Amazon Web Services ブログ
Ignition + NetApp + AWS環境における、運用技術と情報技術のデータをクラウド上で効率的かつセキュアに活用した、新たなインサイトの獲得とディザスタリカバリの実現
このブログは 2023 年 6 月 29 日に Rajesh Gomatam(Principal Partner Solutions Architect)、Conner Futa(Inductive Automation 所属 Application Engineer)、Preet Virk(Senior Partner Solutions Architect)、Russ Sagert(NetApp 所属 Business Development Director)によって執筆された内容を日本語化した物です。原文はこちらを参照して下さい。
はじめに
産業界の企業はビジネスの価値を高めるため、運用技術(OT)と情報技術(IT)を近代化する戦略的メリットを積極的に追求していますが、オンプレミスで利用可能な調達済みのオンプレミスストレージとコンピューティングリソースには限界があります。データサイエンティストとプロセスエンジニアリングリーダーは、このような運用データを活用してインサイトを得ながら、プロセスを最適化し、ビジネス価値を高める必要性を認識しています。データサイエンティストとプロセスエンジニアは、OT データから新たなインサイトを得るために、多次元ダッシュボードや機械学習などの高度なアナリティクス技術の導入を検討しています。データからビジネス価値を生み出すことに成功した組織は、同業他社から一歩リードすることが出来ます。Aberdeen Survey によると、データレイクを導入した組織は、同業他社と比較した自律的収益成長率は9%も上回っています。本記事では、NetApp と Inductive Automation をどのように組み合わせ、OT+IT データを Amazon Web Services(AWS)クラウド上に展開し、産業界の課題を解決するソリューションを紹介します。まず、Inductive Automation とNetApp が提供するコア製品を紹介します。
Inductive Automation と NetApp の概要
Supervisory Control and Data Acquisition(SCADA)/Human-Machine Interface(HMI)、Historian、Industrial Internet of Things(IIoT) のリーダーである Inductive Automation 社は、Ignition という産業用ソフトウェアを提供しています。Ignition は、工場フロアにおける産業用データのハブとして機能するアプリケーションであり、総合的なシステム統合を実現します。多くのブランド、モデル、プラットフォームと統合し、工場フロアの機器と通信し、OT と IT のギャップを埋める役割を担っています。Ignition を使用すると、ユーザーは膨大な量のリアルタイムおよびビジネスデータを収集し、傾向、パターン、および機器のパフォーマンスに関する貴重なインサイトを得ることができます。
Ignition に保存された OT と IT のデータは、故障の診断や、あらゆるビジネスにとって重要な信頼性と稼働時間の改善に利用できます。Ignition は、プログラムの動作に関する情報を収集し、問題を診断し、コストのかかるダウンタイムにつながる前に、これらの問題に対して是正措置をとることを可能にする強力なツールです。製造業のお客様にとって、これは、生産遅延を引き起こす前に機器の不具合を特定し、対処することに繋がります。また、石油・ガスのお客様にとっては、事故や流出につながる前に潜在的な安全上の危険を特定し、対処することが可能になります。
NetApp と AWS はクラウドを活用して、業界をリードする運用改善ソリューションを提供しています。NetApp は Amazon FSx for NetApp ONTAP 内で提供されている、オンプレミスデータベースからクラウドへのデータ同期ツールをサービスの差別化ポイントとしています。データ圧縮、コンパクション、重複排除により、ネットワークへの負荷が最小限に抑えられるため、従来は外部のネットワークに接続されていなかった工場にも接続できます。また、NetApp Spot Security を活用することで、サイバー攻撃に関連する異常な動作を迅速に特定・隔離し、復旧手段を提供することができます。このパートナーシップにより、お客様はクラウドを最大限活用して業務を改善し、収益を拡大することができます。
AWS 上で Inductive Automation と NetApp を使用した事例
Inductive Automation の Ignition data historian は、自動車、農業、食品・飲料、エネルギー、廃棄物管理など、さまざまな業種の産業製造やプロセス管理で使用されています。これらの顧客は、生産性、効率性、収益性を向上させるための新しい技術やアイデアを常に求めています。重要な新たなトレンドは、オンプレミスの運用環境をクラウドに接続するか、完全にクラウドに移行することです。Ignition のユーザーは、既存の IT プロセスの成熟度に応じて、OT と IT データを AWS クラウドに集約するソリューションから利益を得ることができます(下図参照)。
歴史的に、工場のオペレーションは工場内でサイロ化されており、ERP、MES、財務システムなど、組織の他の部分とデータインサイトを共有することが困難でした。工場のオペレーションにとって最大の悩みの種の 1 つは、運用データがサイロ化またはエアギャップ化されていることです。このため、保守や生産の最適化を担当するベンダーが、必要なデータにアクセスすることが難しくなります。また、通信の遅れは生産中断の解決にも影響します。接続されたシステム(OT/IT コンバージェンス)の欠如も、サプライチェーン全体の遅延や可視性の欠如につながり、予期せぬ混乱や行動の遅れにつながる可能性があります。上述した Ignition と AWS のソリューションが対応するユースケースには、下図に示す 3 つのタイプがあります。
OT+IT データストリームをクラウド上の Amazon FSx for NetApp ONTAP へ
NetApp Data Fabric データサービスと Amazon FSx for NetApp ONTAP を組み合わせることで、サプライチェーンのコミュニケーションをよりタイムリーで効率的なものにすることができます。このサービスは、サイトレベルの Ignition データベースから AWS クラウドへの同期サービスを提供します。Amazon FSx for NetApp ONTAP は、主要なベンダーやパートナーとのセキュアなコラボレーションを可能にし、計画外のダウンタイムを最小限に抑え、問題解決までの時間を短縮します。FSx for ONTAP を通じて運用データを共有することで、資産のメンテナンス、インテリジェントなサプライチェーン、作業員の効率性と安全性に関する企業のベストプラクティスを確立できます。さらにこのソリューションでは、必要に応じて共有する運用データのボリュームを簡単に増減できます。この柔軟性により、変化するビジネス状況に適応し、特定のニーズに合わせて業務を最適化することができます。このレプリケートされたコピーによって、組織全体での活発なナレッジ共有が促進され、パートナー、ベンダー、顧客とのコラボレーションがより効果的になり、業務の改善と収益の増加につながります。FSx for ONTAP を使用して AWS で Ignition を実行すると、オンプレミスのインフラストラクチャを削減できるだけでなく、全体的な TCO を削減できます。
インダストリー 4.0 は、クラウドベースのテクノロジーを使って、産業界の顧客の業務形態を根本的に変えようとしています。これを実現するための重要なツールの 1 つが、さまざまな拠点からのデータを集約する産業用データヒストリのホスティングです。AWS のクラウドサービスを利用して Ignition のデータをクラウドに拡張することで、顧客は、OT+IT データの貴重な組み合わせの効率的な収集と分析を促進する弾力性、拡張性、回復力を得ることができます。AWS のクラウドサービスを利用することで、業界のリーダーたちは、クラウドに格納された Ignition で機械学習などの新しいタイプの分析を利用できるようになります。これにより、顧客の獲得と維持、生産性の向上、機器のプロアクティブな保守、より良い情報に基づいた意思決定など、ビジネス成長の機会を特定し、迅速に行動することができます。
工場データをクラウド上にレプリケート
NetApp ONTAP データ管理ソフトウェアでは、ボリュームクローン(FlexClone)と呼ばれる、書き込み可能なボリュームのコピーを作成できます。クローンボリュームは、親ボリュームの書き込み可能なポイントインタイムコピー(Snapshot)です。クローンボリュームの作成後に親ボリュームに加えられた変更は、クローンには反映されません。System Manager を使用すると、ボリューム間のクローン関係を簡単に表示できるため、クローン階層を管理しやすくなります。それにより、インサイト獲得までの時間と問題解決までの時間が短縮されます。Ignition 環境のコピーは、コストに影響を与えることなく、自由に作成または削除ができます。
SnapMirror を利用したディザスタリカバリ
NetApp SnapMirror は、NetApp ONTAP の機能であり、クラウドストレージリソースを活用した増分非同期データレプリケーションによって、統合されたリモートバックアップ/リカバリおよびディザスタリカバリ機能を提供します。SnapMirror を使用すると、指定したソースボリュームに、それぞれ Ignition データをレプリケートできます。これにより、ディザスタリカバリに対応し、SLA を遵守できます。また、移行前の Ignition テストを実行することができます。SnapMirror では、ロールフォワード/ロールバックワードスナップショットを実行できます。更新はフルイメージの更新ではなく増分であるため、リカバリまでの時間が短縮され、停止時間が短縮されます。
まとめ
結論として、Ignition data historian とは、プログラムの運用に関する情報を収集し、問題を診断し、コストのかかるダウンタイムにつながる前に是正措置を講じることを可能にする強力なツールです。企業の IT システムと統合し、分散型でスケーラブルな履歴データベースを提供することで、傾向、パターン、機器のパフォーマンスに関するデータインサイトをもって、組織の業務改革を支援することができます。NetApp Tools とAmazon FSx for NetApp ONTAP ソリューションを Inductive Automation の Ignition と併用することで利害関係者間をつなぎ、工場の運用効率を向上させ、TCO を削減することができます。NetApp と AWS のパートナーシップにより、クラウドを活用した運用を改善し、収益を増やすことができます。データのサイロを排除し、グローバルに分散したオペレーションやシステムからのデータでビジネス上の意思決定をサポートし、ベンダーやパートナーとの重要な運用上のインサイトの共有にかかる時間を短縮し、組織全体で実用的なインサイトを提供する予測分析を実装し、工場全体の分析を実行して異なる拠点間のパフォーマンスを均一化させます。このソリューションは、製造業、石油・ガス業を問わず、オペレーションの改善、収益の増加、コストの削減を支援します。
翻訳はネットアップ合同会社の岩井様、監修はエンタープライズサポートの岡田が担当しました。