AWS Startup ブログ
1 の力を N に変える。事業成長のための「真のパートナーシップ」とは。primeNumber 社が築いた協創モデル
AWS パートナーネットワーク(以下、APN)は、AWS 上でソリューションを構築・提供する企業を支援するグローバルなパートナー制度です。ビジネス支援や技術支援、マーケティング連携、営業活動などを通じて、パートナー企業の成長を包括的にサポートします。
株式会社primeNumber は 2023 年より APN に加入し、さまざまな支援プログラムや技術サポートを活用して事業成長を加速させてきました。2025 年 1 月には AWS を活用してコンサルティング、 プロフェッショナル、マネージド、 付加価値提供再販サービスを提供しているパートナーとして、AWS セレクトティアサービスパートナーに認定されています。
スタートアップ企業が APN を活用することで、どのような利点があるのでしょうか。そして、primeNumber 社のパートナーシップの特徴とは。アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 スタートアップ事業本部 シニアパートナーデベロップメントマネージャーの福家 哲郎と、シニアアカウントマネージャーの桑原 弘二が、primeNumber 社 取締役 執行役員 COO の下坂 悟 氏にお話を伺いました。
パートナーシップ提携は、企業のブランド強化につながる
桑原:primeNumber 社の事業内容について教えてください。
下坂:primeNumber は、「あらゆるデータを、ビジネスの力に変える。」をビジョンに掲げ、データ活用に特化した事業を展開しています。事業は「ソリューション」と「テクノロジー」の大きく 2 つの領域に分かれます。
ソリューション事業は、企業の皆様が抱えているデータ領域全般の課題を解決するべく、コンサルティング、エンジニアリング、オペレーションといった、ワンストップで企業の皆様をご支援するサービスです。ビジネス課題解決に向けた最適なデータ環境の企画、事業課題データ分析基盤を構築・運用する点のサポート、データ活用の文化を醸成するための、データ活用の力を引き上げる伴走支援、研修メニューを提供しています。
テクノロジー事業では、クラウド ETL サービスである「TROCCO」や、AIデータプラットフォーム「COMETA」といった、企業のデータ収集・加工・利用を支援するサービスを提供しています。

株式会社primeNumber 取締役 執行役員 COO 下坂 悟 氏
福家:今回のインタビューでは、primeNumber 社の APN 活用事例をご紹介させていただきます。AWS の前提としてあるのは「お客さまにとって最適なソリューションを提供すること」です。
AWS は幅広いテクノロジーサービスを提供していますが、AWS 単独ですべてのニーズを満たすことは難しいケースもあります。そうしたケースでは、特定の業界要件やユースケースに応じてパートナー企業の技術やソリューションと連携することで、よりお客さまの課題解決につながるサービス提供が可能になります。それが、私たちがパートナーシップを重視する理由です。
桑原:primeNumber 社は数年前より APN に参加されています。パートナー連携を実施されてのご感想を教えてください。
下坂:一言で言えば、パートナー連携の取り組みがなければ、今の primeNumber はなかったと思います。スタートアップ単体では得難い信頼を、AWS と共に築き上げられたのは大きな成果です。AWS との信頼関係が構築できたことにより、他の企業との協業機会も自然と広がっていきました。
さらに、Go-To-Market の観点でも AWS との連携がもたらす効果は絶大だと感じています。エンタープライズや海外の市場に入り込んでいく際には、スタートアップ単独ではどうしても遠回りになりがちです。AWS との協業を通じて適切なネットワークを得ることで、これまでアクセスできなかった市場への展開が可能になりました。韓国の IT 企業と提携して韓国語版の「TROCCO」を販売する、インドのベンガルールにビジネス開発チームを設置して AWS ムンバイリージョン版「TROCCO」をローンチするなどの成果が出ています。
桑原:そう仰っていただけているのはありがたいですし、他の AWS パートナーを目指すスタートアップにも参考になるポイントです。primeNumber 社はパートナー連携の強みをうまく活用し、自社のビジネスにしっかり還元してくださっていると感じています。
下坂:パートナー連携においては、自社が得をする方法ばかりを考えるのではなく、「弊社と AWS 社の双方にメリットを生むために何をするべきなのか」「弊社と AWS 社で力を合わせ、いかにしてお客さまに価値を届けるか」を意識して行動していました。
福家:おっしゃる通り、何事もパートナーシップは片方だけが得をしていては続きません。primeNumber 社はアライアンスの初期から、AWS やお客さまにとっての利益も配慮して進めていただいた点が、長期にわたり協業成果を出し続けられた秘訣だと考えています。
信頼・伴走・グローバル—事業の成長を支えた 3 つの要素
桑原:直近の数年間で、特に良かったと感じている要素について教えてください。
下坂:大きく 3 点あります。まず 1 つ目は、市場へのアクセスと信頼の獲得です。私たちの力だけではリーチが難しかった業界や企業に対して、AWS のネットワークを通じて接点を持てるようになりました。APN に加入してことで、お客さまとの会話の扉が開くこともありますし、エコシステム内の他のパートナー企業から声をかけていただけるようにもなりました。
2 点目は、スタートアップ支援における AWS の「伴走力」です。スタートアップは、限られたリソースで大きな挑戦をしなくてはなりません。そうした中で、AWS はセールス、技術、マーケティングなど各面から具体的な支援を提供してくださいました。たとえば当社には SAP の知見を持つメンバーがあまりいなかったのですが、その分野に精通した AWS の方が私たちの状況を理解し、実行可能なプランまで一緒に考えてくださいました。単なる助言に留まらず、課題解決の実行段階まで伴走してくださる姿勢は、心強いものでした。
3 点目は、グローバル展開の加速です。当社としても海外市場を視野に入れていましたが、初期段階では不足しているものがありました。特にヒトのネットワークは非常に重要な要素の一つです。そのような中で、AWS ジャパンのみなさんにご支援いただき、AWS Korea、AWS India、さらには AWS US 本社との接点を築くことができました。たとえば韓国市場では、桑原さんの上司を通じて現地の MEGAZONECLOUD 社とのご縁が生まれ、パートナー契約締結の場にも同席いただきました。実務面でも、現地パートナーとの間で発生した課題に対して迅速な対応をしていただきました。
また、インドでの商談に向けてシンガポールやインドの AWS のAPJ(Asia-Pacific and Japan)地域を統括するリーダーの方々とつないでいただいたことも、大変ありがたかったです。ご紹介を頂いたみなさまに対して、日本と同様の活動を地道に実施し、各国の文化・考えを踏襲しながら、各国の AWS のみなさまと Win-Win の関係を築くことができました。日本のみならずグローバル全域でエコシステムまで入り込むといった動きにより、グローバル展開の初動を大きく加速できたと感じています。

AWS Head of Solutions Architecture, APJ Startups Matt Taylor (写真中央)とprimeNumber様オフィスを訪問
桑原:そう言っていただき、ありがとうございます。AWS は「スタートアップエコシステム全体が盛り上がることで、結果として AWS 自身の成長にもつながる」という相互成長の考えを大切にしています。そのため、短期的な収益よりも、長期的にパートナーのみなさまと信頼関係を築きながら、一緒に市場を開拓していくことを重視しています。
パートナーシップを「掛け算」に変える視点
福家:AWS とのパートナーシップにおいて反省点はありますか。
下坂:AWS のエコシステム全体を、まだまだ活用できる余地があったと感じています。APN に加入したばかりの頃、私たちは正社員 30 名程度の組織でした。現在も 110 名ほどの規模です。スタートアップとして、どうしてもリソースには制約があります。その制約を乗り越え、最大限のスループットを得るうえで、他社と連携しながら新たな付加価値を生み出す「協創」の重要性をあらためて実感しています。
たとえば、ソフトウェアベンダーや他の AWS パートナーとより積極的に連携し、新たな領域でのコラボレーションができていれば、今とは異なるビジネスモデルを構築できていた可能性もあったと思います。特に私たちが取り組むデータ活用領域においては、領域・産業問わず、多種多様なデータをいかに収集・分析できるかが競争力の源泉になります。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 スタートアップ事業本部 シニアアカウントマネージャー 桑原 弘二(写真左)、シニアパートナーデベロップメントマネージャー 福家 哲郎(写真右)
桑原:APN への加入を検討されている企業の方々に、アドバイスはありますか。
下坂:一つだけ挙げるとすると、APN を単なる販売チャネルとして捉えないことだと考えます。販売チャネルとしてだけ捉え、動いたとしても想像している効果は難しいかもしれません。まず自社に不足している要素をどのように APN で補完できるか、AWS のエコシステムの中で自社事業と他社事業でどのような掛け算が可能か、といった視点が重要だと考えています。たとえば、APN に加入する企業で自社とは異なる強みを持つパートナーがいれば、両企業の強みを組み合わせることで、これまでリーチできなかったホワイトスペースを共に開拓することができます。そして、強みや相乗効果をしっかりと作り、AWS のリソースという販売チャネルが組み合わさることで、爆発的な価値を作り出せるはずです。
桑原:「パートナーシップ」という言葉の捉え方は、人によってさまざまです。「お互いに案件を紹介し合う関係」に留まっているケースも見受けられますが、本来は共に成長していくことが理想的な関係性だと考えています。その意味で、primeNumber 社はまさに理想的なパートナーシップ像を体現してくださっています。
福家:では最後に、読者の方々に向けてメッセージをお願いします。
下坂:パートナーシップには、1 の力を N に変える・伝播させる力があると私は捉えています。ここで言う「N」は、顧客や他パートナー、地域や業界など、多様なつながりや影響範囲を指しています。AWS のように巨大なエコシステムを持つ存在であれば、N がさらにその先の N に広がっていく感覚があります。その可能性をいかに具体的に活かしていくかが、非常に重要だと考えています。
スタートアップが、自社単独で成長を遂げるには限界があります。AWS そしてその先に広がるエコシステムの中で、いかに共創し、どのように市場を変革していくのか。それを徹底的に考え抜くことが、最終的な成果に直結すると私自身も強く実感しています。