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道に迷わないために: Kiro のチェックポイント機能の紹介

本記事は 2025 年 11 月 17 日に公開された Jonathan Vogel と Dan Kiuna による “Never lose your way: Introducing checkpointing in Kiro” を翻訳したものです。

開発者なら誰もが経験したことがあるでしょう。AI コーディングアシスタントと一緒に作業していて、機能開発が順調に進んでいる。エージェントが一連の変更を行い、ファイルを更新し、コードをリファクタリングし、新しい機能を追加する。そして突然、何かがうまくいかなくなる。エージェントが要件を誤解したのかもしれない。あなたのアーキテクチャに合わない前提を置いたのかもしれない。あるいは、単に別のアプローチを試したくなったのかもしれない。

課題はコードの変更を元に戻すことだけではありません。会話のコンテキストを失うことが問題なのです。ファイルを元に戻すことはできても、AI との対話のどこにいたのかを再構築しようとすることになります。フローが途切れ、軌道に戻るには時間と精神的なエネルギーが必要になります。

恐れることなく実験できたらどうでしょうか? AI アシスタントに大胆なリファクタリングに取り組ませても、計画通りに進まなければ即座に巻き戻せることがわかっていたらどうでしょうか?それが、チェックポイント機能が AI 支援開発にもたらす確信です。

チェックポイント機能とは?

チェックポイント機能は、開発セッション中の任意の時点まで Kiro の変更を巻き戻す機能を提供します。Kiro がコードベースを変更すると、チャット履歴に自動的にチェックポイントマーカーが作成されます。ビデオゲームのオートセーブポイントのようなものだと考えてください。物事がうまくいかず、想定以上のダメージを受けた場合、以前のチェックポイントに戻って別のアプローチを試すことができます。

各チェックポイントは、そのセッション中に Kiro が行った特定の変更を記録します。ワンクリックで、エージェントがそのチェックポイント以降に行ったファイルの変更を元に戻すことができ、その復元ポイントまでの会話履歴は保持されます。コンテキストを保ち、不要な変更を元に戻し、構築作業に戻ることができます。

重要: チェックポイント機能は、現在のセッション中に Kiro が行った変更のみを元に戻します。コードベース全体を保存するわけではなく、この特定のセッションで AI エージェントが変更したファイルのみを復元できます。注意: チェックポイントを復元すると、Kiro の変更だけでなく、Kiro が触れたファイルの完全な状態が元に戻ります。チェックポイント後にあなたや他のツールがそれらの同じファイルに編集を加えた場合、それらの編集も失われます。Kiro で構築しながら手動でコードを編集したり、他のシステムがファイルを変更したりしている場合は、必ずバージョン管理を使用してください。

チェックポイント機能が重要な理由

AI 支援開発は強力ですが、完璧ではありません。大規模言語モデルは本質的に確率論的です。正しい判断をすることもあれば、そうでないこともあります。重要なのは、開発者であるあなたにプロセスのコントロールを与えることです。

チェックポイント機能がなければ、AI が生成するすべての変更にはリスクが伴います。何かがうまくいかなかった場合のクリーンアップを心配して、Kiro に複雑なリファクタリングに取り組ませることをためらうかもしれません。各変更をレビューするのに、自分でコードを書くよりも多くの時間を費やすかもしれません。進捗を失うことへの恐れが、実際にあなたの作業を遅くする可能性があります。

チェックポイント機能はその状況を変えます。Kiro により大きな挑戦をさせる自信を与えます。別のアーキテクチャアプローチを試したいですか?やってみましょう。うまくいかなければ、開始地点からワンクリックで戻れます。新しいライブラリを試したいですか?問題ありません。必要なときにチェックポイントがあります。

仕組み

Kiro のチェックポイント機能は、必要になるまで見えないように設計されています。チェックポイントを作成したり、手動で管理したりする必要はありません。Kiro がそれを処理します。

Kiro と作業すると、チャットインターフェースにチェックポイントラインが自動的に表示されます。タスクを開始する前にチェックポイントが作成されます。これらの視覚的なマーカーにより、開発セッションの構造を一目で簡単に確認できます。

元に戻したいときは、任意のチェックポイントラインの「復元」ボタンをクリックするだけです。Kiro はすべてを巻き戻します。エージェントが行ったすべてのファイル変更と会話履歴を元に戻し、その正確な瞬間に戻します。メッセージを入力したがまだ送信していなかった場合、それはチャットウィンドウにあり、編集または送信する準備ができています。開発セッションのタイムトラベルのようなものです。コードの状態だけでなく、どこにいて何を考えていたかの完全なコンテキストを取り戻すことができます。

チェックポイント機能と仕様駆動開発

チェックポイント機能は、Kiro の仕様駆動開発ワークフローと自然に連携します。仕様を進めているとき、特定の要件を実装するために異なるアプローチを試したいことがあるかもしれません。チェックポイント機能は、その探索をリスクフリーにします。また、チェックポイントを使用して、仕様の主要なマイルストーンの完了をマークすることもできます。認証システムの実装が完了しましたか?それがチェックポイントです。データレイヤーが完成しましたか?これもまたチェックポイントです。これらのマーカーは、進捗の明確なマップを提供し、変更を加える必要がある場合に以前の段階を簡単に戻れるようにします。

実際のシナリオ

チェックポイント機能が輝くいくつかのシナリオを見てみましょう。

安全な実験: 特定のリファクタリングがコードのパフォーマンスを向上させるかどうか気になっています。Kiro に変更を加えさせ、ベンチマークを実行します。結果が期待通りでなければ、チェックポイントに戻ります。問題ありません。リスクなしに実験できる能力は非常に解放感があります。

反復的な改善: 適切なソリューションを見つける前に、いくつかのバリエーションを試す必要がある場合があります。チェックポイント機能を使えば、迅速に反復作業が可能です。手法を試行し、評価し、必要なら元に戻して再挑戦できます。各反復は前回の教訓を基に構築されますが、失敗した試行の残骸でコードベースが散らかることはありません。

異なる実装の探索: 新しい API エンドポイントを構築していて、REST と GraphQL のどちらを使用するか確信が持てません。まず Kiro に REST として実装するよう依頼します。コードをレビューし、テストし、感触を確かめます。しっくりこない?チェックポイントに戻り、代わりに GraphQL を試すよう Kiro に依頼します。同じ会話、異なるアプローチ、手動クリーンアップはゼロです。

誤解からの回復: Kiro に「ユーザーサービスに認証を追加して」と依頼します。Kiro は OAuth2 を実装しますが、実際には単純な API キーが必要でした。数十のファイル変更を手動で元に戻す代わりに、Kiro が開始する前のチェックポイントに戻り、要件を明確にします。Kiro は今度は正しいアプローチで再度試みます。

AI 支援開発における信頼の構築

チェックポイント機能の真の力は、変更を元に戻す能力だけではありません。それは、異なる働き方をする自信を与えることです。

チェックポイント機能があれば、AI 支援開発をトランザクションではなく会話のように扱うことができます。アイデアを探求し、仮説をテストし、間違っていることのコストを心配することなく迅速に反復できます。セーフティネットがあることがわかっているので、Kiro により複雑なタスクを処理させることができます。

この考え方の変化は微細ながら重要です。Kiro のあらゆる動作を細かく制御する代わりに、構築しようとしているものとその理由という大局に集中できます。「これが失敗したら」という不安に精神を消耗する代わりに、「これが成功したら」という可能性にエネルギーを注げるのです。

チェックポイント機能とバージョン管理

明確にしておきましょう: チェックポイント機能はバージョン管理の代替ではありません。開発ワークフローの一部として、Git (または好みのバージョン管理システム) を引き続き使用する必要があります。バージョン管理を長期的なプロジェクト履歴とコラボレーションツールと考え、チェックポイント機能を短期的な実験と反復ツールと考えてください。

チェックポイント機能は、Kiro とアイデアを探求し、迅速に反復しているアクティブな開発セッション中に輝きます。満足のいくアプローチに落ち着いたら、通常どおりバージョン管理にコミットします。2 つのツールは異なる目的を果たし、一緒に使うのが最適です。

自分で試してみましょう

チェックポイント機能は現在 Kiro で利用可能です。何も設定したり、作業方法を変更したりする必要はありません。Kiro との会話を開始し、いくつかの変更を加えると、チェックポイントラインが表示されます。元に戻す必要があるときは、それらがあなたを待っています。

私たちは、AI 支援開発のコントロールを減らすのではなく、強化するために Kiro を構築しました。チェックポイント機能は、そのビジョンの中核をなす部分です。それは、AI を開発プロセスの真のパートナーにすることです。恐れることなく探求し、実験し、反復する自由を与えるパートナーです。

自信を持ってコーディングする準備はできましたか?Kiro をダウンロードして、チェックポイント機能が AI との作業方法をどのように変えるかを確認してください。


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