AWS Startup ブログ
CTO・VPoE の知見を共有し、より良い IT の未来を創ろう【CTO Night & Day 2021 Online】
CTO Night & Day は、CTO や VPoE など技術の立場から企業経営に関与するリーダーのための招待制カンファレンスです。2014 年から続く本カンファレンスでは、参加者同士によるディスカッションや事例共有などを通じて、世代や業種を超えた幅広い知識の交流が行われてきました。日常の業務から離れて技術リーダー同士の交流を図り、コミュニティを活性化させることで業界全体の発展を目的としています。
例年はオフライン形式で開催されていた CTO Night & Day ですが、2021 年は昨年に引き続き、コロナ禍の状況を鑑みて 12 月 16 日にオンライン上で開催されました。本記事では、その模様をダイジェスト形式でお届けします。
AWS re:Mind for CTOs
カンファレンス本編の開始前に実施されたのは、AWS スタートアップソリューションアーキテクト 塚田 朗弘と神崎 翔一朗による AWS re:Mind for CTOs です。
2021 年のリリースや AWS re:Invent 2021 での発表内容など、AWS の最新アップデート情報をピックアップして伝えられました。AI・機械学習やデータ分析、セキュリティ、Web・モバイルアプリケーション、動画配信・ビデオ会議システムなど、さまざまなシステムの開発・構築に活用できる情報が語られました。
※※※ 資料はこちら ※※※
塚田と神崎が各種アップデートの概要を述べつつ、小気味よいかけ合いをしながらセッションは進行します。視聴者がスタートアップの CTO・VPoE であることや、塚田・神崎自身もスタートアップで働いた経験があることをふまえ、各種サービスが具体的にスタートアップのどのような課題を解決するのかを実例を交えながら解説しました。
発表された内容のなかでも特筆すべきは、ノーコードで機械学習モデルが作れる Amazon SageMaker Canvas や、モバイルアプリケーションやウェブアプリケーションを構築するための開発プラットフォームである AWS Amplify と CDK との連携機能の充実など、開発や運用を効率化・省力化する数多くのアップデートがあったこと。
そして、コスト効率やパフォーマンス効率に優れた AWS Graviton3 プロセッサ、
Amazon DynamoDB のコストを最大 60% 削減できる Standard-IA テーブルクラスなど、コスト削減に寄与するいくつものアップデートがあったことです。
スタートアップは多くの場合、限られた人員と資金でサービスの開発・運用を行う必要があります。今回発表された AWS の各種アップデートはそうした課題を解決へと導き、企業や事業、サービスの成長に寄与します。
オープニング
そして、いよいよカンファレンスの本編が始まりました。まずは AWS スタートアップ事業開発部 本部長 畑 浩史とスタートアップソリューションアーキテクト松田 和樹によるオープニングです。松田の「これより CTO Night & Day 2021 Online を始めます。みなさん、よろしくお願いします」という開会の挨拶の後、畑が本カンファレンスの趣旨について解説しました。
かつて、日本では CEO や CFO などの方々が一同に介するカンファレンスは存在していたものの、同等の CTO 向けのカンファレンスが存在していませんでした。そこで、参加者同士によるディスカッションや事例共有、交流によって業務に役立つ気づきや発見を生み出すことや、CTO や VPoE のコミュニティを構築・活性化することを目的として、完全招待制のカンファレンスである CTO Night & Day が開催されるようになったのです。
また、今回はオンラインでの開催のため、さまざまなグッズの詰まったウェルカム・ボックスを事前に参加者へとお送りしたことを松田は解説しました。ボックスの中身はドリンクやオリジナルパーカー、軽食・スナックなど。「これらのグッズを活用しながらカンファレンスを楽しんでください」と松田は述べました。そして「CTO・VPoE のみなさま、ぜひお互いに親睦を深めていただければ幸いです」と語り、オープニングセッションを終えました。
CTO シャッフルミートアップ
次に実施されたのは、各 CTO・VPoE によるシャッフルミートアップです。参加者の方々をランダムにグループ分けし、自己紹介や近況報告を兼ねたオンラインでのミートアップを実施。久しぶりの交流や新たな出会いなど、ネットワーキングをお楽しみいただきました。
キーノートスピーチ「CTO の未来」
次はキーノートスピーチの「CTO の未来」です。スピーカーはグリー株式会社 CTO・デジタル庁 CTO の藤本 真樹 氏と米国トレジャーデータ社(Treasure Data Inc.)CEO の太田 一樹 氏。 モデレーターは AWS スタートアップソリューションアーキテクト 塚田 朗弘です。日米の CTO を取り巻く状況や社会に期待される CTO の役割など、多岐にわたるテーマで議論が行われました。
セッション序盤では、日本における CTO の役割や置かれている状況、そして過去から現在にかけての CTO 像の変化などに言及。かつて、日本の IT 企業では VPoE や CPO のロールが存在しておらず、開発組織からプロダクトまで、すべてを CTO が統括する必要がありました。しかし、近年それらのロールが普及した影響などから、CTO に求められる役割や歩むべきキャリアも変化していることが語られます。
また、海外のマーケットにビジネスを展開する意義も議論されました。ビジネスの継続的な成長を実現するには、日本だけではなく海外にも目を向けてサービスを運営することは必須です。しかし、他国への展開に成功している日本の IT 企業は少ないのが現状。この状況を変えるための方法について議論が交わされました。その過程で、太田 氏がアメリカに渡った経緯や、藤本 氏がデジタル庁 CTO に就任した理由なども語られました。
他にも、日本の IT 企業をさらに成長させるために CTO が取り組むべきこと、エンジニアリングのバックグラウンドを持つ人間が企業経営に携わる意義、登壇者 2 名が今後目指す目標などが語られました。いずれのテーマも議論は尽きません。業界をさらに良くするためのアイデアや CTO というロールのあり方など、多種多様な意見が交わされました。
日本を代表する CTO である藤本 氏と、自らのキャリアにおいて CTO と CEO 両方のロールを経験した太田 氏。幾多の経験を積んだ 2 人だからこそ話せる、視座の高いエピソードが印象的なセッションとなりました。
スペシャルセッション「”FOR THOSE WHO DARE”~挑戦する CTO のためのワークショップ」
次は人材育成や能力開発が専門のパフォーマンスコンサルティング会社である株式会社フィロソフィアジャパン 代表取締役の池田 哲平 氏が登壇。スペシャルセッション「”FOR THOSE WHO DARE”~挑戦する CTO のためのワークショップ」を実施しました。
本セッションは、エベレスト登頂を題材とした臨場感あふれるインタラクティブなワークショップです。参加者たちは数人 1 組のグループとなり、エベレスト登頂チームのロールプレイングをします。その過程で、グローバルスタンダードのリーダーシップ・意思決定の方法論について、協力し合いながら学んでいきます。
各グループはワークショップ序盤で、プロジェクトを成功させるための“行動規範”を策定。その後、エベレスト登頂の過程では、数多くの出来事やトラブルが発生しました。そのたびに各グループは「自分たちは何を目指しているのか」「行動規範に則るならば、どのようなアクションを起こすべきか」といった基本原則に立ち返り、意思決定をしていました。
このプロセスはスタートアップの事業運営・組織運営と似ています。スタートアップでは予期せぬ事態や困難な状況が頻繁に発生します。そうしたときこそ、自社のミッションやビジョン、バリューと向き合い、自分たちの進むべき方向を見定めることが重要なのです。
最後に池田 氏は「みなさんの事業でも、困難な決断をしなければならない局面が必ずやってくるはずです。そんなとき、このワークショップで学んだことを思い出してください。私が解説したことがみなさんの一助になれば幸いです」と結び、セッションを終了しました。
パネルディスカッション「CTO が考えるダイバーシティ & インクルージョン」
最後に実施されたのは、パネルディスカッション「CTO が考えるダイバーシティ & インクルージョン(多様性と一体性)」。スピーカーは株式会社Viibar 開発執行役員の浅見 亜希子 氏、株式会社Cake.jp 執行役員CTOの新多 真琴 氏、Aiロボティクス株式会社 取締役 CTO の桑山 友美 氏。モデレーターは LayerX 代表取締役 CTO の松本 勇気 氏です。どのような年齢や性別、人種、価値観の人々にとっても働きやすい環境を作るには何が必要か、CTO の目線からディスカッションしました。
セッション内では複数のテーマに基づいて議論が行われました。例えば、「これまでのキャリアで覚えた違和感」について。スピーカー 3 名が、女性であるからこそ経験した大変さや被った不利益などについて言及しました。そして、何をきっかけにその課題を解消し、自分自身のキャリアを好転させたのかなども併せて述べました。
前述の課題と関連して、「バイアスと向き合う」という重要なテーマについても議論されました。人間は誰しも、アンコンシャス・バイアス(無意識に抱いてしまっている、ものの見方やとらえ方の歪みや偏り)を持っています。それにより、無自覚なままにした発言や行動が、誰かにネガティブな影響を与えてしまう可能性があるのです。他にも、バイアスによって無意識のうちに自分自身の行動に制約をかけてしまうケースもあります。
浅見 氏は過去の職場で「男性をマネジメントする際には、相手の面子を立てるような言動をしてほしい」という旨の依頼をされたことを言及。また、新多 氏は技術イベントなどに参加した際に、他の参加者から「(女性であるため)エンジニアに見えなかった」と言われたことに、性別や外見によるバイアスを感じたといいます。そして桑山 氏は、過去に会った人々が「女性が CTO を担っていること」に対して、驚いたり特別扱いしたりといったケースがあったと述べました。
こうした課題を、私たちは解決していく必要があります。重要なのは「思考する際に自分自身も必ずなんらかのバイアスがかかっている」のを自覚すること。そして、バイアスに気づくための検査や、改善のための施策に取り組むことです。セッション後半では、視聴者から寄せられた質問に各登壇者が回答しました。多数の質問が投稿されており、ダイバーシティ & インクルージョンというテーマに対する、CTO・VPoE の方々の関心の高さが伺えました。あらゆる人々にとって働きやすい環境を実現することの意義が、あらためて伝わるようなセッションとなりました。
おわりに
こうして CTO Night & Day 2021 Online は幕を閉じました。昨年に引き続きオンラインでの開催となった本カンファレンスは、今年も大きな盛り上がりを見せました。
技術の立場から企業経営に関与するリーダーたちは、重要な意思決定を日々行っています。彼ら・彼女らが担う業務は極めて難易度が高く、わかりやすい正解が存在しないケースもままあります。だからこそ、CTO・VPoE 同士がその知見を共有して、事業や開発組織と向き合うための“指針”を見つけ出すことには、大きな価値があります。
この記事をご覧になって「各企業の CTO・VPoE の方々と議論したい」「技術リーダーとの交流を通じて業界全体を発展させていきたい」と思われた方は、ぜひ次回の CTO Night & Day にご参加いただければ幸いです。
運営メンバー一同