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Amazon Q Business ブラウザ拡張機能による組織の生産性向上
本記事は、2025 年 9 月 17 日に公開された Supercharge your organization’s productivity with the Amazon Q Business browser extension を翻訳したものです。翻訳はテクニカルアカウントマネージャーの竹林聡が担当しました。
Amazon Q Business のような生成 AI ソリューションは、従業員の働き方を変革しています。あらゆる業界の組織が、意思決定プロセスを加速するために、ますます散在するデータから価値のある洞察を引き出すことができるこれらのツールを採用しています。しかし、生成 AI ツールの導入には課題もあります。
生成 AI ソリューションの実装において、2 つの障壁が浮上しています。1 つ目は、ユーザーが慣れ親しんだワークフローを放棄し、データを手動で AI アシスタントに転送して分析する必要に迫られることです。これにより、不要な手間が生じ、効果が得られるまでの時間が長くなってしまいます。2 つ目は、一般的に使用されているソフトウェアに生成 AI ツールが組み込まれていないため、従業員が AI で生産性を大幅に向上できる機会を見出すことが難しいという点です。
職場向けに特化した生成 AI アシスタントの Amazon Q Business が登場し、企業データやエンタープライズシステムにシームレスに接続することで、会話を行い、複雑な問題を解決し、アクションを実行できるようになりました。Amazon Q Business は、従業員に関連情報とアドバイスへの即時アクセスを提供し、タスクを効率化し、意思決定を加速し、職場での創造性とイノベーションを促進します。最近、Amazon Q Business でブラウザ拡張機能をリリースし、現在 Amazon Q Business の購読者 (Lite および Pro) が利用できるようになりました。Amazon Q Business ブラウザ拡張機能により、Amazon Q Business の機能を直接ブラウザで利用できるようになり、コンテキストを認識した生成 AI サポートを受け、日常のタスクに対する即時のサポートを得ることができます。
本ブログでは、チームが AI を活用したインサイトとサポートにスムーズにアクセスできるように、この解決策を企業に実装する方法をご紹介します。
Amazon Q Business ブラウザ拡張機能のユースケース
Amazon Q Business ブラウザ拡張機能は、すべての Amazon 社員に展開されており、毎日数万人のユーザーの生産性を向上させています。このセクションでは、Amazon 社員が生産性を向上させるために Amazon Q Business ブラウザ拡張機能を使用している、最も効果的なユースケースをいくつかご紹介します。
Web コンテンツの分析
ビジネスチームと技術チームは、企業データ外にある各種レポート、競合分析、業界文書の情報を分析・統合して、インサイトと戦略を構築する必要があります。戦略に関する提言は、検証済みのデータソースと信頼できる業界情報に基づいていることを確認しなければなりません。さらに、複数のソースにまたがるパターンの特定は、時間がかかり複雑な作業です。Amazon Q Business ブラウザ拡張機能を使用することで、戦略担当者は人間の判断を活かしながら、信頼できる社内外のデータソースから数秒で業界のインサイトを生成し、トレンドを特定することができます。
以下のデモビデオをご覧ください:
コンテンツ品質の向上
Amazon Q Business ブラウザ拡張機能は、生成AI アシスタントでは容易に利用できない背景情報を組み込むことができる独自の機能を提供します。Amazon Q Business ブラウザ拡張機能を使用すると、通常の生成AI アシスタントでは利用できない複数の異なるソースを問い合わせに含めることで、コンテンツの作成と品質向上が可能になります。さまざまなソースからのコンテンツをリアルタイムで確認し、Web ベースのスタイルガイドやベストプラクティスを組み込んでコンテンツ作成を加速することができます。
以下のデモビデオをご覧ください:
ソリューションの概要
以下のセクションでは、組織で Amazon Q Business をすでに有効化している場合の Amazon Q Business ブラウザ拡張機能の使用開始方法について説明します。詳細については、Amazon Q Business ブラウザ拡張機能の使用設定をご覧ください。
前提条件
ブラウザ拡張機能をデプロイする前に、このセクションの前提条件の手順を完了してください。
Amazon Q Business アプリケーションの作成とユーザーのサブスクリプション設定
Amazon Q Business ブラウザ拡張機能は Amazon Q Business の機能であり、ブラウザ拡張機能を有効にする前に、お客様は Amazon Q Business アプリケーションを作成し、ユーザーのサブスクリプション登録を行う必要があります。Amazon Q Business の使用開始方法の詳細については、Amazon Q Business の使用を開始するをご覧ください。
Amazon Q Business のWeb機能のセットアップ
ブラウザ拡張機能は、Amazon Q Business の Web インターフェースクライアントを使用して、ユーザーの認証と Amazon Q Business の機能提供を行います。ブラウザ拡張機能を有効にする最初のステップは、Amazon Q Business の Web インターフェースを作成することです。すでにユーザー向けの Web インターフェースを作成している場合は、このステップをスキップできます。ただし、Amazon Q Business API を使用してカスタム Web インターフェースを開発している場合は、以下の手順に従って Amazon Q Business の Web インターフェースを作成してください:
- Amazon Q Business コンソールで、Amazon Q Business アプリケーションに移動します。
Web experience settings セクションには、Web エクスペリエンスがすでにデプロイされているかどうかが表示されます。Web エクスペリエンスがデプロイされていない場合、このセクションは空白で、「A web experience needs to be created before deploying.」というメッセージが表示されます。
- アプリケーションの詳細ページの上部で、Editを選択します。
- Outcome で、Web experience を選択します。
- Update を選択します。
この手順が完了するまでに数分かかる場合があります。
Web エクスペリエンスをデプロイすると、Amazon Q Business アプリケーションの詳細ページに、Web エクスペリエンスがホストされている URL が表示されます。この URL は後で使用するため保存しておいてください。
大規模言語モデルへのクエリ送信権限の付与
Amazon Q Business ブラウザ拡張機能は、ユーザーのプロンプトと共にWebページのコンテンツをファイル添付として渡すことで、ユーザーのWebページのコンテキストをクエリに含めることができます。ファイル添付機能は一般知識モードでのみ利用可能であるため、ブラウザ拡張機能の全機能を活用するには、Amazon Q Business の管理者がユーザーに対して大規模言語モデル (LLM) に直接クエリを送信する権限を付与する必要があります。この前提条件がない場合、ユーザーはブラウザ拡張機能を通じて自社の知識にのみアクセスでき、Webページのコンテンツについて Amazon Q Business に質問することはできません。
Amazon Q Business はユーザーの会話データを保存せず、クエリや会話を LLM のトレーニングに使用することはありません。会話はアプリケーション内に 30 日間のみ保存されます。以下のスクリーンショットに示すように、Amazon Q Business の Web インターフェースにアクセスし、ナビゲーションペインで Chat を選択することで、これらの会話を削除できます。
ユーザーが Amazon Q LLM に直接クエリを送信できるようにするには、以下の手順を実行します:
- Amazon Q Business コンソールで、アプリケーションに移動します。
- ナビゲーションペインで Admin controls and guardrails を選択します。
- Global controls セクションで、Edit を選択します。
- Allow end users to send queries directly to the LLM を選択します。
- Save を選択します。
これでユーザー向けにブラウザ拡張機能を有効化する準備が整いました。
Amazon Q Business ブラウザ拡張機能の設定
ブラウザ拡張機能の前提条件を完了したので、以下の手順に従ってユーザー向けにブラウザ拡張機能を有効化してください:
- Amazon Q Business コンソールで、アプリケーションに移動します。
- ナビゲーションペインの Enhancements から Integrations を選択します。
- Browser extensions セクションで、Edit を選択します。
- 有効にしたいブラウザ拡張機能のチェックボックスを選択します:
- Chromium チェックボックスは、Google Chrome と Microsoft Edge ブラウザをサポートする Chrome ストア拡張機能を有効にします。
- Firefox チェックボックスは、Firefox 向けアドオンを有効にします。
それぞれの Learn more セクションにあるリンクを使用して、拡張機能の Chrome または Firefox ストアページを表示することもできます。
- Save を選択します。
ユーザーは次回 Amazon Q Business の Web インターフェースにログインする際に、Amazon Q Business ブラウザ拡張機能のインストール手順が表示されます。まだの場合は、前のステップで取得した Web サービスの URL をユーザーと共有して、ブラウザ拡張機能をインストールするための手順に従えるようにしてください。
IAM フェデレーション認証を使用する場合の Amazon Q Business ブラウザ拡張機能の有効化
Amazon Q Business アプリケーションで外部のアイデンティティプロバイダー (IdP) を使用している場合、ユーザーがブラウザ拡張機能を使用できるようにするには、外部プロバイダーでブラウザ拡張機能を許可リストに追加する必要があります。ブラウザ拡張機能を有効にするには、IdP で以下の URL を許可リストに追加してください。
- Chromium ブラウザ拡張機能 (Google Chrome と Microsoft Edge に対応) の場合は、
https://feihpdljijcgnokhfoibicengfiellbp.chromiumapp.org/
を使用します - Mozilla Firefox ブラウザ拡張機能の場合は、
https://ba6e8e6e4fa44c1057cf5f26fba9b2e788dfc34f.extensions.allizom.org/
を使用します
Amazon Q Business アプリケーションの認証ソリューションとして AWS IAM Identity Center を使用している場合は、前述の手順を実行する必要はありません。
ブラウザ拡張機能の使用開始
Web エクスペリエンス URL をユーザーと共有すると、ユーザーはそれを使用してブラウザ拡張機能のストアページを見つけ、ブラウザ拡張機能をインストールできます。ユーザーは以下の手順に従うことができます。
- 管理者から提供された Amazon Q Business の Web インターフェースにログインします。
管理者があなたのためにブラウザ拡張機能を有効にしたことを知らせるバナーが表示されます。
- Install extension を選択します。
使用しているブラウザに応じて、リンクをクリックすると適切な Amazon Q Business ブラウザ拡張機能のストアページに移動します。
- Add to Chrome を選択するか、お使いのブラウザに応じたインストールオプションを選択します。
拡張機能をインストールすると、ブラウザのツールバーの Extensions の下に表示されます。ピンアイコンを選択して、ブラウザ拡張機能をピン留めすることができます。
ブラウザ拡張機能を開くと、次のスクリーンショットのようなサイドペインが表示されます。開いているタブから正しい Web エクスペリエンス URL を自動的に検出し、サインインをサポートします。検出されない場合は、管理者から提供された Web エクスペリエンス URL を Amazon Q URL セクションに入力し、Sign In を選択してください。
サインインすれば、すぐに使用できます!生産性を向上させるためにこの拡張機能をどのように活用できるか、先ほどの Amazon のユースケースに関するセクションを参考にしてください。
ユーザーに代わって Amazon Q Business ブラウザ拡張機能をデプロイ
一部の管理者は、導入を効率化し加速させるために、ユーザーのブラウザに Amazon Q Business ブラウザ拡張機能を直接インストールすることを選択する場合があります。
企業は、さまざまなモバイルデバイス管理ソフトウェアを使用し、ブラウザポリシーに関する要件も異なります。
Amazon Q Business ブラウザ拡張機能を導入するには、以下のリソースを参照してください:
- Mozilla Firefox ポリシー設定
- Google Chrome ポリシー設定
- Microsoft Edge:
エンタープライズ向け Amazon Q Business ブラウザ拡張機能のカスタマイズ
一部の管理者は、企業のニーズに合わせて Amazon Q Business ブラウザ拡張機能の外観と操作感をカスタマイズすることがあります。このセクションでは、拡張機能でサポートされているカスタマイズ機能と、ユーザーのブラウザで設定する対応するブラウザ拡張機能ポリシー値について説明します。
ブラウザ拡張機能のログインページにおける Amazon Q Business URL 入力の削除
ユーザーのサインイン時に Amazon Q Business Web エクスペリエンス URL の入力を求めたくない場合は、Q_BIZ_BROWSER_EXTENSION_URL
ポリシーにユーザー向けの適切な Amazon Q Business Web エクスペリエンス URL を設定することで、ユーザーに代わってデフォルト URL を設定できます。
ブラウザ拡張機能のツールバーアイコンの置き換え
ブラウザー拡張機能のツールバーアイコンを変更するには、ユーザーに対して以下のブラウザーポリシーキーのいずれかまたは複数の値を、PNG や SVG 画像の URL、または有効な datauri
に設定します。
Q_BIZ_BROWSER_EXTENSION_ICON_128
(必須)Q_BIZ_BROWSER_EXTENSION_ICON_16
(オプション)Q_BIZ_BROWSER_EXTENSION_ICON_32
(オプション)Q_BIZ_BROWSER_EXTENSION_ICON_48
(オプション)
ブラウザ拡張機能ウィンドウのロゴまたはアイコンの置き換え
ブラウザ拡張機能のウィンドウでロゴやアイコンを変更するには、Q_BIZ_BROWSER_EXTENSION_LOGO
ポリシーキーの値に、PNG または SVG 画像の URL、もしくはユーザー向けの有効な datauri
を設定してください。
拡張機能のウィンドウに表示される名前の変更
ブラウザ拡張機能のウィンドウ内で「Amazon Q」、「Amazon Q Business」、「AWS」、「Amazon Web Services」への参照を任意の名前に置き換えるには、Q_BIZ_BROWSER_EXTENSION_ENTERPRISE_NAME
ポリシーキーの値にユーザー向けの新しい名前を設定します。
ブラウザ拡張機能のマウスオーバー時のテキストのタイトル変更
ブラウザ拡張機能にマウスオーバー時に表示されるテキストのタイトル (前のスクリーンショットで示した「Amazon Q Business has access to this site」) を変更するには、Q_BIZ_BROWSER_EXTENSION_TITLE_NAME
ポリシーをユーザーに適切な文字列に設定してください。
ブラウザ拡張機能のフッターにある AI ポリシーリンクの置き換え
ブラウザ拡張機能のフッターにあるリンクテキストを置き換えるには、Q_BIZ_BROWSER_EXTENSION_FOOTER_POLICY_NAME
をユーザーに適した文字列に設定してください。
ブラウザ拡張機能のフッターにある URL を置き換えるには、Q_BIZ_BROWSER_EXTENSION_FOOTER_POLICY_URL
をユーザーにとって適切な URL に設定してください。
おめでとうございます!あなたとあなたの組織は、ブラウザ上の作業に対する 生成AI による支援を受ける準備が整いました。
リソースの削除
このセクションでは、ブラウザ拡張機能を無効化または削除する手順、およびユーザーのデプロイメントとカスタマイズを元に戻す手順について説明します。
Amazon Q Business コンソールを使用した Amazon Q Business ブラウザ拡張機能の無効化
Amazon Q Business ブラウザ拡張機能は、ユーザーがブラウザから拡張機能を削除する前でも、Amazon Q Business コンソールからいつでも無効化できます。手順は以下の通りです:
- Amazon Q Business コンソールで、Applications に移動します。
- ナビゲーションペインの Enhancements から Integrations を選択します。
- Browser Extensions セクションで、Edit を選択します。
- 無効にしたいブラウザ拡張機能のチェックボックスを外します:
- Chromium チェックボックスを外すと、Google Chrome と Microsoft Edge ブラウザをサポートする Chrome ストア拡張機能が無効になります。
- Firefox チェックボックスを外すと、Firefox ブラウザ用のアドオンが無効になります。
- Save を選択します。
ユーザーに代わって Amazon Q Business ブラウザ拡張機能のデプロイを元に戻す
企業は、さまざまなモバイルデバイス管理ソフトウェアを使用し、ブラウザポリシーに関する要件も異なります。
ブラウザポリシー設定を更新してブラウザ拡張機能をデプロイした場合は、各ブラウザのポリシー設定に関するドキュメントに従って、これらのポリシーを削除する必要があります。
- Mozilla Firefox ポリシー設定
- Google Chrome ポリシー設定
- Microsoft Edge:
このブログで先述したように、ブラウザポリシーを変更して Amazon Q Business ブラウザ拡張機能をカスタマイズした場合、ブラウザポリシー設定から対応するポリシーエントリを削除するだけで、これらのカスタマイズを元に戻すことができます。
まとめ
このブログでは、Amazon Q Business ブラウザ拡張機能を使用して、チームに AI を活用したインサイトとサポートをスムーズに提供する方法を紹介しました。このブラウザ拡張機能は、Lite サブスクリプションの一部として、US East (N. Virginia) および US West (Oregon) の AWS リージョンで Mozilla、Google Chrome、Microsoft Edge に対応しています。ブラウザ拡張機能の使用に追加コストはかかりません。
まず、Amazon Q Business コンソールにログインし、Amazon Q Business アプリケーション用のブラウザ拡張機能をセットアップします。詳細については、Amazon Q Business ブラウザ拡張機能の使用設定をご覧ください。
著者について
Firaz Akmal は Amazon Q Business のシニアプロダクトマネージャーで、AWS に 8 年以上在籍しています。顧客の声を代弁し、AWS での検索や生成 AI のユースケースの変革を支援しています。仕事以外では、太平洋岸北西部の山々で過ごしたり、娘の視点を通して世界を体験することを楽しんでいます。
Abhinand Sukumar は、AWS の Amazon Q Business のシニアプロダクトマネージャーとして、革新的な生成 AI ソリューションのプロダクトビジョンとロードマップを推進しています。Abhinand は、ブラウザ拡張機能を含む統合を成功させるため、お客様とエンジニアリングチームと緊密に協力しています。教育、人工知能、デザイン思考に深い情熱を持ち、生成 AI エクスペリエンスと AI/ML 教育デバイスに関する専門知識を有しています。AWS に入社する前は、ネットワーク業界でエンベデッドソフトウェアエンジニアとして勤務し、テクノロジー分野で5-6年の経験があります。