連続性、同一性、自動化を備え、場所を問わず統一された環境を提供することで、ビジネスバリューチェーン全体とネットワークトポロジー全体をカバーする包括的なクラウドソリューションを実現します。
具体的な成功事例として、Telefonica Germany 社の5G Core 機能の AWS 移行が挙げられます。同社は既存の5Gネットワークを保持しながら、より柔軟で効率的なクラウドベースのシステムへの移行を実現しております。
AWS Region と AWS Outpost を活用し、クラウドの連続性を用いたアーキテクチャを提供。その結果、主に大規模エンタープライズセグメントに属する100万人の顧客が AWS 上でサービスを利用するようになりました。
同社CTIOからは、AWSのアジリティによって通信アプリケーションへの対応が進んだことで、コアシステムのパブリッククラウドへの移行が可能になったとの評価を得ております。
このように、AWS は通信業界のデジタルトランスフォーメーションを支援し、アジリティ、自動化、セキュリティ、スケーラビリティという現代の通信インフラに求められる重要な要素を統合することで、より効率的で柔軟なネットワーク環境の実現を可能にしています。
3. ネットワーク運用における生成 AI の活用 | Video
技術統括本部 ストラテジックインダストリー技術本部 通信グループ 通信第二ソリューション部
ソリューションアーキテクト 染谷 謙太郎
このセッションでは、AWS の生成 AI サービスを活用して通信事業者の従来のネットワーク運用プロセスの変革をご紹介しております。
安定的な通信ネットワークの重要性、また、複雑さの課題解決を目的として、生成 AI を活用したネットワークオペレーションが期待されています。
AWS の生成 AI サービスとして、Amazon Bedrock は主要な基盤モデルからニーズに合わせてモデルを選択可能であり、検索拡張生成 (RAG) や一連のタスクを自動化できるエージェントのマネージドサービスも提供し、生成 AI をお客様のアプリケーションに簡単に組み込むことができます。
ネットワークオペレーションの生成 AI 活用のユースケース別アーキテクチャパターンとして、サービスの強化、オペレータ対応の効率化、データに基づいた意思決定のサポートやネットワークデバイスの設定と管理の自動化をご紹介しました。
また、AWS活用事例として、Orange 様ではネットワークを Amazon Neptune のグラフ上に表現し、時間変化を捉えることで大規模なネットワークのデジタルツインを形成し、RCA までの時間を短縮されました。原因特定時間が従来の7時間以上から数秒まで短縮した、とその効果をご紹介いただいております。
4. 通信業界における生成AIを活用したCX改善のご紹介 | Video
技術統括本部 ストラテジックインダストリー技術本部 通信グループ 通信第一ソリューション部
ソリューションアーキテクト 菊地 貴彰
このセッションでは、AWS re:Invent 2024で発表があった通信業界のお客様の事例や Expo での展示の中から、生成 AI を活用した CX 改善に焦点を当てて、具体的な事例やソリューションをご紹介しております。
通信業界のコンタクトセンターが直面する課題と、生成 AI を活用した改善事例について、韓国の SK Telecom 社の取り組みを中心にご紹介しております。
- コンタクトセンターの課題
マルチチャネル化による情報連携の複雑化や顧客期待値の上昇、エージェントの高負荷による早期離職、手作業による非効率性とエラーリスクなどさまざまな課題がございます。 - コンタクトセンターで高い付加価値を生む、AI 活用が効果を発揮するワークロード
大きく、以下の3点が挙げられます。- 事前対応の効率化
AI による顧客意図の理解・簡易な問い合わせの自動解決・エージェント(カスタマーサービス担当)の対応件数削減 - リアルタイムアシスト
適切な応答の自動生成・関連文書の提示・感情分析による上級エージェントへの自動エスカレーション - 通話後作業の自動化
AI による通話記録・要約作成・問い合わせ内容の自動トピック分類・次に取るべき最善のアクション案の推奨
- 事前対応の効率化
- SK Telecom 社の事例
SK Telecom 社は3000万人にサービスを提供する韓国の主要通信会社ですが、グローバル AI 企業を目指し、Anthropic および AWS とパートナーシップを締結しております。
本事例は、生成 AI の実用化における効果的なアプローチと、コンタクトセンター改革の可能性を示す先進的な取り組みです。
まとめ
2025 年 1 月 29 日に開催した「AWS re:Invent Recap インダストリー編 – テレコム業界向け」の振り返りとして、開催概要や発表の見どころ紹介、お客様事例をご紹介いたしました。セミナーにご参加いただいた方、誠にありがとうございました。参加頂けなかった方も、このブログから動画や資料を参照いただき、今後の AWS 活用の参考になりましたら幸いです。内容に関して、ご質問やご要望がございましたら、お問い合わせページ、もしくは担当営業までご連絡をお願いします。
このブログの著者
技術統括本部 ストラテジックインダストリー技術本部 通信グループ 通信第一ソリューション部 ソリューションアーキテクト 津和﨑 美希
技術統括本部 ストラテジックインダストリー技術本部 通信グループ 通信第一ソリューション部 ソリューションアーキテクト 黒田 由民
技術統括本部 ストラテジックインダストリー技術本部 通信グループ 通信第二ソリューション部 ソリューションアーキテクト 染谷 謙太郎
技術統括本部 ストラテジックインダストリー技術本部 通信グループ 通信第一ソリューション部 ソリューションアーキテクト 菊地 貴彰