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セガサミーホールディングスがオンプレミスの Oracle Database を Amazon RDS for Oracle に移行し、性能と運用効率を大幅改善
セガサミーホールディングス株式会社は、エンタテインメントコンテンツ事業、遊技機事業、ゲーミング事業の 3 つの事業領域を軸に展開する総合エンタテインメント企業グループの持株会社です。同社では、グループ会社であるサミー株式会社の基幹業務システム(販売、調達、生産、在庫管理)を支えるデータベースを、オンプレミスの Oracle Database から Amazon RDS for Oracle に移行しました。本ブログでは、移行の背景にあった課題、移行の取り組み、そして移行後に得られた効果についてご紹介します。
移行対象のシステム
今回の移行対象のデータベースは、サミー株式会社の基幹業務(販売、調達、生産、在庫管理)を支える複数の業務システムのバックエンドとして利用されていました。その大部分を占めるのが intra-mart を開発基盤とした基幹システムです。intra-mart の AP サーバーおよびデータベースはオンプレミス環境で運用されており、今回のプロジェクトで AP サーバーとデータベースの双方を AWS に移行しました。データベースには約 4,000 のテーブル、約 650 のマテリアライズドビュー、約 600 のプロシージャが存在し、データサイズは約 2TB に及びます。基幹系システムであるため、月次メンテナンス日以外は無停止での稼働が求められていました。
課題
当該システムをオンプレミスで運用する中で、大きく 3 つの課題がありました。
物理制約と調達遅延
オンプレミス環境では、リソース拡張にサーバーやストレージの事前購入が必要で、調達に時間がかかるため、事業や環境変化への即時対応が困難でした。初期投資の負担も大きく、突発的な負荷変動にも即座に対応できない状況でした。加えて、ハードウェア障害時には長時間のダウンタイムをともなうリスクがあり、DR/BCP 対策の強化も容易ではなく、基幹系システムとしての可用性に懸念を抱えていました。
運用負荷
監視ツールは自社で選定・管理する必要があり、開発・テスト環境の構築にもインフラ担当への依頼が必要でした。物理機器の保守やハードウェアのライフサイクル対応(リプレイス作業)にも工数を割かれ、月次メンテナンスなど業務時間外の対応も発生していました。こうした定型的な運用業務に時間を取られ、インフラ担当者が本来注力すべき高度な業務に集中しにくく、モチベーションの維持も難しい状況でした。
AI 活用を見据えた拡張性の確保
同社では、グローバルレベルでのデータ基盤強化とデータ利活用の促進、AI 活用による業務効率化を IT 戦略として掲げていました。将来的な AI 活用やデータ分析の推進を見据え、周辺サービスと柔軟に連携できる環境への移行も視野に入れていました。
ソリューション
これらの課題を解決するため、オンプレミスのデータベースをクラウドへ移行する方針が決定されました。移行先として AWS に加え Oracle Cloud Infrastructure(OCI)やオンプレミスの継続も検討しましたが、以下の理由から AWS 上のマネージドサービスである Amazon RDS for Oracle を採用しました。
- 同一エンジン(Oracle)のマネージドサービスへの移行であるため、アプリケーション改修を最小限に抑え、移行コストを低減できる
- マネージドサービスの活用により、バックアップやパッチ適用などの運用負荷を軽減し、DR/BCP 対策の強化やリソースの柔軟な拡張が実現できる
- AWS 上にデータベースを配置することで、ETL、分析基盤、AI/ML など AWS の周辺サービスとの連携が容易になり、データ利活用の推進基盤として活用できる
また、同社ではクラウドファーストを会社の方針として掲げており、コスト最適化およびマネージドサービス活用による運用効率の向上を推進していたことも、今回の移行を後押ししました。
移行スケジュール
移行は以下のスケジュールで実施しました。
プロジェクト計画フェーズ
移行に先立ち、2025 年 2 月中旬から 3 月末にかけてプロジェクト計画を策定しました。本プロジェクトは Oracle 11g から 19c へのバージョンアップも兼ねていたため、AWS Schema Conversion Tool(SCT)を使用してスキーマの互換性を事前に検証しました。これにより、DB オブジェクトの互換性に関する課題を早期に把握することができました。
また、Amazon RDS for Oracle に向けて対応が必要な箇所や影響範囲の洗い出しを行った結果、帳票出力や SQL Loader によるデータロードなどに影響があることが判明しました。帳票出力については、オンプレミス環境でファイルシステムにマウントして出力していた処理を変更する必要がありました。また、SQL Loader によるデータロードについても同様に影響がありました。いずれも Amazon RDS と Amazon S3 のインテグレーション機能を活用する方式に置き換えて対処しました。S3 インテグレーションへの切り替えは当初想定よりも対応範囲が広かったものの、方針が固まってからはスムーズに進めることができました。
加えて、オンプレミスからクラウドへの移行にあたっては、ネットワークレイテンシーの影響が懸念されました。検証ではデータ量に応じてレイテンシーが増加する傾向が見られましたが、最も遅延の影響を受けやすく、データ量が比較的小さい工場システムで問題がないことを確認し、移行可能と判断しました。
テストフェーズ
2025 年 8 月中旬から 11 月末にかけて、主要業務の SQL を対象としたシステムテストを実施しました。約 8 件の SQL でパフォーマンスの劣化が確認されました。原因は、移行先の Oracle バージョンでオプティマイザが生成する実行計画が最適ではなかったことにありました。この問題には OPTIMIZER_FEATURES_ENABLE パラメータのヒント句で対応しました。OPTIMIZER_FEATURES_ENABLE は、オプティマイザの動作を指定したバージョンの挙動に合わせるパラメータです。移行元のバージョンを指定することで移行前と同等の実行計画が生成されるようになり、性能劣化の大部分を解消しました。
移行実施
2025 年 12 月末に本番移行を実施しました。約 4,000 テーブル・約 2TB の基幹 DB を EXP/IMP で移行しました。本番切替後にも、事前テストでカバーしきれなかった一部の SQL でパフォーマンスの遅延が発生しましたが、テストフェーズで OPTIMIZER_FEATURES_ENABLE によるワークアラウンドを把握できていたため、同じ対処で速やかに改善することができました。それ以外に大きな問題は発生せず、基幹業務システムとしてスムーズに稼働を開始しました。DB が AWS 上に移行されたことでネットワーク構成が改善され、移行前と比較してパフォーマンスの向上も実感できる結果となりました。
導入効果
Amazon RDS for Oracle への移行により、以下の効果が得られました。
パフォーマンスの向上
移行により明らかにパフォーマンスが向上し、日次夜間バッチの処理時間も約 22% 短縮されました。高負荷時に遅くなる事象が解消され、サーバーダウンにつながるような負荷の問題もなくなりました。また、最適なリソース選択が容易になり、ワークロードに応じた適切なインスタンスサイズを柔軟に選択できるようになりました。
柔軟性の向上
AWS への移行により、数分でリソース拡張が可能になり、オンプレミス特有の物理制約や調達遅延が解消されました。突発的な負荷変動が発生した場合でも対処できる選択肢が確保され、事業や環境変化に対応できる安心感のある基盤を実現しました。初期投資についても、オンプレミスのようにサーバーやストレージを事前に大きく購入する必要がなくなり、利用量ベースで投資判断がしやすくなりました。さらに、別リージョンや別 AZ への設計を取り入れやすくなったことで、DR/BCP 対策の強化や事業継続性の向上にもつながっています。
運用効率の改善
監視は Amazon CloudWatch や Amazon CloudWatch Database Insights といった AWS のマネージドサービスに統合され、自社で監視ツールを選定・管理する必要がなくなりました。インフラ担当に頼らず、アプリ開発チームでも環境準備が可能になり、早期の環境構築が実現しました。月次メンテナンス時の再起動も不要になりました。オンプレミスの物理機器保守やハードウェアのライフサイクル対応(リプレイス作業)からも解放され、運用負荷が大幅に低下しました。こうした定型的な運用業務からの解放により、インフラ担当者のモチベーション向上にもつながっています。
データ利活用基盤としての拡張性
AWS 上にデータベースを配置したことで、ETL、分析基盤、AI/ML など AWS の周辺サービスとの連携が容易になりました。データベースを起点とした拡張性が高まり、IT 戦略として掲げるデータ利活用や AI 活用を推進するための基盤が整いました。
こうした効果を踏まえ、今回の AWS 移行についてセガサミーホールディングス株式会社の江田氏は以下のように振り返っています。
「移行により明らかにパフォーマンスが良くなりました。移行後は障害も発生しておらず、インフラ担当者が本来やるべき高度な業務に専念できる環境にシフトすることができました。」
– 江田 英昭 氏 セガサミーホールディングス株式会社 ITソリューション本部 ビジネスシステム部 部長
今後は、クラウドファースト方針のもと AWS のサービスや AI の活用を推進し、Amazon Redshift によるデータ分析をはじめ、グループ全体でのデータ利活用を拡大していく予定です。



