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2022 株式会社たけびし

CloudEndure Migration を活用して確実かつ短期間で SAP ERP を AWS 大阪リージョンに移行。コストを維持しながらサーバースペックを増強

概要

技術商社として、産業機器システムをはじめ、半導体・デバイス、社会インフラ設備等を扱う株式会社たけびし(以下、たけびし)。財務・管理会計、販売・在庫管理領域で 15 年近くにわたって SAP ERP を活用してきた同社は、サーバー機器の更新を機にアマゾン ウェブ サービス(AWS)の大阪リージョンへの移行を決断。株式会社日立システムズ(以下、日立システムズ)の支援のもと、AWS が提供する移行サービスの CloudEndure Migration(以下、CloudEndure)を活用して、6.5 ヶ月間で移行を終えました。サーバースペックの大幅な増強により、会計伝票照会時間が従来の 10 分の 1 に短縮するなど、業務効率が改善しています。

A visual overview of the TECSAS Cloud solution by Takebishi featuring a circular infographic divided into segments, with various industrial automation hardware, robotics, computers, and circuit boards, and the TECSAS Cloud logo at the center. The image demonstrates the integration of cloud and automation technologies.

DX 基盤の確立に向けて SAP ERP のクラウド移行を決断

京都・滋賀地区を主力地盤に三菱電機製品を中心とした産業用電機・電子機器を取り扱うたけびしは、技術商社として技術提案からシステム開発まで幅広いビジネスを展開しています。現在は、海外ビジネスの拡大、医療機器の販売網強化、装置自動化ビジネスの拡大、オリジナル製品の拡大の 4 つを重点領域としています。ビジネスを支える基幹システムは、1997 年に SAP R/3 の財務会計システムを導入し、2006 年には販売・購買管理、プロジェクト管理、グローバルトレード管理のモジュールを追加し、全ての業務を SAP R/3 に統合しました。以来、SAP のバージョンアップやサーバー更新を重ねながら運用を続けてきましたが、2021 年に保守期限を迎えるサーバー機器の更新を機にクラウドサービスへの移行を決めました。

「当社は、オンプレミスからの脱却と、フレキシブルなクラウドリソースの活用を IT 戦略に掲げています。その第 1 弾として基幹システムをクラウドに移行し、開発・運用ノウハウを蓄積しながら、自社開発の拡大を図ることにしました」と語るのは、経営推進室 情報システム部 システム管理課長の久郷竜二氏です。

当初はクラウド移行に合わせて SAP S/4HANA にマイグレーションすることも検討しましたが、費用対効果を考慮してインフラのみをクラウド化する方針としました。「まずはサーバーの保守期限から脱却し、必要なリソースをタイムリーに確保できるクラウドのメリットを手に入れることと、運用ノウハウを理解して今後のデジタルトランスフォーメーションに備えることを最優先としました」(久郷氏)

レイテンシーを考慮して AWS 大阪リージョンを採用

SAP ERP のクラウド移行に着手した同社は、日立システムズをパートナーに選定し、クラウドサービスは AWS を採用しました。採用の決め手は、AWS が提供する移行サービスである CloudEndure を使ってスムーズに移行する日立システムズの提案にありました。

「CloudEndure は実績が豊富なクラウド移行ツールで、日立システムズは数多くの案件を手がけていることから、安心して任せられると判断しました」(久郷氏)今回、たけびしは 2021 年に開設した AWS 大阪リージョンを移行先に採用しました。大阪リージョンはたけびしの本社から距離が近いため、レイテンシーが低いこと、利用予定サービスに不足がないこと、今後さらなるサービス追加に期待できることなどを考慮したと言います。SAP ERP の移行プロジェクトは 2021 年 6 月後半にスタート。同年 12 月 30 日、31 日の 2 日間で本番移行を実施し、2022 年 1 月の仕事始めから AWS 上での運用を開始しました。CloudEndure を活用した初期移行により、本番移行時間を大幅に短縮しています。

スムーズに移行するために、既存環境から不要なデータを削除するなどの工夫を事前にしました。さらに SAP ERP 以外のシステムは、データ移行が不要なシステムを先行して移行し、ダウンタイムの短縮を図っています。経営推進室 情報システム部 システム管理課 開発チームリーダーの村田明敏氏は「今回移行したサーバー数は 19 台、移行データ量はトータルで約 10TB となりました」と語ります。

プロジェクトにおいて日立システムズは、AWS のサイジング、環境構築、SAP ERP とSAP BW の移行と調整、データベースや周辺システムの移行、本稼働支援を担当。EDI サーバー、ジョブ管理システム、BI ツール、その他の自社開発システムなど、周辺システムの構築業者との調整と検証はたけびしで実施しています。

「日立システムズの担当者は AWS への移行経験が豊富で、突発的な問題が発生した際にもタイムリーに最適解を提示していただきました。担当範囲にこだわることなく幅広い領域で支援をいただけたことは、とても助かりました。作成していただいた手順書もわかりやすく、QA の解決でおおいに役立っています」(村田氏)

パフォーマンスの大幅向上によりシステム利用者のストレスが軽減

SAP ERP のクラウド移行により、CPU やメモリー等のサーバースペックの大幅な強化を実現し、パフォーマンスは大きく向上しました。過去 15 年間蓄積した大容量 DB からの会計伝票を照会する業務のスピードが、従来の 10 秒から 1 秒に短縮されるなど、全体的に処理の高速化が実現しています。

「結果として利用者のストレスが軽減され、全体的な業務効率が向上しました。サーバースペックは大幅にアップしていますが、定額割引の Amazon EC2 リザーブドインスタンスの活用によりインフラコストは据え置きとなり、コストパフォーマンスの高さを実感しています」(久郷氏)

運用面においてもサーバーの物理的な保守から解放され、サーバーの新設、リストア、廃止等が容易となりました。可用性の面でも、障害発生の際に新しいホストで AWS のインスタンスを自動的に再起動する Host Recovery の機能により、リカバリー時間を最小限に抑えられたことも安心感につながっています。

さらに今回、クラウド運用のスキル習得に向けて、監視領域を Amazon CloudWatch に移行したほか、コンプライアンス、セキュリティ、トラブル対策として、ログ取得管理ツールの AWS CloudTrail を新規で導入しました。

「マネージドサービスの Amazon CloudWatch を活用することで、監視ツールの安定運用と管理負荷の軽減を実現しました。AWS CloudTrail では、マネジメントコンソール上の操作ログが取得できるため、今後のトラブル対策に有効活用できると期待しています」(村田氏)

クラウドシフトを推進しながら次期基幹システムへの移行準備を開始

今後は、SAP ERP のアプリケーション保守期限を迎える 2025 年に向けて、次期基幹システムへの移行準備を開始する予定です。IT 戦略として掲げるクラウドシフトについても、今回のプロジェクトを通して獲得したノウハウを活かしながら、オンプレミス環境で運用中の業務システム等をサーバー機器の更新に応じて移行していく考えです。さらにその先に見据えているのは、AWS のサービスを活用した DX 推進です。データ分析、機械学習、社内ヘルプデスクの自動化などに取り組む構想を描いています。

「日立システムズには、今後も SAP ERP の運用保守を通して末永くお付き合いしながら、次期基幹システムに向けて密接に連携していきたいと思います。AWS には、運用の高度化や DX の加速に向けて、当社に役立つサービスの情報提供に期待しています」(久郷氏)

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本社から距離が近いためレイテンシーが低いこと、利用予定サービスに不足がないこと、今後のサービス追加に期待が大きいことなどを考慮して AWS 大阪リージョンへの移行を決めました

久郷竜二 氏

株式会社たけびし 経営推進室 情報システム部 システム管理課長

アーキテクチャ図

Diagram of an AWS cloud architecture for a private network, showing various services like Amazon S3, CloudWatch, Lambda, and SAP integration within a VPC, connected via AWS Direct Connect to an external WAN.

株式会社たけびし

  • 設立年月:1926 年 4 月 24 日

  • 資本金: 33 億 8,400 万円(2022 年 3 月 31 日現在)

  • 従業員数:794 名(連結: 2022 年 3 月 31 日現在)

  • 事業内容:各種 FA 機器、産業機械、半導体、デバイス・エンベデッド機器等の販売並びに関連工事の設計・施工、情報システム、FA システム等の販売並びにシステム設計、ソフト開発

AWS 導入後の効果と今後の展開

  • 15 年間蓄積した会計伝票の照会時間が従来の 10 分の 1 に短縮

  • CloudEndure の活用により、SAP ERPの本番環境を 2 日でクラウド移行

  • インフラコストを維持しつつ、約 30% の処理能力向上

  • サーバースペックの強化によるパフォーマンスの向上

本事例のご担当者

久郷竜二 氏

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村田明敏 氏

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