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ギフトパッド、全国旅行支援の地域通貨アプリ「region PAY」基盤に AWS を採用。 ミッションクリティカルな要件をクリアし、1,000 万ダウンロードを突破
サービス
概要
課題・ソリューション・導入効果
ビジネスの課題
地域限定で利用するデジタル通貨アプリの開発
2011 年に創業し、紙のカタログギフトを Web 化するサービス(オンラインギフト)からスタートしたギフトパッド。徐々に事業領域を拡大し、現在は販促目的のノベルティ施策から、個人のギフト贈呈、地域活性化に向けたクーポン発行まで、さまざまなサービスを提供しています。
地域を限定して利用するデジタル通貨プラットフォームアプリ『region PAY(リージョン・ペイ)』も、これまでの事業実績から誕生しました。きっかけは新型コロナです。リアルイベントが軒並み中止となり、販促プロモーションを中心とする同社にも事業継続の危機が訪れていました。そんなさなか、懇意にしている代理店から、同社のギフト向けプラットフォームを使って疲弊した地域経済を活性化できないかといった相談があり、2020 年 6 月から 7 月にかけて大阪府と大阪市が実施した『大阪の人・関西の人いらっしゃい!キャンペーン』に協力したのが始まりです。
「大阪府に宿泊した消費者にキャッシュレスポイントを還元するキャンペーンは大成功を収めたものの、当時は全国ブランドのスマホ決済サービスにポイントを還元する仕組みでした。そこで、“近畿圏の在住者に限定してポイントを還元したい”という自治体の要望に応える形で開発を始めたのが『region PAY』です」と語るのは、取締役でシステム本部 副本部長/大阪システム部長の田原啓介氏です。
ソリューション
プロトタイピングプログラムを活用し、分析基盤を短期間で構築
2021 年 5 月より『region PAY』の開発に着手した同社は、アプリのプラットフォーム開発環境に AWS を採用しました。
「開発期間が短かったため、当社のソーシャルギフトサービスの開発で実績があった AWS 以外の選択肢はありませんでした。当社は 2015 年頃にレンタルサーバーから拡張性の高いクラウドに乗り換える形で AWS を採用しました。最も実績があり、情報量が圧倒的に多かったことが AWS 選択の理由です。今回の『region PAY』においても、AWS は自治体サービスに求められるコンプライアンス、認証、セキュリティの要件や、国内にデータセンターがあることもクリアしていましたし、何より自治体側が AWS の知名度に信頼を寄せていたことからスムーズに決まりました」(田原氏)
以後、急ピッチで開発を進めて 6 か月後の 2021 年 11 月に正式リリースし、11 月 24 日から近畿圏在住者を対象に始まった『大阪いらっしゃいキャンペーン 2021』で region PAY が採用されました。開発中は、AWS アカウントチームによるシステム設計/コスト周りのアドバイスや提案、イベント前の準備など密な支援が有効だったといいます。
「当時、『region PAY』の開発メンバーは社内で 1、2 名の体制でした。周囲に頼れる相手がいない中、相談できて背中を押してくれる AWS のアカウントチームが身近にいてくれたことは非常に助かりました」(田原氏)
『大阪いらっしゃいキャンペーン 2021』で実績を残した『region PAY』の評判は、一気に高まりました。一方、運用過程では新たな問題も浮上してきました。『region PAY』では、キャンペーン終了時などに採用した自治体や企業に対して、地域通貨の利用金額、利用エリア、利用業種、利用者属性(性別、年齢)などを報告するレポートを作成しています。レポートは同社のエンジニアが『region PAY』のデータベースに対して、SQL でクエリを書いてプログラムを実行して作成していました。エンジニアはお客様のリクエストに対して、分析ができるかどうかを判断し、開発期間やコスト見積りをしたうえで着手します。その試算だけでも業務を圧迫し、コストがかさんでいきます。複雑な分析になるほど手間も時間もかかります。そのため、エンジニアにかかる負担が大きく、本来のサービス開発に時間を有効に使えなくなるジレンマを抱えていました。システム本部 公共システム部 地域通貨課 課長の山岸光宏氏は「自治体案件はレポーティング業務が多く、月次、週次、月次単位のレポート作成や、突発的な情報提供を要望されることがあります。さらに、地図上でデータをマッピングしてビジュアル化して欲しいといった要望もあり、限界に近付いていました」と振り返ります。
こうした状況に対して、同社は AWS のプロトタイピング専用のソリューションアーキテクト(SA)が、お客様に代わってプロトタイプを開発・提供することで、ナレッジ/リソース不足をカバーする『プロトタイピングプログラム』を活用。データウェアハウスの Amazon Redshift Serverless と、BI ツールの Amazon QuickSight をベースとした分析基盤を構築し、レポート作成の負担を大幅に軽減しました。
「当社の開発環境やビジネス状況をよく知る SA からの提案を受けて、『region PAY』専用の分析基盤のプロトタイプを 1 か月ほどで提供いただき、これをもとに開発を進めました。おかげさまで、短期間かつ低コストで分析基盤のリリースが実現し、レポート作成の負荷軽減することができました」(山岸氏)
導入効果
多くの自治体で採用され、全国旅行支援に貢献
『大阪いらっしゃいキャンペーン 2021』で評判を呼んだ『region PAY』は、大阪から滋賀、静岡、東京と全国に拡大していきました。2024 年 1 月時点で導入エリアは 51(稼働準備中含む)、アプリの累積ダウンロード数は 1,000 万、累積決済額は 1,672 億円に達し、全国旅行支援のインフラを支える重要な役割を担っています。コロナ禍後は利用範囲も拡大し、2023 年には『大阪府子ども(子育て世帯)に対する食費支援事業』でデジタルお米クーポンとして採用されたほか、大阪市プレミアム付商品券 2023、企業の株主優待サービスなどにも活用されています。
「旅行支援の一策として始めた『region PAY』は、想像以上の成長を見せています。コロナ禍のピンチを救ったばかりでなく、現在の当社の屋台骨を支える基幹的な事業になっていることは間違いありません。こうした事業変化に耐えられたのも、柔軟性の高い AWS のおかげです」(田原氏)
『region PAY』の利用範囲は、今後も拡大していく予定で、国内ではイベント会場限定での利用や、API による決済機能の提供などが検討されています。海外にも拡大し、現在は日本人旅行客がグアム等の現地で利用できる地域通貨で採用されています。今後は、海外の自治体や企業などが、現地の住民に対して提供できるようにする方針です。
『region PAY』のプラットフォームについても、サービスや事業の拡大に備えてモダンアーキテクチャに移行する計画で、エンジニアの育成も含めて開発体制の強化を進めていくと明らかにしています。
「バックエンドの領域を、Amazon API Gateway から AWS Lambda を呼び出すようなサーバーレスアーキテクチャに再構築していきます。内製開発で進めていくために、エンジニアに対しては AWS であればさまざまなサービスを組み合わせるだけで開発ができるといったことを社内勉強会などで伝えながら、技術の底上げを図っていきます。AWS には引き続きの支援を期待しています」(田原氏)
コロナ禍の旅行支援の一策として始めた『region PAY』は、想像以上の成長を見せ、現在の当社の屋台骨を支える基幹的な事業になっています
田原 啓介 氏
株式会社ギフトパッド 取締役 システム本部 副本部長/大阪システム部長アーキテクチャ
株式会社ギフトパッド
「気持ちの繋がりを、テクノロジーで紡ぐ」をビジョンに、法人向けや自治体向けに、顧客とのリレーション構築やセールスプロモーション、株主・社員向け施策、地域活性化などさまざまな課題や用途に応じたソリューションを提供。
取組みの成果
51 - 導入エリア(稼働準備中含む)
1,000 万ダウンロード - アプリの累計ダウンロード数
1,672 億円 - 累積決済額(2024 年 1 月時点)
6 か月 - 開発開始からローンチまでの期間
本事例のご担当者
田原 啓介 氏
山岸 光宏 氏