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MCP を用いた Amazon Connect の監視運用準備
はじめに
Amazon Connect は、組織が大規模に優れた顧客体験を提供することを可能にする、使いやすいエンタープライズクラウドコンタクトセンターです。Amazon Connect の主要なメリットの一つに、Amazon CloudWatch とのネイティブ統合があります。この統合は運用状況を分析し、問題が顧客に影響を及ぼす前にアラートを受けることができる強力な機能を提供します。これにより、オンプレミス展開では実現が困難な規模とスピードでインサイトを提供します。
Model Context Protocol (MCP) を使えば、生成 AI を活用し、コンタクトセンター分析をさらにアクセスしやすく効率的にすることができ、これらの強力な分析機能を強化することができます。MCP により、AI エージェントを Amazon Connect の組み込み監視機能やサードパーティのデータソースと統合し、運用監視準備のための拡張フレームワークを作成できます。Amazon Q Developer などのツールを通じ、組織はかつてないほど簡単かつ迅速にコンタクトセンター運用に関するさらに深いインサイトにアクセスできるようになりました。
Amazon Connect のエンタープライズグレードの機能と MCP の AI による自動化の強力な組み合わせは、日常的な運用タスクを合理化されたインテリジェントなワークフローに変えます。フロー効率の分析、監視設定の最適化、使用パターンの調査などのタスクは、自然言語インタラクションを通じてより直感的になります。このブログでは、MCP が Amazon Connect のオブザーバビリティの強みをどのように増幅し、コンタクトセンター運用準備の次世代アプローチによって、組織がどのような実用的なユースケースを実現できるかを探ります。
ユースケースを通じた MCP の理解
Amazon Connect を運用する組織に参加したばかりのビジネスアナリスト、John を想像してみましょう。彼のタスクは、問い合わせフローの確認と監視設定の最適化です。このユースケースはまさに Amazon Connect の強力な機能を MCP がどのように強化するかを示す完璧な例です。Amazon Connect は包括的な Amazon CloudWatch 統合と監視ツールを標準で提供していますが、MCP は自然言語でのやり取りを通じて、これらの機能をさらにアクセスしやすくします。
Amazon Connect のネイティブなオブザーバビリティ機能により、John は既に詳細なフローログ、パフォーマンスメトリクス、監視機能にアクセス可能です。加えて MCP によって、John はこれらの強力なツールと会話型 AI を通じてやり取りすることができます。この強化された体験は、生産性とインサイトの生成を劇的に向上させます。MCP を生成 AI と組み合わせて使うことで、John は Amazon Connect の堅牢な監視インフラストラクチャをより直感的に活用できます。自然言語で質問し、プラットフォームの既存の強みを基盤とした包括的な分析を受け取ることができるのです。
プロンプト:
'aws-knowledge MCP' を使用してAmazon Connectフローのベストプラクティスを参照し、'aws-api-mcp' を使用して 'xyz' Amazon Connectインスタンスの 'AC-Blog-CallBack-Welcom-1' フローをレビューしてください。フィードバックを提供し、CloudWatchアラームも推奨してください。
分析結果:
MCP クライアントのライフサイクル
MCP は次のようなライフサイクルで、ユーザープロンプトを実行可能な結果に変換するため、連携するコンポーネントをオーケストレーションします。このプロセスは 5 つの主要段階で構成されます :
- 検出フェーズ:通常、個人のラップトップやワークステーション上で実行される MCP クライアントは、最初に利用可能な MCP サーバーと関連ツールを発見します。この初期の処理が、その後のすべてのインタラクションの基盤を確立します
- ユーザーインタラクション:ユーザーは MCP クライアントのインターフェース(例:VS Code)を通じてクエリやプロンプトを入力します。これらのプロンプトは、シンプルなリクエストから Amazon Connect 管理のための複雑な運用コマンドまで多岐にわたります
- LLM 分析:Amazon Bedrock を通じてアクセスされるような基盤モデルが、インテリジェントなオーケストレーターとして機能し、3 つの部分からなる分析を実行します
- ユーザーのプロンプトの評価
- 利用可能な MCP サーバーの調査
- 関連ツールとその説明を評価します。この分析に基づいて、LLM はユーザーのリクエストを満たす最適なパスを決定する包括的な実行計画を作成します
- ツール呼び出し:MCP クライアントは、LLM の実行計画に基づいて適切なツールの呼び出しを開始します。この段階で、ユーザーの要求が具体的なツール操作に変換されます
- 実行:最終段階で、MCP サーバーが必要なバックエンド API とコードの実行により、要求された操作を実行します。これには、AWS のドキュメントへのアクセス、AWS サービス操作の実行、推奨事項の生成など、さまざまなアクションが含まれる可能性があります
このような合理的なライフサイクルにより、実行のチェーン全体を通じ、セキュリティと運用の整合性を維持しながら、ユーザーリクエストの効率的な処理することができます。
Amazon Connect のオブザーバビリティのための Amazon Q Developer を使用した MCP の設定
MCP は、AI アプリケーションを外部データソースやツールと接続するための標準化されたアプローチを提供します。Amazon Connect のオブザーバビリティにおいては、MCP は組織による自然言語クエリを通じた AI による分析を利用可能にし、従来の手動プロセスを自動化されたワークフローに変換できます。
MCP は、Amazon Q Developer を使用した VS Code、Amazon Q CLI、Claude Code、Kiro、およびカスタム統合を含む複数のクライアント実装でサポートされています。この投稿では、VS Code と Amazon Q Developer を使って、 AWS MCP サーバーを設定し、会話型 AI を通じて包括的な Amazon Connect の分析を行う方法を説明します。
前提条件とセットアップ
MCP による Amazon Connect のオブザーバビリティを設定するためには、以下の環境が必要です。
- uv パッケージマネージャーがインストールされた Python 3.10 以上の環境
- Amazon Q Developer 拡張機能が設定された Visual Studio Code(VS Code)
- Amazon Connect 、Amazon CloudWatch 、AWS CloudTrail にアクセス権限をもつ AWS 認証情報
- Amazon CloudWatch へのロギングが有効な Amazon Connect インスタンス
MCP サーバーの構成
AWS MCP Servers リポジトリは、Amazon Connect のオブザーバビリティに使用できる複数の MCP サーバーを提供しています:
- AWS API MCP Server は、Amazon Connect インスタンス管理と設定分析を含む AWS サービスとの直接的なやり取りを可能にします
- CloudWatch MCP Server は、パフォーマンス分析とトラブルシューティングに不可欠なメトリクス、ログ、監視データへのアクセスを提供します。※注意: このサーバーには、AWS アカウントとリージョンに対して設定された AWS プロファイルが必要です
- AWS Documentation MCP Server は、AWS のベストプラクティスと実装ガイダンスへのアクセスを提供します
MCP サーバーの設定
次のように Amazon Q Developer MCP 設定でこれらのサーバーを設定してください。
MCP サーバーの設定には2つの方法があります。
方法 1:Amazon Q Developer GUI を使用する(推奨)
- MCP 設定へのアクセス
- VS Code を開く
- Amazon Q Developer のパネルを開く
- Amazon Q Developer 内のチャットパネルを開く
- 「ツールアイコン」(歯車またはレンチのシンボル)をクリックして MCP 設定にアクセス
- MCP サーバーの追加または編集
- 新しいサーバーの追加:プラス(+)マークをクリック
- 既存のサーバーの編集:リストからサーバーを選択
- 設定のスコープの選択
- グローバル(すべてのプロジェクトに適用):設定は
~/.aws/amazonq/mcp.jsonに保存されます - ローカル(ワークスペース・現在のプロジェクトのみに適用):設定は
.amazonq/mcp.jsonに保存されます
- グローバル(すべてのプロジェクトに適用):設定は
- サーバーの詳細設定 – 各 MCP サーバーのドキュメントガイダンスに従ってください:
- 名前:わかりやすい名前を入力します(例:「aws-api」、「cloudwatch」)
- トランスポート:通信プロトコルを選択します(stdio)
- コマンド:実行コマンドを提供します(例:uv run aws-api-mcp)
- 引数:必要に応じて必要な引数を追加します
- 環境変数:必要に応じて AWS_REGION、AWS_PROFILE を設定します
- 「保存」をクリックして変更を適用します
方法 2: JSON ファイルを手動で設定する
手動で設定したいユーザーは、MCP 設定ファイルを直接編集することも可能です。
グローバル設定ファイル (~/.aws/amazonq/mcp.json):
{
"mcpServers": {
"cloudwatch-mcp-server": {
"autoApprove": [],
"disabled": false,
"command": "uvx",
"args": [
"awslabs.cloudwatch-mcp-server@latest"
],
"env": {
"AWS_PROFILE": "connect-observability",
"FASTMCP_LOG_LEVEL": "ERROR"
},
"transportType": "stdio"
},
"aws-documentation-mcp-server": {
"command": "uvx",
"args": [
"awslabs.aws-documentation-mcp-server@latest"
],
"env": {
"FASTMCP_LOG_LEVEL": "ERROR",
"AWS_DOCUMENTATION_PARTITION": "aws"
},
"disabled": false,
"autoApprove": []
},
"cost-explorer-mcp-server": {
"command": "uvx",
"args": [
"awslabs.cost-explorer-mcp-server@latest"
],
"env": {
"FASTMCP_LOG_LEVEL": "ERROR",
"AWS_PROFILE": "connect-observability"
},
"disabled": false,
"autoApprove": []
},
"aws-api-mcp-server": {
"command": "uvx",
"args": [
"awslabs.aws-api-mcp-server@latest"
],
"env": {
"AWS_REGION": "us-east-1",
"AWS_API_MCP_PROFILE_NAME": "connect-observability"
},
"timeout": 60000000,
"disabled": false
}
}
}
ローカル/ワークスペース設定ファイル (プロジェクトルートの .amazonq/mcp.json):プロジェクト固有の設定が必要な場合、保存先を変えて同じ JSON 構造を使用します。
Amazon Connect とのデータ統合
MCP サーバーは、標準的な AWS API や Amazon CloudWatch との統合を通じて Amazon Connect のデータにアクセスします。主なデータソースには以下が含まれます:
- コンタクトフローのログ:
/aws/connect/contactflow/[instance-id]に含まれる実行の詳細とパフォーマンスメトリクス - エージェントイベントログ:リアルタイムのエージェントのアクティビティとステータス変更
- AWS CloudTrail イベント:セキュリティ分析のための管理アクションと API 呼び出し
- Amazon Connect メトリクス:履歴パフォーマンス データと使用パターン
包括的な分析を有効にするため、AWS 認証情報に connect:List*、connect:Describe*、cloudwatch:GetMetricStatistics、および logs:FilterLogEvents の権限が含まれていることを確認してください。
プロンプト例
MCP の強力な点の一つは、よく練られたプロンプトを通じ、役割に応じた複雑なタスクを処理できる点です。以下の例は、組織内の異なる役割の人々が MCP を活用して Amazon Connect の運用を強化する方法を示しています。これらのプロンプトは、セキュリティ監視からパフォーマンス最適化まで、既存の機能を強化する MCP の汎用性を示しています。セキュリティ分析の強化、技術的異常の調査、アラーム設定の最適化、ユーザー管理、使用傾向の分析など、これらのプロンプトは MCP を使った独自の実装のための実用的なテンプレートとしても活用できます。
- 例 1 (セキュリティ分析者向け)
Amazon Connect の CloudTrail logs を解析して、exceptionを報告して - 例 2 (開発者向け)
Amazon Connect インスタンス xyz のアノマリを CloudWatch のフローログから検索して、解決策を提案して - 例 3 (開発者向け)
Amazon Connect インスタンス xyz に適したCloudWatch metrics の Alarm を推奨して - 例 4 (開発者向け)
Amazon Connect インスタンス 'xyz' のユーザーを 'abc' にコピーし、その結果を報告して - 例 5 (ビジネスアナリスト向け)
Amazon Connect の利用料を 12 か月分分析して。最もコストが高かった月について、顧客の通話パターンを報告して
最適化とベストプラクティス
- クエリ設計: 応答精度を最大化し、処理時間を最小化するために、プロンプトを、特定の時間範囲、リソース識別子、分析目標を含んだ構造にします。例えば:
- 「’xyz’ Amazon Connect インスタンスの CloudWatch ログをスキャンする」の代わりに
- 「’xyz’ Amazon Connect インスタンスの過去 30 日間のフローログをスキャンする」を使用します
- リソース管理: 分析機能を維持しながらコストを管理するため、AWS APIの使用パターンを監視し、適切なサービスクォータを設定します
- パフォーマンスチューニング : AI によるインサイトの恩恵を受ける複雑な分析タスクには MCP を使用、日常的なメトリクス可視化には従来の監視ダッシュボードを活用します
- バッチ処理: 定期的なオブザーバビリティのタスクについては、API クォータへの影響を最小化するために、アクセスが集中しない時間帯に分析を予定することを検討します
- セキュリティの考慮: MCP サーバー構成に最小権限アクセスの原則を実装し、セキュリティ体制を維持するため、権限を定期的に監査します
クリーンアップとリソースの管理
MCP 設定を削除する際は、Amazon Q Developer 設定からサーバー定義を削除、uv uninstall を使用して関連パッケージをアンインストール、そして実装中に作成された一時的な AWS リソースをクリーンアップします。
まとめ
MCP は、自然言語インターフェースを通じた AI を活用した分析を可能にし、Amazon Connect の強力なオブザーバビリティ機能を強化します。この方法によって、Amazon Connect の強力な CloudWatch 統合とエンタープライズグレードの監視機能を基盤にした高度な分析を、あらゆる規模の組織にとってさらにアクセスしやすくします。
Amazon Connect で MCP を活用する組織は、既存の分析機能の強化、インサイト生成の加速、運用監視準備の強化を期待できます。標準化されたプロトコルによって、プラットフォームのスケーラビリティと信頼性を複数のインスタンス間で維持しながら、Amazon Connect のネイティブ機能とシームレスに統合できます。
Amazon Connect の運用準備のため、 MCP の利用を開始するには、強化されたコンタクトフロー分析やインテリジェントなパフォーマンス監視など、既存の CloudWatch データの活用に焦点を絞ったユースケースから始めましょう。プラットフォームへの習熟度が高まったら、Amazon Connect のエンタープライズ基盤を基に構築された包括的なセキュリティ監視、コスト最適化、自動化された運用ワークフローを含む実装に拡張していきましょう。
翻訳はテクニカルアカウントマネージャー高橋が担当しました。原文はこちらです。


