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Amazon EKS が Kubernetes 1.29 のサポートを開始
この記事は Amazon EKS now supports Kubernetes version 1.29 (記事公開日: 2024 年 1 月 23 日) を翻訳したものです。
はじめに
Amazon Elastic Kubernetes Service (Amazon EKS) チームは、Amazon EKS、Amazon EKS Distro および Amazon EKS Anywhere (リリース 0.19.0) における Kubernetes バージョン 1.29 のサポートを発表できることを嬉しく思います。このバージョンのテーマは、美しい芸術形式である「曼荼羅」で、それは宇宙の完璧さを象徴しています。そのため、リリース名は「Mandala」です。Kubernetes リリースチームは公式リリース発表の中で、このリリースは「コミュニティの相互接続性、熱狂的なファンや専門家によって織り上げられた活気に満ちたタペストリー」を反映していると述べています。
アップグレードの前提条件
Amazon EKS で Kubernetes v1.29 にアップグレードする前に、完了する必要がある重要なタスクがいくつかあります。次のセクションでは、アップグレード前に対処する必要がある変更点の概要を説明します。
- FlowSchema と PriorityLevelConfiguration の API バージョンを更新してください。
非推奨の flowcontrol.apiserver.k8s.io/v1beta2 API バージョンの FlowSchema および PriorityLevelConfiguration は、Kubernetes v1.29 では提供されなくなりました。 非推奨のベータ API グループを使用するマニフェストまたはクライアントソフトウェアがある場合は、v1.29 にアップグレードする前にこれらを変更する必要があります。 詳細については、Deprecated API Migration Guide を参照してください。
Kubernetes 1.29 のハイライト
この記事では、Kubernetes バージョン 1.29 リリースの注目すべき機能強化、および削除と非推奨の一部について説明します。まず、このリリースでは v1beta2 Flow control API グループの削除など、いくつかの重要な変更がもたらされることに注意することが重要です。これは、v1.29 にアップグレードする前に、非推奨 API グループを使用しているマニフェストまたはクライアントソフトウェアを更新する必要があることを意味します。最後に、v1.29 には、SidecarContainers のベータ版サポートなど、私たちが楽しみにしている機能強化がいくつかあります。Kubernetes バージョン 1.29 の変更とアップデートの完全なリストについては、Kubernetes の変更ログを確認してください。
以下は、v1.29 のリリースに関して私たち技術コミュニティが興奮しているいくつかの機能強化です。完全なリストはこちらを参照してください。
高度な Pod 管理機能がベータ版に到達
Kubernetes v1.29 では、一連の高度なポッド管理機能が導入されます。これらは強力な機能ですが、その影響を総合的にテストし、問題が発生した場合のロールバック計画を立てておくことをお勧めします。何らかの問題が発生した場合は、機能を無効にして kubelet を再起動することをお勧めします。
- #753 がベータ版に移行し、SidecarContainers フィーチャーゲートがデフォルトで有効になりました。この機能により、Init コンテナを Pod が終了するまで実行し続けることができ、事実上、Init コンテナをサイドカーコンテナに変えることができます。これは、Pod 内のメインコンテナと並行して実行する必要がある、長時間実行する補助プロセスの管理の問題を解決します。たとえば、Pod にメインアプリケーションコンテナと、メインアプリケーションからログを収集して転送するロギングコンテナがある場合、ロギングコンテナをサイドカーコンテナとして定義できます。これにより、メインアプリケーションコンテナが実行されている間、ロギングコンテナは実行とログの収集を継続し、継続的なログの収集と転送を行うことができます。
セキュリティ強化
- #2799 がベータ版に移行し、LegacyServiceAccountTokenCleanUp フィーチャーゲートがデフォルトで有効になりました。この機能により、Secret ベースの未使用の従来のサービスアカウントトークンを自動的にクリーンアップできます。具体的には、従来の自動生成された Secret ベースのトークンが長期間 (デフォルトで 1 年間) 使用されていない場合、無効であるとラベル付けし、無効であるとマークされた後、長期間 (デフォルトでさらに1年間) 使用が試みられなかった場合、自動的に削除します。例えば、Kubernetes クラスターが v1.22 で作成され、自動生成された Secret ベースのサービスアカウントトークンがあった場合、v1.29 にアップグレードした後でも、それらのレガシートークンが残っている可能性があります。この機能は、不要になった古い未使用トークンを自動的にクリーンアップし、潜在的な攻撃対象領域を減らすのに役立ちます。未使用のトークンを使用しているかどうかを確認するには、以下のコマンドを実行してください。
- #3299 が安定版に移行し、Kubernetes v1.29では、KMSv2 および KMSv2KDF フィーチャーゲートがデフォルトで有効になりました。しかし、KMSv2 は現在 Amazon EKS ではサポートされていないことに注意してください。
これは、Kubernetes v1.29 で安定版に移行した最もクールな機能の完全なリストではありません。完全なリストについては、Graduations to stable を参照してください。
削除された API バージョンと機能
現在では、Kubernetes の新しいバージョンがリリースされると、Kubernetes API のバージョンや機能が非推奨になったり、削除されたりすることは珍しくありません。このような場合、v1.29 にアップグレードする前に、すべてのマニフェストとコントローラーをこのセクションに記載されている新しいバージョンと機能に更新することが不可欠です。以下は v1.29 リリースの重要な注意点です。完全なリストについては、すべての Deprecations and removals in Kubernetes v1.29 を参照してください。
ノードの status.nodeInfo.kubeProxyVersion フィールドの非推奨化
- Node オブジェクトの .status.kubeProxyVersion フィールドは現在非推奨となり、Kubernetes プロジェクトは将来のリリースでこのフィールドを削除することを提案しています。この非推奨フィールドは正確ではなく、歴史的には kubelet によって管理されてきましたが、実際には kubelet は kube-proxy のバージョンや kube-proxy が実行されているかどうかを知りません。クライアントソフトウェアでこのフィールドを使用している場合は、使用を中止してください。情報は信頼できず、このフィールドは非推奨になりました。
Amazon EKS の Kubernetes バージョンサポート
Amazon EKS は現在、7 つの Kubernetes バージョン (v1.23 〜 v1.29) をサポートしています。Kubernetes v1.24 〜 v1.29 は標準サポートで、v1.23 は現在延長サポート中です。Kubernetes バージョン 1.24 は、2024 年 2 月 1 日に延長サポートに入ります。Amazon EKS の延長バージョンサポートについては、こちらのブログ記事と FAQ をご覧ください。延長サポートを利用したくない場合は、標準サポートの Kubernetes バージョンへのアップグレードをご検討ください。
まとめ
この記事では、Kubernetes バージョン v1.29 の注目すべき変更点を説明し、利用可能となった最もエキサイティングな機能のいくつかを紹介しました。Kubernetes v1.29 リリースノートに記載されているその他の改善点もぜひチェックしてください。クラスターを最新の Amazon EKS バージョンにアップグレードする際にサポートが必要な場合は、こちらのドキュメントを参照してください。簡単なアンケートにご参加いただき、今後のブログ記事でご覧になりたい情報をお知らせください。
翻訳はプロフェッショナルサービスの杉田が担当しました。原文はこちらです。