AKASE、ファイルサーバーを AWS 上に構築し、運用負荷の軽減、セキュリティ強化、データ消失リスクの解消などを実現

1961 年に岡山県笠岡市で、婚礼家具メーカーとして創業した AKASE。2000 年代に洋風家具の製造・販売にシフトし、オリジナルブランド『マスターウォール』をスタートしました。現在は、銀座、青山、横浜など全国に 10 の店舗を展開しています。2020 年には住宅事業と生活支援事業を新たに立ち上げ、創業 60 周年を迎えた 2021 年に社名を『アカセ木工』から『AKASE』に変更し、住宅施設総合サービス企業への変革を図っています。

「事業の多角化の背景には、私たちの得意領域を活かして、家具から住まいをつくる、生活支援の中から家具を提案するといった、ライフスタイル全体をカバーする狙いがあります。主力の家具事業は、小売と卸売の 2 つを展開しているのが特徴で、お客様からのフィードバックを家具づくりに活かしています。オリジナルブランドの『マスターウォール』では、世界三大銘木のウォールナットの中から最高ランクの材料を使用し、100 年後の人たちにも愛着を持ってもらえる家具づくりを目指しています」と語るのは、取締役の北村浩三氏です。

岡山と東京に本社を置き、全国に店舗を持つ同社において、日々の業務で生まれる報告書、見積書、顧客台帳、設計図面などのデジタルファイルは、岡山本社に設置した物理サーバー上で稼働するファイルサーバーで管理していました。しかし、ビジネスの成長と事業の多角化が進むにつれてファイルサーバーの容量が逼迫し、拡張が求められていました。サーバーハードウェアの老朽化も進んでいました。経営管理の前原浩史氏は次のように語ります。

「検討した 2020 年当時、当社には IT 専任の担当者がおらず、サーバーの安定運用や運用負荷の軽減、アクセス権限の管理が大きな課題でした。そこでこれらの課題解決に向けてファイルサーバーをリプレースすることにしました」

リプレースに向けて、オンプレミスによる再構築とクラウドの 2 択で検討した同社は、AWS への移行を決断しました。

「予測できない容量の増加にも柔軟に対応でき、無駄なくリソースが利用できる拡張性の高さが決め手です。高額な初期費用が必要なオンプレミスと比べて、クラウドなら初期費用がかからないことも安心材料でした。数あるクラウドサービスの中でも、多くのユーザーに利用されている AWS であれば不安なく利用できると判断して採用を決めました」（北村氏）

新たなファイルサーバーは、導入パートナーの支援を受けて、2020 年 11 月から 2021 年 1 月までの約 1 か月間で構築しました。Amazon EC2 と Amazon Elastic Block Store (Amazon EBS)によるシンプルな構成とし、バックアップ先のストレージには Amazon S3 を採用しています。

ネットワークは、コストを抑えて導入するために既存のインターネット回線を活用し、セキュアに AWS 環境に接続する構成としました。

「全国の販売拠点からのアクセスする際の遅延を防止するため、岡山本社と銀座本店の 2 か所にルーターを設置し、東日本エリアの 4 店舗は銀座本店から、西日本エリアの 4 店舗は岡山本社から AWS に接続することにしました」（前原氏）

稼働後の運用、監視、容量拡張、拠点追加などの日々の保守運用作業はすべて導入パートナーに委託し、AKASE 社内での運用負荷の軽減を図っています。

AWS 上にファイルサーバーを構築してから約 2 年が経過した現在、大きな障害もなく安定稼働を続けています。ユーザーはこれまでどおり共有フォルダーや個人フォルダーにアクセスしてファイルが利用できるため、操作性の違いを意識することはありません。アクセス権限も担当者や役職に応じて細かく設定することが可能になり、セキュリティリスクも解消されました。ネットワーク遅延の影響によるパフォーマンスの低下もなく、快適な利用が続いているといいます。サーバーの拡張性も確保され、容量が不足した際には即座に追加できるようになりました。

「ファイルサーバーの容量は初期構築の段階で 1.8TB を確保し、約 0.8TB のデータを旧サーバーから移行しました。データ量は約 2 年で 1.5TB まで増えているので、そろそろ容量の追加を検討しているところです」（前原氏）

同社が AWS 上へのファイルサーバー構築で一番のメリットとして感じているのが、データの消失リスクがなくなったことと、運用負荷を軽減しビジネスに集中できるようになったことです。

「従来環境では、ファイルサーバーのバックアップは取得しておらず、障害や災害によってデータが消失してしまう危険性と隣り合わせでした。今回、クラウドにファイルサーバーを移行し、さらにバックアップ環境を整えたことで、リスクを考える必要がなくなりました。オンプレミス環境にファイルサーバーとバックアップの 2 つを構築することを考えると、結果的に 2 倍のコスト効果が得られたことになります。拠点追加時にも新たなサーバーを準備することなく AWS 環境を利用できるので、ビジネス面での不安もなくなりました」（北村氏）

AWS 上へのファイルサーバーの移行を終えた 2021 年 4 月には、専門の IT 部門として情報システム部を新設しました。現在、本格的な IT 活用に向けた施策や、DX 施策を検討し、着々と導入が進んでいます。情報システム部 部長の森脇正文氏は次のように語ります。

「クラウドファーストを方針とし、新規で導入するシステムはクラウド上への構築を原則としています。すでに PaaS 型の業務改善プラットフォームや、名刺管理、タレントマネジメントなど SaaS 型のビジネスアプリケーションを導入済みです。今後は、オンプレミス環境で稼働している基幹システム、顧客管理システム、CAD システムなどもサーバーやソフトウェアの保守切れのタイミングでクラウドに移行していきます」

DX 戦略としては、YouTube を使った情報発信、VR/AR を使ったバーチャルショールーム、AI や RPA の活用など、デジタルツールを積極的に活用しながらビジネスを拡大していく計画です。

「今回のプロジェクトを通してクラウドを知り、改めて将来性に期待が持てるようになりました。今後、家具事業では、低価格帯から高価格帯のモデルまでラインナップを拡充して規模の拡大を目指していきます。私たちの商品やサービスが提案しやすい環境をつくり、より多くの方に知ってもらうためにはデータやシステムの活用が欠かせません。AWS には引き続き技術面からバックアップをいただければと思います」（北村氏）