Amazon Web Services ブログ
Amazon Bedrock は ISMAP の言明対象であることについての考え方
はじめに
ISMAP ポータルサイトに、「生成AIサービスに関する留意点について」が追加されていますが、その内容について考察したいと思います。
この内容に基づけば、AWS としてはAmazon Bedrock のような生成AI開発基盤を通じて提供される生成 AI サービスの位置づけに関し、Amazon Bedrock上で動作する個々の生成 AI モデルについては、必ずしも ISMAP に登録されている必要がないと考えます。
本記事では、この更新内容と Amazon Bedrock 、生成 AI モデル(*1)の関係について解説します。
(*1) 生成 AI モデル: 生成 AI モデルは「基盤モデル」と称されることもありますが、本記事では ISMAP ポータルの表記に合わせて、「生成 AI モデル」という表記に統一しています。
ISMAP とは
ISMAP ( Information system Security Management and Assessment Program ) は、政府が求めるセキュリティ要求を満たしているクラウドサービスを予め評価・登録することにより、政府のクラウドサービス調達におけるセキュリティ水準の確保を図り、もってクラウドサービスの円滑な導入に資することを目的とした制度です。政府情報システムにおいてクラウドサービスを利用する際には、原則として ISMAP に登録されたサービスを選定することが求められています。
| ISMAP ポータルサイトより引用:
「 ISMAP ポータルサイト 制度案内 」 URL: https://www.ismap.go.jp/csm?id=kb_article_view&sysparm_article=KB0010005本制度は、「政府情報システムにおけるクラウドサービスのセキュリティ評価制度の基本的枠組みについて」(令和2年1月30日サイバーセキュリティ戦略本部決定)に基づき、国家サイバー統括室・デジタル庁・総務省・経済産業省が運営しています。独立行政法人情報処理推進機構( IPA )は、本制度の制度運用に係る実務及び評価に係る技術的な支援を行います。 |
ISMAP ポータルサイトの重要な更新
2026 年 1 月 9 日(記事公開追記)、ISMAPポータルサイトのページに、生成AIサービスに関する以下の内容が掲載されました。
| ISMAPポータルサイトより引用:
「 生成AIサービスに関する留意点について 」 URL: https://www.ismap.go.jp/csm?id=kb_article_view&sysparm_article=KB0011070【クラウドサービス事業者、生成 AI モデル提供者向けの周知事項】 クラウドサービス事業者が生成AIサービスをSaaSとして提供する場合には、当該SaaSは原則としてISMAP等クラウドサービスリストに登録が必要となります。これは生成AIサービスを外部連携で利用する場合においても同様です。 なお、ISMAPに登録されていない生成AIサービスをISMAPに登録されているIaaS、PaaSを用いて提供しても、当該生成AIサービスはISMAPに登録されているサービスと同等とみなすことはできません。 ただし、クラウドサービス事業者が、生成AIモデルを提供する事業者から生成AIモデルの提供を受け、当該生成AIモデルの扱うデータに対してセキュリティ管理機能を適用する自らの生成AI開発基盤において生成AIサービスを提供する場合(PaaSに相当)に、当該生成AI開発基盤を言明対象範囲に含めてISMAPに登録したときには、通常は当該生成AIサービスが取り扱うデータのセキュリティは、ISMAPのセキュリティ要件を満たす状態とみなされます。この場合において、クラウドサービス事業者が生成AI開発基盤を言明対象範囲に含めてISMAPの登録を行う場合には、提供される個々の生成AIモデルを言明対象範囲に含める必要はありません。また、提供される生成AIモデルは必ずしもISMAPに登録されている必要はありません。 この場合において、生成AI特有のリスクについては、ISMAPにおける管理基準とは別に、生成AI開発基盤をISMAP言明対象範囲に含めたクラウドサービス事業者において措置を講じることが必要です。具体的な措置については、「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」の調達チェックシート等を参考にしてください。なお 、ISMAP登録に関する審査基準等については、「ISMAPクラウドサービス登録規則」等において定めており、詳細はISMAPポータルサイトの制度規程等をご確認下さい。 |
Amazon Bedrock と生成 AI モデルの位置関係
Amazon Bedrock の特徴の一つとして、生成 AI モデルが AWS の内部環境に持ち込まれており、お客様のデータが生成 AI モデル開発事業者に提供されることはありません。これは、政府情報システムにおいて機密性の高いデータを扱う上で重要なポイントになると思います。
[ ご参考:Amazon Bedrock のよくある質問 セキュリティ ]
この仕組みにより、以下のセキュリティ上の利点が実現されています:
- データの機密性保持: お客様の入力データや生成結果が外部の生成 AI モデル開発事業者に送信されることはありません
- モデル学習への不使用: お客様のデータが生成 AI モデルの学習に使用されることはありません
- 統一されたセキュリティ管理: Amazon Bedrock の ISMAP 準拠のセキュリティ管理機能により、すべての生成 AI モデルへのアクセスが保護されます
ISMAP の評価対象の適切な理解
ISMAP は政府が求めるセキュリティ要求を満たしているクラウドサービスを予め評価・登録することにより、政府のクラウドサービス調達におけるセキュリティ水準の確保を図り、もってクラウドサービスの円滑な導入に資することを目的とした制度であり、クラウド基盤上で動作するアプリケーションやデータそのものは評価対象ではありません。これは生成 AI サービスにおいても同様です。
重要なのは、データのセキュリティを管理する責任がどこにあるかという点です。
Amazon Bedrock の場合下記になります。
- Amazon Bedrock (生成 AI 開発基盤): ISMAP の言明対象範囲に含まれ、データのセキュリティ管理を担当
- 生成 AIモデル: Amazon Bedrock 上で動作し、AWS 内部に配置されているため、ISMAP への個別登録は不要
この構造により、お客様は複数の生成 AIモデルを柔軟に選択・利用しながら、ISMAP のセキュリティ要件を満たした環境でサービスを提供できます。
Amazon Bedrock が提供する生成 AI 特有のリスクへの対応
ISMAP のセキュリティ要件への対応に加えて、生成 AI 特有のリスク(ハルシネーション、プロンプトインジェクション、バイアスなど)について、「行政の進化と革新のための生成 AI の調達・利活用に係るガイドライン」の調達チェックシート等を参考に、適切な措置を講じることが推奨されています。
Amazon Bedrock では、以下のような機能を提供しており、これらのリスクへの対応を支援しています:
- Guardrails for Amazon Bedrock : 有害なコンテンツのフィルタリング、個人情報の保護
- モデル評価機能: 力品質の評価とモニタリング
- 監査ログ: AWS CloudTrail による詳細なアクセスログの記録
まとめ
Amazon Bedrock は ISMAP の言明対象範囲に含まれており、政府情報システムにおいて安心してご利用いただける生成 AI 開発基盤です。ISMAP ポータルサイトの更新により、生成 AI 開発基盤が ISMAP に登録されている場合、その上で動作する個々の生成 AI モデルは必ずしも ISMAP に個別登録されている必要はないという見解が示されました。
Amazon Bedrock の特徴である「生成 AI モデルの AWS 内部への配置」により、お客様のデータは生成 AI モデル開発事業者に送信されることなく、モデル学習にも使用されません。これにより、機密性の高い政府情報を安全に取り扱いながら、最新の生成 AI 技術を活用することが可能です。
政府機関の皆様におかれましては、ISMAP に準拠した Amazon Bedrock を活用することで、セキュリティ要件を満たしながら、生成 AI による業務効率化やイノベーションを推進していただけます。
アマゾン ウェブ サービス ジャパン 合同会社
執行役員 パブリックセクター 技術統括本部長
瀧澤 与一
参考リンク
