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製造業 × 生成 AI 、8 社の「ここだけの話」がつながり課題解決を加速する — AWS 生成 AI ラウンドテーブル in 大阪 開催報告

製造業のお客様を支援しているソリューションアーキテクトの澤、大前、池田です。

2026 年 3 月 31 日に AWS 大阪オフィスにて「生成 AI ラウンドテーブル in 大阪」を開催しました。本記事ではイベントの概要と当日の様子をお伝えします。

開催の背景

製造業における生成 AI の活用は、ユースケース選定のフェーズを経て、実運用を目指したプロジェクトとして推進する企業が増えています。製造現場に眠る暗黙知を生成 AI で活用できる形式知へと変える取り組みや、生成 AI を搭載した自社製品の開発など、さまざまなユースケースで活用が進んでいます。

私たちソリューションアーキテクトが各社の技術支援を行う中で気づいたのは、扱う製品や事業領域は異なっても、直面している課題には多くの共通点があるということです。お客様からも「同じ業種で近しい取り組みを進める企業は、どのように課題へ向き合っているのか知りたい」という声を多くいただいていました。

お客様と AWS の 1 対 1 の技術支援だけでは届かない領域があります。ある企業の試行錯誤が、別の企業が抱える課題解決のヒントになりうる — お客様同士の知見がつながることで、課題解決はスケールし、さらには日本の製造業全体の競争力強化にもつながると私たちは考えました。そこで、企業間の対話を通じた相互学習の場として、ラウンドテーブル形式でのイベントを開催しました。

イベント概要

開催日: 2026 年 3 月 31 日(月)13:00 〜 18:00 + 懇親会
会場: AWS 大阪オフィス 26F
形式: クローズド・ラウンドテーブル形式(各社発表 + 質疑応答)
参加者数: 15 名
参加企業(順不同):

  • シャープ株式会社
  • ヤマハ株式会社
  • 株式会社村田製作所
  • 株式会社日立産業制御ソリューションズ
  • コベルコシステム株式会社
  • 東洋紡株式会社
  • 大日本印刷株式会社
  • ダイキン工業株式会社

各社 30 分(発表 20 分 + 質疑 10 分)の持ち時間で自社の取り組みを共有するラウンドテーブル形式で実施しました。クローズドな場だからこそ踏み込んだ内容を共有でき、参加者全員が発表者であり聴講者でもあるため、双方向の議論が自然に生まれる構成です。

各社の発表テーマ

各社の発表では、生成 AI を実業務に適用する中で直面する課題と、まさに今取り組まれている実践知が共有されました。クローズドなイベントのため、各社の発表タイトルとご登壇者名のみの公開となりますが、以下でご紹介します。

暮らし、拡がる、SHARP の AI

シャープ株式会社 Smart Appliances & Solutions 事業本部 Smart Life 事業統轄部 AI サービス推進部

中尾 祐介、早川 元基

家電製品への生成 AI 搭載における開発事例と技術的な課題が共有されました。

Yamaha Network 事業 AI の取り組み

ヤマハ株式会社 PS 事業部商品開発部 クラウド開発 G 加藤 康之介

ネットワーク機器の運用・設計支援における AI 活用の段階的な取り組みが紹介されました。

AWS の生成 AI を活用した文書検索業務の効率化 ~その性能が期待を凌駕する~

株式会社村田製作所 技術・事業開発本部 共通基盤技術センター マネージャー 徳本 直樹

少人数体制での社内ドキュメント検索システムの構築と運用の工夫が紹介されました。

OT における暗黙知と生成 AI 利用の取り組み ~業務インプロセス化と AI Agent~

株式会社日立産業制御ソリューションズ 企画統括本部未来創造本部 梶山 義徳
株式会社⽇⽴産業制御ソリューションズ GenerativeAI センタ 佐塚 洋右

ベテランエンジニアの暗黙知を形式知化し AI で活用する取り組みが紹介されました。

1,300 人の現場知を AWS AI-DLC で価値へ昇華させる ~文化醸成とデリバリー標準の同期による組織変革の実践~

コベルコシステム株式会社 事業統括本部 技術推進部 前園 博文

全社的な AI 活用推進に向けた組織づくりと意識変革の取り組みが共有されました。

RAG × CPT でつくる現場特化 AI

東洋紡株式会社 TX・業務革新総括部 TX 推進部 坂倉 広也

製造現場特有の用語や表記ゆれへの対応に向けた技術的なアプローチが紹介されました。

DNP の生成 AI 活用に関する取り組み

大日本印刷株式会社ABセンター 佐藤 陽平

ドキュメントの構造化と社内への AI 展開の工夫が紹介されました。

ダイキン工業における生成 AI の取り組み

ダイキン工業株式会社 電子システム事業部 森本 康太

自社ドメインに特化した AI の開発と社内業務支援への活用が紹介されました。

AWS セッションの紹介

エージェントの本番稼働を加速する AgentOps を AWS で実現

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 ソリューションアーキテクト 大前 遼、澤 亮太

各社の発表を通じて、RAG による社内ナレッジ検索から一歩進み、AI エージェントを業務に組み込むプロジェクトが多くの企業で始まっていることが見えてきました。一方で、エージェントの本番運用における評価や監視は、業界全体としてまだベストプラクティスが確立されていない領域です。

本セッションでは、エージェントの構築パターン(Single Agent、Tool-Augmented、Multi Agent など)に応じて評価すべき観点が異なる点を整理し、Amazon 社内での実践をもとにした Define → Evaluate → Share → Monitor の 4 ステップの評価フレームワークと、その実現を支える Amazon Bedrock AgentCore を紹介しました。

詳細は AWS ブログ「Evaluating AI agents: Real-world lessons from building agentic systems at Amazon」でも紹介されています。

参加者からは「AI エージェントシステムの観点を体系的にまとめていただいてわかりやすかった」「応答の評価や運用時の監視周りは既存システムでも課題に上がっているため、検討していきたい」といった声をいただいています。

「ここだけの話」はどうつながったのか?

各社の発表では普段は表に出ない課題や試行錯誤が率直に語られました。質疑応答では「うちも同じ課題を抱えている」「こういうアプローチで解決した」といったやり取りが自然と生まれ、予定時間を超えて議論が続くセッションもありました。まさに、各社の「ここだけの話」がつながり、新たな解決のヒントが生まれていました。

  1.  「作ったツールを社内で使ってもらえない」問題

技術的に動くものは作れても、現場に定着しないという悩みは多くの企業に共通していました。議論では「トップダウンで広げるべきか、現場起点のボトムアップが良いか」「推進チームと現場のエンゲージメントをどう設計するか」「評価指標をどこに置くか(利用率か、業務インパクトか)」といった論点が交わされ、各社が実際に試してうまくいった/いかなかった施策が具体的に共有されました。

  1.  少人数で AI 推進を回すリアルな状況

「専任チームは数名、兼任メンバーも含めて十数名」という体制で全社展開を進める企業が多く、リソース制約の中で何を優先し、何を諦めるかが共通のテーマでした。内製と外部活用の線引き、社内啓発にどこまで時間を割くか、小さく始めて実績を作る進め方など、現実的なトレードオフについての議論が続きました。

  1. 製造業特有のデータをどう扱うか

図面、仕様書、現場のベテランの暗黙知、設計ノウハウ — 製造業ならではの非構造化・機密性の高いデータをどう生成 AI で活用するかは、各社が直面している共通課題でした。RAG の精度を現場要件まで引き上げる工夫、用語ゆれへの対処、セキュリティを担保した上での社内展開の設計など、「製造業だからこそ」の踏み込んだ技術論が飛び交いました。

扱う製品や事業領域は違えど、共通の悩みが次々と浮かび上がったのも印象的でした。

懇親会でも議論の熱は冷めず、セッション中には踏み込みきれなかった技術的な詳細について、あちこちで話の輪が広がっていました。

アンケート結果と参加者の声

「つながることで課題解決を加速する」というイベントの狙いが実現できたことは、参加者の声からも伝わってきます。

  • 「生成 AI 活用に関するネット上の情報とは違う、各社の取り組みの生の声を聴くことができてとても勉強になった」
  • 「独自モデルの開発が意外に多いことに驚いた。AI とアジャイルの親和性も新たな気づきだった」
  • 「どう使ってもらうかという観点や、社内に生成 AI を広げていくやり方なども参考になった」
  • 「難しい課題に挑戦されているが、目的が明確で地に足がついており、とても参考になった」
  • 「取り組みを進めることができる人員が限られている中で、各社の背景や目的観、具体的なツールの話が特に参考になった」
  • 「ラウンドテーブルは質問もたくさんできて大変有意義だった」
  • 「自分だけが苦労しているのかと思っていたが、各社同じ課題に向き合っていることがわかり、ここに来てやろうという決断を持てた」

おわりに

今回のラウンドテーブルを通じて、お客様だからこそ応えられるお客様の悩みがあるということ、そしてお客様同士の対話が課題解決を加速させるということを、改めて実感しました。アンケートでの次回参加希望 100% という結果が物語っています。

改めて、参加いただいた皆様に御礼申し上げます。AWS では今後もこうした企業間の対話の場を企画してまいります。生成 AI の活用でお悩みの方は、ぜひ担当のソリューションアーキテクトにご相談ください。

著者について

澤 亮太 (Ryota Sawa)

製造業のお客様を担当するソリューションアーキテクトです。前職では AI、機械学習開発へ従事しており、現在も最新技術の導入・活用に悩む企業様への技術支援も行っております。
前職では AI 、機械学習を用いた開発に従事しており、現在も同様の技術活用にお悩みのお客様へも技術支援しております。好きなサービスは Amazon Bedrock AgentCore です。最近はゴルフへの熱が再燃しており、コースに立つとアーキテクチャより打数が気になります。

大前 遼 (Ryo Omae)

AWS Japan のソリューションアーキテクトとして製造業のお客様を中心に、クラウド活用の技術支援を行っています。特に 機械学習・生成 AI 領域を得意とし、お客様のビジネス課題をテクノロジーの力で解決するお手伝いをしています。好きな AWS サービスは Amazon SageMaker, Amazon Bedrock で、新しい基盤モデルが出たらすぐに触っています。休日はバイクにまたがってツーリングへ行くのが好きで、風を感じながら走る時間が、最高のリフレッシュです。

池田 敬之 (Takayuki Ikeda)

関西の製造業のお客様を担当するソリューションアーキテクトです。クラウド × データ × AI でお客様のビジネスを支援しています。好きなサービスは Amazon Bedrock AgentCore と Strands Agentsです。休日はキックボクシングで汗を流した後、愛犬と散歩といったコンボで英気を養うのが定番コースです。