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Amazon QuickSight: 2021年の振り返り

この記事は “Amazon QuickSight: 2021 in review” を翻訳したものです。

AWS re:Invent が間近に迫ってきたため、Amazon QuickSight チームでは今年の主要なアップデート全てを便利な一覧として提供するためこちらの投稿をまとめました。本投稿は、すべてのユーザーにインサイトを、QuickSight を使った埋め込み分析、スケーリングおよびガバナンス、以上 3 つの主要なセクションに分けてご紹介します。

すべてのユーザーにインサイトを

Amazon QuickSight では、エンドユーザー向けのシンプルな自然言語による質問やインタラクティブなダッシュボード、ビジネスアナリスト向けの ML を活用したデータ探索を通じて、組織内のすべてのユーザーがデータをより深く理解できるようになります。開発者は、埋め込みビジュアライゼーション、ダッシュボード、そしてQをアプリに追加することで、ユーザーエクスペリエンスの差別化と向上を図ることができます。2021年のアップデートの中から、ユーザー向けにデプロイできるようになった新しいエクスペリエンスと機能を見ていきましょう。

エンドユーザーに真のセルフサービスを提供する Amazon QuickSight Q

今年の初めに Amazon QuickSight Q が一般公開され(※訳者追記: 翻訳時点ではQは日本語は未サポート)、機械学習 (ML) を活用した Q&A を使い、トレーニングや準備無しにエンドユーザーがデータについて簡単に質問することができるようになりました。Qがダッシュボードに内容を表示するだけでなく、エンドユーザーはビジネスインテリジェンス (BI) チームとの典型的なやり取りや、新しいダッシュボードやビジュアルの追加に伴う数週間にわたる待ち時間を回避できます。また、エンドユーザーは、さまざまな視覚化を解釈したり、従来の BI ダッシュボードのフィルターやその他の要素を理解したりすることなく、データをより直感的に理解することができるようになります。

たとえば、セールスマネージャはQからの回答を得るために、「今年のカリフォルニアの月間売上高はどのくらいでしたか?」という質問を単純に問いかけることができます。さらに深く掘り下げるには、「カリフォルニア州の売上高で上位5人の顧客は誰ですか?」と続けることができます。Qはユーザーに視覚的な回答を提示するため、手作業による変更や分析は不要です。Q はアプリケーションに埋め込むこともできるため、開発者はアプリケーションのエクスペリエンスを強化し、差別化を図ることができます。Qの詳細とと開始方法については、Amazon QuickSight Q — 自然言語の質問を使用したビジネスインテリジェンスを参照してください。

ピクセルパーフェクトかつインタラクティブなダッシュボードのための自由形式レイアウト、新しいグラフの種類など

QuickSight ダッシュボードの作成者は、新しいフリーフォームレイアウトを使用できるようになりました。これにより、ダッシュボードコンポーネントの正確な配置とサイズ変更、グラフと画像のオーバーレイ、パラメーターに基づいた要素の条件付きレンダリングが可能になります。これらの機能と、グラフ全体で利用できるようになったきめ細かなカスタマイズオプション (グリッド線、軸ラベルの非表示など) を組み合わせることで、QuickSight のダッシュボードを特定のユースケースやデザインに合わせて高度にカスタマイズできます。次のスクリーンショットは、フリーフォーム・レイアウトを使用してカスタマイズしたダッシュボードの例です。

また、作成者は QuickSight の2軸折れ線グラフサンキー図などの新しいビジュアルタイプを使用して、ダッシュボード上での新たなデータの表示方法をすばやく追加できます。特にサンキー図は QuickSight ユーザーの間で非常に人気があり、チャートを広範囲にカスタマイズしたり、外部プラグインのライセンスを取得したりすることなく、キャッシュフロー、プロセスステップ、またはWeb サイトの訪問者フローを視覚化できます。また、ダッシュボードにカスタム Web コンポーネントを追加するオプションも追加され、画像、動画、Web ページ、外部アプリを埋め込むことができます。カスタムコンポーネントにパラメータ値を渡す機能と組み合わせることで、ダッシュボードの作成者は非常に幅広いクリエイティブな可能性を得ることができます。

下のスクリーンショットは、2軸折れ線グラフ (左) の例を示しています。このグラフでは、High と Volume の指標が同じグラフ内の 2 つの異なるスケールでマッピングされています。

下のスクリーンショットは、さまざまなエネルギー源の消費形態とチャネルを示すサンキー図の例です。

次のスクリーンショットは、QuickSight ダッシュボードに埋め込まれた Web コンテンツ (異なる輸送方法による実店舗ナビゲーション) の例を示しています。

テーブルとピボットテーブルにも広範なアップデートが加えられ、作成者は組織の設計基準に合わせてこれらを広範囲にカスタマイズできるようになりました。新機能によって以下のことが可能になります。

  • 行の高さを上げる
  • テキストの折り返し
  • コンテンツを縦に揃える
  • 背景色、フォントの色、枠線、グリッド線、奇数・偶数行の色のカスタマイズ
  • 合計と小計のスタイルを設定して強調表示する
  • コンテンツのスタイルを設定して外部リソースに対するハイパーリンクにする
  • テーブルのセル内にイメージを追加する

次のスクリーンショットは、リンク、イメージ、フォントの色、枠線、グリッド線、奇数・偶数行の色、テキストの折り返し、行の高さをカスタマイズしたテーブルのビジュアルの例です。

次のスクリーンショットは、合計と小計にカスタムスタイルが設定されたピボットテーブルの例です。

データをより深く分析するために、ビジュアライゼーションピボットテーブルでコンテンツのカスタムソートを可能にし、明確に定義されたコンテンツの表示を行えるようになりました。ダッシュボードの作成者は、カスタムツールチップを使用して、画面上のビジュアルデータから容易に読み取れるコンテキスト以外にも追加のコンテキストを付与することができます。パラメーターを使用して、ダッシュボードのビジュアルのタイトルとサブタイトルを動的に入力できるようになりました。時間データは秒単位で集計できるため、Internet of Things (IoT) や産業用ユースケースに役立ちます。また、フィルターでは時刻の指定を省くことができるようになり、日/月/年が主な要素となるビジネス向けのユースケースをサポートできるようになりました。

フィルターでは、作成者とエンドユーザーがより高速にフィルターを行うためのワイルドカード検索、複数の値を簡単に貼り付けることができる複数行フィルター、そして相対日付コントロールにおいては今日からの相対的な期間を選択するのに加え、閲覧者が相対期間上でさらに任意の日付範囲を選択できるようアップデートを追加しました。

ダッシュボードの利用と共同作業

QuickSight は組織内でのコラボレーションを容易にするために、 Wiki、SharePoint、Google サイトなどに対し、開発作業不要でダッシュボードのワンクリック埋め込みをサポートするようになりました。これにより、お気に入りのミュージックビデオを埋め込むのと同じくらい簡単にダッシュボードを埋め込むことができます。また、ダッシュボードのリンクベース共有も導入されました。つまり、必要に応じて、特定のユーザーまたはグループを個別に有効にしなくても、組織内のすべてのユーザーとダッシュボードを共有できます。

QuickSight のしきい値ベースのアラートにより、ダッシュボードの閲覧者は、ダッシュボード内の KPI が特定のしきい値を突破したときに通知を受けることが可能になりました。ML搭載の自動異常アラートと併せることで、閲覧者はデータに対し重要な予期されるもしくは予期しない変更があったときに通知を受けるメカニズムを設定できます。

今年は、QuickSight ダッシュボードのビューを共有する機能も開始しました。これにより、閲覧者はフィルターの状態をキャプチャする一意の URL を生成し、他のユーザーに提供することができます。これにより、データを共通のビューで見てディスカッションすることが容易になります。

オフラインアクセスに関して、閲覧者は特定の役割やユースケースに合わせてパーソナライズされた、データの PDF スナップショットを受信できるようになりました。作成者は、新しいパーソナライズされたメールレポート機能を使用してこれを設定し、事前定義した間隔で数千人のユーザーに一意のメールを送信し、それぞれがエンドユーザー固有のデータビューを表示するようにします。

再利用可能なデータアーキテクチャを構築する

大規模な組織でも開発者環境でも、データセットの作成と再利用は、組織全体で共有されるデータの解釈が正確であることを保証するうえで重要な役割を果たします。これをサポートするために、QuickSight は dataset as a source を導入しました。これは、QuickSight データセットを別のデータセットを作成するためのソースとして利用できるようにする新機能です。これにより、データセット間でデータ系統を形成することが可能になります。計算フィールド、データ更新、行レベルのセキュリティ、および列レベルのセキュリティに関する更新は、データセット間で自動的に反映されるように構成できため、強力なデータ管理ツールとなります。詳細については、既存の Amazon QuickSight データソースを使用したデータセットの作成を参照してください。

データセットに含まれる論理情報の一部として、フィールドフォルダを作成してフィールドをグループ化したり、フィールドにメタデータを追加したり、データセットに集計計算を追加したりできるようになりました。これにより、標準化された計算を事前に定義して共有し、作成者がダッシュボードに簡単に含めることができるようになりました。

データセットがバージョン管理にも対応したことで、作成者やデータ所有者は、API 呼び出しや変更を行うことなく、データセットを異なるバージョン間ですばやく切り替えることができるようになりました。

下のスクリーンショットは、準備画面から見たデータセットのバージョン/公開履歴の例です。

最後に、QuickSightはAmazon Redshift、Snowflake、SQL Server、Oracleなどデータウェアハウスのライブ分析オプションを継続して追加しており、ここにExasol が加わりました。これにより、作成者はペタバイト級のデータセットをクラウドから直接探索するためのさまざまなオプションを利用することが可能になります。

インサイトをアプリに埋め込む

3M、Bolt、Blackboard、NFL、Comcast、Panasonic Avionics などのお客様は、QuickSight を顧客やパートナー向けの埋め込み分析として利用することで、通常であればリッチな分析レイヤーを作成するのにかかっていたであろう数か月から数年の開発期間や、継続的なメンテナンス時間を節約しています。また、お客様はQuickSight を利用することで、エンドユーザー向けアプリケーションにML を利用したインサイトや自然言語クエリなど、BI の最新の進歩を導入することも可能になります。

新しいワンクリック埋め込みオプションにより、Software as a Service (SaaS) アプリに埋め込みダッシュボード統合する Proof of Concept (PoC) をわずか数分で開始できるようになりました。透過的な認証を使いアプリケーションとの更なる深い統合を実現するための、サーバーサイドでの QuickSight の埋め込み呼び出しもサポートされています。これには、変更不可能なフィルターをダッシュボードに簡単に追加できる新しいタグベースの行レベルセキュリティオプションも含まれています。つまり、QuickSight や別の BI 製品にこれらのユーザーを複製して管理するための手間をかけず、数十万ユーザー用のマルチテナント埋め込みダッシュボードを組み込むことができます。

QuickSight の埋め込み機能セットの一部として、開発者は Q の強力な機能を活用することもできるようになりました。Q をアプリケーションに埋め込むことができるため、エンドユーザーはデータについて簡単に質問したり、アプリに埋め込まれた QuickSight ダッシュボードを通じてインサイトのコンテキストを共有したりすることができます。いくつかのサンプル埋め込みダッシュボードは DemoCentral で利用可能です。

QuickSight のインタラクティブなダッシュボードとメールレポートを統合したいと考えている開発者や独立系ソフトウェアベンダー向けに、メールレポートをカスタマイズする機能も導入しました。これにより、次のスクリーンショットに示すように、電子メールの送信者アドレス、ロゴ、背景色、フッターをカスタマイズすることができます。

QuickSight の既存のオーサリングエクスペリエンス埋め込み機能と組み合わせることで、QuickSight は埋め込み分析機能の強力なスイートを開発者に提供するようになりました。これはには、埋め込みのインタラクティブダッシュボード、Qを利用した埋め込み ML 搭載 Q&A、埋め込みオーサリング、カスタマイズされた電子メールレポートが含まれます。

スケーリングとガバナンス

QuickSight のフルマネージド型のクラウドネイティブアーキテクチャは、サーバーやノードのセットアップ、ソフトウェアのアップデートやパッチの管理、インフラストラクチャの検討などが不要であり、幅広いお客様に喜ばれています。

QuickSight のインメモリ計算エンジンである SPICE は、このサーバーレスアーキテクチャの重要な柱であり、顧客の介入なしにデータを数万人から数十万人に拡張できます。SPICE のデータ制限を 1 データセットあたり 5 億行に倍増し、Amazon Redshift、Amazon Athena、PostgreSQL、Snowflake などの SQL ベースのデータソースに対して 15 分ごとの増分データ更新をサポートするようになりました。これにより、データ更新の間隔が 75% 短縮されます。また、増分更新では、完全更新にかかっていたほんの一部の時間で SPICE データセットを更新するため、最新のインサイトにすばやくアクセスできるようになります。

今年は、QuickSight アカウントを作成する際に、複数の簡素化とセキュリティメカニズムの導入を行いました。QuickSight にサインアップする管理者は、QuickSight がアカウントのカスタムサービスロールを作成する代わりに、AWS アカウントの既存のロールから選択できます。これにより、連携する AWS サービスと QuickSight の集まりに対して、独自のロールをセットアップできます。

管理者は、サービスコントロールポリシー (SCP) を使用して、組織内の QuickSight サインアップオプションを制御できるようになりました。たとえば、管理者は QuickSight Standard Edition へのサインアップを拒否するサービスコントロールポリシーを設定し、フェデレーションシングルサインオン (SSO) 経由以外のユーザーを招待する機能をオフにすることができます。

また、管理者は SSO で QuickSight を設定して、エンドユーザーのメールアドレスが初回ログイン時に自動的に同期されるようにすることもできます。これにより、入力時の手動エラーを回避したり、個人のメールアドレスが使用されないようにしたりすることができます。詳細については、新しい Amazon QuickSight 管理コントロールを使いアカウントのセットアップとアクセス管理を安全かつシンプルにするを参照してください。

QuickSight 管理者は、QuickSight UI、モバイルアプリ、埋め込みページへのアクセスにソース IP 制限を適用できるようになりました。これにより、QuickSight 内のデータを保護し、信頼できるソースのみがアクセスできるようにデータを保持できます。詳細については、IP 制限を使用して Amazon QuickSight へのアクセスを制御するを参照してください。

最後に、既存の認証 (SOC、PCI、HIPAA など) に加えて、米国の GovCloud (西部) で FedRAMP High に準拠したことで、他のお客様が享受してきたのと同じサーバーレスのメリットを政府機関のワークロードに提供します。

まとめ

QuickSight は毎週何百万ものダッシュボードビューを提供し、あらゆる規模の組織でデータドリブンな意思決定を可能にしています。Best Western Hotels and Resorts では世界中の業務改善のためQuickSight を使用しており、ビジネスにとって重要な主要指標をリアルタイムでホテル運営者に提供し、23,000 人を超えるQuickSight のユーザーがいます。True Blue は、人材配置、人材管理、採用プロセスのアウトソーシングなど、専門的なワークフォースソリューションに重点を置いており、QuickSight を利用することでより正確な価格設定を提供し、500 を超える拠点でビジネスを成長させています。生活のあらゆる場面での呼吸にフォーカスするグローバル企業であるVyaire Medicalは、COVID-19の大流行時にQuickSightを使用して人工呼吸器の生産を20倍に拡大しました。プロフェッショナルサービス企業の見込みから支払いまでのクライアント業務を管理するクラウドベースのプラットフォームである Accelo は、Web アプリケーション内でエンドユーザーに埋め込み分析を提供するために QuickSight を選択しました。

この記事で取り上げた機能は、今年一年を通じて行われた変更の主要なまとめであり、これらのお客様や他のお客様が QuickSight の導入を加速するのに役立ちました。

re:Invent 2021 では、世界最大のスポーツリーグである NFL から、QuickSight がどのように次世代統計ポータルを強化し、NFL のクラブ、放送局、研究者にリアルタイムおよび過去の統計情報を提供しているかについてお聞きします。また、Qがどのようにデータの消費方法に革命を起こすかについても学びます。

埋め込みアナリティクスの面では、グローバルヘルスケアのパイオニアである 3M と、数百万人のユーザーのオンラインチェックアウトスペースを再定義している Bolt から、QuickSight がどのようにエンドユーザーの分析を強化し、インフラストラクチャのオーバーヘッドなしにすべてのユーザーに合わせてスケールすることを可能にしているかについてお話しいただきます。

また、Accentureと Amazon の財務チームには、QuickSight が金融業界の一般的なガバナンスとコンプライアンスのニーズを実現しつつ、どのようにレガシー BI からクラウドネイティブという未来への移行を可能にしているかをお話しいただきます。

今年は、オンラインでre:Inventに登録するだけで、椅子に座りながら快適にこれらのセッションを視聴することができます。re:Inventでは、ブースやセッションで対面、あるいはバーチャルで交流し、フィードバックを頂くのを楽しみにしています。


翻訳はソリューションアーキテクトの 吉成 貴裕 が担当しました。原文はこちらです。

著者について

Jose Kunnackal は、AWS のクラウドネイティブでフルマネージド BI サービスである Amazon QuickSight のプリンシパルプロダクトマネージャーです。Jose はモトローラでキャリアをスタートし、テレコムおよびファーストレスポンダーシステム用のソフトウェアを開発しました。その後、Trilibis Mobile のエンジニアリングディレクターを務め、AWS のサービスを使用して SaaS モバイルウェブプラットフォームを構築しました。Jose はクラウドテクノロジーの可能性に心を躍らせており、お客様のクラウドへの移行を支援できることを楽しみにしています。

Sahitya Pandiri は、アマゾンウェブサービスのテクニカルプログラムマネージャーです。