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2023 株式会社レアジョブテクノロジーズ

レアジョブテクノロジーズ、英語スピーキングテストで Amazon SageMaker を活用し、機械学習モデル開発を 10 倍以上効率化

教育関連サービス

概要

オンライン英会話『レアジョブ英会話』を提供する株式会社レアジョブの技術部門として、プロダクトの企画・開発を担う 株式会社レアジョブテクノロジーズ。同社は、アマゾン ウェブ サービス(AWS)を採用し、各種サービスを提供しています。2020 年 6 月には AI による自動採点を実現した英語スピーキング力測定システム『PROGOS』をリリース。機械学習のモデル開発に  Amazon SageMaker を活用し、開発効率を従来比で 10 倍以上効率化しています。
A modern office collaborative space featuring wooden finishes, natural lighting, and a mix of long tables, chairs, sofas, and green plants, designed for group work and meetings.

課題・ソリューション・導入効果

課題

AI による自動採点を実現した英語スピーキングテストをリリース

レアジョブグループでは、『レアジョブ英会話』をはじめ、法人向け英会話コーチングの『スマートメソッド』など英語を起点とした人材教育サービスを展開しています。中でも『レアジョブ英会話』は、累計会員 100 万人、レッスン 6,000 万回、講師 6,000人の実績を誇る英会話サービスです。

2020 年 6 月には、AI による自動採点を実現した英語スピーキング力測定システム『PROGOS』を開発し、『PROGOS』を活用した『レアジョブ・スピーキングテストpowered by PROGOS』(以下、スピーキングテスト)のサービス提供を個人、法人向けに開始しました。

スピーキングテストは、“話す”能力を測定するテストです。オンラインで受験ができ、受験者は約 20 分かけて設問に回答。結果は最短 2 ~ 3 分で通知され、国際的な評価基準に基づく英語力を知ることができます。「スピーキングテストは、受験者が自分の実力を把握し、学習計画の参考にしていただくためにリリースしたサービスです。AI が採点することで、採点者個人の経験や感覚による評価のブレが解消でき、客観的な結果をスピーディにお知らせすることができます」と語るのは、執行役員 CTO の羽田健太郎氏です。

ソリューション

機械学習のモデル開発に Amazon SageMaker を採用

レアジョブグループでは、2016 年に『レアジョブ英会話』のサービスを、他社のクラウドサービスから AWS に移行しました。その後はほとんどのサービスを AWS 上で運用しています。「インフラがボトルネックになっては、事業の足かせになると判断して AWS への移行を決めました。『レアジョブ英会話』は、大半の講師がフィリピンに在籍しているため、シンガポールにリージョンがあること、充実したサポート、技術の発展性、技術情報の多さなどを評価しました」(羽田氏)

2019 年から開発に着手した『PROGOS』でも AWS を採用。『PROGOS』は、受験者に出題して解答を受け付けるアプリケーション側と、解答された音声データを蓄積して AI が採点する採点側の 2 つのサービスで構成しています。各サービスはコンテナを活用し、実行環境には Amazon Elastic Container Service(Amazon ECS)やAWS FargateAmazon DynamoDBAWS Lambda などサーバーレス / マネージドサービスを採用しました。

「『PROGOS』は、さまざまなサービスに利用されるため、拡張性を意識したアーキテクチャを設計しました。また、ユーザの受験開始と同時に並行して前処理を実行しておき、受験完了を確認してから速やかに採点に移行するという運用を実現するために、Amazon Simple Queue Service(Amazon SQS)を使ってアプリケーション側と採点側のサービスを疎結合で連携しています」(羽田氏)

AI が採点する機械学習のモデル開発には、Amazon SageMaker を活用し、モデル開発に必要な受験者のデータ取得には AWS GlueAmazon Athena を利用しています。同社 EdTechLab 機械学習エンジニアの山城拓也氏は「当初はローカル PC で機械学習モデルを開発していましたが、それでは開発者 1 人につき一度に 1 個のモデル学習しか実行できず、開発のボトルネックとなっていました。効率を高めるために Amazon EC2、Amazon ECS と移行したものの、スペックが不足し、コストもかかります。そこで、Amazon SageMaker によるモデルのトレーニングジョブに着目しました。GPU やメモリサイズの大きなインスタンスが比較的自由に選択できること、加えてマネージドスポットトレーニングを使うことでコストを抑えて学習できることなどを評価して採用を決めました」と語ります。

その結果、機械学習モデルの開発効率は飛躍的に向上しました。「ローカル PC によるモデル開発と比較して学習時間を最大 4 分の 1 に短縮することができました。1 人の開発者でもサービスの上限までは複数の学習を同時に実行することが可能となり、学習効率は 10 倍以上向上しています」(山城氏)

レアジョブグループでは、業務面でも AWS の利用が加速しています。コロナ禍で社員がリモートワークに移行し、既存の VPN の容量が不足した際には AWS Client VPN を短期間で導入して約 150 名のグループ社員のテレワーク環境を整備。機密性の高い経営情報や個人情報を扱う部門の担当者には、VDI の Amazon WorkSpaces を展開しました。クラウドサービスから必要なデータを取得して、文書管理ツールにファイルをアップロードする定型業務では、AWS Lambda を使ってデータを自動取得するシステムを開発し、月間で約 100 時間の工数を削減しています。IT ソリューション部 部長の平川勝章氏は「グループの価値を高めるレアジョブテクノロジーズのミッションとして、潜在的なニーズを積極的に掘り起こしながら、業務課題を解決に導くスタイルが AWS によって確立されました」と語ります。

開発生産性の向上に向けて DevOps 専門の部署も設け、CI/CD 環境を構築して日々のインフラ運用を支援しています。 

*Proof of Conceptの略で、概念実証を意味する。

導入効果

約 3 倍の売上高の伸長を、AWSを中心としたテクノロジーが支援

レアジョブグループが 2016 年から AWS の利用を開始してから約 7 年。今や、AWS はビジネスに欠かせない基盤となっています。

「7 年間でグループの売上高は約 3 倍に増えています。それに応じて、社内のデータ活用やシステム間連携なども加速し、エンジニアリング部門のプレゼンスも高まりました。約 3 倍の売上高の伸長をテクノロジーで支えることができたのも AWS のおかげです」(羽田氏)

『PROGOS』を活用したスピーキングテストの受験者数も右肩上がりで増加し、採点官による手動採点より AI による自動採点を選択する受験者が増えています。

「近年は従業員の英語力を判断するためにご利用いただいたり、新卒研修でご利用いただいたりと、主要顧客企業での活用が拡大しています」(羽田氏)

『PROGOS』は、受験者からのフィードバックを受けながら継続的に進化しています。今後も替え玉受験防止のための不正検知システムの導入や、推論を実行した時間のみ料金が発生する Amazon SageMaker Serverless Inference を活用したコスト削減などに取り組みながら、より使いやすいサービスへと改善を図っていく計画です。

レアジョブグループ全体としても、バックオフィス業務の効率化を推進するとともにプロダクトの価値を高めるための施策を実行していきます。

「オンライン英会話事業者から、AI アセスメントカンパニーと呼ばれる存在になるべく、これまで蓄積してきたお客様の行動データや、レッスンデータなどを活用しながら、新たなサービスを積極的に提供していきます」(羽田氏)

Logo of RareJob Technologies featuring a stylized icon and company name text.
7 年間でグループの売上高は約 3 倍に増え、それに応じて社内のデータ活用やシステム間連携などが加速しました。売上高の伸長をテクノロジーで支えることができたのも AWS のおかげです

羽田 健太郎 氏

株式会社レアジョブテクノロジーズ 執行役員 CTO

アーキテクチャ

An AWS architecture diagram for RareJobTech showcasing a speech processing solution. The diagram includes services such as Amazon S3, Amazon Aurora, Amazon EC2, AWS Lambda, Amazon SQS, Amazon Fargate, Amazon DynamoDB, Amazon API Gateway, and Speech-to-Text integration, depicted with Japanese labels.

株式会社レアジョブテクノロジーズ

2022 年 4 月、株式会社レアジョブの技術部門を、子会社として分社化して設立。現在、「マナビ、アップデート」をミッションに掲げ、データとテクノロジーによって世の中のマナビ(学習)を進化・更新・改善し、誰もが成長できる環境の創造を目指している。組織は、エンジニア、デザイナー、プランナーなど専門性の高いクリエイティブ集団として構成され、レアジョブグループのプロダクト企画・開発・運営をワンストップで担う。

取組みの成果

  • 4 分の 1
    学習時間の短縮(従来比)
  • 10 倍以上
    機械学習モデルの開発効率の向上(従来比)
  • 数 10 個
    現在の学習モデルの運用数
  • 約 100 時間
    定型業務の自動化による月間の工数削減

本事例のご担当者

羽田 健太郎 氏

Portrait of a RareJob Technologies speaker, Haneda Kentaro, in a casual indoor setting with glasses and a slight smile.

平川 勝章 氏

Portrait photo of a speaker in a checkered shirt, standing in front of a textured pink background, used for RareJobTech solution case studies.

山城 拓也 氏

A professional office portrait of a man with glasses wearing a black shirt, standing in an office setting with glass walls and blue and purple panels.