ヘルスケアの未来を創り出す塩野義製薬のデジタル戦略

AWS との協創によって提案型組織へ

2020

デジタルトランスフォーメーションを目指した社内の組織変革と、外部企業との協創によってヘルスケアの未来を創り出す塩野義製薬のデジタル戦略を探ります。

 

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AWS Client VPN の導入プロジェクトによって、AWS のスピード感と柔軟なスケーラビリティを体感することができました。今後のデジタル変革においても AWS のテクノロジーとカルチャーを最大限に活用していきます。

澤田 拓子 氏
塩野義製薬株式会社
取締役 副社長 ヘルスケア戦略本部長


ヘルスケアプロバイダーへの変革に向け

2030 年までの新中期経営計画を策定

創薬型製薬企業として、医療用医薬品の研究開発・ 製造・販売を主軸に事業を展開する塩野義製薬株式会社。2020 年 6 月には 2030 年に成し遂げたいビジョンとして「新たなプラットフォームでヘルスケアの未来を創り出す」を掲げ、新中期経営計画「Shionogi Transformation Strategy 2030(STS2030)」をスタートしました。

最初の 5 カ年計画である STS Phase1 では、R&D 戦略、トップライン戦略、経営基盤戦略の 3 つを基本方針としています。取締役副社長 ヘルスケア戦略本部長の澤田拓子氏は「新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)の治療薬やワクチンの早期開発が求められている非常事態の現状を、研究分野におけるディスラプティブイノベーションの機会ととらえてブレイクスルーを目指していきます」と語ります。


IT コンサルティングファームに要員を派遣し

武者修行で成長の機会を最大化

多くの製薬企業がデジタル変革を急ぐ中、塩野義製薬が本格的体制づくりに着手したのは 2017 年のことです。手代木功社長のリーダーシップによりデジタルトランスフォーメーションの専任部署「デジタルインテリジェンス部(DI部)」を経営戦略本部内に設立したのが起点となります。DI部では、データを活用したビジネス変革と、デジタル技術を使った新規ビジネスの創出の 2 つを目的としています。

2017 年 4 月には、本社の IT 部門を独立させてシオノギデジタルサイエンス株式会社(SDS)を設立。同年 12 月には塩野義製薬と SDS の 2 社がアクセンチュア株式会社とシステムのアウトソーシングとデジタル人材育成を柱とする戦略的プロジェクト契約を締結しました。各種規制への対応が求められる製薬業界は、IT に関しても法令遵守や堅牢性の確保が最優先となっています。しかし、それだけでは変化の激しい時代に対応できないという危機感があり、これまでとは異なる環境に社員を送り出し、別の視点から物事を見る力を身につけることで、デジタル変革を推進する人材を育成することが目的です。SDS からは希望者を“武者修行”としてアクセンチュアに出向させています。

「製薬業界は、研究開発期間が 10 数年、研究開発費数百億円、成功確率 10%に満たない他業種とは異なり極めて生産効率の低い世界です。ここに留まっているだけでは、世間の常識から大きくかけ離れてしまいます。世の中の動きを知るためにもドッグイヤーと言われる IT 業界で武者修行を積み、スピード感を身に付けて欲しい。成長できる機会を増やすために、出向者には 1 年間で 2 つ以上のプロジェクトに携わるよう依頼しました」(澤田氏)

社内の組織変革はその後も続き、2020 年 2 月には疾患戦略を統括・推進する「ヘルスケア戦略本部」を新設。解析センターの一部機能を独立させ「データサイエンス室(DS室)」を設けました。従来からある臨床統計に加えて、ビッグデータの分析を推進し、創薬ビジネスを加速させていくのが狙いです。

IT 企業との協創体制の確立で

データ活用や AI 創薬を加速

社内の組織変革と並行して、塩野義製薬が進めているのが、外部の研究機関や企業との協創によるイノベーションです。2017 年には製薬企業や IT 企業など約 90 機関で構成するライフ・インテリジェンス・コンソーシアム(LINC)に参画し、創薬専用の AI 開発を進めてきました。その一環としてCOVID-19関連でも北海道大学とA I 創薬スタートアップの SyntheticGestalt株式会社との共同研究による治療薬の研究開発に取り組んでいます。

2019 年10月には医療従事者専門サイトを運営するエムスリー社と、疾患課題解決を目的とした合弁会社ストリーム・アイを設立し、澤田氏が代表取締役社長に就任しました。2020 年 8 月には、中国の保険最大手である中国平安保険集団と合弁会社平安塩野義有限公司を設立しています。平安塩野義有限公司では中国平安保険の保険・金融・ヘルスケア事業から得られる膨大なデータと塩野義製薬の技術を活かした AI 創薬やサービス開発に取り組む計画です。

「時間とコストを要する創薬は、今や 1 社で完結できるものではありません。当社では業界に先駆けて 2000 年代からの産学連携による創薬イノベーションコンペ(愛称:FINDS)を進めてきた歴史と実績があります。必要に合わせてケイパビリティを拡大してきた結果、近年は IT 関連の業界と連携する機会が増えてきました。業態も文化も異なる相手と協創体制を確立するためには、お互いにとってプラスになることが大原則です。そのためにも、お互いに深く話し合い、目指すゴールを明確にしてからスタートを切ることにしています」(澤田氏)


顧客第一主義の理念が AWS と合致

協創によってカルチャー変革を加速

アマゾン ウェブ サービス(AWS)との協創体制も、IT 企業のスピード感やカルチャーを取り入れる目的で生まれたものです。特に顧客第一主義をうたう Amazon / AWS の経営理念が、塩野義製薬の理念と合致していたことが大きかったといいます。

「最も重視したのは人材評価基準です。行動原則が一致していれば、長期的なゴールを共有しながら進むことができると判断しました」(澤田氏)

現在、AWS のサービスは DI部や医薬研究本部において、創薬研究を目的としたハイパフォーマンスコンピューティング (HPC) 環境などに採用されています。情報システム担当のSDS では、COVID-19 対策に伴う在宅勤務の拡大に向けて、急きょ AWS Client VPN の導入を決定。わずか 3 日間で社内 VPN 環境を構築し、同時接続数 3,000 を実現しました。

「AWS Client VPN の導入プロジェクトを通して、AWS のスピード感やスケーラビリティを実感することができました。AWS の活用は、私たちが大切にしている提案型の風土づくりにも貢献しています」(澤田氏)

今後も外部企業との協創により、オミックス解析による創薬への挑戦、機械学習を用いた画像認識・音声認識・行動認識などの先進技術を活用した研究開発体制の強化を加速していく考えです。AWS に対しても、ビッグデータの利活用に向けて、テクノロジーや人材面での支援を期待しています。

「多種多様で膨大なデータを必要とする研究開発のためのデータレイク整備など他社のクラウド活用の取り組みに追い付き追い越すための新たな支援、データを安全に扱うためのセキュリティやコンプライアンスの強化、堅実重視の塩野義の文化に風穴を開けるカルチャー変革など、AWS との協創を通してデジタルトランスフォーメーションを進めていきます」(澤田氏)


カスタマープロフィール:塩野義製薬株式会社

  • 代表取締役社長 手代木 功 氏 
  • 設立 1919年6月5日(創業1878年3月17日)
  • 事業内容 医薬品、臨床検査薬・機器の研究、開発、製造、販売など

実施施策

  • デジタル変革に向けた戦略的プロジェクト契約を IT コンサルティングファームと締結、武者修行によって IT 人材を育成
  • 産学連携による AI 創薬や R&D 戦略の推進
  • 外部企業との合弁会社設立によるトップライン戦略の推進
     

ご利用の主なサービス

AWS VPN

AWS Virtual Private Network ソリューションは、オンプレミスネットワーク、リモートオフィス、クライアントデバイス、および AWS グローバルネットワーク間に安全な接続を確立します。AWS VPN は、AWS サイト間 VPN と AWS Client VPN で構成されています。

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AWS ParallelCluster

AWS ParallelCluster は、AWS がサポートするオープンソースのクラスター管理ツールです。このツールは、AWS クラウドでハイパフォーマンスコンピューティング (HPC) クラスターを簡単にデプロイおよび管理するのに役立ちます。

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Amazon Redshift

Redshift では、データウェアハウス、運用データベース、およびデータレイクにあるペタバイト規模の構造化データと半構造化データを、標準的な SQL を使用してクエリすることができます。

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Amazon SageMaker

Amazon SageMaker は、すべての開発者やデータサイエンティストが機械学習 (ML) モデルを迅速に構築、トレーニング、デプロイできるようにする完全マネージド型サービスです。

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