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2024 RIZAP テクノロジーズ株式会社

RIZAP テクノロジーズ、Amazon Bedrock と Amazon Kendra を利用した AI チャットボットで社内問い合わせ対応をスピード化

トラベル & ホスピタリティ

概要

パーソナルトレーニングジム運営をはじめ、美容・ヘルスケアを中心に幅広く事業を展開する RIZAP グループ。同グループの DX 推進を担う RIZAP テクノロジーズ株式会社は、社内からの問い合わせやドキュメント検索の工数削減を目指し、アマゾン ウェブ サービス(AWS)の生成 AI サービスを活用して AI チャットボットシステムを開発。店舗スタッフのフィードバックを継続的に反映して回答精度を向上させ、問い合わせの時間短縮、工数削減を実現しています。
A variety of office fitness equipment, including exercise bikes and desks, arranged by floor-to-ceiling windows with a city view in the background. The space is modern and designed to promote workplace well-being.

課題・ソリューション・導入効果

課題

事業の急成長とともに社内の問い合わせ対応が複雑化

RIZAP グループは、「自己投資産業でグローバル No.1 ブランド」を目指し、パーソナルトレーニングジム『RIZAP』やコンビニジム『chocoZAP』を中心にヘルスケア領域の成長を加速させています。また、60 社を超えるグループ企業間のシナジーを強化し、継続的なサービスモデルの構築を進めています。テクノロジー面からグループ全体の成長を支援する RIZAP テクノロジーズは、ヘルスケアやリテール事業の DX を推進し、新たな価値を創造するため 2022 年に設立された機能子会社です。

「当社の設立当初、RIZAP グループは DX 推進を始めたばかりで社内業務やナレッジ管理が体系化されておらず、社員数の増加に伴い情報へのアクセスに時間がかかるようになっていました。そのため、社内情報の整理と効果的な共有方法の確立が急務だと感じていました」と語るのは、DX 推進本部プロダクト開発統括 2 部 部長の永嶋義憲氏です。同部は、社内業務の効率化や自動化をミッションとし、社内で利用するシステムの開発や RPA ツールを使った業務自動化などを行っています。

社内規定やサービス手続きに関する社内問い合わせシステム(チャットボット)の導入を検討した同社ですが、ルール変更時のドキュメント更新や回答内容のメンテナンスにかかる工数が懸念され、一度は見送っています。しかし、2023 年後半に生成 AI の LLM(大規模言語モデル)が普及してきたタイミングで、永嶋氏はこの技術を問い合わせシステムに活用しようと AWS に相談を持ちかけました。

「AWS を選んだ理由の 1 つは、私自身が前職を含めて AWS を使った経験があり、ある程度の知見を持っていたことです。もう 1 つは、AWS のサービスを使ってアプリケーションやシステムを構築することはエンジニアのキャリアパスにもプラスになるという判断です」(永嶋氏)

ソリューション

プロトタイプを活用し、店舗スタッフとの協働による開発で精度を向上

RIZAP テクノロジーズが構想した社内問い合わせシステムは、社内に点在する各種ドキュメントを参照し、チャットのようなテキスト対話型インターフェースによって回答を得るというものでした。

「2023 年の 10 月ごろ、検索サービスの Amazon Kendra や生成 AI サービスの Amazon Bedrock を利用した AI チャットボットのテンプレートの紹介を受けました。そのテンプレートの一部を活用してみたところ『これは使える』となり、開発に本腰を入れました。プロトタイプチームの支援のもと、1 か月で基本的な仕組みを構築できました」と、プロダクト開発統括 2 部 業務自動化ユニットの安藤英利氏は語ります。

こうして、社内規定や店舗サービスのドキュメントを Amazon Simple Storage Service(Amazon S3)に自動転送し、ユーザーが問い合わせをすると Amazon Kendra がそれらのドキュメントを検索し、その結果を生成 AI サービスである Amazon Bedrock が返答する仕組みが作られました。

同社はシステムの使いやすさと正確性を向上させるため、多くの工夫を施しました。カテゴリ絞り込み機能では、人事関連の質問では給与や有給休暇などの詳細項目を選択できるなど、あいまいな質問でも正答率を向上させています。よくある質問は FAQ として蓄積し、それをベースにチャットボット機能で回答をするように RAG の運用を行うことで、直感的な操作を実現。さらに検索機能においては、参照ファイルの表示や更新日付順の優先順位設定を行い、情報の信頼性を高めています。「RIZAP」「らいざっぷ」「ライザップ」などの表記揺れの問題は辞書化で対応し、さまざまな表現に対応できるようにしました。さらに、ユーザーインターフェース(UI)とバックエンドを分離し、バックエンドは一元管理しながら UI を複数環境で展開することで、コスト効率を高めています。

同社はこの仕組みをまず、パーソナルトレーニングジム『RIZAP』の店舗で勤務するスタッフやトレーナー向けに提供しました。「店舗のトレーナーはタブレットを操作し、申し込み手順やサービス内容を参照してお客様にご案内します。そのため誤った情報をお客様に伝えることがないよう、回答精度を高めることに取り組みました」(永嶋氏)

システムの精度を高める取り組みは、実際に店舗に関わるメンバー、ユーザー(トレーナーの管理者)と密にコミュニケーションを取りながら進めています。「私たちは普段から業務の自動化などで事業部と密接にやりとりしており、事業部側もそれを受け入れる関係ができています。今回も当初から、ただシステムを作って提供するだけでなく、ユーザーのフィードバックをもとに改善していくという流れを計画していました。こういう質問にはこういう回答がほしい、などの要望を受けてシナリオに落とし込んだり、ドキュメントから正しい回答を探します」と永嶋氏は説明します。安藤氏も「事業部とすり合わせる際には、Amazon CloudWatch に出力されるログを用いて、問い合わせ内容とそれに対する回答を一覧で確認します。その結果を事業部に見せてフィードバックを得ながら、精度を徐々に向上させています」と語ります。

導入効果

システムのグループへの展開でさらなる価値向上へ

この問い合わせシステムは現在、全国 100 店舗以上の『RIZAP』で利用されており、店舗から社内ヘルプデスクに寄せられる月間 400 件、1 件あたり 20 分の工数削減が見込まれています。

「各店舗のトレーナーが問い合わせシステムを利用して疑問点を調べられるようになりました。本部と店舗では営業時間が異なり、店舗は土日も営業しているため、これまでは対応が難しかったこともトレーナーが自分で解決できます」と永嶋氏は語ります。

また、ユーザーからのフィードバックをもとに改善を重ね、システムだけでなく、参照先のマニュアルなどのドキュメントに関する課題の発見と解消も進めています。安藤氏は AWS の支援について、「AWS の知見が豊富ではない私たち担当メンバーと、AWS の担当者が密接に相談できる関係が築けていることが大きいです。たとえば、Amazon Bedrock で利用する基盤モデルの選択についてのアドバイスなど、大変助かっています」と評価します。

社内問い合わせシステムは今後、ドキュメントだけでなく各種社内システムとの連携など、データソースを追加してより広範囲な問題に対処できるようにする構想があります。さらに DX 推進本部では、この成功事例をグループ各社に展開していく方針で、今後について永嶋氏は次のように語ります。「社内規定やサービス内容、社内システムなどに関する問い合わせは、どの企業にも存在する共通の課題ですから、精度の高いシステムを構築すれば、他のグループ企業にも展開できると考えています。これらのシステムを通じて、お客様への価値提供の向上につなげていきたいです」

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AWS の生成 AI サービスを活用した AI チャットボットシステムにより、店舗のトレーナーがこれまでは対応に時間がかかっていたことも、効率化できるようになりました

永嶋 義憲 氏

RIZAP テクノロジーズ株式会社 DX 推進本部 プロダクト開発統括 2 部 部長

アーキテクチャ図

Diagram illustrating an AWS-based architecture for an AI chatbot and document management system, featuring components like AWS Cloud9, Route 53, WAF, Lambda, API Gateway, Amazon S3, Kendra, and Bedrock.

RIZAP テクノロジーズ株式会社

RIZAP グループでは【「人は変われる。」を証明する】という企業理念を掲げ、ヘルスケア・美容、ライフスタイル、インベストメントの 3 つの事業セグメントで 60 社以上のグループ企業を展開している。機能子会社の RIZAP テクノロジーズは、デジタル技術やデータ活用によって、グループが持つ「店舗」「人」「ブランド」などを強化することにより、事業や業務の大きな変革や新たな事業の創出を支援し、リードする役割を果たしている。 

取組みの成果

  • 月間 400 件
    社内問い合わせ工数削減(1 件あたり平均対応時間 20 分)
  • 1.5 か月
    サービスのプロトタイプの開発期間
  • 24/365
    時間を問わず問題解決率が向上

本事例のご担当者

永嶋 義憲 氏

A portrait photo of a man in a white shirt, posed indoors with an urban cityscape in the background. Used for the RIZAP case study featuring Yoshinori Nagashima.

安藤 英利 氏

A portrait of a person wearing a white shirt, seated indoors with a cityscape in the background. This image is used for the RIZAP case study.