AWS Startup ブログ
導入社数 No.1 のオンライン本人確認サービス。TRUSTDOCK 社 の Amazon Rekognition 活用
株式会社TRUSTDOCK は、導入社数 No.1 のオンライン本人確認(eKYC / KYC)サービス「TRUSTDOCK」を提供する企業です。
かつて本人確認の手続きは、店舗の窓口や郵送などオフラインで実施されるのが当たり前でした。しかし、そうした確認手続きの場合、手続きが煩雑であったり本人確認の完了まで長い時間がかかったりという欠点があります。eKYC はオンライン上で本人確認を行う技術であり、オフラインでの確認が抱えている課題を解決します。TRUSTDOCK 社は、日本における eKYC 領域の先駆者と言える企業です。
同社はインフラ環境として AWS を活用しており、機械学習を利用して簡単に画像や動画を分析できる AWS のマネージドサービス Amazon Rekognition を利用しています。「TRUSTDOCK」では、本人確認においてユーザーが撮影した写真に写るものを識別するため、Amazon Rekognition を用いているのです。
今回はアマゾン ウェブ サービス ジャパン スタートアップ事業本部 スタートアップアカウントマネージャーの植本 宰壮とシニア スタートアップ ML ソリューションアーキテクトの針原 佳貴が、TRUSTDOCK 社 執行役員 CTO の荘野 和也 氏と エンジニアの五島 宙也 氏にお話を伺いました。
日本国内の eKYC 市場においてシェア No.1 のサービス
植本:まずは TRUSTDOCK 社の事業概要をお話しください。
荘野:弊社はオンライン本人確認(eKYC)の専門会社であり、本人確認のための作業をデジタル化するさまざまなソリューションを、KYC as a Service として提供しています。マイナンバーカードのような公的個人認証をはじめ、各種の本人確認方式に対応しています。
反社チェックやリスクチェック、法人確認など、あらゆる業界や業種の顧客に対応するために、確認業務の種類ごとに多種多様な Web API のラインナップを揃えています。ユーザー企業はそれらの Web API を組み合わせて使うことで、各業界の法規制に対応した KYC を実現可能です。
植本:TRUSTDOCK 社は国内の eKYC 市場で No.1 のシェアだと伺っています。シェアの大きさがわかるような具体的な数値や、御社のサービスを導入されている業界の例などを教えてください。
荘野:ありがとうございます。東京商工リサーチ社の調査によると、2 年連続で導入社数 No.1となっています。いま運用している顧客企業だけでも 180 社以上ありまして、契約ベースではもうすぐ 200 社を超える見込みです。
さまざまな業界でご利用いただいておりまして、金融系、FinTech 系、二次流通、副業・人材サービス業界、公営ギャンブルなどの本人確認でも利用されています。さらに行政の領域でも導入されており、「TRUSTDOCK」は官民問わず、社会全体で利用される本人確認のインフラとなっています。
Amazon Rekognition は画像認識の精度が高く、かつ安価
針原:今回のインタビューでは、御社のサービスにおける Amazon Rekognition 活用を中心に伺います。サービスのどの箇所で、Amazon Rekognition を使用されていますか。
荘野:弊社は本人確認のための Web API のソリューションを提供していますが、それ以外にもエンドユーザーが身分証明書の撮影をし、事業者を介さずに身分証明書を提出できる Web 版とネイティブ版のアプリを提供しています。このうち、今回は Web 版の事例についてお話しします。
eKYC は大きく分けて、身分証や顔写真の撮影を行って情報を送信する「提出」のフェーズと、提出された画像を元に本人かどうかを判定する「確認」のフェーズに分かれています。「提出」のフェーズで、問題のない画像をユーザーがなるべく楽にアップロードできるようにするのが、このアプリの担う役割です。
たとえば、ユーザーが目をつぶったりサングラスやマスクを着けたりした状態で撮影すると、本人であることを正しく認識できません。そうした問題のある画像を早めに判定することで、本人確認を滞りなく進めることができます。
もともとこの画像認識において、Amazon Rekognition を使う前は他社製のソリューションを用いていたのですが、精度に課題がありました。さらに、ソリューション利用の料金もそれなりに高額でした。
そんな折に、Amazon Rekognition を使うことで精度とコストの両方を改善できるのではないかと考えて、導入を決めたのです。まずは、Web 上で体験できる Amazon Rekognition のデモを操作してみました。テスト用の画像で試験してみると、問題なく動作することがわかりました。
五島:Amazon Rekognition への移行作業も簡単にできましたし、以前に使っていた他社製の SDK よりも使い勝手が良いです。AWS の各種 SDK はドキュメントが充実しているため、開発がしやすいことも利点でした。また、エラー発生時には API のレスポンスとして詳細な情報が返ってくるため、それをもとにしたエラーハンドリングや調査がしやすいです。
現在のアプリのアーキテクチャでは、Web 版のアプリでユーザーが画像をアップロードした際、フロントエンドの JavaScript を経由してサーバーサイド側にある Web API を呼び出し、リアルタイムで「顔がしっかりと写っていること」の判定を行っています。この Web API の裏側で Amazon Rekognition の DetectFaces が動作しています。
また、その後続フェーズである「確認」を行う際にも、Amazon Rekognition の CompareFaces を用いて身分証の顔写真とユーザーの撮影した顔写真の一致確認を機械的に行っています。これは、人間が最終的な判断をする際の手助けになる情報を付与するために、顔写真の撮影後に行います。
すべての機能を自前で作るのには限界がある。だからこそマネージドサービスが有効
植本:Amazon Rekognition の導入後、事業としてどのような成果が出ていますか。
荘野:金銭的なコストをかなり抑えられています。もし仮に「TRUSTDOCK」を導入している企業がテレビ CM を放送すると、その際にはアクセスが集中してクライアント企業のサービスのユーザー登録も増えます。
それに伴って「TRUSTDOCK」の利用数が増え、インフラのコストも基本的には増大します。ですがこのような場合でも、Amazon Rekognition を導入したことでコストを一定以下に抑えられており、事業にとってプラスになっています。
また、先ほど述べたように「提出」のフェーズで顔の写りをチェックすることで、その後続の「確認」フェーズで否認される割合を下げることができています。導入前・後で比較すると、否認率は数 % ほど低下しています。もともと低い数値だったのですが、それをさらに数 % 下げられたのは大きいです。
針原:Amazon Rekognition の導入を検討している企業に向けてアドバイスはありますか。
荘野:私たちのようなスタートアップは人や資金が限られているなかでサービス開発を実施しています。そんな状況のなかで、サービスのコアとなる機能をすべて自前で作ることには限界があります。そのため、Amazon Rekognition のようなフルマネージドなサービスをうまく活用して、開発や運用の省力化を図っていくことは有効です。
植本:Amazon Rekognition 関連の機能で、今後さらに使ってみたいものはありますか。
荘野:今回の事例で登場した DetectFaces の機能は、目つぶりやサングラスをかけている状態などをうまく判定してくれます。ただ、マスクを着用している場合にうまく顔認識できないケースがあるので、それを改善したいと考えています。ちょうど先日、人が着用しているフェイスカバーなどを検出する DetectProtectiveEquipment の機能を見つけたので使っていきたいですね。
また、他にも Amazon Rekognition に欲しい機能があります。eKYC のプロセスのなかで、「アップロードされた写真を、本人がその場で撮影していること」を証明しなければならないケースがあります。いわゆるライブネスチェックですね。そんな機能が Amazon Rekognition にあるといいなと思っています。
針原:とても良いリクエストで、実は今 Amazon Rekognition にそのための機能が追加されています。Detecting face liveness という機能で、これを用いることでライブネスチェックを実施できます。ぜひ試してみてください。
荘野:ありがとうございます。このような新機能があるとは知りませんでした。早速試してみようと思います。このような形で AWS からプロアクティブに新機能のご提案をいただける点も開発面で非常に助かっております。
さらに利便性の高い eKYC を提供。海外展開も強化していく
植本:御社の事業やシステムの今後の目標についてお聞かせください。
荘野:これからも引き続き、KYC の領域に注力していきます。この数年間で、eKYC は一般的なものになりました。今後ますます、「オンライン上で本人確認をしたい」というニーズは増えていくはずですし、最適なソリューションを提供できるようにしたいです。
また、eKYC において「確認工程のなかで、どれくらい人の関与を求められるか」は国によっても違いがありします。たとえば、日本国内ではいずれかの工程で人の目によるチェックが必須ですが、それを求められない国もあります。そうした、国ごとの工程の差異などを調整できるようなシステムアーキテクチャにしたいですし、かつエンドユーザーの UI/UX を重視したサービスへと改善していきたいです。
先ほど述べた「提出」の段階でのチェックのリアルタイム性をさらに向上させるとか、なるべくフロントエンドで完結できる仕組みを作ってシームレスに本人確認できるようにしたいですね。技術的な改善を続けることで、事業をより伸ばしていきたいです。
植本:国外の話が出ましたが、今後は海外展開も見据えていますか。
荘野:まさに、海外展開を進めています。もともと日本では、犯罪収益移転防止法が数年前に改正されたことをきっかけに、オンラインでの本人確認の手続きが可能になりました。同じような法規制の動きが、東南アジアの各国で起きています。そこで私たち TRUSTDOCK はシンガポールとタイに拠点を立ち上げており、海外の企業からも相談を受けています。
針原:これから、さらに事業拡大のフェーズに入っていきますね。開発組織を大きくしていくにあたって採用を推進すると思うのですが、求めるエンジニア像はありますか。
荘野:弊社は今まさに、数年先の将来を見据えて体制を強化しているフェーズです。フロントエンドやサーバーサイド、SRE などさまざまなロールのエンジニアを求めています。社会の課題を発見し、技術を活用してそれらを主体的に解決しようという思いのある方に参画していただきたいです。
そして、チーム開発においてコミュニケーションはとても大事だと思っています。お互いをリスペクトして、高め合って、知見を共有して、同じ方向を向いて良いプロダクトを作ることを大事にしてくれる方だと、一緒になって良いものが作れると思います。
五島:私たちはインフラとして AWS を使っていたり、サーバーサイドのアプリケーションを Ruby on Rails で作っていたりと、比較的スタンダードな技術を使っています。「どんどん最新の技術を取り入れたい」というタイプの人よりも、「事業やユーザーへの提供価値を第一に考えて、今のシステムをブラッシュアップしていきたい」というタイプの人が、マッチすると思います。
荘野:もちろん、導入する利点があれば新しい技術も積極的に取り入れていきます。今回の Amazon Rekognition の導入もそうですし、たとえばフロントエンド周りで AWS Amplify を取り入れるとか、サーバーサイドに AWS Lambda を採用してサーバーレスアーキテクチャにするといったこともあり得ると思っています。
採用情報ページ:
https://biz.trustdock.io/recruit/
植本:今後 eKYC はさらに普及していくと思いますし、エンジニアにとっても面白いフェーズに入っていきますね。今回はありがとうございました。
———————————————————————————————————————————————–
導入支援・お見積り・資料請求等に関するご質問、ご相談に日本担当チームがお答えします。平日 10:00〜17:00 はチャットでもお問い合わせいただけます。お問い合わせはこちら