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産業用データプラットフォームの成功に必要なこと
データはデジタルトランスフォーメーションを実現する鍵です。小売業者はデータを組み合わせて顧客を一元的に把握することで、より良い顧客体験を構築し、購入コストを削減します。金融機関はデータを使用してリスクを管理し、金融商品をパーソナライズします。製造業者は生産システムのデータに接続して単価を下げたり、品質問題を軽減したりします。 これらの業界において、異なるデータソースからのデータを業界(産業)に向けたデータプラットフォームに繋げることが、価値を引き出すための第一歩です。
産業用データプラットフォームを構築する技術的側面はよく理解されています。 しかし、うまく設計された産業用データプラットフォームでも失敗する可能性があります。 本記事では、産業用データプラットフォームの成功を促進する 3 つのビジネス関連のメンタルモデルについて解説します。
ユーザー起点に考える
産業用データプラットフォームとそのユースケースは多様です。 産業用データプラットフォームは業界によって変わるだけでなく、業界内の各企業でニーズが異なります。 企業が、ユーザーを十分に理解していないまま、産業用データプラットフォームの構築を始めることはよく目にします。 彼らはどのようなデータを望んでいますか?彼らはそのデータをどのように使用するのでしょうか?彼らはどのようなビジネス価値を得るのでしょうか?データを民主化するだけでは、期待通りのビジネス成果が得られることはほとんどありません。
産業用データプラットフォームを構築する前に、産業データプラットフォームに対するビジネスのニーズを深く理解することが不可欠です。 つまり、ビジネスに関わるユーザーにインタビューをし、ニーズを文書化し、エンドユーザーへの価値を明確に説明し、エンドツーエンドでユーザージャーニーマップが必要になります。 Amazon では、このプロセスを Working Backwards と呼び、顧客視点からの価値を明確にした将来のプレスリリースの作成につながります。
この作業を前もって行うには労力と時間がかかりますが、目に見えるメリットが得られます。 まず、使いやすさ、スピード、柔軟性など、ユーザー体験を反映できます。 第二に、ユーザーエクスペリエンスの向上は、より早く、より多くの利用につながり、その結果、産業用データプラットフォームの利用促進と改善に使えるフィードバックが得られる様になります。 第三に、産業用データプラットフォームはユーザーのニーズに基づき構築されているため、ビジネス成果がより迅速かつ確実に実現されます。
大きく考え、小さく始める
通常、産業用データプラットフォームは完了するまでに数年かかる長期的な投資です。 このような道のりを踏まえて、企業は途中で価値を提供することに熱心です。 長期的な拡張性と短期的なビジネス価値のバランスを取ることは困難です。 間違いは2種類ありるとAWSは考えます。1. 組織はアーキテクチャ、ガバナンス、プロセスから取り組み、価値への道筋を定義しません。2. 企業全体に拡張できない業務向けのポイントソリューションを、統合プラットフォームに構築します。
産業用データプラットフォームを成功させるには、継続的な賛同を得ながら規模を拡大すること、すなわち企業は大きく考え、小さなことから始める必要があります。 つまり、産業用データプラットフォームをユースケースごとに段階的に構築すると同時に、構築されたコンポーネントを活用してプラットフォームの利用拡大および機能拡張する必要があります。 実際には、これには次の 4 つのステップが必要です。
- 産業用データプラットフォームのアーキテクチャ、データ標準、データモデルだけでなく、あるべき姿や未達成部分、今後行う作業を定義します。
- 各ユースケースがプラットフォームのあるべき姿に沿った拡張に貢献する”様に、優先順位を決めます。
- 再利用可能なコンポーネントや、他のユースケースで再利用できるほど小さいマイクロサービスで、各ユースケースを構築します。
- 統合された産業用データプラットフォームにコンポーネントを確実に組み込み、コンポーネントの発見と開発を容易ににします。
この方法で産業用データプラットフォームを構築すると、いくつかの利点が得られ、フライホイール効果に繋がります。 産業用データプラットフォームは、ユースケースからすぐにビジネス価値を発揮すると同時に、時間の経過とともにプラットフォームの機能を標準化された方式で拡張します。 産業用データプラットフォームが成長するにつれて、ユースケース開発のペースは加速するでしょう。 さらに、産業データプラットフォームは、ユースケースの採用から継続的にフィードバックを受けるため、大規模な投資をする前に、開発の軌道修正または方向転換が可能です。
オペレーティングモデルによる構築
産業用データプラットフォームには、ビジネスと IT の両方にまたがる多くの利害関係者がいます。 ビジネスリーダーは、産業用データプラットフォームの方向性を自社のニーズに合わせようと努めますが、IT リーダーは、 CCoE 、全社 IT 標準を推進するアーキテクチャガバナンスチーム、セキュリティチームなどの組織だけでなく、プロダクトマネージャー、 IT ストラテジスト、開発者の間でサイロ化されていることがよくあります。 AWS は、多くの企業が説明責任とリソースを結び付けて効果的な実行を担保しながら、主要な利害関係者を巻き込み産業用データプラットフォームの運用モデルとガバナンスモデルを定義することに苦労しています。
産業用データプラットフォームを構築するメンタルモデルは、コンポーネント間を疎結合な状態で連携することです。各製品はバリューストリームを中心に形成され、シングルスレッドリーダー (STL) を備えています。 たとえば、ユースケースから生まれる各マイクロサービスには、維持および運用する STL が必要です。一方、プラットフォームレベルに個別の STL を設定することで、マイクロサービスを他のマイクロサービスと同様に簡単に見つけて構成できます。 そのためには独立可能で自律的なチームを構築し、アーキテクチャ設計をAPIを介して相互接続された自律型モジュールに細分化して、バリューストリームのポートフォリオと連携させる必要があります。
独立したチームが所有・提供する疎結合の産業用データプラットフォームを構築すると、開発プロセスが簡素化され、加速します。 また責任の重複が減り、委員会や調整プロセスの肥大化を軽減します。 その結果、より迅速に、各チームにオーナーシップを持たせながら、産業用データプラットフォームを構築することができます。
結論
技術的・ビジネス的の両方の観点から、産業用データプラットフォームの構築は困難です。 しかし、それらが提供するビジネス価値は、その努力に見合う価値をもたらします。 企業がこの価値を引き出すためには、ユーザーから逆算し、大きく考えて小さなことから始めて、産業データプラットフォームの各コンポーネントのオーナーシップを明確にする必要があります。
関連文書
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- AWS でのカスタマーデータプラットフォーム構築の概要とアーキテクチャ ( 英文 )
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作者情報
Rishi Kumar
Rishi Kumar は、アマゾンウェブサービス (AWS) のイノベーションとトランスフォーメーションプログラムのイノベーションデリバリースペシャリストです。 彼の職務は、 Amazon の Working Backwards メカニズムを活用して、さまざまな業界の顧客のイノベーションとTransformation Journey の支援です。 Rishi は、お客様のデータプラットフォーム戦略を支援することに情熱を注いでおり、各業界のお客様と協力してデータプラットフォームのあるべき姿を形作り、達成するための施策とロードマップを定義します。
Peter Gratzke
Peter Gratzke は、アマゾンウェブサービス (AWS) のイノベーションとトランスフォーメーションプログラムチームの一員です。 彼は大企業の顧客が新しい製品やビジネスを構築し、より革新的になるための変革を支援しています。
この記事の翻訳はソリューションアーキテクトの梶山 政伸が担当しました。原文はこちらです。