導入事例 / 行政機関 / サービス

2024
株式会社システム ディ

岩手県、全 33 市町村の校務支援システムをシステム ディのサービスで統一。AWS 上の運用により教員負担を軽減し、セキュリティや DR も強化

災害時のデータ保管やインフラコストの低減、セキュリティの向上

迅速なインフラ配備による開発リードタイムの短縮

業務の標準化による教員の負担軽減

概要

文部科学省が 2021(令和 3)年に「教育情報セキュリティポリシーに関するガ イドライン」を改定し、教育機関でもクラウドを前提としたシステム構成が推奨される ようになりました。岩手県は他の自治体に先駆け、全 33 市町村の小中学校向け校務 支援システムのフルクラウド化を決断。株式会社システム ディが手がける校務支援 サービスを、アマゾン ウェブ サービス(AWS)上で運用するシステムの共同利用調達 を決定しました。コストを低減しながら教員の業務負荷軽減と教育の充実を図っていきます。

岩手県/株式会社システム ディ
わんこきょうだいは、(公財)岩手県観光協会の登録商標です。

課題 | 校務支援システムの共同利用調達による効率化の促進

文部科学省が 2021(令和 3)年に改定した「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」(以下、文科省ガイドライン)では、同年 12 月に閣議設定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」の方針に基づき、政府情報システムにおいてクラウドサービスを第一候補とする「クラウド・バイ・デフォルト原則」に基づくシステム構成が推奨されているのと同様、各地方公共団体においてもクラウドの活用を念頭に置いてセキュリティを確保していく必要があると明記されています。教育機関においても従来は閉域網の利用が推奨されていましたが、生徒や教育関係者が 1 人 1 台の端末を利用すると、ネットワークのボトルネックが生じやすいことが課題になっていました。セキュリティについては多要素認証などによるアクセス制御により、インターネット経由でクラウド上のシステムを利用できるように見直されました。これを受けて岩手県教育委員会は、県内の全市町村の教育委員会とともに令和 2 年に岩手県学校教育 ICT 推進協議会(以下、協議会)を組織し、小中学校の校務支援システムを統合利用するクラウドサービスの導入を検討しました。「従来は市町村ごとに校務支援システムの利用状況が異なっていたため、教員が市町村をまたいで異動した場合、システムを使うか手書きに戻るかなど、業務の進め方が変わってしまうという負担がありました。また、他県と比べて校務支援システムの導入率が低かったという理由もあります」と語るのは、岩手県教育委員会事務局 教育企画室 学校教育情報化担当課長の兼平龍太朗氏です。

まず、33 の市町村内すべての教育機関の理解を得るには多くの対話が必要でした。「なぜクラウドなのか」「各学校のサーバーを統合できないのか」といった疑問に対して協議会は、校務支援システムによって教員の負担軽減が期待できるほか、クラウドを利用することで災害時のデータ保管やインフラコストの低減、セキュリティの向上など多くのメリットがあると一つひとつ丁寧に回答し、理解を深めていきました。令和 4 年には岩手県全域で教員の働き方改革を目指した「統合型校務支援システム」の共同利用調達の合意に達し、令和 5 年 5 月に「岩手県クラウド版統合型校務支援システム構築等業務に係る公募型プロポーザル」を実施しました。

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県全域の統合校務システムによって教員の負担を減らして、子どもたちに向き合う時間を増やせるようにしていきたいです。クラウドの活用には、災害時のデータ保管やインフラコストの低減、セキュリティの向上など多くのメリットがあります"

兼平 龍太朗 氏
岩手県教育委員会事務局 教育企画室 学校教育情報化担当課長

ソリューション | 実績のある校務支援システムを AWS 上に構築

公募の選考委員には外部の有識者も参加して 3 社のプロポーザルを比較検討し、データ管理や費用に加え、導入後の研修体制などを採点しました。そして採択されたのが、システム ディの校務システム『School Engine』です。同社の常務取締役 公教育ソリューション事業部長の江本成秀氏は「当社は教育 DX などの製品を 10 年以上提供してきており、他県や岩手県立高校のシステム導入実績もあります」と語ります。

School Engine はこれまで山梨、奈良、高知、山口県をはじめ多くの教育機関に採用されています。文科省ガイドライン改定前に採用された他県の School Engine はオンプレミス環境に構築されていましたが、岩手県では AWS を全面的に活用する構成となりました。システム ディ 公教育ソリューション事業部 営業部 課長の中村岳志氏は「AWS は国が示した基準をクリアしており、サービスメニューも豊富ですので、今後文科省のガイドラインが変更になった場合も柔軟に対応できると判断しました」と説明します。

多くの学校業務は、年度の初めや学期末、年度末などにアクセスが集中します。オンプレミス環境ではピーク時にあわせて設備を用意していましたが、従量課金制の AWS であればコストの平準化も可能です。一方、自治体の活動は年度ごとに設定された予算によって行うため、使用後に金額が変動するようでは予算に組み入れにくいという課題もありました。その対応としてシステムディは、これまでの経験を踏まえてインフラのコストを試算し、どの学校でも一律同じになるような公平な利用料を設定しました。

岩手県でクラウド版 School Engine が稼働するのは令和 6 年の 4 月からです。プロポーザル採択後は、帳票(成績表や保健関連書類の様式)の統一など、具体的な仕様の検討を進めています。各学校でそれぞれ用意していた帳票を統一することで、業務の標準化を目指すためです。

導入効果 | 業務負担の軽減から、教育の充実を実現するシステムに発展

岩手県では、全市町村で共通の校務支援システムを導入し教員の負担を軽減するとともに、教育の質向上も図りたいと考えています。「先生方が成績表に反映する評価検討にかける時間を短縮するなど、業務の負担を減らして生まれた時間で、教育を充実させていきたいです」(三浦氏)

中村氏は、「東日本大震災で被災された岩手県の方々は、防災に対する意識を高くお持ちです。災害対策として別途設備を用意しなくても AWS のアベイラビリティゾーン*を活用した冗長性のある環境や、ストレージサービスの Amazon Simple Storage Service(Amazon S3)の耐久性も、何万人もの生徒さんのデータを預かるシステムとして安心して使っていただけると考えています。また、ハードウェアの調達などの必要がないため、開発のリードタイムをかなり短縮できます」とメリットを語ります。

システム ディ 代表取締役社長の藤田雅己氏は「岩手県様の取り組みを、全国の教育委員会の方々に【パブリッククラウド校務支援のロールモデル】として、ぜひ注視いただきたいと考えています。デジタル庁が提唱する『教育のデータ利活用』など、今後の行政情報基盤との連携を視野に入れた際に、教育委員会でも AWS 上でのデータ連携に期待が高まると予測しています。そして、『フルクラウド校務支援システム』という国の将来構想を先取りした岩手県様の先駆的なチャレンジを全国の教育委員会にお届けするのは当社の使命だと考えています。また今後、校務支援システムは単なる事務システムではなく、大規模な教育データストアへと変貌していくと考えています。ガバメントクラウド、MEXCBT、多くの学習系サービスが稼働する AWS には行政系、福祉系、学習系とのデータ連携といった拡張性・将来性に期待しています。また、データの利活用=データの可視化という視点では AWS には独自のBI ツールやサードパーティ製品が充実していると聞いており、データセンターサービスにとどまらない、お客様へ提供できるサービスの幅にも注目しています」

将来展望について兼平氏は「各校の校長先生方からも、子どもたちに向き合う時間が増えることを期待されていますので、校務支援システムをぜひ成功させたいです。クラウド活用については教育委員会でも各方面から相談を受けており、教員や生徒にとってプラスになる機能を加えていきたいです」と語っています。 

* アベイラビリティゾーン(AZ):AWS の 1 つのリージョン内で複数のデータセンターをグループ化した管理単位。各 AZ はそれぞれ独立して稼動・運用できる。

岩手県について

県庁所在地は盛岡市。全国 2 位の面積を有し、県土のおよそ 7 割を森林が占めている。主な産業は米や畜産、林業のほか、リンドウやアワビの生産は全国 1 位。半導体などの先端技術や自動車関連産業、基盤技術を提供する中小企業なども誘致している。 

兼平 龍太朗 氏

兼平 龍太朗 氏 

三浦 伸也 氏

三浦 伸也 氏 

カスタマープロフィール:株式会社システム ディ

京都市に本社、東京都、札幌市に支社を置くシステム開発会社。学園ソリューション、ウェルネスソリューション、公教育ソリューション、公会計ソリューション、ソフトウェアエンジニアリングの各事業を展開。

藤田 雅己 氏

藤田 雅己 氏 

江本 成秀 氏

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