コマツ

コマツが推進する建設業のDX

デジタルの力で建設現場を安心で効率的な労働環境に変革

2021

縦・横・奥行きを持つ DX でスマートな未来の建設現場の実現を図るリーダーのビジョン。

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DX を着実に前進させる最大のポイントはトップの決意です。DX はあくまでもトップダウンで行うものであり、ボトムアップで実現できるものではありません

四家 千佳史 氏
コマツ
執行役員 スマートコンストラクション推進本部 本部長

各プロセスのデジタル化では不十分

DX に何が必要なのかを改めて検討

社会インフラを作り上げていく上で、重要な役割を担う建設業界。しかし、長年にわたって労働力不足が大きな問題になっています。その解決のために 2015 年 1 月に『スマートコンストラクション』を提唱し、ICT(情報通信技術) を活用した建設現場の変革を進めてきたのが株式会社 小松製作所(以下、コマツ)です。

「安全で生産性の高いスマートな未来の現場を、コマツ自らが現場に立ち、お客様とともに実現していこうと始めたのが、スマートコンストラクションです」と語るのは、執行役員の四家千佳史氏です。同氏は20 代の若さで建機レンタル会社を設立。IT システムを積極的に活用することで、福島最大の建機レンタル会社に育て上げました。コマツは IoT 活用に精通したこの会社を、2007 年にグループ会社として統合。四家氏は 2015 年にコマツへと異動しました。

四家氏のリードのもとで進められたスマートコンストラクションがいかに先進的だったのかは、その後の国の動きからも見て取れます。2016 年 4 月には国土交通省が『i-Construction』の推進を宣言。同年 9 月には『第一回未来投資会議』において、安倍首相(当時)が『建設現場の生産性革命と推進』を宣言しました。スマートコンストラクションはこれらの先駆けともいえる取り組みでした。

「しかし当時のスマートコンストラクションは、施工現場で行われるプロセスごとの、縦のデジタル化に過ぎませんでした」と四家氏は語ります。一つひとつの施工方法には変化をもたらしましたが、仕事のやり方全体を変革するには至らなかったと振り返ります。「これではデジタルによる業務変革、デジタルトランスフォーメーション(DX)とはいえません。そこで、改めて何が必要なのかを考え直すことにしました」(四家氏)

3 つのレイヤーを協力ベンダーとともに開発

対象建機も他社製品も含めて拡大

そこで生まれたのが『デジタルトランスフォーメーション(DX)・スマートコンストラクション』でした。これは建設生産プロセスごとの『縦のデジタル化』に加え、建設現場のプロセスを最初から最後までつないだ『横のデジタル化』を実現するというものです。さらに将来的には、複数の建設現場をつないだ『奥のデジタル化』も推進し、実際の現場とデジタルの現場を同期させた『デジタルツイン』の実現を目指しています。

その構成は大きく 3 つのレイヤーで成り立っています。最下位レイヤーは現場をデジタル化する IoT レイヤー、中間レイヤーは現場から上がってくるデータを意味ある情報に変えるプラットフォーム、そして最上位レイヤーがお客様の生産性や安全性を高めるためのアプリケーションです。

ここで興味深いのが、コマツが保有している技術だけではなく、社外の技術も積極的に取り込んでいこうとする点です。すでに海外企業を含め、グローバルな競争力を持つ 30 社の協力ベンダーとともに、プラットフォームやアプリケーションの開発を推進しています。

その一方、デジタル化の対象をコマツの ICT 建機だけではなく、ICT未対応の旧モデルの建機や他社建機にまで広げていく取り組みも進めています。その一環として 2020 年 3 月には、従来型建機に ICT 機能を組み込める後付キット『スマートコンストラクション・レトロフィットキット』の提供を開始。価格は導入しやすいように一般的な価格の 10 分の 1 以下に抑えることで、普及を図ってきました。こうした取り組みは外部からも高く評価されており、2020 年 10 月には、(公財)日本生産本部が主催する『日本サービス大賞』で『内閣総理大臣賞』を受賞しています。

基盤として AWS を採用することで

通常 3 年かかる開発を 1 年で完了

この開発とサービス提供基盤として全面的に採用されているのが アマゾン ウェブ サービス (AWS) です。四家氏はその理由を次のように語ります。
「先進的なパートナーのほとんどが AWS を利用していました。彼らが AWS を選択して競争力を発揮しているのであれば、AWS を採用することで、これまで蓄積してきた知見やノウハウをそのまま活用できると考えました」

これに加え、クラウド市場の中で高いシェアがあり、関連情報が膨大に存在することも大きな魅力だと指摘します。そのため開発者を確保しやすく、サービスの品質向上が容易な点も大きなメリットだといいます。
「問題に直面した場合でもナレッジが豊富にあるため、スピーディーに解決できます。DXスマートコンストラクションのプラットフォーム開発は 1 年で完了していますが、PMO として入っていただいた SIer によれば、普通であれば 3 年はかかるプロジェクトとのことでした。もし AWS から他の基盤に切り替えていれば、プロジェクトは 1 年以上遅れていたはずです」(四家氏)

2020 年 3 月には前述のレトロフィットキットとともに、DX スマートコンストラクションの提供を開始。その後も毎日のように顧客の声を聞きながら、改善を進める日々だといいます。
「このような姿勢は、20 年前から継承されてきたものです」と四家氏は述べます。顧客のゴールは何でどうありたいのか、それを実現する上で不足しているものは何か、そしてその解決にコマツはどう貢献できるのか。これを徹底的に考えて行動するのが『コマツウェイ』であり、顧客の声を聞いて改善を繰り返すのは当たり前のことなのだと語ります。そして対応のスピードを高める上で、AWS の採用は大きな貢献を果たしているとも述べています。

DX 推進に求められる

目標の明確化とトップの決意

このように長年にわたってスマートコンストラクションの陣頭指揮を執ってきた四家氏は、DX を着実に前進させる最大のポイントを次のように話します。
「最も重要なのはトップの決意だと考えています。DX は結局のところ既存の何かが破壊されることであり、それに関わる人々からは必ず抵抗が生まれます。しかし、トップが目標を明確に示し、そこに向けて進んでいくことを宣言することで、関係者の理解も得られやすくなります。例えばレトロフィットキットの販売では、他社が 1,000 万円で販売しているものを 70 万円で販売するのはおかしいのではないかという意見も出ましたが、社長自らがその目的を明示したことで納得が得られました。DX はあくまでもトップダウンで行うものであり、ボトムアップで実現できるものではありません」(四家氏)

DX スマートコンストラクションの導入先は、すでに 14,000 現場に達しています。しかし世界の建設現場の数はこれをはるかに超える数であり、「イノベーター理論」における普及の過程において、まだイノベーターによる活用が進んでいる段階に過ぎないと四家氏は語ります。今後、アーリーアダプターなどにも活用してもらう必要があるといいます。
「もちろんお客様の意思決定を私たちがコントロールすることはできません。私たちにできるのは自ら DX を推進し、サービスの内容と質を高めていきながら、お客様の変化を待つことだけです。そのためにはより幅広いパートナーを巻き込んだ、新たな取り組みも必要になると考えています。AWS にはその取り組みを支える基盤として、これからも重要な役割を果たしていただきたいと思っています」(四家氏)


カスタマープロフィール:コマツ

● 代表取締役社長 兼 CEO 小川 啓之 氏
● 従業員数 61,564名(2021年3月末現在、連結)
●事業内容 建設・鉱山機械、ユーティリティ(小型機械)、林業機械、産業機械などの事業

実施施策

● グローバルな競争力を持つパートナーとの連携
● 多くのパートナーがすでに活用している AWS を採用
● AWS による迅速な開発と継続的なサービス改善



ご利用の主なサービス

Amazon EC2

Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) は、安全でサイズ変更可能なコンピューティング性能をクラウド内で提供するウェブサービスです。ウェブスケールのクラウドコンピューティングを開発者が簡単に利用できるよう設計されています。

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Amazon ECS

Amazon Elastic Container Service (Amazon ECS) は、完全マネージド型のコンテナオーケストレーションサービスです。Duolingo、Samsung、GE、Cook Pad などのお客様が ECS を使用して、セキュリティ、信頼性、スケーラビリティを獲得するために最も機密性が高くミッションクリティカルなアプリケーションを実行しています。

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Amazon RDS

Amazon Relational Database Service (Amazon RDS) を使用すると、クラウド上のリレーショナルデータベースのセットアップ、オペレーション、スケールが簡単になります。

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Amazon DynamoDB

Amazon DynamoDB は、規模に関係なく数ミリ秒台のパフォーマンスを実現する、key-value およびドキュメントデータベースです。完全マネージド型マルチリージョン、マルチマスターで耐久性があるデータベースで、セキュリティ、バックアップおよび復元と、インターネット規模のアプリケーション用のメモリ内キャッシュが組み込まれています。

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