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SIOS LifeKeeper を活用した VMware Cloud on AWS の高可用性構成

本記事は、サイオステクノロジー株式会社 BC & CS サービスライン エグゼクティブマネージャー 西下容史氏とアマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 AWS テクノロジーパートナーシップ 本部長/パートナーソリューションアーキテクト 河原哲也、シニアパートナーソリューションアーキテクト 豊田真行による共著です。

SIOS Technology

VMware Cloud on AWS を使用すると、お客様は VMware の Software-Defined Data Center (SDDC) をデプロイし、アマゾン ウェブ サービス (AWS) のグローバルインフラストラクチャ上で VMware vSphere ワークロードをマネージドサービスとして使用できます。これにより、お客様は仮想マシンイメージ形式を変換したり、プラットフォームを再構築したりすることなく、オンプレミスのデータセンターを拡張し、ワークロードを簡単に移行できます。

2020 年に IDC が発行した VMware Cloud on AWS のビジネス価値に関するレポートによると、VMware Cloud on AWS は、エンタープライズ、政府機関、スタートアップ企業などの顧客が、他のソリューションと比較して平均で 46% 速く、43% 低いコストでクラウドに移行することを支援しています。一方、アプリケーションの実行速度は平均 37% 向上し、AWS サービスを利用してアプリケーションを簡単にモダナイズできるようになります。

サイオステクノロジー株式会社は、AWS ISV Accelerate プログラムに参加する AWS ソフトウェアパートナーであり、HA クラスター製品の LifeKeeper が AWS ファンデーショナルテクニカルレビュー (FTR) の認定を受けています。SIOS LifeKeeper により、Amazon EC2 上で稼働する Oracle、SQL Server などのデータベースや、JP1、HULFT、SAP などの基幹系アプリケーションの障害を検知し、待機系へ自動でフェイルオーバーする高可用性ソリューションを提供します。

本記事では、この SIOS LifeKeeper を活用して VMware Cloud on AWS 上の仮想マシンの可用性を向上する方法を説明します。

VMware Cloud on AWS における責任共有モデル

AWS には責任共有モデルという考え方がありますが、VMware Cloud on AWS にも同様の責任共有モデル (Shared Responsibility) が定義されています。

図 1. VMware Cloud on AWS における責任共有モデル

この共有モデルでは、VMware Cloud on AWS サービスを構成するソフトウェアとシステムを VMware が運用、管理、制御し、施設の物理的なセキュリティなどのインフラストラクチャ要素を AWS が運用、管理、制御します。そのため、お客様は運用上の負担を軽減することができます。お客様には、仮想マシン、ゲストオペレーティングシステム、その他の関連アプリケーションソフトウェア、および VMware Cloud on AWS が提供するネットワーク/ファイアウォールの設定に対する責任と管理を担っていただきます。これにより、柔軟性が得られ、お客様がデプロイを統制できるようになっています。

VMware Cloud on AWS 上のシステムについてお客様が忘れてはならないのは、システムを停止することなく継続的に使えるようにする可用性の観点です。では、お客様自身で VMware Cloud on AWS 上のシステムを止めないようにするためにはどのような工夫が必要でしょうか?

SIOS LifeKeeper による可用性の向上

VMware Cloud on AWS には、オンプレミスからの移行をはじめ災害対策用途など様々なユースケースがありますが、特に VMware Cloud on AWS 上に新規のシステムを構築する際に、アプリケーションの障害対策をどうするかの検討が必要です。VMware Cloud on AWS の障害対策としては、まずはクラウド環境で用意されている障害対策サービスを検討するのが良いでしょう。例えば、オンプレミスで馴染みの深い vSphere HA が VMware Cloud on AWS では標準で有効化されています。

vSphere HA の注意点は、保護範囲がオペレーティングシステムまでであり、障害時に仮想マシンを再起動することにより復旧を試みる機能でしかないことです。仮想マシン上で動いているアプリケーションの障害を検知して自動的に復旧してくれるわけではありません。ある程度障害に対して割り切れる場合であれば vSphere HA は有効ですが、止められないミッションクリティカルなアプリケーションに対しては、更に堅牢な仕組みを検討する必要があります。

仮想マシン上で動くアプリケーションを含めた障害検知・障害復旧を自動的に行う仕組みとしては、HA クラスター構成が有効です。SIOS LifeKeeper は、VMware Cloud on AWS をサポートしており、GUI の管理画面上の操作で容易に冗長化構成を構築できます。LifeKeeper はオンプレミスの VMware 環境の仮想マシンを冗長化する実績が多数あり、2023 年 7 月から VMware Cloud on AWS のサポートを開始しています (※ 2023 年 11 月現在では Linux 環境のみをサポート)。

図 2. SIOS LifeKeeper の概要

SIOS LifeKeeper による VMware Cloud on AWS の高可用性構成例

VMware Cloud on AWS の仮想マシンとその上で動くアプリケーションを SIOS LifeKeeper がどのように冗長化するのかを見てみましょう。HA クラスター製品の LifeKeeper は、冗長化する各仮想マシンにセットアップすることで「Active/Standby」の構成を実現します。監視については「ノード監視 (クラスターノード間のハートビート通信による死活監視)」と「リソース監視 (監視対象のソフトウェアに対する監視)」の2種類の監視を並行して行います。クライアント (Active ノードに対してアクセスするマシン) は仮想 IP アドレスに対して通信することで、現在 Active になっているノードに到達することができます。冗長化されたクラスターノード間では、クラスターが切り替わった時にデータを引き継ぐ必要があります。

LifeKeeper では、共有ディスクを使う構成とデータレプリケーションを使う構成の双方に対応しています。

図 3. 共有ディスク構成

図 3 は、VMware vSAN データストアを利用した共有ディスク構成です。サポート対象の前提条件は、シングルアベイラビリティーゾーン構成および Quorum/Witness 構成が必須な点です。スプリットブレインの発生リスクを大幅に軽減する役割の Quorum/Witness については、LifeKeeper テクニカルドキュメンテーションをご参照ください。

図 4. データレプリケーション構成

図 4 は、SIOS DataKeeper を利用して VMDK ファイルをホスト間で同期するデータレプリケーション構成です。サポート対象の前提条件は、シングルアベイラビリティーゾーン構成です。DataKeeper によりデータが複製されている観点から、Quorum/Witness 構成は必須ではなく推奨になります。

高可用性構成を実装する上で、VMware Cloud on AWS については、VMware Cloud on AWS ドキュメントAWS ブログなどもご参照ください。LifeKeeper の動作要件は、LifeKeeper サポートマトリックスに記載があります。

Amazon EC2 環境への応用

SIOS LifeKeeper は長年 Amazon EC2 をサポートしており、多数の導入実績があります。LifeKeeper のナレッジを複数の環境で流用できるため、最小限の学習負担で VMware Cloud on AWS と Amazon EC2 のハイブリッドな環境での高可用性構成の構築が実現します。

LifeKeeper がサポートする構成例や活用例については、APN ブログ記事「SIOS LifeKeeper と AWS Transit Gateway によるシンプルなクラスター構成」と「Amazon S3 オブジェクトロックと Veeam Backup を使用した SIOS LifeKeerper で構成されるクラスターシステムのランサムウェア対策」もご覧ください。

VMware Explore 2023 Tokyo での共同セッションのオンデマンド配信

VMware Cloud on AWS を SIOS LifeKeeper で冗長化する構成については、11 月 14 日 ~ 15 日に開催されたVMware Explore 2023 Tokyo にて、サイオステクノロジーとアマゾン ウェブ サービス ジャパンとの共同セッション「VMware Cloud on AWS 活用のベストプラクティス​ ~移行方法から高可用性構成まで~」を実施しました。12 月 1 日から 12 月 22 日までオンデマンド配信がされていますので、セッションに参加できなかった方は、ぜひ登録の上ご視聴ください。

まとめ

幅広い分野での採用が進む VMware Cloud on AWS では、今後ミッションクリティカルなシステムに使われる機会も増えることが予想されます。アプリケーションに高い可用性が必要なケースでは、本記事で取り上げた SIOS LifeKeeper を活用した高可用性構成をご検討ください。


サイオステクノロジー – AWS パートナースポットライト

サイオステクノロジーは AWS ソフトウェアパートナーで、Amazon EC2 上で利用される SAP などの基幹系システムやデータベースの高可用性を実現する HA クラスター製品 LifeKeeper と DataKeeper を提供するソフトウェア企業です。

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Tetsuya Kawahara

Tetsuya Kawahara

Senior Manager, Technology Partner Solutions Architecture, Japan Partner Management, Amazon Web Services Japan G.K.