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Amazon SageMaker で創薬における破壊的イノベーションに挑むシンセティックゲシュタルト【AWS Summit Tokyo 2019 基調講演書き起こし】
2019年6月12日〜14日、幕張メッセにて「AWS Summit Tokyo 2019」が開催されました。AWS Startup Blogでも、3日間にわたって現地からの速報リポートをお届けしましたが、今回のブログポストでは、基調講演にご登壇頂いた、株式会社シナモンの CEO 平野様、シンセティックゲシュタルト株式会社の CEO 島田様、そして、株式会社メルカリの CTO 名村様の講演の様子を3回に分けてお届けしたいと思います。2回目の今回は、シンセティックゲシュタルト株式会社の CEO 島田様による講演の模様です。
本記事は、ログミーによる提供です。
創薬に特化したシンセティックゲシュタルトの使命
島田幸輝氏(以下、島田):みなさま、はじめまして。シンセティックゲシュタルトの島田です。本日は、このような場でお話しさせていただき、大変光栄に思います。
さっそくなんですが、私は信じていることが1つあります。それは、人間の社会活動において最も偉大なことは、科学的な発明をするということです。例えば18世紀、ジョゼフ・プリーストリーは、酵素タンパク質を見つけたことにより、さまざまな化学反応を、人間の手でコントロールすることを可能にしました。そして19世紀、北里柴三郎は、血清療法を発明し、多くの人々の命を救いました。このように、科学的な発明は社会にとって大変重要なことです。しかしながら、こうした偉大な発明は、彼ら天才たちによる不断の努力と、その研究の賜物であり、いつもいつもこうした天才たちの発明を、我々が享受できるとは限りません。そこで我々は、人間の代わりに、こうした科学的な研究を行い、そしてすばらしい発明を社会に届ける。そうした人工知能を開発しています。つまり、人工知能による科学研究。これを実現することで、天才たちに依存せずに、すばらしい発明を、社会に安定的に届けようとしているのです。我々シンセティックゲシュタルトは、そうしたミッションを胸に、今このライフサイエンス領域に特化をして、人工知能を開発しているスタートアップです。
去年できた会社ではございますが、日本政府や、イギリスのアカデミアをはじめ、多くのパートナーやサポーターの方にお世話になっております。この場をお借りして、お礼を申し上げたいと思います。
さて、我々は、ライフサイエンス領域の中でも、とくにこの創薬の分野に力を入れています。みなさん、ご存じでしょうか?1つの医薬品を開発するのに、平均して2,000億円以上の費用と、10年以上の歳月がかかっていることを。そして、さらにこれは、年々増加傾向にありまして、薬の価格が高くなりすぎて、各国の社会保障費を圧迫するということが、近年社会問題化しています。
高騰する薬価問題をAIは解決できるか?
島田:そこで我々は、機械学習モデルによって創薬を支援し、さらにロボットによって、実験を自動化し、人工知能に新しい薬を発明させることによって、この上がり続ける薬の価格の問題を、なんとかしたいと考えております。具体的には、Amazon SageMaker を使って、分子の情報から、その分子が持ちうる機能を予測する、機械学習モデルの開発に成功しました。この開発プロセスでは、機械学習が出力をした仮説を、実際に実験を通じて確かめています。実験の結果によっては、我々はこのモデルを改良しています。こうした仮説検証を、何度も何度も繰り返すことによって、非常に難しかった分子機能の予測を実現しました。そして、Amazon SageMaker によって、簡単に分散処理ができましたので、大規模な実験データを素早く訓練して、推論することなどが可能になりました。そのおかげで、我々は Amazon SageMaker を使う前に比べて、この仮説検証プロセスを回すスピードを10倍に改善することができました。こうした機械学習モデルができたおかげで、分子機能予測は革命的に進化しました。従来であれば、人間の研究者が、1個1個丁寧に実験していましたが、それには1回の実験につき数十万円のコストと、数ヶ月の期間がかかっていました。
これをSageMakerのモデルを使って、期間にして約1秒もかからずに、分子の機能を予測し、それにかかるコストも1円もかからないようになりました。非常に圧倒的な成果が出たと言えます。
こうした革新的な成果があればこそ、数億のタンパク質の中から、価値があるものを総当たりで見つけるという、今までとてもできなかったアプローチが可能になったのです。
その結果、我々はイミンリタクターゼという、製薬業界ではとても重宝されている、酵素タンパク質の新種を見つけることができました。しかも、この新種は通常見つけるのが難しいと言われていたものであり、我々人工知能アプローチならではの結果が得られたと思います。さらに我々は、強化学習を使って医薬品のもとになる分子を設計するという、困難な問題にもチャレンジしています。この医薬品の開発の問題では、病気を引き起こしうるタンパク質を阻害するための分子を設計する必要があるんですけど、これを強化学習モデルにデザインさせようというのが、このプロジェクトです。
柔軟な SageMaker SDK のおかげで、SageMaker で学習した機械学習モデルを、SageMaker RL のほうで簡単に使うことができました。例えば、今こちらで表示されているのは、実際に Amazon SageMaker RL で設計された分子です。これは、与えられた病気のもとになるタンパク質を抑制しながらも、人間にとっては副作用をもたらさないように、徐々に分子が設計されていくことが、ここで確認できます。
結果として、SageMaker をはじめとする AWS のサービス群のおかげで、生物学者や数学者といった、本来機械学習とはちょっと程遠いエンジニアの方たちが、機械学習エンジニアとして、人工知能モデルの開発に、直接携わることができました。
こうした人工知能の登場のおかげで、科学者たちは、従来であれば、自分で実験をして確かめていかなければならなかったところを、科学者は「どうやって人工知能に自分が解きたい問題を解かせられるだろうか」と、マインドをチェンジするようになったのです。まさに今、人工知能によって、このライフサイエンス領域でイノベーションが起きつつあると私は感じています。
人工知能による科学研究を実現することで、すばらしい発明を人々に届ける。そんな未来を、我々は実現したいと考えています。午後の一般セッションでは、我々のより具体的な試みを紹介しておりますので、ご興味がある方は、ぜひそちらもご覧いただければと思います。ご清聴いただき、ありがとうございました。
(会場拍手)
講演の書き起こしは以上です。
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