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2021

音声解析 AI 電話『MiiTel』のサービスプラットフォームを、AWS でマイクロサービス化して構築。スポットインスタンスの採用で、音声認識クラスタのコストを 70 % 削減

株式会社RevComm

概要

AI を活用した音声解析機能を持つクラウド IP 電話『MiiTel(ミーテル)』を展開する株式会社 RevComm。MiiTel のリリースにあたり、アマゾン ウェブ サービス(AWS)を採用してプラットフォームを構築。複数に分かれた MiiTel の機能はマイクロサービス化し、機能ごとに求められる SLA に応じてアーキテクチャを構成。AWS Well-Architected Review を導入してコスト最適化を図った結果、音声認識クラスタは対オンデマンドインスタンス比で 70 % 以上のコスト軽減が実現しています。

A woman with a headset works at a desk with a laptop and large monitor displaying analytics charts and data, representing user analytics in a case study for RevComm on AWS.

インサイドセールスの課題解決に向け音声解析 AI を搭載した『MiiTel』を開発

RevComm は、大手商社で各種投資案件や M&A 案件等に従事してきた會田武史氏が、2017 年に設立したスタートアップです。「コミュニケーションを再発明し、人が人を想う社会を創る」を理念に、AI × Voice × Cloud を組み合わせたソフトウェア・データベースを開発。現在、電話営業・顧客対応を可視化する音声解析 AI 電話『MiiTel』を SaaS として提供しています。

「私たちが MiiTel で実現しているのは、営業のブラックボックス化の解消です。従来の営業は属人性が高く、商談でどのような会話がなされているのかがわからず、担当者によるバラツキが生じていました。結果として、数撃てば当たる労働集約型の営業になっています。就業人口が減少していく中、ゆとりある生活を送るためには、1 人当たりの付加価値創出額を高めていかなければなりません。そこで、会話のブラックボックス化問題から生産性向上に取り組みづらいとされていた営業に狙いを定め、インサイドセールスを可視化する『MiiTel』をリリースしました」と語るのは代表取締役の會田氏です。

MiiTel は独自の音声解析 AI を搭載し、会話内容を自動解析して会話の要素を定量的なデータとして抽出します。会話時間、ラリー回数、話速、会話の被り回数、沈黙回数などを分析してダッシュボードに表示。さらに AI が会話内容を全文テキスト化して要約文も作成するため、議事録作成の手間を省くだけでなく、対応の内容を振り返りながら、優秀な営業のノウハウを共有することができます。

累計導入社数は 400 社以上、ユーザー数は 13,500 人、通話実績は 2,800 万回に達し(2020 年 11 月時点)、新型コロナウイルス感染症の影響下で導入社数は増え続けています。

コンテナや GPU インスタンス、サーバーレスなどの豊富な技術を評価

MiiTel のサービスは 2017 年末から構想に着手し、プロトタイプ構築後、トライアルや β 版などを経て 2018 年 10 月に正式リリースしました。プラットフォームには海外と国産のクラウド 3 サービスを検討した中から AWS を採用しました。執行役員 CTO の平村健勝氏は次のように語ります。
「RevComm では、意思決定の方法として常識や過去の経験にとらわれず、最も合理的なものを選定する文化があります。インフラ選定も同様で、工数・コスト、技術者確保の容易性、サービスや組織の拡張への対応などを検討した結果、コンテナサービスや GPU インスタンス、サーバーレスなどの技術が充実した AWS を採用しました。アイデアをすぐに形にして提供することを重視する当社にとって、豊富なサービスを活用して開発スピードを高められることが決め手となりました」

MiiTel は、大きく分けて音声通信、音声解析、Web アプリケーションの 3 サービスで構成されています。求められるサービスレベル(SLA)はそれぞれ異なるため、開発初期の段階からマイクロサービスとして設計しています。まず音声通信を司る PBX サーバー群は、瞬間的な停止が許されないミッションクリティカルなシステムです。そこで OS レベルでチューニングが可能で、稼働実績が豊富な Amazon EC2 を採用し、マネージドサービスは使わず“枯れた技術”を活用しています。Web アプリケーションは、ユーザー数増への対応と、顧客からの追加要望へのスピーディな対応が求められるため、拡張が容易なコンテナを採用。1 日に複数回のデプロイが可能で、オートスケールが容易な AWS Fargate と Amazon ECS を活用し、AWS CodeDeploy を用いてデプロイを自動化しています。さらにマネージドサービスを活用して、セキュリティの強化にも対応しています。

AI を用いて音声認識を実行するクラスタは、数分の処理遅延なら許されるサービスです。一方で電話営業が活発化する日中時間帯にリクエストが集中し、音声認識の実行には高性能なサーバーが求められます。そこで、Amazon SQS と Amazon EC2 のスポットインスタンスを活用し、ノード数を自動調整するクラスタ管理ツールを独自開発。コストを抑えながら高性能なサーバーを必要に応じて調達しています。
「スポットインスタンスの採用で、音声認識クラスタは対オンデマンド比で 70 % 以上のコストの節約が実現しています」(平村氏)

サービスごとにオーナーに権限委譲しサービス間を疎結合で連携

MiiTel のプラットフォームでは現在、1 日数万件の音声通話を処理。急激なトラフィックやユーザーの増加には、オートスケールや Infrastructure as Code を活用したインフラの自動構築を活用することで柔軟に対応しています。エンジニアは約 30 名の体制で、5 つのマイクロサービスに分かれて開発。各サービスは、自ら意思決定ができるチームリードの裁量により、高速かつ柔軟な開発を進めています。リードエンジニア - インフラストラクチャの工藤悠介氏は次のように語ります。
「開発者が距離的に離れた状況でも高速な開発ができる体制を用意し、オーナーに権限委譲しています。サービス間の連携は API などを活用し、サブシステムは疎結合で設計することが原則です。運用負荷がかからないようにコード化と自動化を進め、安定したサービス提供に向けて監視体制も強化しています」

導入時から現在まで AWS のサポートを積極的に活用し、適材適所で最適化を図りながらアーキテクチャを進化させてきました。
「現在はビジネスサポートを契約し、トラブル対応だけでなく活用方法についてもアドバイスをいただいています。Well-Architected Review を通して、ベストプラクティスと比較して不足している取り組みなども明らかになりました」(平村氏)

2020 年 4 月には AWS スタートアップ支援プログラムの無料クレジットを活用し、コロナ期間中に増加した開発要件にもスピーディに対応して短期リリースを実現しています。

東南アジアを中心としたグローバル市場に展開

MiiTel はユーザーのビジネスに大きく貢献し、満足度の高いサービスとなっています。
「導入されたお客様の中では、アポ取得率や成約率が向上したといった収益向上への貢献から、電話機・ PBX コスト、教育コスト、電話料金が減ったといったコスト削減まで、さまざまな効果が得られています。13,500 人を超すお客様に満足いただけているのも新機能を短期間にリリースできる AWS があるからです」(會田氏)

今後については、Vertical・Horizontal・Parallel・Geographical の方向に羽を広げてビジネスを拡大する戦略を描いています。
「Vertical には人間を電話営業から解放することです。その一環として 2020 年 10 月に MiiTel の解析技術を活かしたオンライン商談ツール『MiiTel Live β版』をローンチしました。Horizontal には軽くて汎用性の高い AI を提供すること、Parallel には SaaS から PaaS に展開して営業以外の業種・業態にも音声解析エンジンを利用していただくこと、Geographical にはグローバル市場、特に経済や人口の伸長率の高い東南アジアへの展開を検討しています。MiiTel の成長にはインフラが欠かせません。AWS には今後も止まらない安定性と、セキュリティの強化を期待しています」(會田氏)
RevComm company logo featuring a blue play button symbol and the text 'RevComm Inc'.
『MiiTel』は 2018 年のリリース以来、ユーザー数、累積コール数ともに順調に増加しています。多くのお客様に満足いただき、市場のトップを走り続けられるのもサービス群が豊富な AWS があるからです

會田 武史 氏

株式会社RevComm 代表取締役

アーキテクチャ図

Architecture diagram illustrating a VoIP services solution on AWS. The diagram includes users, elastic load balancing, PBX servers (Amazon EC2), web servers (AWS Fargate), file and model storage (Amazon S3), Amazon Elasticsearch Service, model building with GPU instances, speech recognition worker nodes (using Amazon Simple Queue Service and Amazon EC2), and the interactions between users and AI engineers.

本事例のご担当者

會田 武史 氏

A business professional wearing a blue suit, glasses, and a blue tie is seated and speaking.

平村 健勝 氏

A business professional with dark hair and glasses is sitting and smiling during an interview, wearing a dark jacket and white shirt.

工藤 悠介 氏

A man with medium-length dark hair, wearing a black jacket and an orange sweater, is seated and looking slightly to the side against a neutral background.

株式会社RevComm

  • 代表取締役:會田 武史
  • 設立:2017 年 7 月
  • 資本金:16 億 7,100 万円(資本準備金含む)
  • 従業員数:85 名
  • 事業内容:AI 搭載型クラウド IP 電話『MiiTel』など、AI × Voice × Cloud のソフトウェア、データベースの開発
  • AWS 導入後の効果と今後の展開

  • 音声認識クラスタは、スポットインスタンスの活用で、対オンデマンドインスタンス比で 70 % 以上のコストを節約
  • マイクロサービス化と権限委譲による開発スピードの向上を実現
  • 毎日平均約 5-10 件の高頻度リリースの実現
  • マネージドサービスによるリスク回避
  • Well-Architected Review を活用した今後の指針の獲得
  • 海外展開と AWS の東南アジアリージョンの活用を検討