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ビジネスインテリジェンスの再解釈 : Amazon QuickSight から Amazon Quick Suite への進化
本記事は、2025 年 10 月 9 日に公開された Reimagine business intelligence: Amazon QuickSight evolves to Amazon Quick Suite を翻訳したものです。翻訳は Solutions Architect の守田凜々佳が担当しました。
ビジネスインテリジェンス (BI) の領域は、変革期を迎えています。データ活用が進み、AI が日常生活におけるデータとの関わり方を大きく変えている今、顧客は重要な岐路に立っています。つまり、ビジネスを加速させるために AI の可能性を受け入れる必要がありますが、それを慎重かつ安全に行わなければなりません。多くの顧客が、いかに実質的な価値を生み出す形で AI を業務に統合するか、という課題に直面しています。構造化データの可視化とレポート作成を主な目的とした従来の BI ソリューションは、もはやこの新時代には十分ではありません。
顧客は 3 つの課題に直面しています。データの発見、分析、アクションの間で広がりつつあるギャップを埋めることができるソリューション、具体的なビジネス成果をもたらす形での AI 活用、さらにエンタープライズレベルのセキュリティとガバナンスを維持しながら組織全体のユーザーがアクセスできるソリューション、が必要です。多くの組織は、強力な AI 機能と、既存のデータやプロセスに適合する実用的で安全な実装との間で、適切なバランスを見つけることに苦闘しています。
本日、Amazon QuickSight が Amazon Quick Suite へと進化することを発表できることを嬉しく思います。これは、組織内の全メンバーが包括的なビジネスインサイトを容易に利用できるようにする大きな前進です。この進化は、BI の可能性を広げ、AI エージェントがユーザーと協働しながら複雑な質問への回答、詳細な調査、定型業務の自動化を行う統合された体験を実現します。またその際に企業が期待するセキュリティ、信頼性、ガバナンスを維持します。Quick Suite は、AI 時代における BI の再解釈を行う私たちのビジョンを表しており、組織がより良い意思決定をより迅速に行い、それに基づいて行動できるように支援します。
従来の BI 機能 (現在は Quick Sight と呼ばれています) に加えて、Quick Suite は複数の AI を活用した機能を導入しています:
- Quick Research – 企業内外のデータソースから、引用付きの包括的なインサイトを提供します
- Quick Flows – 自然言語でワークフローオートメーションを作成および共有します
- Quick Automate – 複雑な多段階のビジネスプロセスを処理します
- Quick Index – 企業のすべてのドキュメントとデータを共有ナレッジベースとして提供します
これらの機能は、自然言語インターフェースの Quick chat を通じてアクセスでき、Quick spaces を通じて各チーム向けにカスタマイズすることができます。この統合環境では、ユーザーはデータ分析、詳細な調査、プロセスの自動化まで、全ての作業を同一アプリケーション内でシームレスに実行することができ、さらにエンタープライズレベルののセキュリティとガバナンスを維持できます。
なぜこの進化が重要なのか
冒頭で述べた企業が直面する 3 つの重要な課題 (データとアクションのギャップの解消、AI の実用的な活用、セキュリティの維持) に対して、Quick Suite は、企業がデータと AI を活用する方法を変革する包括的なソリューションを提供します。
- あらゆるデータを統合するインテリジェンス – 従来の BI ソリューションは、指標と数値の活用に限定されており、ドキュメント、メール、エンタープライズアプリケーションに含まれる価値あるインサイトが活用できていませんでした。これにより、データの発見と有意義なインサイトの間に大きなギャップが生じていました。Quick Suite は、エンタープライズシステム、データベース、データレイク、チームの知見、リアルタイムのウェブインサイトなど、意思決定に必要なすべてのソースからのデータアクセスを統合することで、このギャップを解消します。経営者は、財務データベース、カスタマーフィードバックのメール、サポートチケット、市場調査文書にまたがる質問を行い、数秒で完全な回答を得ることができます。データの専門家は、利用可能なソースからコンテキストを取り込んだ高度な可視化と分析を作成し、より豊かで実用的なインサイトをステークホルダーに提供できます。
- 実用的な AI イノベーション – 企業が必要としているのは、単なる技術的な目新しさではなく、具体的なビジネス成果をもたらす AI です。Quick Suite は、強力な調査、分析、自動化エージェントを通じてこれを実現します。Quick Research は、社内データ、公開情報、専門データセットから情報を統合し、これまで数週間かかっていた包括的で引用付きのインサイト提供を数時間で実現します。Quick Flows を活用すると、議事録からアクション可能なタスクを作成する、最新のインサイトを含む週次レポートを自動で生成する、カスタマーサポートプロセスを効率化するなど、自然言語を使用して AI を活用したワークフローを作成できます。これらのワークフローを素早く共有することで、組織全体の生産性向上を実現できます。
- セキュアでアクセスしやすい自然言語での体験 – Quick Suite は、エンタープライズレベルのセキュリティとガバナンスを維持しながら、AI へのアクセスを民主化します。強力なチャットインターフェースにより、自然言語での会話を通じて各機能にアクセスできます。組織は、技術的な質問に対応するトラブルシューティングアシスタントや、従業員に社内手続きをナビゲートするためのポリシーガイドなど、特定のニーズに合わせたカスタム AI エージェントを作成できます。これらのエージェントは、ドメインの専門知識と関連データソースを組み合わせ、必要とするすべての人が専門知識にアクセスできるようにします。各エージェントは、特定のペルソナ、データアクセス権、行動ガイドラインでカスタマイズでき、組織全体で一貫性のある、コンプライアンスに準拠した対話を実現します。
変更されない点
Quick Suite は強力な新機能を導入しますが、既存の BI 機能は変更なく維持されます。この進化は、現在の運用を妨げることなく、お客様が信頼する基盤の上に構築されています。
従来の QuickSight 環境は、ダッシュボード、データセット、分析を含めて、すべてがそのまま維持されます。データ接続、セキュリティ管理、ユーザー権限もすべて変更なく継続されます。既存の API 連携も以前と同様に機能し、データの移行も必要ありません。重要な点として、SOC、HIPAA、ISO 27001、ISO 27019、ISO 27018、ISO 9001、GDPR、FedRAMP を含む既存のコンプライアンス認証と認定が、引き続き有効です。Quick Suite は QuickSight の既存のコンプライアンス体制を継承します。また、データのプライバシーとセキュリティに対する AWS のコミットメントを強調したいと思います。私たちは、お客様のコンテンツをモデルのトレーニングに使用することはなく、新しいモデルプロバイダーも導入していません。お客様のデータは、信頼できるエンタープライズグレードのセキュリティとガバナンス管理により、お客様のものとして維持されます。このシームレスな移行により、ビジネスの継続性を維持しながら、お客様のペースで新機能を採用することができます。
リージョンの提供状況
Quick Suite は、すべてのお客様にスムーズな移行を提供するよう、段階的なアプローチで展開します。2025 年 10 月 9 日より、世界中の QuickSight のお客様は、新しい Quick Suite UI とブランディングが表示されます。新機能は、US East (N. Virginia)、US West (Oregon)、Europe (Dublin)、Asia Pacific (Sydney) でご利用いただけます。その他の AWS リージョンのお客様は、新しい Quick Suite インターフェイスが表示されますが、既存の BI 機能のみにアクセス可能な状態が維持されます。
新しいエクスペリエンスの操作方法
Quick Suite のインターフェースは、使い慣れた操作性を維持しながら強力な新機能を導入できるよう、慎重に再設計されました。このセクションでは、Pro ユーザー (Admin Pro、Author Pro、Reader Pro) と Author (Admin 含む) 向けの主要な変更点について説明します。
Quick chat が Quick Suite のホームページに目立つように配置され、Quick Suite の機能にすぐにアクセスできるようになっています。また、ダッシュボードから主要なビジュアルをホームページにピン留めできる新機能が追加され、パーソナライズされたレコメンデーションや最近アクセスしたアイテムにも引き続き簡単にアクセスできます。基本的な Reader ($3) の体験は変更されていませんが、重要なメトリクスをホームページにピン留めできる機能が追加され、最も重要な情報を追跡しやすくなりました。
従来の BI 機能は、ナビゲーションペインの Quick Sight の下に整理されています。コンテンツへの整理されたアクセスのための マイフォルダ と 共有フォルダ、ダッシュボード、ストーリー (旧 データストーリー)、分析、データセット などです。お気に入り は、素早くアクセスできるようにトップレベルに残され、グローバル検索は左上に配置されました。また、Quick Research、Quick Flows、Quick Automate、Connections は、ナビゲーションペインの専用セクションからアクセスできます。
以下のスクリーンショットは、以前の QuickSight ナビゲーションペインと強化された Quick Suite ナビゲーションペインを比較したものです。
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価値の向上
既存のお客様にとってのシンプルさを維持しながら、より多くの価値を提供するため、料金体系が変更されます。
お客様は、価格の引き下げと機能アクセスの拡充のメリットを得ることができます:
- Author Pro の料金が月額 50 ドルから 40 ドルに値下げされ、Author Pro ユーザーは Quick Suite の Enterprise ユーザーの機能にアクセスできるようになりました
- Reader Pro (月額 20 ドル) ユーザーは Quick Suite の Professional ユーザーの機能にアクセスできるようになりました
- 現在の Author および Admin ユーザーは、2026 年 4 月 30 日までプロモーションとして Quick Suite の Enterprise ユーザーの機能にアクセスできます
- Reader (3 ドル) および Author (24 ドル) の料金は変更ありません
専用インフラストラクチャ料金:
- 既存の月額 250 ドルのインフラストラクチャ料金は、引き続き以下のアカウントにのみ適用されます:
- Pro ユーザー (20 ドル/40 ドルプラン) が 1 つ以上存在
- Topics または Dashboard Q&A がアクティブ
- 2025 年 10 月 9 日以降の新規 Pro ユーザーまたは Q&A 有効化を行ったアカウントについては、2025 年 12 月 31 日までプロモーションとして本料金が免除されます
機能導入の完全なコントロール
組織が AI 機能の採用を正確にコントロールする必要があることを理解しています。管理者は、カスタムアクセス許可を使用してアカウント、ロール、ユーザーレベルで機能の有効化や無効化を行い、新機能を導入しながら既存のセキュリティポリシーを維持し、API を通じて複数のアカウントに一貫したコントロールを適用できます。
Quick Suite は、お客様のペースで導入を管理できる柔軟性を提供します。すべての機能を直ちに有効化することも、異なるユーザーグループに段階的に導入するかを選択ことも可能です。
埋め込み分析
BI の埋め込み機能をご利用の場合、主要な機能は変更されません。埋め込み機能、API、および統合機能は、これまでと同様に動作し、既存の実装に変更を加える必要はありません。ただし Quick Suite に合わせて、フッターが「Powered by Amazon Quick Suite」に更新、カラースキームが青色から紫色に変更、標準的な配置に Quick Suite ロゴが表示されるというビジュアルの更新が行われます。
ブランドカスタマイズ機能をご利用の場合、カスタムスタイルは引き続き製品のデフォルトの外観を上書きします。QuickSight アプリケーション要素について現在の青色のカラースキームを維持したい場合は、アカウントレベルで設定されたブランドカスタマイズ、公開時のテーマカスタマイズの適用、SDK を使用した埋め込み呼び出しでの動的な適用、のいずれかの方法で実現できます。これにより、埋め込み分析においてエンドユーザーに一貫した体験を継続して提供できます。
リソースとサポート
お客様がスムーズに移行できるよう、私たちは全力でサポートいたします。以下のリソースをご利用いただけます:
- Amazon Quick Suite User Guideにおける詳細なドキュメント
- AWS Support を通じたテクニカルサポート
- AWS アカウントチームによるコンサルテーション
今後の展望
Quick Suite への進化は、意思決定とビジネス成果を導くために必要なコンテキストを提供する、新しい働き方を実現します。AI が組織でのインサイト発見と戦略的な意思決定の方法を変革し続ける中、Quick Suite は安全で実用的な前進の道筋を提供します。私たちは、お客様とこの旅を共にし、これらの機能を活用して組織全体の価値を引き出していく様子を見ることを楽しみにしています。
BI の未来を体験する準備はできましたか? Quick Suite の 30 日間無料トライアルを利用して、最大 25 ユーザーまでその機能を試すことができます。機能や料金について詳しく知るには Amazon Quick Suite をご覧いただくか、Quick Suite がお客様の組織のデータドリブンな意思決定をどのように変革できるかについて、AWS アカウントチームにお問い合わせください。
著者について
Sindhu Chandra は、AWS の Amazon Quick Suite のシニアプロダクトマーケティングマネージャーで、マーケティングとテクノロジーの分野で 10 年以上の経験を持っています。現職に就く前は、Amazon、Uber、Google などのテクノロジー企業でマーケティングの職務を歴任し、クロスチャネルマーケティング戦略を主導してきました。B2B マーケティングをより親しみやすくし、インクルーシブなマーケティング施策を推進することに情熱を注いでいます。仕事以外では、愛犬と遊んだり、さまざまな産地のコーヒーを淹れたりすることを楽しんでいます。