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接客スキルの属人化に悩む企業へ ― プリモグローバルホールディングスがAmazon Bedrock で実現した AI ロールプレイ研修
本ブログは プリモグローバルホールディングス株式会社 様と アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社が共同で執筆いたしました。
はじめに
みなさん、こんにちは。古山(アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社)です。
「新人の接客スキルを底上げしたいが、教える側の負担が大きい」「研修で学んだことを実践する場が足りない」――小売・接客業界で人材育成に携わる方なら、一度はこうした課題に直面したことがあるのではないでしょうか。ブライダルジュエリーの販売を手がけるプリモグローバルホールディングス株式会社 様(以下、プリモGHD様)も、まさにこの課題を抱えていました。本ブログでは、AWS の生成 AI 勉強会をきっかけに同社が Amazon Bedrock を活用した AI ロールプレイサービスを導入し、接客研修を変革した取り組みについて、背景から導入効果、今後の展望までをご紹介します。
多くの接客企業が直面する「教育の属人化」という課題
プリモGHD様の販売店では、接客スキルの平準化が長年の課題でした。接客品質がスタッフ個人の経験やスキルに依存しており、店舗間・スタッフ間でばらつきが生じていたのです。新人教育は熟練スタッフが担当していましたが、教育に割く工数が大きな負担となっていました。営業マニュアルや社内レクチャー動画、商品販売のお手本動画など、教育コンテンツは整備されていたものの、それらはインプットが中心であり、学んだ内容をアウトプットする機会が限られていました。同社は社員定着率の向上も重要なテーマとして捉えており、キャリアマップを描きながらスタッフのレベルを段階的に引き上げる仕組みを構築したいと考えていました。同社には「プリモカレッジ」という既存の教育体系があり、この仕組みの中に新たなアウトプットツールを組み込むことが検討されました。
AWS の生成 AI 勉強会が転機に ― Amazon Bedrock を選んだ理由
2024 年末、AWS の古山よりプリモGHD様の全社向けに AI 勉強会を実施しました。この勉強会では、AWS のサービスや当時注目を集めていた生成 AI の活用可能性について紹介しました。勉強会の実施、その後のアンケート調査を通して、同社は生成 AI を活用した AI ロールプレイが自社の接客研修の課題解決に有効であると感じました。インプット中心だった研修に、実践的なアウトプットの場を加えることで、学びの定着を促進できると考えたのです。これを受けて、AWS から Amazon Bedrock を活用した AI ロールプレイサービスを展開するパートナー企業をご紹介し、プリモGHD様・パートナー企業・AWS の 3 社で検討を開始しました。デモンストレーションを実施したところ好感触を得られ、本格的な導入に向けたプロジェクトが動き出しました。Amazon Bedrock を基盤として選択した理由は、シーンやトーンに応じて複数の大規模言語モデル(LLM)を柔軟に使い分けられる点にあります。ブライダルジュエリーの接客では、お客様に寄り添う繊細なコミュニケーションが求められるため、シナリオに応じたモデルの選択が重要でした。
ソリューションの概要 ―短時間でコース草案が作れる AI ロールプレイ
パートナー企業の協力を経て導入した AI ロールプレイサービスは、Amazon Bedrock などを基盤としたクラウドベースの研修ツールです。スタッフは PC やスマートフォンから AI を相手にロールプレイを行い、接客スキルを実践的に磨くことができます。このサービスの特徴は、研修コースの作成が容易な点です。シーン設定を入力するだけで AI が自動的にシチュエーションを生成し、コース草案の作成にかかる時間はわずか 5 分程度です(音声認識や論点抽出などの処理時間を除く)。これにより、研修担当者は多様な接客シナリオを素早く準備し、草案を元に現場の接客ノウハウを持つトレーナーとの協議を行うことができます。
技術的な構成と工夫 ― 多様な接客シーンへの対応
Amazon Bedrock による LLM の使い分け: シーンやトーンに応じて最適な LLM を選択できるため、カジュアルな来店対応から、プロポーズリングの相談といった情緒的な場面まで、多様な接客シナリオに対応が可能です。ロールプレイという特性上、最新のLLMを使うこと必ずしも正しいわけではないため、シーンに合わせて適切なLLMを選択しています。音声認識との連携: スタッフの発話を音声認識で取り込み、AI がリアルタイムに応答することで、実際の接客に近い体験を提供します。
AI によるフィードバック機能: ロールプレイ終了後、AI が論点を抽出しフィードバックを提供します。スタッフは自身の改善点を客観的に把握でき、次の練習に活かすことができます。また、フィードバックの内容については、新人スタッフの方たちも使用することから、まずは「上手くいっていることを褒める」という形に調整して現場での利用を促しました。
使うほど実感が深まる ― 利用回数と満足度の正の相関
導入後、5 段階評価のアンケートを実施した結果、教育効率化に対する評価が高いことが確認されました。高評価を得た上位 3 項目は以下の通りです。
1. 後輩への推奨: 自分が体験して良かったと感じ、後輩にも勧めたいという声
2. フィードバックの納得感: AI が提供するフィードバックの質に対する高い評価
3. 先輩の負担軽減: 教育担当の熟練スタッフの工数削減への貢献
一方、今後の改善が期待される項目として「コース数の不足」「音声認識精度」「会話の不自然さ」が挙げられました。
特筆すべきは、利用回数と満足度の間に明確な正の相関が確認された点です。1〜2 回の利用者が全体の 44.7% を占め、そのポジティブ率は 56.0% にとどまりましたが、6回以上利用した層では 91% 超の高い満足感を示しています。この結果は、AI ロールプレイが「使えば使うほど効果を実感できるツール」であることを裏付けています。
現場の新人スタッフが語る 3 つの変化
先輩の時間を奪わずに練習できる: 「先輩に申し訳ない」「忙しい先輩にお願いしづらい」という心理的ハードルが解消され、気兼ねなく練習に取り組めるようになりました。失敗を恐れず発言できる: AI が相手のため恥ずかしさや緊張が軽減され、積極的にトライできる環境が生まれました。インプットからアウトプットへの一貫した練習: 研修で学んだ内容を、記憶が曖昧になる前にすぐ実践できる点が高く評価されています。
教育体系への本格組み込みへ ― 今後の展望
プリモGHD様はこの成果を踏まえ、2026 年 4 月からの新入社員向け接客フロー研修において、AI ロールプレイをアウトプットツールとして本格活用を開始しています。既存の教育体系「プリモカレッジ」への組み込みを進め、接客スキルの底上げと教育工数の削減を両立する仕組みの確立を目指しています。今後はコース数の拡充や音声認識精度の向上にも取り組み、より実践的な研修環境の構築を進めていく計画です。
まとめ
本事例は、AWS の生成 AI 勉強会をきっかけに、プリモGHD様自身が社内課題を特定し、Amazon Bedrock を活用した AI ロールプレイの導入に至った取り組みです。接客業における人材育成は、熟練スタッフの暗黙知に依存しがちです。生成 AI を活用することで「いつでも・何度でも・気兼ねなく」練習できる環境を実現し、インプット中心だった研修にアウトプットの場を加えることができます。利用回数と満足度の正の相関は、継続的な活用を促す仕組みづくりが成功の鍵であることを示しています。
接客スキルの平準化や教育工数の削減に課題を感じている企業の皆様は、ぜひ AmazonBedrock の活用をご検討ください。AWS では、生成 AI を活用した業務改善についてのご相談を承っています。

