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次世代 CTO たちが、挑戦の軌跡を証明する「Startup CTO of the Year 2025 powered by Amazon Web Services」開催報告

2025 年 10 月 28 日に「Startup CTO of the year 2025 powered by Amazon Web Services」が開催されました。本イベントは、日本のスタートアップの発展に貢献する CTO を発掘・表彰し、その活躍を社会に発信することが目的です。事前審査で選ばれたファイナリストによるピッチコンテスト形式で進行し、オーディエンス賞や最優秀賞が選出されます。NewsPicks Brand Design の主催のもと、Amazon Web Services が協賛しています。本記事では、ダイジェスト形式でレポートをお届け。CTO たちの熱のこもったピッチを振り返ります。
オープニングスピーチ
Amazon Web Services Tiffany Bloomquist
Amazon Web Services のスタートアップ事業本部 アジア太平洋・日本地域 ゼネラルマネージャーである Tiffany Bloomquist がオープニングスピーチを行いました。
これまで、Startup CTO of the Year から 81 社のファイナリストが生まれ、そのうち 15 社が IPO や事業買収といった成功を収めてきたことを紹介。特に、初代受賞者が在籍したユーザベース社の事業から発展した NewsPicks が、現在ではイベントを共催するパートナーへと発展したことに触れ、先駆者の挑戦が次世代を鼓舞する素晴らしい循環が生まれていると強調しました。
また、この日を単なるコンテストではなく、「ファイナリスト一人ひとりのこれまでの努力が認められる瞬間」として捉えてほしいとメッセージを送りました。最後に、登壇者全員に敬意を表し、ステージでの健闘を祈る力強いエールでスピーチを締めくくりました。
ファイナリスト CTO によるピッチコンテスト
ここからはピッチコンテストを実施。事前応募の中から厳正なる審査を経て選ばれた 5 名のファイナリストたちが登壇しました。
【ファイナリスト】
株式会社カナリー CTO 中山 太雅 氏
Recustomer株式会社 取締役CTO 眞鍋 秀悟 氏
株式会社mento 執行役員CTO 松山 勇輝 氏
株式会社マップフォー 取締役CTO カノ アブラハム 氏
株式会社PeopleX 執行役員 兼 CTO 橘 大雅 氏
株式会社カナリー 中山 太雅 氏(写真左)、Recustomer株式会社 眞鍋 秀悟 氏(写真中央)、株式会社mento 松山 勇輝 氏(写真右)
株式会社マップフォー カノ アブラハム 氏(写真左)、株式会社PeopleX 橘 大雅 氏(写真右)
【審査員】
グリーホールディングス株式会社 取締役 上級執行役員 CTO/デジタル庁 CTO 藤本 真樹 氏
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 Head of Startup Solutions Architect, Japan 濵 真一
イオン株式会社 CTO/イオンスマートテクノロジー株式会社 取締役CTO/一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会 理事 山﨑 賢 氏
株式会社カナリーは、賃貸物件検索アプリ「CANARY」や不動産業務特化型SaaS「CANARY Cloud」を提供する企業。部屋探しをするユーザーと、物件を管理・仲介する不動産会社の双方の課題をテクノロジーで解決し、不動産業界全体の DX を推進します。
中山 氏は、頓挫していたシステム移行プロジェクトを 1 年半かけて完遂させた経験や、繁忙期に頻発した顧客管理システムの不具合を解決したエピソードを詳述。「何事も最後までやり遂げることが重要」と述べ、執行力の高さをアピールしました。
Recustomer株式会社は、EC サイトの購入後体験を最適化する SaaS「Recustomer」を提供。返品・交換・注文キャンセルといった煩雑な業務を自動化・効率化し、EC 事業者の運営コストを削減するとともに、顧客満足度の高い購買体験の実現を支援します。
眞鍋 氏は、システムの課題を解決するため、リアーキテクチャを断行したエピソードを解説。デプロイ頻度は週 1 回から 1 日 5 回へと向上し、AWS のコストは 72% 削減、1 年間で 12 以上の新機能リリースという成果を上げました。
株式会社mento は「この国の総労働熱量をあげる」ことをサービスビジョンに掲げ、管理職に 1on1 で伴走する「mento マネジメントコーチ」や管理職の過負荷を AI が分担する「mento マネジメント AI」を提供。組織全体のエンゲージメントと生産性の向上を支援しています。
松山 氏は、「労働集約型ビジネスからの脱却」という経営課題に立ち向かうため、短期間で市場調査とコンセプト検証を重ねました。プロダクト・AI・人が三位一体となった「マネジメントサクセス」プラットフォーム構想を策定し、会社を変革しました。
株式会社マップフォーは名古屋大学発のディープテックスタートアップ。自動運転技術の研究開発で培った高精度三次元地図作成技術を応用し、道路や鉄道、電力網といった社会インフラの老朽化対策やメンテナンス業務の効率化に貢献するソリューションを提供します。
アブラハム 氏は、独自のアルゴリズムと市販のハードウェアを組み合わせてコストと処理時間を大幅に低減させた技術的優位性や、規模の拡大した各チームの技術を API 化して連携させた事例を解説しました。
株式会社PeopleX は「地球上で働くすべての人への支援を通して成功に導く(ピープルサクセス)」をパーパスに掲げ、対話型 AI 面接サービス「PeopleX AI 面接」、エンプロイーサクセス HR プラットフォーム「PeopleWork」など、AI を活用した事業展開を進めています。
橘 氏は、コンパウンドスタートアップ構想から一転して AI テックカンパニーへと大胆なピボットを行った経緯を説明。「アーキテクチャは市場が決める」という信念のもと、マイクロサービスから AI プロダクトに最適化したシンプルなモノリス構成への転換を決断したと語りました。
審査結果
熱気に満ちたピッチコンテストが終了し、いよいよ結果発表の時を迎えました。オーディエンスによる投票で選ばれるオーディエンス賞は、Recustomer社の眞鍋 氏が受賞しました。

審査員の濵は、来場者から寄せられた「インフラ未経験ながら、驚異的なスピードで会社を変革したところが素晴らしかった」「具体的な取り組みに加え、CTO としての哲学を最も強く感じた」といった称賛のコメントを紹介しました。
受賞した眞鍋 氏は、「賞をいただけるとは思っていなかった」と驚きつつ、「プレゼンでウケを狙ったエピソードで、ちゃんと笑いが起きてくれてよかった。あのウケがおそらくこの受賞につながりました」とユーモアを交えて喜びを語り、会場を笑いに包みました。
続いて、「Startup CTO of the Year 2025」の称号を勝ち取ったのは、mento社の松山 氏でした。

藤本 氏は授賞理由として、「年々レベルが上がる中で、今年は特に『経営者としての振る舞い、目線、結果の出し方』が重要視されました。その観点において、松山氏が最も高い評価を得ました」とコメント。
松山 氏が「この成果は mento の全員で勝ち取ったもの」だと感謝を述べると、会場は大きな祝福の拍手に包まれました。最後に、審査員 3 名から総評が述べられました。
濵 真一
「毎年レベルが上がっていますが、特に今年は生成 AI という大きなターニングポイントに各社がどう意思決定し、事業を変革しているかが見て取れました」
山﨑 賢 氏
「みなさんのプレゼンが素晴らしかった。スタートアップ CTO の馬力や実行力、ピュアな推進力は驚異的。そのハングリー精神を忘れずに、これからも活躍してほしいです」
藤本 真樹 氏
「受賞された方、そして惜しくも選ばれなかった方、双方の挑戦を称えたい。会社経営は結局、最後まで立っていた者が勝ちです。この場の悔しさや喜びをバネにして、5 年後、10 年後もみんなで一緒に頑張っていきましょう」