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井村屋グループ様:Amazon SageMaker Canvas を活用したチルド製品の AI 需要予測で、業務工数 90% 削減と熟練者同等の予測精度を実現

本ブログは井村屋グループ株式会社様、株式会社 Hashup 様、Amazon Web Services Japan 合同会社が共同で執筆いたしました。

みなさん、こんにちは。AWS アカウントマネージャーの藤川です。

昨今、食品・製造業のお客様から「需要予測の精度向上」や「属人化した業務の自動化」についてご相談いただく機会が増えています。特に食品業界では、賞味期間の制約や季節変動の大きさから、需要予測の精度が欠品・廃棄に直結するため、AI 活用への期待が高まっています。

1896年の創業から130年、1947年の設立から80年目を迎え「あずきバー」や「肉まんあんまん」で知られる井村屋グループ株式会社様(以下、井村屋グループ様)は、株式会社 Hashup 様(以下、Hashup 様)と連携し、Amazon SageMaker Canvas を活用したチルド製品(肉まん・あんまん・ピザまん等)の翌日出荷数 AI 需要予測の自動化のPOCを実施しました。本記事では、熟練担当者の経験と勘に依存していた需要予測業務を、AWS 上で再現・自動化した取り組みについてご紹介します。

お客様の状況と検証に至る経緯

井村屋グループ様は、DX 戦略プロジェクト(2024年度完了)を経て、需給管理と SCM 標準化プロジェクトを推進してきました。その次のステップとして、標準化された需給データを活用した AI 需要予測システムの導入に着手しました。

同社のチルドタイプの肉まんあんまんは、季節性や営業施策によって出荷量の変動が大きく、さらに賞味期間が短いため、特に高い予測精度が求められます。しかし、従来の予測業務は熟練担当者の経験と勘に依存しており、欠品や廃棄のリスクが高く、生産・出荷計画の最適化が困難な状況でした。

「業務担当者が毎日約2時間をかけて、複数の Excel シートや kintone アプリ、基幹システムからデータを手作業で抽出・整形し、前週トレンドや経験則をもとに翌日の出荷数を決定していました。まさに運用当初から継ぎ足して使われてきた”秘伝のたれ”のような業務でした」と熟練担当者は当時を振り返ります。

また、この業務は特定の担当者に属人化しており、引き継ぎリスクや、気象データなど予測に有効な外部情報を活用できていないという課題もありました。

こうした課題を解決するため、井村屋グループ様は AWS とのパートナーシップに加え、AI・データ活用に強みを持つ Hashup 様をコンサルティングパートナーとして迎え、3 社体制でPOCを実施・推進しました。

ソリューション/構成

Hashup 様が中心となり、AWS 上に以下の 2 つのアプローチでシステムを構築しました。

① 業務自動化:データレイクの構築

複数の Excel シート、kintone アプリ、基幹システムに散在していたデータの参照・抽出・整形の流れを、AWS 上にデータレイクとして構築し自動化しました。

·     kintone や基幹システムのデータを AWS 上に自動連携

·     毎日約2時間かけて手作業で作成していた見込シートを、ボタンひとつで 5 秒で自動生成

·     気象情報も自動取得し、予測の参考データとして活用可能に

「担当者様へのヒアリングを何度も実施し、複雑なデータの流れを完全に理解した上で AWS 上に再現しました。担当者様がスムーズに移行できるよう、出力は既存の見込シートとできるだけ同じ見た目になるよう配慮しています」と Hashup 様は構築時のこだわりを語ります。

② AI 需要予測:Amazon SageMaker Canvas による時系列予測モデル

Amazon SageMaker Canvas の AutoML 機能を活用し、時系列予測モデルを構築しました。

·       学習データ: 過去 2 年半の出荷実績データに、気温(代表 6 地点の平均最高・最低気温)、販促情報、前週トレンドなどを説明変数として投入

·       予測対象: チルドまん各商品の翌日出荷数

·       モデル構築: AutoML によりハイパーパラメータ最適化を自動実行し、最もパフォーマンスの高いモデルを自動選択

·       有効因子: 日本の祝日(SageMaker が自動付与)、気温、小売見込、前日計、前週トレンドなどが予測に寄与

導入効果

AI 需要予測システムのPOC実施により、以下の顕著な効果が得られました。

·       業務工数 90% 削減:

毎日約2時間を要していた予測業務のデータ抽出・前処理・予測・結果出力を自動化し、手作業をほぼゼロに

·       熟練担当者と同等以上の予測精度を実現:

あんまん: AI 6.0% vs 担当者 6.2%(WAPE)— AI が同等

ゴールド肉まん: AI 9.8% vs 担当者 15.4%(WAPE)— AI が大幅に上回る

·       属人化からの脱却:

特定担当者の経験・勘に依存しない、再現性のある予測プロセスを確立

·       外部データの活用:

従来取り入れられていなかった気象データを予測に組み込み、精度向上に貢献

「Amazon SageMaker Canvas の AutoML 機能により、機械学習の専門知識がなくても高精度な時系列予測モデルを構築できました。また、AWS 上にデータレイクを構築したことで、これまで散在していたデータが一元化され、AI 予測だけでなく今後のデータ活用基盤としても機能しています」と井村屋グループ様は技術面でのメリットを説明します。

Hashup 様は「井村屋グループ様のデジタル戦略室の皆様に多大なるご協力をいただき、担当者様への丁寧なヒアリングを重ねることで、長年培われてきた”秘伝のたれ”とも言える業務ノウハウを AWS 上に忠実に再現できました。AWS のマネージドサービスを活用することで、2025 年 11 月の開始からわずか約 4 ヶ月で概念実証を完了できたことも大きな成果です」とプロジェクトを振り返ります。

AWS Summitと同日に幕張メッセ併設の国際会議場で開催されたプライベートセッション「AI Leaders Session」ご登壇時の様子(井村屋グループ株式会社 執行役員常務 デジタル戦略室長 岡田孝平様)

今後の展望

「2026 年 秋冬のチルドまんシーズンに向けて、業務自動化から AI 需要予測までの一気通貫システムへの完全移行を目指しています。さらに、kintone の特売見込み情報と連携した長期の出荷予測を実現し、原材料発注計画の AI 予測・自動化にも取り組んでいきます。他カテゴリへの AI 予測の展開も計画しています」

また、今回のプロジェクトを通じて AWS 上のデータレイクに蓄積された販売実績・気象・販促などの多様なデータを、需要予測だけでなく経営判断や現場のアクションにも活かしていくため、Amazon Quickの活用もご検討いただいています。AI が生成した予測値と実績の乖離をダッシュボードでリアルタイムに可視化することで、予測精度のモニタリングや、需要変動の要因分析をより直感的に行える環境の構築を目指しています。

株式会社Hashup 代表取締役 CEO 神野 悦太郎様(左端)

井村屋グループ株式会社 執行役員常務 デジタル戦略室長 岡田孝平様(左から二番目)

Amazon Web Services Japan : アカウントマネージャー 藤川 高志朗(右から二番目)、ソリューションアーキテクト 古屋 楓(右端)