ストレージの勉強方法を聞いてみた。

2021-10-05
How to be a Developer

Author : 西村 航

こんにちは、テクニカルトレーナー/マネージャーの西村 (@kuwablo) です。
AWS トレーニングのトレーナーを担当しつつ、チームメンバーのマネジメント業務もあわせて行っています。

お客様の AWS 学習を支援する記事を公式ブログや builders.flash に投稿し、これまでにスペシャリストの方にサーバーレスやネットワークの勉強法をインタビューしてきました。

本記事はストレージの勉強方法に関するインタビュー記事になります。ストレージ初学者の方々やストレージ初学者の方を育成する立場にある方々を対象に前半と後半に分けてお話していきます。なお、インタビュー中に出てくる勉強方法は最後にリストにしています。

  • 前半 : ストレージに関するキャリアや勉強の話
  • 後半 : AWSのストレージサービスに関するオススメの勉強方法

私自身前職の SIer でストレージ機器の設計や保守を担当していたのですが、今回はストレージを更に深堀りするために、ストレージの有識者であるシニアソリューションアーキテクト ストレージサービスの川端さんを招いてインタビュー形式で進めていきます。それではお楽しみください 。


ストレージに関するキャリアや勉強の話

西村「はじめまして、テクニカルトレーナー/マネージャーの西村です。よろしくお願いします。」

川端「はじめまして、シニアソリューションアーキテクト ストレージサービスの川端です。よろしくお願いします。」

(写真左) 西村 航 (テクニカルトレーナー/マネージャー)
(写真右) 川端 真 (シニアソリューションアーキテクト ストレージサービス)

西村「まず最初にこれまでの経歴を教えていただけますか ?」

川端「はい、高校までは尼崎に住んでいて、大学進学を機に京都に引っ越しました。学生時代は機械系の学部に所属していました。卒業後は製紙会社に就職して、プラントエンジニアとして工場の機材の据え付け・デザインなどをしていました。」

西村「意外と IT から遠いところでスタートしたんですね。」

川端「はい、コンピュータとは全然関係ない仕事でした。その後にその会社の子会社に異動した後に、サーバーを入れて、LANケーブルを引いて、データベースを導入したりして、社内システムを作って IT 寄りの仕事を始めました。CRM (Customer Relationship Management の略、顧客関係管理のツール) がなかったので、自前で CRM 的なものを作ろうと思って、生産管理システム・購買管理システムなどを作りました。工場の人達にもデータ入力できるように支援して、工場での紙のやりとりを全部データ化して、資材の発注をいつ行うのかのスケジュールとかもツールで行えるようにしました。最終的には、生産から発注までのプロセスを全てシステム化してましたね。ひとり情シスで 3 年くらいやっていたと思います。」

西村「いきなり念能力に目覚めるみたいな感じで IT に近づきましたね。」

川端「その後はずっと IT 畑で色々な会社を 10 社ぐらい渡り歩きましたね。(経歴書を一緒に見ながら) プログラマー→ネットワークエンジニア→ネットワークに飽きてストレージエンジニア→ストレージに飽きてセキュリティエンジニア→スタートアップ立ち上げを複数回→ストレージ部門の統括マネージャ→今に至ります。」
※西村補足:だいぶ省略していますが、異なるスキルエリアのキャッチアップの方法、スタートアップでの〇〇〇、など人生何回目 ? ぐらいの濃い経験を伺いました。もっと詳しく聞いてみたい ! という方は是非川端さんに話しかけていただければと。

西村「ありがとうございます。IT 企業から事業会社まで業種も会社規模も幅広く、専門性も都度深めていて、好奇心と行動力がパワフルです。紆余曲折あって、最終的にストレージに着地したんですね。」

川端「はい、そうなります。」

西村「これは私個人の経験からの質問なんですが。私が新卒で入社した会社で最初にストレージの部署に配属されていたのですが、ストレージを極めるぞ ! と思った数年後にそのストレージの部署がなくなってしまったんですね。その部署の消滅をキッカケにネットワークやプロジェクトマネジメントを勉強し始めたという経験がありまして。これからの時代に、ストレージエンジニアって食べていけますかね ?」

川端「個人的な意見ですが、やっていけると思います。特定のストレージ製品の固有の仕様だけしか分からない、だけだとスキルとしてはちょっと厳しいかもしれませんが。ストレージを一歩俯瞰した視点とスキルを身につけると、データの流れとか見えるものが増えるので仕事の幅もガッと広がります。ストレージを取り巻くデータ周りの仕事ってなると、データの移動、データの保護、データの圧縮など様々な要件が出てくるので、対応しているうちに様々な能力が身につくと思います。」

西村「ストレージエンジニアに必要な能力って具体的にありますか ?」

川端燃えさかる炎に飛び込んでいく度胸です。」

西村「急に 魁 !! 男塾 みたいな話になってきましたね。」

出典 : 宮下あきら『魁!!男塾』

宮下あきら先生の 魁 !! 男塾 を読むことで、ストレージエンジニアに必要な能力を身につけられるかもしれません。押忍 ! ごっつぁんです !

川端「ストレージにはデータが保管されます。データが消えるというのは企業の財産が消失することとイコールなので、非常に責任が重いです。そのため、ストレージの作業をする際はたった一つのミスが命取りになる可能性があります。更に、移行作業などはどこかで何かが起こる可能性が高いので、その時に逃げずに最後までトラブルシューティングする姿勢が重要です。火中の栗を拾いに行くマインドがない人には安心してストレージを任せられないと感じます。」

西村「あきらめたらそこで試合終了ですもんね。データは存在するのが当たり前と思われていますが、データが消えたときの影響を常に意識する必要があると私も前職で知った気がします。」

川端「そうですね。あとは、お客様にとって大事なデータを扱うので、いろんな可能性を想定したリスクやシナリオを網羅的に考えられる能力も必要ですね。特に移行を行う場合は、こういうトラブルが想定されるから念の為に担当者の人に○日の朝 7 時頃は起きといてほしいと連絡するとか、プラン A が駄目だった場合のプラン B / C を考えておくとか。ストレージに限った話でもないかもしれませんが。それぐらい慎重に計画しないと不安になるぐらいの性格の人が良いです。」

西村「石橋をたたいて わたる 慎重さは重要ですね。AWS のストレージ関連で、これは ! と思ったアップデートはありますか ?」

川端「やはり Amazon FSx for NetApp ONTAP ですね。オンプレミスのアプリケーションを NAS 上で動かしているお客様は多いと思うんですが、AWS への移行を検討する際に是非考慮いただければと思います。なお、AWS 公式ブログの記事 新サービス – Amazon FSx for NetApp ONTAP でも詳しく書かれていますので、チェックしてみてください。」

西村「AWS 公式ブログで NetApp ONTAP の文字面を見た時は確かにビックリしました。ストレージとセットで勉強すると良いエリアとかありますか ?」

川端「これは即答しますが、絶対にネットワークを勉強した方が良いと思います。データを保管するストレージとデータを転送するネットワークはセットで理解できると強いですね。両方知ってると、ストレージの歴史としての DAS → SAN → iSCSI → 遠隔地レプリケーション とかの話も理解しやすいと思います。あとは災害対策とかですね。特に日本は天災が多い国で、データ移行の文脈で RPO / RTO など災害対策関連の話も出てきます。」

西村「ストレージの基本を勉強するにあたって、まず最初に身につけるべき知識とかありますか ?」

川端「データ保護に関する単語は抑えておくと、お客様との会話がスムーズになると思いますね。例えば RAID、イレイジャーコーディング、レプリケーション、などはストレージ設計において必要となる知識だと思います。あとはオンプレのストレージからクラウドへのデータ移行に際して、ファイバーチャネルなどオンプレのストレージに関する知識も必要になるかと思いますので、 IT ストレージの歴史 などを読むのも良いと思います。書籍だと IT 技術者なら知っておきたい ストレージの原則と技術よくわかるストレージネットワーキング とかですかね。」

西村「私も ストレージネットワーキング技術 - SNIAストレージ技術者認定プログラム準拠 などを読んでました。経験がないけどストレージに詳しくなりたい人にオススメの手を動かすツールとかってありますかね ? なかなかストレージ機器を買って自宅に設置するのはハードルが高いかなと思いますが。」

川端「そうですね、クラウド上で自分で環境を作って消してを繰り返すのが良いと思います。例えば、Amazon EC2  (仮想サーバー) でファイルサーバーを自作してみたり、 Amazon EBS (ブロックストレージ) の拡張やボリュームタイプの変更など、触ってみると特性やメリットが見えてくると思いますね。」

西村「使い終わったら消せるのがクラウドのメリットなので、それは良いですね。ありがとうございます。ここからは AWS のストレージサービスに関するオススメの勉強方法に関して伺わせてください。」


AWS のストレージサービスに関するオススメの勉強方法

西村「座学の勉強方法とハンズオンの勉強方法の両方をお話させてください。AWS のストレージサービスを理解できる資料とかありますか ?」

川端「AWS のストレージサービスは複数ありますので、俯瞰的に理解できる 30 分で理解する AWS ストレージサービスの全体像 に最初に目を通すと良いかと思います。オブジェクトストレージ、ファイルストレージ、ブロックストレージのストレージサービス群を提供するだけでなく、オンプレミスと連携したバックアップ・DR ソリューションなど体系的に説明しています。」

AWS Summit Online 2020 の 30 分で理解する AWS ストレージサービスの全体像 で、複数ある AWS ストレージサービスの全体像と使い所をまず理解しましょう。特にデータの格納先としての Amazon S3 や Amazon EFS 、データの管理・セキュリティとしての AWS Backup や AWS CloudTrail、データの移動としての AWS Storage Gateway などストレージに関わる様々なサービスを俯瞰的に見ることが出来ます。

西村「いきなりサービスを個別に理解するよりも、全体像を俯瞰的に見てから勉強する方が、理解しやすそうですね。」

川端「はい、全体像を理解した後に、サービス別資料の ストレージシリーズ を見ていただくと、より深く各サービスをイメージできると思います。」

西村「なるほど。他にはありますか ?」

川端「あとは、クラウドストレージの検討を始めたい方々に向けて、私が登壇した AWS ストレージサービスの活用事例 も目を通してもらうと良いかと思います。用途に合わせたサービスの使い所をお伝えする目的でお話していて、ファイルサーバーのクラウド化、クラウドバックアップ、遠隔地データ保護などよくある活用事例にフォーカスしています。」

AWS Builders Online Series 2021 の AWS ストレージサービスの活用事例 では、AWS ストレージサービスのよくある活用事例をピックアップして説明しています。

西村「バックアップや遠隔地保護は、ストレージの設計で避けては通れないですもんね。初学者の方向けのコンテンツでオススメはありますか ?」

川端「あとは、ファイルサーバーに関しては、初学者の方向けに AWS で最低限知っておきたい 10 のことシリーズ で AWS でのファイルサーバ構築に向けて検討するべき 10 のこと は目を通していただくとよいかと思います。ファイルサーバの利用シーンを整理し、データの持ち方の選択肢を利用者の想定するファイルサーバに合わせてどのようなことを AWS で検討したら良いかを紹介します。」

AWS で最低限知っておきたい 10 のことシリーズの AWS でのファイルサーバ構築に向けて検討するべき 10 のこと になります。ファイルサーバのクラウド移行をご検討いただいている方に、最適なセミナーです。

西村「おぉ ! 10 のことシリーズ にもあったんですね。私からも初学者の方向けのコンテンツを紹介させてください。AWS では無料のデジタルトレーニングが提供されていますが Getting Started with Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) (Japanese) のコースでは日本語で、Amazon S3 の基礎からセキュリティまで幅広いトピックになっていますので、入門者向けの内容になっています。あと個人的なオススメコースとしては Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) Storage Classes Deep Dive (Japanese) ですね。Amazon S3 のストレージクラスを整理して理解したいという方にピッタリかと思います。他にも Deep Dive したデジタルトレーニングもありますので、このインタビューの後にまとめてピックアップしますね。中級者の方向けには何かありますか ?」

AWS の無料デジタルトレーニングはお好きなタイミングで受講することができます。 Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) Storage Classes Deep Dive (Japanese) コースで Amazon S3 の各ストレージクラスの相違点や相違点を学習しましょう。

川端「中級者の方向けには、イベント資料で各ストレージサービスに特化した資料も複数あります。ブロックストレージに関しては、Amazon Elastic Block Store (EBS)  によるイノベーションの加速「Amazon EBS 完全に理解した」あなたに贈る Amazon EBS 再入門 です。オブジェクトストレージに関しては 進化した Amazon S3 を最大限に活用する ですね。ファイルストレージに関しては Amazon FSx と Amazon EFS によるファイルベースストレージのモダナイズ / スケール / 保護オンプレミスからのファイルサーバ・AD の移行 です。」

西村「ありがとうございます。痒いところに手が届く資料が数多くありますね。ここまでは座学の勉強方法に関してお伺いしてきましたが、ここからは手を動かすハンズオンに関してお話させてください。私のオススメは Introduction to Amazon Simple Storage Service (S3) (日本語版) ですね。Qwiklabs セルフペースラボのコースになっていて、2021 年 9 月時点で無料なコースになります。S3 のバケットを作るだけではなくて、オブジェクトの公開やバージョニング設定など S3 に関して一通り学習でできます。」

Qwiklabs セルフペースラボでは、AWS の各サービスや実際のクラウドシナリオを使用して、AWS が実際に稼働している環境で実践演習を行います。特に Introduction to Amazon Simple Storage Service (S3) (日本語版) では S3 の機能に関して一通り触れます。

川端「GitHub 上にも AWS のストレージサービスのハンズオン (ワークショップ) がありますね。」

西村「おぉ!それは知りませんでした !」

川端「クラウド上のファイルサーバーを試してみたい方には Amazon FSx for Windows File Serverオンデマンドワークショップ がオススメですね。Amazon FSx for Windows File Server に関するオペレーションをシナリオに沿って実施するのでイメージしやすいですね。手順解説動画 も埋め込まれているので初めての方もスムーズに操作できると思います。」

GitHub にある Amazon FSx for Windows File Serverオンデマンドワークショップ もオススメです。手順解説動画もあって初学者の方も迷子にならずにステップバイステップで実装が可能。

西村「想像していたよりも手順が丁寧です。章毎にページが分かれているのでハンズオン実施中に迷子にならずに済みそうですね。ハンズオンに必要なリソースを最初に AWS CloudFormation で自動作成できるので、本質であるハンズオンの中身に集中できますね。」

川端「はい。日本語版だと他にも Amazon FSx File Gateway ワークショップ もあります。NFS サーバーを運用している方は AWS DataSync と AWS Storage Gateway を使った NFS サーバーマイグレーション も良いかなと。あと DataSync でマイグレーションを考えている人は DataSync を使った FSx for Windows File Server へのマイグレーション とかもピッタリですね。」

西村「いきなり触るのはちょっと怖いから、ハンズオンでサービスのイメージを掴むのは良いですね。他にはありますか ?」

川端「テープメディアの管理とかしている方には AWS でのプロジェクト : テープバックアップをクラウドストレージに置き換える がオススメですね。」

テープによるバックアップなどを運用されている方は AWS でのプロジェクト : テープバックアップをクラウドストレージに置き換える で既存のバックアッププロセスとの組み合わせを学習しましょう。

西村「クラウドストレージに置き換えるイメージが湧きそうですね。本日はどうもありがとうございました。勉強方法だけでなく、ストレージに関するスキル習得の有用性まで教えていただき非常に面白かったです。」

川端「ありがとうございました。」


ストレージに関する勉強方法のリスト

最後に、ここまでのインタビューで出てきた勉強方法とインタビュー後に有識者の方々に確認した勉強法を以下にリスト化してみました。初級者だけでなく中上級者向けのハンズオンも含めて載せていますので、「これは面白そうだな」という勉強方法があれば、是非ブックマークしてみてください。

AWS のストレージサービスに関するオススメの勉強方法 (座学)

AWS のストレージサービスに関するオススメの勉強方法 (ハンズオン)


まとめ

インタビューを通じて、ストレージに関する必要なスキルや、カバーすべき技術の範囲など色々と教えていただき、本当に勉強になりました。特にストレージを一歩俯瞰した視点とスキルを身につけることで、仕事の幅が広がる話は目からウロコでした。

この記事が少しでも “How to be a Developer” な皆様のお役に立てれば幸いです。
また別の記事でお会いしましょう ! それでは !


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筆者プロフィール

西村 航 (@kuwablo)
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
トレーニングサービス本部 テクニカルトレーナー/マネージャー

多くの人に AWS を学ぶ楽しさを伝えたいと思い、テクニカルトレーナーになりました。テクニカルトレーナーになった経緯などは 社員の声 に記載しています。また、マネージャーとしてチームメンバーのマネジメント業務も行っています。
サウナとキャンプと買い物が好きです、最近の買い物のイチオシは自宅焼き肉ができる「やきまる」です。

話者について

川端 真
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
シニアソリューションアーキテクト ストレージサービス

ストレージ専門のソリューションアーキテクトとして AWS に勤務。
大手ストレージベンダーやネットワーク SI、多数のスタートアップ企業の経験を経て AWS へ。ストレージ業界約 15 年の元関西人 (尼崎市出身)。
バイク、筋トレ、サウナ、ワイン、餃子の王将が大好きなストレージおじさんですので、見かけたら気軽にお声がけを !

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