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【開催報告】 AWS for Games Live 大阪で学ぶゲーム開発最新動向と生成系 AI (10/26)
こんにちは、アマゾン ウェブ サービス ジャパン 合同会社 ソリューションアーキテクトの中川です。
2023 年 10 月 26 日に AWS for Games Live を開催いたしました。
AWS for Games Live とは?
AWS for Games Live は、AWS 公式ウェブマガジン builders.flash の記事と連動したイベントで、AWS for Games の 3 つの柱「Build」「Run」「Grow」の柱のうち 1 つにフォーカスを当てて、その内容を掘り下げるものです。参加者の方々には、ゲーム業界のトレンドを知ったりネットワーキングを楽しんだりする時間として活用していただいています。今回は、「大阪で学ぶゲーム開発最新動向と生成系 AI」と題して、4 つのセッションを設け、AWS のゲーム業界の最新事例、先日リリースした「Amazon Bedrock」についてのご紹介、AWS をご利用のお客様による事例登壇をいただきました。また、イベントの最後には懇親会も開催され、ゲーム開発者の方々とのネットワーキングもお楽しみいただきました。
AWS for Games と最新ゲーム事例のご紹介 ver. Osaka
はじめに、ソリューションアーキテクト 鷲見 啓志 から、現在までの 4 年間の AWS の変遷と、AWS for Games、大阪リージョンについてご紹介しました。資料はこちらのリンクからご覧いただけます。
本セッションではまず、大阪で前回イベントが開催された4年前から現在までを振り返り、AWS と大阪の変遷を紹介しました。AWS の主要なアップデートを振り返ると、2020 年には、Amazon EC2 Mac インスタンスが発表され、クラウド上でモバイルゲームのビルドができるようになりました。2021 年には、AWS App Runner, Amazon ECS Anywhere が GA するなど、コンテナ系サービスのアップデートが多くありました。2022 年には、Amazon Aurora Serverless v2 や Amazon Redshift Serverless が GA するなどサーバレスサービスの拡充が多く行われました。2023 年には、Amazon Bedrock という生成系 AI をアプリに簡単に組み込めるサービスが GA しました。
次に、2022 年に生まれた AWS for Games について紹介しました。AWS for Games とは AWS 及び AWS パートナーによるゲーム業界向けの開発( BUILD )、運営( RUN )、成長( GROW )のそれぞれのフェーズをサポートする 6 つのエリアに特化したソリューションとサービスの集まりです。
BUILD では、ゲーム開発者向け仮想ワークステーションによりリモートワークやコラボレーションを支援でき、Perforce Helix Core on AWSで高い可用性/拡張性を、Incredibuild on AWS でビルドの並列化/高速化/コスト最適化を実現できます(お客様 BUILD 事例:ゲームフリーク様、カプコン様、ガンホー・オンライン・エンターテイメント様)。RUN では、高速で安価なネットワークを提供する AWS のグローバルインフラストラクチャを活用でき、AWS Global Accelerator によりネットワークの可用性とパフォーマンスを向上できます。また、ゲームバックエンドシステムの各コンポーネントには、ユースケースに応じて適したコンピューティング環境・データベースを選択でき、例えばマネージドなゲームサーバーの構築には Amazon GameLift、DDoS/Bot 攻撃の緩和には AWS Shield / AWS WAFのようなセキュリティサービスも活用できます(お客様 RUN 事例:VALORANT、ELDEN RING、Dead by Daylight)。GROW では、ゲームの収益拡大に重要なゲームデータ分析パイプラインの構築支援や、チート予測やオペレーション効率化のような AI/ML 活用へ向けた支援が可能です(お客様 GROW 事例:ソーシャルゲームデータ分析基盤、モンスターハンターライダーズにおけるユーザー離脱予測)。
最後に、2021 年に日本で 2 つ目のリージョンとして生まれた、大阪リージョンについて紹介しました。大阪リージョンは、3 つの AZ をもち、他リージョンと同様に単体利用可能な AWS リージョンです。お客様の声を反映し、サービスおよび機能拡充を続けており、多くのパターン様々な業種業態のお客様にご利用頂いています。ぜひ、大阪リージョンの活用もご検討ください。
Generative AI はゲーム開発 運用の夢をみるか?
次に、同じくソリューションアーキテクトの中村 一樹から、「ゲーム開発運用は生成系 AI の恩恵を受けられるか?」というテーマで生成系 AI でできること、AWS サービスとの関わり、活用例についてご紹介しました。
生成系 AI は、新しいコンテンツやアイデアを想像する AI であり、一般に基盤モデル(FM : ファウンデーションモデル)と呼ばれる膨大なデータに基づいて事前にトレーニングされた大規模モデルを搭載しています。特定のタスクを実行する従来の機械学習モデルとは異なり、学習なしで様々な異なるタスクを高い精度で実行できる適応性が基盤モデルの特長です。
生成系 AI は、ビデオ、オーディオ、テキスト、画像などを生成できます。Txt2Txt (テキストからテキストを生成する)モデルは、シナリオなどの文章作成、文章チェックなどの Quality Assuarance、チーム内・社内ナレッジボットなどの開発運用支援に活用できます。Txt2Img(テキストから画像を生成する)モデルや Img2Img(画像から画像を生成する)モデルは、カラーバリエーション検証、ラフ画やテキストからの画像生成などのコミュニケーションサポート等で活用できます。Img2Txt(画像からテキストを生成する)モデルは、表示不具合検知などの Quality Assurance、不適切な User Generated Content の検知などのコンテンツモデレーションで活用できます。
AWS での生成系 AI サービスとしては、AI によるコード生成やセキュリティスキャンができる Amazon CodeWhisperer や、生成系 AI アプリケーションを簡単に構築できる Amazon Bedrock などがあり、その活用例としては、RAG : Retrieval Augmented Generation(検索拡張生成)を使用した社内ナレッジ検索ツールや、Img2Txt を使用した多言語対応による文字のはみ出し・装備の組み合わせにより見た目がおかしくなるチェック、といった画像確認チェックなどが考えられます。
著作権など色々考えないといけないことはありますが、生成系AIを使える範囲で正しく使うと、ゲーム開発運用においても多くの恩恵を受けられます。
社内システムから大ヒットタイトルまで – Happy Elements の鉄板 AWS 設計
続いて、Happy Elements 株式会社 インフラグループ グループリーダーの長谷川 一輝様から、少人数でも高い安定性を維持できるインフラの標準構成についてご紹介をいただきました。資料はこちらのリンクからご覧いただけます。
まず技術構成として、ゲームエンジンは Unity、アプリケーションフレームワークは Ruby on Rails、リアルタイム通信時はnode.js, gRPC, magiconion、監視ツールは Datadog, New Relic、IaC ツールには Terraform を利用しています。
基本的なインフラの設計方針としては、アプリケーションは Amazon ECS、ワーカーは Amazon EC2、データベースは Amazon Aurora、静的コンテンツ配信は Amazon CloudFront・Amazon S3、ロードバランサーは Application Load Balancer、ログは Amazon CloudWatch Logs から Amazon Kinesis Data Firehose を通して Amazon S3 へ配信する構成です。特別なことはせず、シンプルな構成を意識しています。
アプリケーションの ECS は、Kubernetes ほどの学習コストがなく、バージョンアップの負担も軽減されるため、WebAPI のようなシンプル運用に非常にマッチします。ワーカーの EC2 は、リザーブドインスタンスやスポットインスタンスを活用して大規模利用時のコストメリットを活かす為 Fargate ではなく EC2 を採用していますが、運用コストもそこまで大きくありません。静的アセット配信は必ず CloudFront + S3 を使い高スループットのメリットを活かしつつ、API 通信を含む全てのリクエストを CloudFront に通すことでボリュームディスカウントを効かせています。 Http ロードバランサーには ALB を活用することで他AWS サービスとの連携が容易となり運用負荷が減ります。ログ配信は運用負荷の低い ECS awslogs ドライバを利用して CloudWatch Logs に配信し、そこから Kinesis Data Firehose を使い S3 のデータレイクに集約することでログ処理に繋げています。中でも AWS Enterprise Support が一番オススメしたいサービスで、TAM による助言や IEM など多岐に渡るサポートを受けられるため、少人数で AWS 利用する時の非常に心強い味方だと述べました。
サイバーコネクトツーのゲーム開発効率化と AI のこれから
最後に、株式会社サイバーコネクトツー 代表取締役の松山 洋様から、サイバーコネクトツーの AWS 利用と AI 研究とその活用状況についてご紹介をいただきました。
まずはじめに AWS の利用状況について 2 つご紹介頂きました。1 つ目に オンラインストレージとして Amazon S3 を使用しています。サイバーコネクトツーでは、福岡・東京・大阪の3拠点で連携しながら同じプロジェクトを担当します。その為、ピーク時には各拠点同士で 200 人以上が情報共有をする必要がありますが、そのデータ連携基盤として Amazon S3 を利用しています。2 つ目に、Incredibuild Cloud のクラウドプラットフォームとして AWS を使用しています。これによりビルドの速度が向上し、エンジニアの作業効率の向上に繋がりました。「これを使う前にはもう戻れない」とのエンジニアの声もあったそうです。また、AWS を選んで良かったこととして、オンライン会議等で丁寧にフォローをしてくれる点と、AWS のエンジニアが直接サポートに入ってくれる点を挙げました。分からないことをとにかく手厚くサポートしてくれる、気配り、真心、おもてなしが素晴らしいと述べ、開発効率化について今後も AWS からの最適な提案を期待していると述べました。
次にサイバーコネクトツーの AI 研究とその活用状況についてご紹介頂きました。サイバーコネクトツーでは AI 研究会を発足し、AI の積極運用を目指し活用方法や可能性を模索しています。実際に、漫画作品内の架空ビジュアルの作成や、AI によるラフの作成、ラフからのレタッチ、静止画から短尺の動画の自動生成などで活用を始めています。今後 AI でゲーム開発がどう変わるか?という問いに対しては、現状開発が大きく変わることはないとの見解を示しましたが、開発の初動でスピードは向上し、将来的なゲーム開発には不可欠な技術となり得ると述べました。ただし、人材として AI を活用するスキルが求められること、AI 導入の為の初期設備投資が必要となる点にも触れました。
懇親会
セッション終了後には、懇親会が開催されました。多くの参加者が、会社の壁を超えてセッションの内容についてディスカッションしたり、ネットワーキングを楽しまれたご様子でした。
最後に
前回の Game Tech Night の大阪開催から 4 年を経て、コンピュート、コンテナ、サーバレス、生成系 AI と様々な技術領域でアップデートを迎えた AWS ですが、その多くがゲームの開発運用にも役立っています。実際、Happy Elements 様、サイバーコネクトツー様をはじめ多くのゲーム業界のお客様が AWS を活用することでシステムを改善されました。生成系 AI の活用については、人材、設備投資、著作権など意識すべき点はありますが、現時点でもゲーム開発運用において多くの恩恵をもたらしてくれそうであり、将来的なゲーム開発には不可欠な要素となるでしょう。ゲーム開発運用の効率化・モダン化をお考えのお客様、生成系 AI の導入をお考えのお客様は、ぜひ一度お気軽に AWS までご相談下さい。