約 80%
トランザクションの平均処理時間の向上
週 1 回
サービスリリースサイクル
3 時間
ビッグバン移行によるサービス停止時間
運用トラブルやピーク時間帯のアラートの激減
開発チームのモチベーション向上
概要
西日本電信電話株式会社(以下、NTT 西日本)が 2020 年から提供しているビジネスチャットの『elgana』(エルガナ)は、サービス提供プラットフォームのモダナイゼーションに向けて、2022 年 7 月に既存環境からアマゾン ウェブ サービス(AWS)へ移行しました。これにより、トランザクションの平均処理時間が約 80% 向上し、運用トラブルも激減。モダンアプリケーションへの第一歩を踏み出し、生成 AI による新機能開発も加速しています。

ビジネスの課題 | サービス提供基盤の性能限界が近付き、運用負荷も増大
NTT西日本が提供する『elgana』は、シンプルな操作性を特長とする NTT グループ公式のビジネスチャットとして、全国にサービスを展開しています。導入/運営は専属スタッフがサポートし、セキュリティ機能も標準で装備しています。「当社が掲げる“地域の活性化への貢献”というミッションのもと、お客様の課題を解決し、DX の推進に資するサービスとして開発しました」と語るのは、同社のビジネス営業本部 バリューデザイン部 マネージドサービス部門長の上山太一氏です。
2020 年 4 月にサービスを開始した elgana は中堅・中小企業や NTT グループ内でも広く活用されており、導入実績は 2023 年 5 月 31 日時点で 200 万 ID に達しています。従来は国内のクラウドサービス上で運用していましたが、次第に性能面の限界に達し、ピーク時間帯につながりにくいという課題に直面しました。ビジネス営業本部 バリューデザイン部 DX プラットフォーム部門 DX ビジネス担当 担当課長の蟹澤圭奈氏は「平日の朝 9 時頃にお客様が一斉に利用を開始すると、負荷が集中してログインできないなどの現象が起きていました。サーバーのスケールアップやリソースの調整等で対応しても、アーキテクチャの制約などで限界が見えてきていました」と振り返ります。
サービス品質への影響を重く見た同社は、プラットフォームを刷新してモダナイゼーションを目指すことにしました。
「既存環境の課題解消や運用保守で手一杯で、運用改善や新たな開発にリソースを割けないとエンジニアのモチベーション維持も難しくなるため、モダンアーキテクチャに移行して負のスパイラルを断ち切り、理想像に向かっていきたいと考えました」(蟹澤氏)

elgana のサービス基盤を AWS に移行したことでサービスの安定性が高まっただけでなく、開発スピードが加速し、お客様の DX に資する価値を短期間で提供できるようになりました"
上山 太一 氏
西日本電信電話株式会社
ビジネス営業本部 バリューデザイン部 マネージドサービス部門長
ソリューション | ビッグバン方式を採用し、安全で確実な移行を実施
そこで同社は、AWS を採用。決め手は、市場で確保できるエンジニアの数、現行メンバーが持つ経験値、充実したプラクティス群や技術情報にあったと蟹澤氏は語ります。「出てくる情報の質が高く、知りたい情報にストレスなくたどり着けるのが AWS でした」
2021 年 12 月に移行プロジェクトを開始し、AWS 運用に切り替えたのは 2022 年 7 月です。移行時にはリスクを考慮して現行のアーキテクチャを継承し、アプリの改修を極力抑える方針をとりました。ただし、ファイアウォールやロードバランサーなど、置き換えが容易なコンポーネントについてはマネージドサービスを積極的に利用。また、Amazon Aurora など、メリットが大きく低リスク(互換性)でリプレースが可能と判断したものも、リプラットフォームを行いました。
また、安全で確実な移行を最優先してビッグバン方式を採用。段階移行方式は設計や手順が複雑で、アプリの改修が発生するために問題の切り分けが複雑化する恐れがあったためです。ビッグバン方式は一定時間のサービス停止を伴うものの、設計や手順が簡素で現行アプリのまま利用できます。問題の対処スピードも早く、即時切り戻しでサービス復旧できると判断しました。
「お客様への影響を最小限にするため、移行作業は深夜の時間帯を狙い、停止時間を短くする方法を入念に検討しました。作業工程の並列化・自動化、データ移行など事前に移行できる作業の最大化、入念なリハーサル(8 回)などの工夫により、当初想定していたサービス停止は 8 時間だったところを、約 3 時間まで短縮しました」(蟹澤氏)
AWS の技術チームは、ソリューションアーキテクトが実施する週次の「AWS 技術相談会」を中心に、ベストプラクティスやサービスの紹介、手法や手順などへの各種レビューやアドバイス、新サービスの紹介など総合的にバックアップしました。
「AWS の担当者から背中を押してもらったことで、確信を持ってビッグバン方式を推進できました。分刻みの移行手順を作り上げていく過程でも、細かい部分のレビュー、メールやチャットの質問にも迅速に回答をいただき、『これならいける』という気持ちで当日を迎えられました。移行から 1 年以上経った現在も相談会は続けており、AWS の担当者は elgana チームの一員のような存在です」(蟹澤氏)
アーキテクチャ

導入効果 | モダンアーキテクチャへの移行でエンジニアのモチベーションが向上
移行後すぐに、トランザクションの平均処理時間が約 80% 向上し、アクセスピークの時間帯の遅延も解消しました。運用トラブルやピーク時間帯のアラートも激減し、月 1 回程度発生していた外型監視エラーやユーザー申告もゼロになりました。
開発チームも運用負荷の軽減により、“やりたかったこと”が“やれること”に変わり、次の一歩のためのアーキテクチャ変更などが検討できるようになりました。モダンアプリへの道が開けた結果、2023 年 3 月にアプリのアーキテクチャ変更とリファクタリングを実施しています。
「サービス価値の向上に時間を割けるようになったことが大きな喜びです。エンジニアも、やりたいことが制限なくできる未来が見えるようになり、モチベーションが大きく上がっています」(蟹澤氏)
開発プロセスの見直しや Infrastructure as Code(IaC)による自動化を進めた結果、3~4 か月に 1 回だったサービスのリリースを週 1 回のペースで行えるようになりました。さらに運用チームとインフラチームのメンバーが合流した SRE ユニットの発足により、運用と開発の一体化が加速しています。「経験年数を問わず若手メンバーも活躍していて、各自の得意分野を活かしながらアプリ開発チームのメンバーなどとディスカッションを重ね、elgana をよりよいサービスにするための開発を進めています」と、ビジネス営業本部 バリューデザイン部 DX プラットフォーム部門 DX ビジネス担当 主査の中井智絵氏は語ります。
現在、AI Lab. ユニットでは生成 AI を活用した新規サービスの創出に取り組んでおり、Amazon Bedrock を活用したチャットボットの早期リリースを目指しています。
「“誰でも簡単に使える” elgana のコンセプトを突き詰めて、elgana のインターフェースを介して質問するとテキストで答えを返してくれたり、入力した情報からお客様のプロフィール画像を生成したりするサービスを開発し、顧客体験を高めていく予定です。Amazon Bedrock は AWS を基盤として稼働するサービスと親和性が高く、扱いも簡単なので、スピード感のある生成 AI 開発ができると実感しています」(中井氏)
同社では今後もさらに“イケてる elgana” をお客様に届け続けるためにモダナイゼーションを加速しながら、アーキテクチャの改善を重ねていく考えです。
「技術集団の先頭を走りながら、よりよいサービスを開発し、お客様の DX 推進に貢献していきます。同時に開発スタッフも快適に、楽しく、ストレスなくやりたいことができ、スピード感を持ってサービスが提供できる世界を目指していきます」(蟹澤氏)
カスタマープロフィール:西日本電信電話株式会社
西日本地域における電気通信業務、電気通信業務に附帯する業務、その他会社の目的を達成するために必要な業務、電気通信業務その他の業務を展開。“ICT でつなぐ、かなえる。”をキャッチフレーズに、地域を取り巻くさまざまな課題を ICT で解決し、より豊かな未来を実現することを目指している。


上山 太一 氏

蟹澤 圭奈 氏

中井 智絵 氏
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