ミナミホールディングス、自動車教習のオンライン学科講習をいち早く提供し、公的資格制度のさまざまな要件に柔軟に対応

自動車学校のオンライン教習にいち早く対応

自動車学校事業に加え、自動車学校向けコンサルティング事業や AI を使った教育システム、人材教育などを手掛けるミナミホールディングス株式会社。グループの原点となる南福岡自動車学校は、エンターテイメント性の高いビデオ教材や女性指導員の積極採用、カフェや託児所、Wi-Fi などの充実した設備によって福岡県 1 位の入所者数（普通車入校数　2010 年～ 2015 年　福岡県指定自動車学校協会調べ）を誇っています。

従来の自動車学校の学科教材は、面白みに欠ける、学習意欲が湧かないといった課題がありました。そこでミナミホールディングスでは、個性的なキャラクターが登場するアニメーションを使って、楽しみながら学科を学べるビデオ教材『DON!DON! ドライブ』を開発し、他校にも提供してきました。同ホールディングスの先進的な取り組みは業界でも注目されており、グループ会社の株式会社教習所サポートは全国の自動車学校 1,300 校のうち約 200 校に対してコンサルティングや各種サービスを提供しています。また 2020 年 12 月、警察庁より新型コロナウイルスの感染防止のため、オンラインでの学科教習を認める新たな制度が発表されました。

「教習生が来校して教室で受ける学科講習については、オンラインでやったほうが効率的ではという話は以前からありました。そのためコロナ禍を契機に警察庁からオンライン化を認めるという通達がきてすぐ、オンライン配信プラットフォーム開発に乗り出しました。他の教習所のお客様からも強い要望がありました」と語るのは、ミナミホールディングス株式会社 代表取締役の江上喜朗氏です。

江上氏は、以前から交流のあった AWS パートナーの株式会社 Fusic に開発の相談をしました。当時は制度変更の決定直後で、詳細は決まっておらず、警察庁や県警からの通達によって要件が変化することも予測されました。また、オンライン学科教習をサービスとして提供していくなかでは数百校・数万人への展開を見越した拡張性も求められます。そこで Fusic の提案は、柔軟性と拡張性があり、豊富なサービスと実績を持つ AWS の活用でした。

教習生の受講状況確認に Amazon Rekognition を活用

ミナミホールディングスは、ビデオ教材『DON!DON! ドライブ』のリソースを活かせるオンライン学科教習システムを構築し、2021 年 5 月から南福岡自動車学校にスピード導入しました。開発パートナーであるFusic のメンバーは、自動車教習所の業務を深く理解するため、南福岡自動車学校を訪問して現場の業務内容を理解し、教習生や指導員に最適なシステム構築を目指しました。

ビデオ教材はライブストリーミング用に変換し、Amazon CloudFront と Amazon S3 を通じて配信します。また単にビデオを配信するだけでなく、受講のなりすまし防止や、居眠りなど授業態度の確認が必要です。そこで、画像・動画分析サービスの Amazon Rekognition の顔認識機能を利用しました。

「今になってよかったと思うのは、当社グループ内で教習所を運営しながらサービスを提供しているため、現場の実態に合わせたものを作れたことです。厳格な受講確認を AI だけに任せるのは難しいと考え、指導員が後から確認するといった人の手が入る余地を残しておきました。結果的に制度発表から 1 年後に変更の通達があり、教習生が確かに授業を受けたことを指導員が確認するというルールが明示されたときにも慌てなくて済みました」（江上氏）

さらに、受講確認のためのログや受講中の受講生画像取得には AWS Lambda などサーバーレスのサービスを取り入れ、耐障害性や事業の拡大に対応できる構成にしました。他の自動車学校にサービスとして提供する際は、視聴情報などを分析するログ出力の仕組みも作っています。「教習生の視聴状況が適正かどうかを判断するシステムについては、適正である / ないという判断の根拠が『何か』を分析するためのログを出力できるように実装しました。学校ごとの特徴や今後のシステム改良に役立てていけると思っています」と、株式会社教習所サポート 商品企画部の松田理加氏は語ります。

2021 年 5 月に必要最低限の機能を満たしたシステムをリリースして以降、Fusic とともに試行錯誤を繰り返し、現在もサービスの充実に勤めています。「Fusic のメンバーは当社に寄り添って、同じチームとして尽力いただいています。はっきりしない要件の相談でも必ず解決策を提示してくれます。こうした高い対応力から、AWS サービスの豊富さや選択肢の幅広さも実感しています」（江上氏）

指導員の工数を 7 割削減し、他校にも広くサービスを提供

南福岡自動車学校におけるオンライン教習システムの導入効果について江上氏は、「教習生さんたちの利便性が向上し、指導員の負担も削減できました。従来の教室での学科指導の場合、指導員が授業の準備をして授業中に説明し、授業が終わった後の事務処理が必要でした。しかしオンライン配信によって 7 割ほどの工数を削減でき、浮いた時間を技能講習や教習生への個別指導に充てられるようになりました」と語ります。

他の自動車学校へのサービス提供も順調で、サービス開始から 1 年間で 100 校以上に採用されました。教習生の口コミや SNS でもオンラインでいつでも受講できる『DON!DON! ドライブ』は話題になり、新たな自動車学校からの問い合わせも相次ぐなど、良い効果を得られています。松田氏は「教習所の業界で働く人々は IT にそれほど精通しているわけではないため、オンライン化に不安を抱える方も多いですが、AWS にはネームバリューがあるため、インフラに AWS を使っているとお話しすると安心いただけます。業界全体が IT へのハードルを超える一歩として、学科教習のオンライン化は良い取り組みになっています」と語ります。

オンライン教習システムの提供によって、さまざまなデータを収集できるようになったミナミホールディングス。今後は、受講態度の細分化や認識精度向上に取り組むとともに、新たな価値の提供にも役立てたいとしています。さらに、さまざまな教習のなかでも、国内で最も厳しいと言われる自動車教習に対応したサービス提供で得た知見は、他の教習にも展開できると考えています。江上氏は、今後の事業展望について次のように語ります。

「国のアナログ規制については、9,000 項目もの見直しが予定されています。すると、運転免許の更新や、船舶の免許など他の資格の講習もオンラインになっていくでしょう。そのときに、私たちのプラットフォームがどんどん展開できるのではないかと思っています。2022 年 12 月にはドローンの免許が国家資格になります。自動車教習のオンライン化で培ったノウハウを活かして、ドローン教習もオンラインで学科を受けられるサービスを提供できるように検討しています」