1日数千万件のアクセスがある法人向け地図 API サービスをダウンタイム/障害ゼロで AWS 環境に移行
50% 以上の運用コスト削減に加え、パフォーマンスと品質も向上

2022

地図検索サイト『MapFan(マップファン)』やカーナビゲーションソフト、各種地図サービスを展開するジオテクノロジーズ株式会社。複数のクラウドサービスを活用してきた同社は、法人向け地図 API サービス『MapFan API』の開発や運用の効率を高めるため、AWS への移行を決定。移行後は運用コストを 50% 以上削減しながら規模の拡張やパフォーマンス向上も実現し、システムの内製化とより安定したサービス提供を実現しています。

AWS 導入事例  | ジオテクノロジーズ株式会社
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AWS への移行は、コスト面のメリットや社内の別サービスとの連携だけではなく、運用品質の向上にもつながりました。社内で運用していく上で、AWS のコミュニティから発信される情報も大変役に立っています

山脇 敦 氏
ジオテクノロジーズ株式会社
位置情報ソリューション事業本部
C&E 事業部 サービス開発グループ
プロジェクトリーダー  

開発・運用・コスト面に課題

AWS 環境への集約を決断

カーナビ用の地図データ提供から事業を開始したジオテクノロジーズ(旧社名:インクリメントP)株式会社は、1995 年に PC 向けの地図ソフト『MapFan』を提供開始。その後地図検索サイトを展開するなど、個人から法人までさまざまなデジタル地図サービスを提供しています。2020 年 10 月からは移動するとポイントが貯まるアプリ『トリマ』を提供し、2022 年 1 月末現在で 729 万ダウンロードを獲得するなど注目を集めています。

同社は以前から、地図データの制作などに複数のクラウドサービスを使い分けていました。位置情報を使って地図やルート検索の機能を開発できる法人向けの地図 API サービス『MapFan API』は、もともとあるクラウドサービスで運営をされていました。しかし、位置情報ソリューション事業本部C&E 事業部 サービス戦略グループ プロジェクトリーダーの山脇敦氏は、その開発・運用を前任者から引き継いだ後、コストやパフォーマンス、メンテナンスの外部ベンダー依存体制に課題を感じ、AWS への移行を決断したと語ります。
「従来のクラウドサービスの場合、開発や運用で何かわからないことがあっても対処法を見つけにくかったのですが、AWS ならすぐに調べられます。また、当社のコンシューマー向けサービス『MapFan Web』はすでに AWS で運用していたため社内に知見があるメンバーが多く、インフラを AWS へ集約することで、社内での開発・運用効率を高められると考えました。さらに、コストメリットや社内の別サービスとの連携も考慮しました」

サービスを止めない前提で検証を重ねて移行を実施

MapFan API の AWS 移行にあたってジオテクノロジーズは、複数の技術ベンダーの中から、クラスメソッドをパートナーに選定しました。山脇氏は「コスト面だけでなく、パートナーとしてさまざまな提案をしてくれる姿勢を評価しました」とその理由を語ります。

今回のプロジェクトにおける一番の目標は、サービスを停止することなく AWS 移行を実施することでした。法人向けサービスである MapFan API には 1 日数千万件のアクセスがあり、サービス停止は大きな影響を引き起こします。実際、過去に行ったクラウドサービスの移行時にはサービス停止のトラブルに直面したため、今回は同じ失敗を繰り返すわけにはいかないというのが前提でした。そこでクラスメソッドの提案により、既存環境を OS レベルからコピーして移行できる AWS の移行ツールである CloudEndure Migration を利用することを決定します。

2020 年 8 月に開始したプロジェクトでは、まず机上検証でリスクやコストを検討し、続いて同年 10 ~ 12 月に検証環境をミニマムに構築して技術検証を実施。システム構成は、数十台の仮想サーバーの Amazon EC2 とデータベースの Amazon RDS、ロードバランサーの前にはトラフィックのパフォーマンスを向上する AWS Global Accelerator を採用しています。
「基本的に仕様を変えない方針でしたが、従来環境はファイルシステムが冗長化されていなかったため、これを機に複数台への拡張を検討しました。その際、フルマネージド型ファイルシステムの Amazon EFS が利用できることがわかり、コスト面も問題ないことから新たに導入しました」と、デジタル本部 サービス開発グループの伊藤亜季氏は語ります。

50% 以上の運用コスト削減に加え、パフォーマンスや信頼性も向上

技術検証と環境構築、テストを経て、2021年 6 月に MapFan API の AWS 環境への移行が実施されました。「当初の目標どおりサービスを停止することなく移行できた背景には、メンバーやクラスメソッドの工夫がありました。コンシューマー向けサービスの MapFan で利用している環境、お客様のテスト環境、本番環境と、3 つの環境があるのですが、一気に切り替えるのではなく、状況を見ながら段階を踏んで移行しました。以前の移行トラブルも教訓にしたことで、プロジェクトの課題をしっかり分析して慎重に進めることができました」と山脇氏は振り返ります。

基本的には従来環境を維持して移行しましたが、各種リソースの台数は維持しつつスペックを上げて、パフォーマンスは向上しています。そのような状態にも関わらず、サーバーコストを含んだ運用コストは 50% 以下と大きく削減されました。

また、別の部門で利用しているストレージサービス、Amazon S3 との連携には従来環境ではローカル環境をまたぐ必要がありましたが、その手間もなくなりました。

これまで社外ベンダーに依頼していたメンテナンスも、社内で行えるようになりました。「私自身は以前から AWS の経験があり、何かあってもどこを見ればよいかわかっていることもあり、使いやすくなったなと感じています」と、デジタル本部 サービス開発グループの守國拓史氏は語ります。山脇氏、伊藤氏、守國氏ともう 1 名を加えたチームで、開発・運用を改善していく体制も確立できました。

デジタル本部 サービス開発グループ マネージャーで、今回のプロジェクトマネージャーを務めた立里英志朗氏は「コスト削減が至上命題としてありましたが、品質の向上とともにこれを達成できたのは予想外でした。外部に依存していた運用については不安もあったものの、社内で行うことで単純な作業ミスもなくなり、結果的に品質が上がりました。AWS に移行して本当によかったと思います」と評価しています。

監視・セキュリティの強化とクラウドネイティブ化を推進

コスト削減と品質の向上を両立した MapFan API について、ジオテクノロジーズでは今後もクラスメソッドに相談しながら、機能や運用の改善を進めていく予定です。今後はクラウドならではの機能や仕組みを使うなど、新しいチャレンジも検討しています。「オートスケールや最近話題のコンテナにも取り組んでいければと考えています」と語る伊藤氏に続き、守國氏も「AWS のマネージドサービスをもっと勉強していきたいです。最終的には、AWS CloudFormation などを使った構築や運用の自動化にも挑戦してみたいです」と語っています。

このほか、さらなるコスト削減や効率化に向けて Amazon EC2 の利用数見直し、Amazon CloudWatch を活用した監視レベルの向上、ログ解析、AWS WAF を用いたセキュリティ強化の構想もあるといいます。最後に、クラスメソッドと AWS に対して、山脇氏は次のような期待を語りました。
「クラスメソッドには、課題解消のための分析や提案をしていただけることを今後も期待します。AWS は、どんどん新しいものを提供して開発者に還元してくれています。それによってコミュニティが形成され、情報発信される文化がありますので、これからも維持していただきたいです」

山脇 敦 氏

立里 英志朗 氏

守國 拓史 氏

伊藤 亜季 氏


カスタマープロフィール:ジオテクノロジーズ株式会社

設立:1994 年
従業員数:442 名(2021 年 4 月 1 日現在)
事業内容:オートモーティブビジネス、エンタープライズビジネス、コンシューマビジネス

AWS 導入後の効果と今後の展開

  • 障害、ダウンタイムゼロの移行
  • 50% のシステム運用コストの削減
  • システム内製化の体制構築
  • 監視レベルやセキュリティの向上

AWS プレミアコンサルティングパートナー

クラスメソッド株式会社

クラスメソッドは「すべての人々の創造活動に貢献し続ける」という理念のもと、クラウド、ビッグデータ、モバイル、IoT、AI/機械学習の企業向け技術支援を展開している。コンサルティングやシステム設計開発に加え、国内有数の情報量を誇る技術ブログ「DevelopersIO」での情報発信も積極的に行っている。


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