AWS Startup ブログ

わずか数時間でプロトタイプを構築! AWS × Vercel で開発する生成 AI 駆動型アプリ【開催レポート】

アマゾン ウェブ サービス ジャパン(以下、AWS ジャパン)は 2025 年 10 月 23 日に、ハンズオンイベント「Vercel を活用した生成 AI 駆動型アプリケーション開発をしよう!」を AWS Startup Loft にて開催しました。

本イベントは、AWS ジャパンのパートナーである Vercel 社およびクラスメソッド社の協力のもと実施されました。UI からバックエンドまでの開発プロセス全体を、AI ツールによって加速させる手法を実践形式で学ぶことを目的としています。

Vercel v0(以下、v0)や Amazon Q Developer を活用した開発手法に加え、Vercel AI SDKAmazon Bedrock を連携させてアプリケーションに動的な AI 機能を統合する方法を、参加者の方々に体験していただきました。

【スピーカー】

  • クラスメソッド株式会社 ゲームソリューション部 ゲームエンジニアチーム マネージャー 豊島 真也 氏
  • クラスメソッド株式会社 営業統括本部 東日本営業部 広域営業部2課 平田 梨紗 氏
  • Vercel Inc. APJ カスタマーサクセスチームリーダー 兼 日本カントリーマネージャー 石原 ニコラス 氏
  • AWS ジャパン Startup Partner Solutions Architect 前田 進吾
  • AWS ジャパン Startup Solutions Architect 佐藤 雄太

開会挨拶 & AWS セッション

AWS ジャパン 前田 進吾

まず、本イベントの進行役を務める AWS ジャパンの前田 進吾が登壇。ハンズオンのゴールを「生成 AI を活用し、アイデアを実験する速度を向上させる手法を学ぶこと」だと解説しました。

続いて前田は、スタートアップを取り巻く競争環境の変化に言及しました。かつて優位性の源泉だった「速く作ること」は、生成 AI の登場で均質化していくと予測し、これからの時代は「顧客の真の課題をいかに解決するか」が重要になると訴えました。

こうした課題解決を技術面から支えるのが、AWS の生成 AI 関連サービスです。前田はその全体像を、役割に応じた 3 つの層で紹介しました。

1 つ目は、ソフトウェア開発生成 AI アシスタント Amazon Q Developer などが含まれる、生成 AI を「使う人向け」のアプリケーション層。2 つ目は、多様な基盤モデルを API 経由で利用できる Amazon Bedrock のような、生成 AI でアプリケーションを「作る人向け」のツール層。そして 3 つ目が、モデル開発を支えるインフラ層です。今回のハンズオンでは、特にアプリケーション層とツール層のサービスを利用します。

加えて前田は、スタートアップがビジネスを加速させる上で、AWS のエコシステム全体を活用することの重要性を説きました。その核となるのが、AWS がグローバルで展開する AWS パートナーネットワーク(以下、APN)です。APN に参加する企業は、AWS からビジネス、技術、マーケティングの各面でさまざまなサポートを受けることができます。現在、世界で 13 万社以上のパートナーが参加しています。

最後に「この後のクラスメソッド社と Vercel 社のセッション、そしてハンズオンを通じて、ビジネスを加速させるヒントを掴んでいただければ幸いです」と語り、セッションを締めくくりました。

クラスメソッド様 セッション

クラスメソッド株式会社 平田 梨紗 氏

続いて、クラスメソッド社の平田 梨紗 氏が登壇しました。同社は APN において最上位である AWS プレミアティアサービスパートナーに、2014 年から継続して認定されています。

事業の中核をなすのが、AWS の導入から運用、コスト最適化までを総合的に支援するサービスであるクラスメソッドメンバーズです。技術支援、請求代行、セキュリティ対策などをワンストップで提供します。

支援事例として、平田 氏は星野リゾート社のケースを紹介。インフラのコスト最適化が急務の状況下で、インスタンスタイプの最適化や割引プランの活用などを通じて、AWS 利用費の約 3 割削減を実現しました。これにより浮いた費用を新たなビジネス投資に繋げるなど、単なるコスト削減に留まらない、顧客の事業成長への貢献を行ったのです。

加えて、2025 年 6 月より Vercel 社とのパートナーシップ提携を開始したことを紹介しました。開発者向けプラットフォーム Vercel および v0 の再販、コンサルティングサービスの提供により、迅速で効率的な Web 開発環境の実現を支援します。

クラスメソッド株式会社 豊島 真也 氏

次に、クラスメソッド社の豊島 真也 氏が登壇。豊島 氏は v0 を「自然言語で Web アプリの UI を生成する、AI エージェントベースのツール」と紹介し、その強みは「動作するプロトタイプを、開発の初期段階で生成・共有できること」にあると述べました。

これにより、関係者間の認識のズレや手戻りを劇的に減らし、迅速な開発を実現できます。v0 は GitHub とのシームレスな連携も可能で、プロジェクトのセットアップやデプロイといった手間を大幅に削減し、開発速度を向上させます。

最後に豊島 氏は、クラスメソッド経由で v0 を導入するメリットとして、日本語でのサポートや円建て請求に加え、AWS や他の SaaS と組み合わせた総合的な支援が可能である点を解説しました。

Vercel 様 セッション

Vercel Inc. 石原 ニコラス 氏

続いて、Vercel 社のニコラス 氏が登壇。同社の提供するシステムが、大きく 2 つのコンポーネントから構成されていると解説しました。

1 つ目は、開発者体験を最大化する Developer Experience Platform です。プレビュー機能によるスムーズなレビュープロセスや、安全かつ迅速なデプロイと容易なロールバックを可能にする仕組みなどを提供しており、開発者はインフラの複雑さを意識することなく創造的な作業に集中できます。

2 つ目は、その土台となる Managed Infrastructure です。ニコラス氏は、このインフラが AWS を全面的に活用して構築されていると明かし、「世界で最も信頼されるクラウド上で、安心して開発ができる環境を提供しています」と、その堅牢性を強調しました。

また、Vercel は従来の Frontend Cloud から AI Cloud へと進化を遂げたと述べ、AI 開発のハードルを下げるソリューション群を紹介しました。

まず、AI 開発で大きな課題となるコスト面に対しては、2 つの画期的な機能を解説しました。1 つは Fluid Compute です。これは、リクエストごとに関数インスタンスを起動する従来の方式とは異なり、リソースに余裕がある限り 1 つの関数インスタンスで複数のリクエストを処理する仕組みです。

もう 1 つは Active CPU Pricing です。これは、関数が実行されている総時間ではなく、実際に CPU が計算に使用された時間のみに課金する方式であり、特に外部 API のレスポンスを待つことが多い AI アプリケーションのコストを大幅に削減できると述べました。

開発効率を向上させるツールとしては AI SDK を紹介。これは AI 機能を活用したプロダクトを構築するための TypeScript 向けツールキットであり、AI モデルのプロバイダーごとに異なる API の仕様を抽象化することで、開発者がアプリケーション開発そのものに集中できるよう支援します。

さらに、Vercel の Marketplace を使えば、Stripe による決済機能や Supabase のデータベースなどを簡単に追加できる拡張性も紹介。他にも、単一のエンドポイントから 100 以上のモデルにアクセスできる AI Gateway や、セキュアなコード実行環境である Vercel Sandbox など、AI 開発を本格化させるための機能が続々と登場していることを伝えました。

セッションの最後にニコラス氏は、v0 が掲げる「Everyone Can Cook(誰でも料理ができる)」というコンセプトに触れ、「Vercel は AI 開発の民主化を目指しています」と力強く語りました。その象徴として、v0 のクローンアプリケーションを AI SDK で構築するためのテンプレートがオープンソースとして公開されていることを発表し、セッションを締めくくりました。

ハンズオン

AWS ジャパン 佐藤 雄太

各社のセッションパートを終え、いよいよハンズオンの実践パートへと移りました。ガイド役を務めたのは、AWS ジャパンの佐藤 雄太です。

佐藤は「ワークショップを完走することが目的ではありません」と切り出しました。今回のゴールは、v0 や Amazon Q Developer といった最新ツールに実際に触れ、「AIを活用した開発とはどのようなものか」を体感してもらうことにあります。また、ハンズオン中にいつでも質問できる万全のサポート体制が整っていることを参加者に伝えました。

ハンズオンで使用する主要な AWS サービスとして、佐藤は 2 つのツールを紹介。1 つは、Claude をはじめとするさまざまな生成 AI モデルを API 経由で利用できる Amazon Bedrock。もう 1 つは、開発支援を行う AI エージェント Amazon Q Developer です。

特に今回のハンズオンでは、AI SDK を使うことで、Vercel のフロントエンド開発環境と Amazon Bedrock をシームレスに連携させる体験ができると語りました。

ハンズオンが開始すると、参加者の方々は真剣な表情で、一心不乱に作業に取り組まれていました。

ハンズオン終了後には、参加者による成果発表会が行われました。わずか数時間で制作されたとは思えない、独創的なアプリケーションが次々と披露されました。

ある参加者は、動物の 3D モデルを動的に追加・操作できるインタラクティブなミニゲームを発表。カンガルーが跳ねるアニメーションまで実装されており、v0 の表現力の高さに会場から驚きの声が上がりました。

また、チャットで操作できる RPG ゲームを開発した参加者も登場。戦闘やレベルアップといったゲームの基本要素が再現されており、v0 と Amazon Bedrockを組み合わせることで、複雑な UI やロジックを持つアプリも迅速に開発できることが示されました。

他にも、週末の旅行プランを提案してくれるアート鑑賞プラン管理アプリや、自身のスキルを可視化し、AI が学習計画を提案してくれるエンジニア評価アプリなど、参加者それぞれの「欲しいもの」を形にしたユニークな作品が並び、会場は大いに盛り上がりました。

その後は、登壇者と参加者が自由に交流するネットワーキングの時間となり、会場は最後まで熱気に包まれていました。

おわりに

参加者の方々は最先端の AI ツールに触れ、「思いついたアイデアを、すぐに動くプロトタイプへと変える」という、アプリ開発の新たなスタンダードを体験されていました。

イベント内で紹介された、クラスメソッド社の豊富な知見に基づく導入・運用支援や、Vercel 社の革新的な開発者プラットフォーム、AWS の堅牢なクラウド基盤と生成 AI サービスは、スタートアップのみなさまが本質的な価値創造に集中するための、強力なエコシステムです。

もし、あなたのビジネスにおいて「開発速度をさらに向上させたい」「生成 AI を活用して新しい価値を提供したい」とお考えでしたら、ぜひ クラスメソッド、Vercel、そして AWS にご相談ください。