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AWS CloudShell で RDS / Aurora のリザーブドインスタンスを一括購入するサンプルスクリプト
Amazon Relational Database Service(以下、RDS)や Amazon Aurora(以下、Aurora)のリザーブドインスタンス(RI)は、オンデマンド料金と比較して大幅なコスト削減が可能です。しかし、RDS の RI には Amazon EC2 の RI とは異なり開始日時を指定した予約購入の機能がなく、購入 API を実行した時点で即座に課金が開始されます。そのため、大量の RI を短時間で正確に購入するには手動オペレーションでは負荷が高く、お客様にとって購入のハードルが高い状況となっています。
なお、第 7 世代以降のインスタンスで利用可能になった Database Savings Plans では予約購入が可能ですが、旧世代のインスタンスを利用されている場合は引き続き RI での購入が必要です。
本記事では、公共機関における RI 購入の制約を例に、RDS / Aurora の RI を効率的に一括購入するサンプルスクリプトをご紹介します。公共機関以外のお客様でも、大量の RI を正確に購入したいケースで参考にしていただけます。
背景
公共機関ではデータ保管場所や予算執行の都合により購入方法が限定されることが一般的です。例えば、次のような制約があります。
- 日本リージョン(東京・大阪)のみ
- 前払いなし(No Upfront)のみ利用可能
- 購入タイミングは 4/1 09:00:00〜09:59:59(JST) ※会計年度を1時間でもまたがないようにする場合
この制約のもとでは、限られた時間内に正確な購入を完了する必要があり、事後に間違いに気づいても購入を止めることが出来ません。そして、多数のアカウントが同じ時間帯に一斉に RI を購入する必要があることを考えると、手動オペレーションでは品質・工数の両面で課題があります。
この課題に対応するため、AWS CloudShell 上で動作する RDS RI 一括購入のサンプルスクリプトを用意しました。AWS CloudShell はブラウザからアクセスできるシェル環境で、AWS CLI や jq(JSON 処理ツール)などの主要ツールがプリインストールされているため、実行環境の準備を別途行う必要がありません。AWS マネジメントコンソールにログインできれば、すぐにスクリプトを実行できます。
前提条件
- AWS CloudShell 環境(AWS CLI、jq がプリインストール済みのため、追加のセットアップは不要)
- IAM ロールに以下の権限が付与されていること
- rds:DescribeReservedDBInstancesOfferings
- rds:PurchaseReservedDBInstancesOffering
- rds:DescribeDBInstances
- sts:GetCallerIdentity
- 1アカウントあたり同一リージョンで保有可能なRIはデフォルト40件まで(参考)。超過する場合は事前にサービスクォータの引き上げを申請してください
(参考)AWS CloudShell VPC environment を利用する場合
CloudShell VPC environment ではシェルが指定した VPC のサブネット内で動作するため、スクリプトが呼び出す AWS API(RDS、STS)へのネットワーク到達性を確保する必要があります。具体的には、以下のいずれかを構成してください。
- AWS PrivateLink(VPC エンドポイント)による RDS API および STS API へのアクセス
- NAT Gateway を経由したインターネットアクセス(ご利用環境のシステム要件やセキュリティポリシーを確認のうえ実施してください)
ネットワーク構成が不十分な場合、API 呼び出しがタイムアウトしスクリプトが正常に動作しません。
※ 本記事執筆時点では、デジタル庁が提供するガバメントクラウド環境で AWS CloudShell を利用するには CloudShell VPC environment の構成が必要です。
(参考)CloudShellを使わずローカル端末から実行する場合
AWS CloudShell を使用せず、お手元のローカル端末から実行することも可能です。その場合、以下の点にご注意ください。
- シェルスクリプト実行環境が必要です。Linux や macOS ではデフォルトシェルである bash や zsh が利用できます。Windows の場合は WSL(Windows Subsystem for Linux)上で実行してください。
- AWS CLI(バージョン2推奨)および jq を事前にインストールしてください。
- AWS 認証情報の設定が必要です。aws configure 、IAM Identity Center(aws sso login)、aws login 等で、スクリプト実行前に認証情報を構成してください。
- スクリプトはタイムゾーン Asia/Tokyo を使用して購入タイミングの判定を行います。OS のタイムゾーンデータが正しくインストールされていることを確認してください。
- Linux:“cat /etc/timezone” 等
- macOS:“sudo systemsetup -gettimezone” 等
準備
入力ファイル(input.csv)を準備してください(フォーマットは後述)。次に、rds-ri-launchpad.sh を CloudShell へアップロード、または GitHub から直接取得し、実行権限を付与してください。
GitHub から直接取得する場合の例
curl -O https://raw.githubusercontent.com/aws-samples/sample-rds-ri-bulk-purchase-script/main/rds-ri-launchpad.sh
chmod +x rds-ri-launchpad.sh
スクリプトの特徴
スクリプトは「ドライラン(検証)モード」と「購入モード」の 2 段階で動作します。ドライランモードでは実際の購入を行わず、入力内容の検証のみを実施します。
ドライランモード(デフォルト)
./rds-ri-launchpad.sh input.csv
前述のとおり、RDS の RI には開始日時を指定した予約購入の機能がありません。そのため、本スクリプトではドライランモードを用意し、購入直前までの検証を事前に実施できるようにしています。以下のチェックを実施できます。
- 日本リージョン(ap-northeast-1 / ap-northeast-3)のみであること
- 前払いなし(No Upfront)のみであること
- インスタンスクラス形式の妥当性(db.xxx.xxx 形式)
- エンジン名の許可リスト検証
- DescribeReservedDBInstancesOfferings API による Offering(購入可能な RI の条件と価格の組み合わせ)の存在確認
- 実際に稼働中のインスタンスとの突合(購入数量が稼働数を超過していないかの警告)
購入は一切実行されないため、実際のRI購入日である 4/1 より前に安全に事前確認が可能です。
購入モード
./rds-ri-launchpad.sh --purchase input.csv
--purchase オプションを指定することで、実際の購入を実行します。購入時にはドライラン時のチェック項目に加えて、以下の制御が行われます。
- 購入タイミングの確認 — 4/1 09:00:00〜09:59:59(JST)の範囲外の場合はアラートを発行し、続行するかの確認プロンプトを表示
- 最終確認プロンプト — 購入実行前に yes/no の確認を要求
入力ファイル
CSV 形式で購入情報を定義します。1 行目のヘッダー行はスクリプトが自動的にスキップします。
こちらはサンプルファイルです。
region,db_type,instance_class,engine,multi_az,quantity,duration,payment_option
ap-northeast-1,RDS,db.t3.medium,mysql,yes,2,1,No Upfront
ap-northeast-1,Aurora,db.r5.large,aurora-mysql,no,3,1,No Upfront
| フィールド | 説明 | 許容値 |
|---|---|---|
| region | リージョン | ap-northeast-1, ap-northeast-3 |
| db_type | DB 種別 | RDS, Aurora |
| instance_class | インスタンスクラス | db.xxx.xxx 形式 |
| engine | エンジン | aurora-mysql, aurora-postgresql, mysql, postgresql, mariadb, oracle-se2, sqlserver-ex |
| multi_az | Multi-AZ | yes, no(Aurora の場合は無視) |
| quantity | 購入数量 | 1 以上の整数 |
| duration | 期間(年) | 1, 3 |
| payment_option | 支払いオプション | No Upfront(他の文字列の場合はエラー) |
セキュリティ上の考慮
- 基本的なパストラバーサル対策 — 入力ファイルパスに .. が含まれる場合は即座に終了
- 入力値の許可リスト検証 — エンジン名、リージョン、支払いオプションを許可リストで検証
- ロックディレクトリ機構 — 同時実行を防止し、二重購入を回避
- 結果ファイルのパーミッション制限 — chmod 600 で所有者のみ読み取り可能
- エラー出力のサニタイズ — アカウント ID や ARN をマスクして表示
- set -euo pipefail — 未定義変数やパイプエラーを即座に検出
エラーハンドリング
スクリプトは「行単位の継続処理」を採用しています。ある行でバリデーションエラーや Offering 取得失敗が発生した場合でも、該当行をスキップして次の行の処理を継続します。AWS 認証エラーなど回復不能なエラーの場合のみスクリプトを終了します。
実行結果は ri_purchase_result_YYYYMMDD_HHMMSS.txt に自動出力され、成功・失敗・スキップの件数と各行の詳細が記録されます。一部の処理が失敗した場合は、 失敗した行のみを記載した新しいCSVファイルを作成し、再実行することで手動リトライが可能です。
本スクリプトは1回の実行あたり10〜100行程度の入力を想定しています。大量の入力(100行超)を処理する場合、AWS APIのスロットリングが発生する可能性があります。その場合はCSVファイルを分割し、複数回に分けて実行してください 。
ダウンロード
サンプルスクリプトは以下リンクよりダウンロード可能です。
sample-rds-ri-bulk-purchase-script
まとめ
本スクリプトは、限られた購入時間枠の中で大量の RDS / Aurora の RI を安全かつ効率的に一括購入するためのサンプルです。ドライランモードで事前に購入内容を検証し、購入モードで実行するという 2 段階のアプローチにより、オペレーションミスのリスクを低減します。
免責事項
本記事で紹介するスクリプトはサンプルコードであり、AWS サポートの対象外です。本番環境での使用前に、必ずテスト環境で十分な動作確認を行ってください。
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