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IT 投資の原資をどう捻出するか — 4 つの実践手法
本記事は 2025 年 3 月 31 日 に公開された「Money Matters: Four Methods to Unlock Investment Capacity in IT」を翻訳したものです。

IT 業界では、予算をめぐる綱引きが続いています。IT 予算は増えているにもかかわらず、投資に回す原資がなかなか確保できない。多くの場合、既存システムの維持にリソースが消費され、イノベーションに回りません。アナリストの予測によると、2025 年の世界 IT 支出は 5.7 兆ドルに達し、2024 年比で 9.3% の増加となる見込みです。
しかし業界全体が抱える課題は変わっていません。
予算は膨らんでも、イノベーションは停滞したまま。多くの企業が IT 予算の 70〜80% を日常業務 (BAU) に費やしており、新たな取り組みに充てる余地はほとんどありません。事業を止めるわけにはいかない。しかし、この配分比率では成長が抑え込まれ、イノベーションへの投資がいつまでも後回しになります。
要因はいくつかあります。
予算編成の惰性。IT リーダーは毎年ほぼ同額の予算を受け取ることが多く、優先順位を変えにくい構造になっています。
変化への恐れ。新システムへの移行には投資が必要であり、リスクを嫌って移行を避ける企業は少なくありません。
部門間連携の不足。ビジネス部門と IT 部門がそれぞれ独立して動いているため、予算の優先順位と戦略目標の整合が取りづらい状況です。
悪循環を断つ 4 つの手法
以下の 4 つの手法は、IT 予算をめぐる課題を乗り越え、成長を後押しします。
1. ゼロベース予算 (ZBB)
ゼロベース予算 (ZBB) は、前年度の予算を引き継ぐのではなく、期ごとにゼロから予算を組み直す手法です。各部門の需要とコストをリーダーが精査するため、無駄を見つけやすく、組織全体の目標に合わせて資金を再配分できます。デジタルトランスフォーメーションを目標に据えれば、IT・ビジネス・財務の各チームが一体となり、その目標を支える原資を特定できるようになります。
ZBB の導入にはアジャイル手法が有効です。プロセスをスプリントに分割し、費用カテゴリを 1 週間サイクルでレビューします。クロスファンクショナルなチームが支出領域を担当し、スタンドアップで進捗と課題を共有する。多様なスキルを持つチームと透明性の高いデータがあれば、無駄をより確実に洗い出せます。
シナリオ分析を組み合わせると推進力が増します。資金配分の選択肢をテストし、結果に応じて方向を修正できるからです。コストをスプリント単位でレビューすれば、市場の変化に数か月ではなく数週間で対応でき、予算編成の精度も上がります。
2. イノベーション再投資プログラム (ICRP)
イノベーション再投資プログラム (ICRP) は、運用コストの削減分をイノベーションプロジェクトに振り向ける仕組みです。効率化で生まれた余剰資金を投資原資に転換し、部門ごとの予算ではなく成長機会に配分します。予算増額を申請せずにイノベーション資金を生み出せるため、IT 部門をコストセンターから投資エンジンに変え、トランスフォーメーションを年次予算サイクルに依存させない体制を作れます。
まず、どのチームがどのサービスを利用しているかを明らかにします。AWS のクラウド費用を例にとると、コストを全社一括で管理するのではなく、サービスを実際に消費している部門に紐づけます。費用の直接的な責任を負わせることで、予算管理者を「傍観者」から「当事者」に変えるのがポイントです。
成功の鍵は、予算権限の分散にあります。プロダクトチームが AWS 費用を削減した場合、削減額の 80% をそのチームの将来の投資に充てられるようにする。承認を経ずにイノベーション資金を確保でき、開発者にとってコスト削減は「組織の無駄遣いを埋め合わせる作業」ではなく「自分たちのロードマップやバックログの実現手段」になります。
3. FinOps によるクラウド最適化
FinOps (Financial Operations) は、財務・テクノロジー・ビジネスの各チームを連携させ、クラウド支出の最適化と価値の最大化を図る取り組みです。支出の透明性と説明責任を確立し、テクノロジーインフラに投じた 1 ドルあたりの価値を高める。FinOps に長けた企業は、非効率な領域から高リターンの機会へ資金を再配分し、全体の支出を増やさずにイノベーションと成長の原資を生み出しています。
FinOps を始めるには次のステップを踏みます。
- IT・財務・ビジネスの担当者で仮想チームを編成する。
- 組織横断で行動指針となるクラウドコスト管理のポリシーと原則を策定させる。
- コストトラッキングシステムを導入し、支出をリアルタイムに可視化する。
- アプリケーションオーナーへの自動アラートを設定し、定例の財務レビューに組み込んで部門横断の見通しを確保する。
- 最適化目標と定期的なアセスメントで進捗を追跡。
- 継続的な教育と、目指す行動を実践している人の公開表彰。
4. ポートフォリオの合理化
ポートフォリオの合理化は、組織が保有するテクノロジー資産やアプリケーションを評価・整理・最適化するプロセスです。各項目のビジネス貢献度と運用コストを査定し、事業の優先順位に沿った技術環境を構築します。技術的負債を削減し、重複を排除する。保守に消費されていたリソースをイノベーションに振り向け、競争優位を築けます。
ポートフォリオの合理化を始めるには次のステップを踏みます。
- テクノロジー資産を棚卸しし、冗長性を洗い出すとともに、活用不足のプラットフォームを特定する。
- 既存のアーキテクチャパターンを活かした主要ソリューションに統合し、ベンダー数を絞って非効率を解消する。
- 作業をタイムボックスのスプリントに分け、変更をスケールする前に成果をテストしフィードバックを集める。
- 週次でチームミーティングを行い、進捗を確認し、障壁を取り除き、継続的な改善サイクルを回す。
合理化を進めることでコストを削減しながらシステム性能を高め、変化に素早く対応できる組織を作れます。
次のステップ
保守に偏った投資配分の悪循環を断ち切りましょう。経営層が優先順位を共有すれば、支出判断は部門の利害ではなく組織全体の目標に沿ったものになります。日常業務に埋もれた価値を掘り起こすことで、組織のイノベーション力は高まります。
出典:
Gartner Forecasts Worldwide IT Spending to Grow 9.3% in 2025
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