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国土交通省、AI 書類審査ソリューションを活用した建築確認書類チェック サービスを 2 か月でリリースし、申請者の自己学習と審査業務の効率化を 推進

行政機関

概要

国土交通省 住宅局は建築基準法に基づく建築確認の申請書類審査業務の負荷軽減を目的に、アマゾン ウェブ サービス(AWS)が提供するオープンソースソフトウェア(OSS)の『RAPID(Review and Assessment Powered by Intelligent Documentation)』を活用して、日本建築防災協会の『建築確認申請図書作成支援サービス』の開発を支援。申請者が書類提出前に AI で事前チェックする仕組みにより、建築確認審査業務の効率化を推進しています。

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課題・ソリューション・導入効果

課題

改正建築基準法により建築確認の審査負荷が増大

総合的な国土交通政策を展開する国土交通省。同省の住宅局には住宅行政と建築行政の 2 つの役割があり、住宅行政は公営住宅をはじめとする住宅セーフティネットや住宅市場の整備などの実務を担当。建築行政は、建築基準法、建築物省エネ法など、建築物の規制関連の実務を担当しています。

建物の新築や増改築等に着手する前に、設計計画が建築基準法などの法令に適合しているかを確認する手続きとして「建築確認」があります。建築主は建築士に設計を依頼し、設計図書を地方公共団体の建築主事または民間の指定確認検査機関に提出して建築確認を申請し、確認済証の交付を受ける必要があります。

従来の建築基準法では、階数 2 以下・500 ㎡以下の木造建築物や平家かつ延べ面積200 ㎡以下の非木造建築物は、建築確認において構造関係規定等に係る審査の省略が認められていました(いわゆる 4 号特例)。しかし、2025 年 4 月の改正建築基準法の施行により 4 号特例の対象が縮小され、2 階建ての木造住宅などの構造関係規定等についても審査対象となりました。

背景には、新築住宅に対する省エネ基準の強化があります。「国の方針として 2050 年カーボンニュートラルの実現を掲げる中、2030 年度以降に新築される住宅・建築物では、ZEH(net Zero Energy House)水準の省エネ性能を目標としています。その前段階として 2025 年 4 月に改正建築物省エネ法が施行され、すべての新築建築物について省エネ基準への適合が義務付けられました。この結果、断熱材を厚くするなど省エネ性を高めるために建物が重くなることから、必要な構造耐力が確保されていることを手続を通じて担保するため、改正建築基準法で 4 号特例の対象が縮小されました」と語るのは、国土交通省 住宅局 参事官(建築企画担当)付 建築デジタル推進官の佐々木雅也氏です。

4 号特例が縮小された結果、建築確認手続における審査項目が増加されたため、住宅局は、建築確認審査の円滑化を図る観点から、AI を用いて申請書類の記載内容をチェックする仕組みの検討を開始しました。

ソリューション

AI 書類審査ソリューション『RAPID』をベースにカスタマイズ開発

住宅局は、AWS の生成 AI を活用した書類審査ソリューションの提案に着目し、指定確認検査機関も同席したデモで、実用化の可能性があることを確認。住宅局からのフィードバックをもとに AWS プロトタイプチーム*が開発し、オープンソースとして公開した『RAPID』を活用し、改正法施行後の建築確認申請図書の作成等を支援する建築士サポートセンターの事業を実施している日本建築防災協会(建防協)が提供する『建築確認申請図書作成支援サービス』の開発支援に乗り出しました。

「RAPID で注目したのは、テキストだけでなく図面も認識できる点です。数年前に別の業務で AI の導入を検討したものの、データ化されていない図面が認識できず断念した経緯がありましたので、大きな可能性を感じました」(佐々木氏)

2025 年 8 月頃から建防協、AWS および生成 AI の活用実績が豊富な AWS パートナーのアクロクエストテクノロジー株式会社が議論を開始。RAPID のカスタマイズを実施し、2 か月の開発期間を経て 2025 年 11 月よりサービスの提供を開始しました。

このサービスは、申請前の建築確認申請図書に必要事項が記載されているかを AI で評価し、記入漏れや構成ミスといった初歩的な不備を減らすためのものです。住宅局 参事官(建築企画担当)付 課長補佐の矢吹愼氏は「必要書類の不備を申請者がセルフチェックできる仕組みを提供することで、補正のやりとりに係る時間・労力を削減し、審査の円滑化を図ることが狙いです」と語ります。

そのため、開発ではスピードを優先。審査対象として最も数が多い 2 階建て木造住宅の新築に限定し、スモールスタートで提供することにしました。

「申請図書をアップロードしてから評価結果を返すまでの時間・コストと精度のバランスを考慮しながら調整を重ねました。当初設定した 142 のチェック項目すべてを対象として試したところ、結果を返すまでにかなりの時間とコストがかかることがわかりました。そこで、項目を統合して 35 項目まで絞り込み、30 分以内で結果を返せるようにしました。今回の法改正の円滑な施行に向けて実施した講習会で利用している『確認申請・審査マニュアル』の図面で検証し、正確な回答を返すようにチューニングを繰り返しました」(矢吹氏)

RAPID の技術的な要素としては、書類審査業務における生成 AI 活用の課題を解決するため、人が出力結果の確認に関与する「Human in the loop」の概念を採用して説明責任を担保しています。ナレッジ取得や計算ツールの実行を補完するための AI エージェントの機能を実装しているほか、UX を書類審査に特化する形で最適化。生成 AI プラットフォームの Amazon Bedrock では、日本国内のリージョンに閉じた推論に限定し、コンプライアンス要件を満たしながらパフォーマンスと信頼性の向上を実現しています。

「秘匿性の高い建築情報を扱うサービスですので、日本国内で推論が完結していることで、情報が国外に出ないという安心感があります」(佐々木氏)

住宅局とアクロクエストテクノロジーはアジャイルで RAPID のカスタマイズ開発を実施。権限管理や問い合わせ対応などの機能を追加実装して、短期間に高品質のサービスを実現しました。

* https://prototyping-blog.com/program/

導入効果

申請や設計など建築業界における幅広い業務への適用可能性

RAPID を用いた『建築確認申請図書作成支援サービス』が広く活用されていくことで、建築確認申請時の審査時間短縮、補正指示案件の削減、建築確認審査業務負荷の軽減などが期待されています。

「申請者はこのサービスを使って、自らの書類のミスをチェックできます。エラーや要確認と表示された箇所から、正しい記載例を記した『確認申請・審査マニュアル』の該当ページをその場で確認し、自己学習できるようにしています。これにより申請全体の品質向上と、申請者のスキル向上を目指しています」(佐々木氏)

また、AI を活用した書類審査ソリューションは、設計業務における書類チェックなど建築業界全般の幅広い用途に横展開できる可能性を秘めています。一部の建築設計事務所では経験の浅い設計者が作成した図面のチェックに活用している事例なども報告されており、新たな活用方法にも期待が高まっています。

「今回の成果といえるのは、最先端の技術を活用した新しいサービスの開発を国が支援し、道を切り開いたことです。失敗しない堅実さが求められる官公庁が突破口を開くことで、今後は民間にこのような取り組みが広がり、さらに進化したものを作っていってくれればと期待しています」(矢吹氏)

国土交通省では、今後も AI やデジタル技術を活用して書類申請や確認業務の効率化や建築業界全体の生産性向上を目指していく方針です。

「高齢化と深刻な人手不足が進んでいる建築業界は、デジタルを積極的に導入して効率化していかなければ、業界自体が立ち行かなくなる危機感があります。そのためにも DX を積極的に進めていく必要があり、今回の AI を活用したサービスは先駆的な事例となりました。今後も幅広い用途での活用を見据えて、様々なサポートを続けます」(佐々木氏)

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改正建築基準法の施行で審査業務が逼迫する中、AI を活用した先駆的な書類チェックサービスを短期間でリリースできました。このモデルは、他の規制対応業務にも展開できるのではと考えています

佐々木 雅也 氏

国土交通省 住宅局 参事官(建築企画担当)付 建築デジタル推進官

国土交通省

国土の総合的かつ体系的な利用、開発および保全、そのための社会資本の整合的な整備、交通政策の推進、気象業務の発展並びに海上の安全および治安の確保などを担う官庁。住宅局には住宅行政と建築行政の 2 つの役割があり、住宅行政は住宅セーフティネットや住宅市場の整備などの実務を担当。建築行政は、建築基準法、バリアフリー法、建築物省エネ法など、規制関連の実務を担当する。

取組みの成果

  • 2 か月:サービスの開発期間
  • 建築確認申請書類の審査業務負荷の軽減
  • 先駆的な AI 審査ソリューションの開発支援
  • 書類審査にとどまらない幅広い活用用途への可能性

本事例のご担当者

佐々木 雅也 氏

Missing alt text value 国土交通省 住宅局 参事官(建築企画担当)付 建築デジタル推進官

矢吹 愼 氏

Missing alt text value 国土交通省 住宅局 参事官(建築企画担当)付 課長補佐

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